山の中で遭遇した”クマ”と入れ替わってしまった女子大生ー。
クマの身体になって戸惑う中、
彼女が取った行動はー…?
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”あ~~~四つ足で走れるのはいいかも…”
クマ(松美)は、クマの身体のまま
”自分”を探して山の中を移動していたー。
”人間”の状態で四つ足で移動していたら、
完全に不審者ー
けれど、クマの身体なら四つ足の状態で移動していても、
誰も何とも思わないだろうー。
”ふふふーこれはこれで楽しいかも”
クマ(松美)はそんな風に思いながらも
”まぁ、ずっとこのままでいるつもりはないけどー”と、
心の中で苦笑いするー。
人間とは違う、普段できないことをするのは楽しいー。
けれど、それはあくまでも”元に戻れるのであれば”、だー。
クマとの入れ替わりを1時間体験できるツアーだったりするのであれば
喜んで色々楽しむけれど、
今はそういう状況ではないー。
事故で偶然入れ替わった状態だし、
このままだと”松美になったクマ”が何をするか分からないー。
”とにかく、早く”わたし”を見つけなくちゃー”
クマ(松美)はそう考えながらその場で立ち上がるー。
”どっちの状態でも移動できるのもいいかもー!”
そんなことを思っていたその時だったー
ガサッ!と、背後で物音がしたー。
「ー!」
クマ(松美)は、松美(クマ)かと思い
咄嗟に振り返るとー、
そこにはー…
「ーーーぁ… ぁ… ぁ…」
山登りに半分強引に連れてきた友人・瑠璃の姿があったー。
「ーーぁ……ぁぁぁぁ…」
瑠璃は、突然の”クマ”との遭遇に、
目に涙を浮かべながら震えているー。
”疲れた”という理由で、山の中腹当たりの休憩所で
一人、休んでいた瑠璃。
しかし、松美の帰りが遅かったために、
松美を探しに来ている最中だったー。
「ーーーー……ぁ……ぁ…あたしは…る、瑠璃ですぅ…」
何故か自己紹介を始める瑠璃ー。
”ーーる、瑠璃ー…
もし、わたしがただのクマだったら
逆に襲われてるよー…たぶん”
クマ(松美)は、少し呆れ顔で苦笑いをすると、
瑠璃は震えながら
「ーえ、え、え~っと…あ、あたしー
と、友達を探しててぇ…」と、
クマに対して語り始めたー。
”クマに聞いたってダメでしょー…”
クマ(松美)は、人の言葉をしゃべれない今、
心の中でそんな言葉を呟くー。
”ーー…って、そんなこと考えてる場合じゃなかったー…
瑠璃が来てくれてよかったー”
”クマ”の姿では休憩所のある山の中腹あたりに
戻ることも難しいー。
当然”クマの姿”で、姿を現せば大混乱に陥るだけだ。
しかし、瑠璃が自ら姿を現してくれたとなればー…
これはチャンスかもしれないー。
クマ(松美)は何とかジェスチャーで
”待って”と、瑠璃に合図を送ると、
瑠璃は「え?あははー…友達の場所、教えてくれるの?
クマさん優しい~!」などと、笑い始めるー。
”瑠璃がこういう性格で良かったー…”
クマ(松美)は、そう思いながら
何とか状況を伝えようと周囲を見渡すー。
そしてー、木の棒を見つけたクマ(松美)は
すぐにそれを手にするー。
「ーーーえっ…!?」
途端に怯えた表情になる瑠璃ー。
”クマが木の棒を拾って攻撃してくる”とでも、
思ったのだろうかー。
そんな様子にクマ(松美)は慌てて
緊張をほぐそうと、その場で咄嗟に行動に出たー。
突然、奇妙なダンスを始めるクマ(松美)
そんな、敵意のないダンスを見て、
瑠璃の顔から怯えた表情が消えるー。
「ーあ、あははははは!何それ!
変なくまさん!
あ、そうだー
あたしも高校の時、ダンス部に所属してたんだ~!
みる?」
そう言うと、何故かクマの隣でダンスを始める瑠璃ー。
”クマの横で踊るなーー!!!”
クマ(松美)は思わず心の中でツッコミを入れるー。
これが、普通のクマだったら、
瑠璃は踊ったままあの世に行くところだったー。
こういう、危ういところはどうにかしてほしいー
そう思いつつも、
瑠璃の緊張がほぐれたところで、
改めて棒を手にすると、
土に向かって”文字”を書き始めたー。
”わたしは、まつみー”
そう、文字を書くー。
「ーえ…?」
瑠璃が表情を歪めながら、
クマ(松美)の方を見つめるー。
”クマといっしょにすべりおちてー”
”からだがいれかわっちゃった”
地面に漢字を書くのは難しいため
ひらがなで、そんな言葉を刻んでいくー。
すると、瑠璃は「えっ…?」と、困惑の表情を浮かべるー。
「ーあ、あ、あなたが、松美ー…?」
瑠璃は驚いた様子で考えるような仕草をすると、
突然ニコニコしながら言葉を口にしたー。
「あ~さてはクマの着ぐるみを着て、あたしをびっくり
させようとしてるんだね~?」
そんな言葉に、
クマ(松美)は”山奥でクマの着ぐるみを着て徘徊するわけないでしょ!”と、
心の中で叫ぶー。
瑠璃は、本気で”松美がクマの着ぐるみを着てびっくりさせようとしている”と
思ったのか、クマ(松美)の皮を引っ張り始めるー
”いたたたたたっ!?”
クマ(松美)は、瑠璃の当然の行動に
「痛いよ!」と、声を上げると、
「ウガァァァ!」という、怒りの雄たけびをクマの身体が発したー。
「ーーひぃっ!?」
瑠璃が驚くー。
そんな様子に慌てて、
”わたしがまつみで、まつみがクマ”と、
地面に刻むー。
「ーーー…ほ、ほ、本当にー…?」
戸惑いの表情を浮かべる瑠璃ー。
が、その時だったー
「ーーーあ」
松美(クマ)が、木々の隙間から姿を現したー。
「ーる、る、瑠璃ー」
松美(クマ)がそう言うと、瑠璃は「あ!松美!よかったぁ~」と、
そんな言葉を口にするー。
”ー!!な、なんでクマが瑠璃の名前を知ってるの!?”
戸惑うクマ(松美)
が、松美(クマ)は、瑠璃の方を見ながら
「ーちょっとまよっちゃってただけー。だからだいじょうぶ」
と、少しぎこちない棒読みのような口調で言葉を口にしたー
「ーーえ…?え…?、な、なんか大丈夫?」
棒読みっぽい口調に不安を覚えたのだろうかー。
瑠璃もそんな風に言葉を口にするー。
”ーこ、この子ー…わたしと入れ替わったことで、
人間の言葉を覚えたってことー?”
クマ(松美)はそう思いながら
「ーガウガウガウ!」と、”クマの言葉”で、
松美(クマ)に語りかけるー
”どういうつもり?”という意味だー。
しかし、松美(クマ)はビクッとすると、
「く、く、くまー!?」と、”下手な猿芝居”かのように
驚いてみせたー。
「あははー松美ーこの子は大丈夫ー
なんだかおもしろい子だからー!
ね~?」
瑠璃が笑いながら、クマ(松美)の方に向かって微笑むー。
”ち、ちがっ!わたしが松美なの!”
そう思ったクマ(松美)は慌てて、
地面に文字を再び刻むー。
”わたしがまつみだよ しんじて”
とー。
「ーーーえ~~~?」
瑠璃は不思議そうにしながら笑うー。
隣にいる松美(クマ)は
「な、なにをいってるの?」と、
下手な棒読みでそう言葉を口にするー。
”むむーさてはこのクマ、
わたしに成り代わるつもりー?”
クマ(松美)は、内心でそんな不満を口にするー。
どうやらこのクマは、松美のフリをして
人間の生活を奪うつもりのようだー。
「ーーじゃあ~松美の誕生日は~?」
瑠璃が、そんな言葉を口にするー
クマ(松美)はすぐに
自分の誕生日である”9月18日”を、
地面に書き始めるー。
「ーーええ~~よく知ってるね~?」
瑠璃は少し戸惑った表情を見せるー。
「ー血液型は~?」
「好きな食べ物は~?」
瑠璃が次々と質問してくる。
そのすべてをクマ(松美)が正確に地面に書き記すと、
瑠璃は表情を歪めながら
「え、もしかしてホントに松美?」と、不思議そうに
言葉を口にしたー。
”う、うん!そうだよ!だから信じて!”
そう叫ぶクマ(松美)ー
勿論、叫んでも「ガゥガゥガゥ!」みたいな声しか
その口からは出てこないー。
そしてー
「ーーー…ま、松美はわたしだよ~?」
松美(クマ)が、さっきよりも棒読みじゃない感じの
喋り方でそう言葉を口にするー
「ーー…え~……」
瑠璃はお互いに松美だと主張する
松美(クマ)とクマ(松美)の方を交互に見つめると、
「ーもしかして松美、クマさんとグルであたしを
困らせようとしてる?」と、笑いながらそう言葉を口にするー
”ち、ちが~う!”
クマ(松美)は戸惑いながら、
必死に地面に文字を書くー。
”そっちのわたしは、わたしのふりをしてるだけ”と、
慌ててそう書くと、
「な、何を言ってるのー?」
と、松美になったクマが、さっきよりもさらに
人間らしい口調で戸惑ってみせたー。
”ーやっぱりこのクマー…人間に成り代わるつもりー!?”
クマ(松美)は心の中でそう思いながら、
焦りにも似た感情を抱き始めるー。
この状況で、松美になったクマに、松美のフリを
されてしまっては、クマになった松美が圧倒的に不利ー。
そのことはクマ(松美)にもよく分かっているー。
”っていうか、何でこのクマ、わたしの友達のこと知ってるのー?”
クマ(松美)はそんな不安も抱くー。
さっきから松美(クマ)は、まるで友達の瑠璃のことを
知っているかのような、そんな振る舞いを見せているー。
”と、とにかくー”
クマ(松美)は、心の中でそう呟きながら
地面に文字を再び刻むー。
”ふつうのくまが、こんなことかけないでしょ”
とー。
「ーーあ~~あはは うんーそれは確かにそうだね~!」
瑠璃はそう言葉を口にすると、
松美(クマ)は「な、納得しないでよー!クマがわたしのわけないでしょ」と
そんな言葉を口にするー
「え~…でもでも、普通のクマさん、こんなこと書けないってのは
確かにその通りじゃない?」
瑠璃の言葉に、松美(クマ)は、
”それはそうだけどー”と、戸惑いながら
クマ(松美)の方を見つめるー。
心底困惑したような”松美”の目ー。
クマ(松美)はその目を見ながらー
さっき、入れ替わった直後に
獣のように襲い掛かってきた松美(クマ)の目つきと、
今の松美(クマ)の目つきは、まるで別人のようにー
そう…”ごく普通”の学生のように変わっていることに気付くー。
”ーこの子ー…どんどん人間の振る舞いを学習してるー!?”
クマ(松美)は、そう思いながらも
”とにかく、もとにもどりたいの”と、地面に書くと、
瑠璃は「わ、分かったから落ち着いて」と、そう言葉を口にするー。
松美(クマ)は「もう帰ろうよー」と、何度も何度も、
瑠璃に帰ることを促していて、
瑠璃もやがて、それに押されるような形で、
”いったん帰ろうかー”などと言い始めるー。
ガゥガゥガゥ!と声を上げるクマ(松美)ー
”ちょっと待ってよ!”と、そう言いたいのだが
クマの身体では人間の言葉を話すことはできないー。
「ーー大丈夫。落ち着いて。あたしがどうにかするからー
でも、ずっとここにいるわけにはいかないし、
いったん山を下りるだけだからー」
瑠璃のそんな言葉に、
クマ(松美)は”本当ー?”と、思いながらも、
これ以上、二人を引き留めることは難しいと判断して
”わかったー。しんじてる”と、
棒でそう文字を書くと、
瑠璃は「うん!待っててね!松美!」と、
そう言いながら、そのまま松美(クマ)のほうを振り返って
「いこっ!」と、言葉を口にしたー。
立ち去っていく瑠璃と松美(クマ)ー
そんな後ろ姿を見つめながら、クマ(松美)は、
不安そうに二人のことを見送ることしかできなかったー。
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山奥で夜を迎えた
クマ(松美)ー
このクマが住処にしている山奥の洞窟のような場所に
やってくると、そのまま腰かけて、
溜息のようなものをつくー。
夜の山奥でも、クマの身体だからか
不思議にあまり恐怖心はなかったー。
だがーー
”ーーわたし、瑠璃に見捨てられたりしてないよねー…?”
そんな不安が膨らんでいくー。
瑠璃はあんなことを言っていたけれどー、
このままここに戻ってこない可能性も十分にあるー。
瑠璃からすれば”変なくまさん”で終わる話かもしれないし、
松美(クマ)が、松美のフリをし続けた場合、
瑠璃は、まさか二人が入れ替わっているなどとは思わないだろうー。
”松美になったクマ”が何かボロを出してくれればいいけれどー。
”ーーー…”
クマ(松美)は、ふと、”お腹空いたなぁ”と、思いつつ
このクマがいつも食べている草花を口に放り込んでいくー。
”ーう~ん…おいしいー”
クマの味覚だと美味しく感じるー。
そんなことを思いながら
不安を抱えつつ、一晩をクマの身体で過ごすのだったー。
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!
人間に成り代わろうとしている…かもしれない
クマから身体を取り戻すことはできるのでしょうか~?
結末をぜひ見届けて下さいネ~!
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