無敵の人が憑依薬を手にしてしまったー。
それだけで、
世界は簡単に崩れ去ってしまうー。
”地獄”の結末は…?
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”無敵の人”
大五郎が
憑依薬を手にしてから2ヵ月が経過したー。
世界はーーー
”崩壊”していたー。
あまりにも”あっけない”崩壊と言えたー。
何も守るべきものがなく、
自暴自棄になって、
自分が死ぬことすら恐れていない男がー
たった一人の男が
憑依薬を手にしてしまっただけでー
この世界は、崩れ去ってしまうのだー。
「--ひゃはははははははは!
ははははっ はははははははははぁぁぁぁっ♡♡」
人の気配のない街中で
ゲラゲラと笑う女子大生ー。
彼女も、大五郎に憑依されてしまっていたー。
だがー
既に人の気配はほとんどないー
”いつ凶悪事件が起こるか分からない”
”誰が凶悪事件を起こすか分からない”
そんな状況下ではー
もはや、外出すら気楽に出来ない世の中になってしまっていたのだー。
大五郎が憑依薬を手にしてー
その行為は次第にエスカレート…
数々の凶悪事件が世界中で続出し、
爆発的な数の犠牲者を出したー。
警察や消防、救急ー
”日常生活の重要な部分”の人間に大五郎は次々と憑依ー
その中で事件を起こすことによりー
警察も消防も救急もー
行政ももはや機能していなかったー
「--ははははははははっ!!!
こんなクソみたいな世界、壊れてしまえぇえええええ!!」
女子大生が目を血走らせながら叫ぶー。
大五郎が憑依するのは”女性”が多かったー。
理由は簡単だったー。
”下心”---
も、あったかもしれないー。
だが、大五郎の理由はそれではないー
”強い恨み”を持っていたのだー。
容姿にも恵まれなかった大五郎は
中学、高校、大学と
女子から執拗な嫌がらせを受けてきたのだー
だからこうして、
女を中心に乗っ取って、破壊行為を繰り返しているー
「---どいつもこいつも、俺を馬鹿にしやがってぇえええええええええ!」
女子大生は大声で叫ぶと、
周囲の建物に次々と火を放っていくー
もはや、消防も壊滅状態ー
笑う女子大生ー。
”無敵の憑依人”となってしまった彼には
”乗っ取った身体”がどうなろうと関係なかったし、
最終的に世界が仮に滅んでしまったとしても
彼にとってはどうでも良いことだったー
彼は、元々憑依薬を受け取る前、
街中で暴れて最後には自ら命を絶つつもりだったのだからー
「---はははははは!燃えろ燃えろ燃えろぉぉぉぉぉ!」
この女子大生が絶対に出したことがないであろう
大声で叫びながら、
燃え盛る商店街を見つめるー
炎に包まれて
自分の身体に火がついても、彼女は全く気にする様子もなく、
身体が死ぬまで、狂ったように笑い続けたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
混乱は拡大するー
人々は疑心暗鬼になり、
パニックを起こしー
社会の基本機能は、停止したー。
「--うあああああああああああ!」
コンビニバイトに憑依して、暴れる大五郎ー
街中の車の運転手に憑依して、爆走する大五郎ー
数少ない、営業を続けているお店や
病院の人間に重点的に憑依しー
凶悪事件を起こし、そして、壊滅させていくー
「--は~~~♡ は~~~~♡
うらうらうらうらうらぁぁぁぁ♡」
住宅街で、暴れまわった女子高生が笑いながら
アソコを触って喘いでいるー
これも大五郎にとっては”復讐”だったー。
女になど、一度も相手にされず、
キモいと言われ続けてきたー。
だが、今は違う。
自らの力で、自分をキモイと言い放っていた女どもを
こうやって支配して、屈服させることができるー
「えへへぇぇ…♡」
だらしない表情を浮かべながら、イヤらしい液体を垂らす女子高生ー
そのままふらふらと立ち上がると、
”いつものように”大五郎は憑依して乗っ取った身体を
”処分”したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
文明は、崩壊したーー
…と、言っても良いー。
”霊体”になった無敵の人を
止めることなど、誰にもできなかったー。
”憑依”などという非現実的なものに
気づく人自体が少ないうえに、
そもそも気づくことができたとしても、
どうすることも出来ないー
”乗っ取られた身体”を仮に始末しても、
死ぬのは”その身体”であり、
大五郎は、”また別の身体”に移動するだけー。
大五郎の霊体に手出しをする方法は、
現在の技術ではなく、
人々は、大五郎という”たった一人の人間”の
暴走により、破綻に追い込まれていたー
「ひゃははははははは!ははははははは!」
ボロボロの服装で、誰もいないコンビニから酒を
奪い取った、アイドルの女が、笑いながら
酒をボトルごと飲みながら、
ふらふらと路上を歩くー。
「--ははははっ!はははははははっ!」
笑いが止まらないー。
この世界に強い恨みを持っていた彼にとってー
この状況は、”最高の状況”だったー。
幸せにぬけぬけと暮らしていたやつらの人生も
木っ端みじんに粉砕してやったー。
「人間なんて、クソくらえだ!」
笑いながら酒を放り投げるアイドルの女ー。
ふらふらと、崩壊した文明の中を歩くー
だがー
まだだー
まだ、生き残りは大勢いるー。
文明が崩壊しても、人間は生き残っているー
「--ひひひひひひひ 全員俺の道連れにしてやるんだ」
アイドルの女は笑いながら自らの首に包丁を突き立てるとー
その現場を目撃していた眼鏡の女に憑依したー
「--くひっ…」
鞄から、身分証明書を見つけ出して名前を確認するー
「--未来ちゃんか」
笑みを浮かべる未来ー
「--ま、この女にもう未来はねぇけどな」
鞄からスマホを取り出して踏みつけるー。
既にネット環境もほぼ機能しなくなっているー
世界は、既に壊滅したと言ってもいいー
生き延びている人間はいるがー
文明は先に死んでしまったのだー
ザッー
未来が背後に気配を感じて振り返ると、
未来は表情を歪めたー。
「--もしも本物だったら…?
お前は、”真の無敵”になるー。
誰の身体をどうしようが、お前の自由ー
誰もお前を止めることはできないー。
”世界が変わる”ぞー?」
憑依薬を大五郎に手渡した怪しげな風貌の男が
そこに、いたー。
未来は声を上げるー
「あんた、まだ生きてたのか
へへ…あんたの言う通り、憑依で好き勝手させてもらったぜ」
未来が悪い笑みを浮かべながら言うー
「そのようだな」
怪しげな風貌の男は頷いたー。
「--へへへ、まさか今更憑依薬を返せ、とか
そういうこと言いだすんじゃねぇだろうな?」
未来の身体で大五郎がそう呟くと、
”返せとは言わん”と、
男は首を振ったー
「--へへへ、それなら話は早いや」
未来に憑依している大五郎は笑みを浮かべるー
”この男”も始末しておくかー、とー。
未来が首を絞めようと、男に近づくと、
男は
「ご苦労だった」
と、呟いたー
「は?」
「---2517年ー
今より、はるか先の未来ー
私は、憑依薬の開発に成功した」
「--何言ってんだ…お前?」
未来が表情を歪めるー。
「だが、憑依薬がお前のような危険人物に手渡ってしまった場合
”どうなるのか”
それをテストする必要があったー。
凶悪犯罪を起こそうとするようなやつに
憑依薬が渡ったらどうなるのか…をな」
男の言葉に、未来は男の首を絞めようとしたー
だがー
男から衝撃波が放たれて、未来の身体が粉々に粉砕されてしまうー
「-ー!」
未来から飛び出た大五郎は、霊体のまま、怪しげな風貌の男に
憑依しようとするー
しかしー
「---貴様のようなものに憑依薬が渡ったら
世界は破滅することがよくわかったー」
周囲の”文明が崩壊した世界”を
見つめる男ー
そして、男は呟いたー
「---実験は終了だー。」
そう呟くと、小さな時計のようなものを宙に放り投げるー
「--な、、なんだそれは!?」
大五郎の霊体が叫ぶー。
「--”次元修復装置ー”
”もしも”を実験するときに使うもので、
実験開始前まで時を戻すことのできる装置だー。
まぁ、貴様が知ったところで何も意味はないがな」
周囲の時間が、あっという間に逆流していくー
そしてーー
「-----!!!!」
大五郎は、気づくとーー
2カ月前に戻っていたー
「---!」
背後を振り返る大五郎ー。
コンビニが普通に営業しているー
街中に普通に人が歩いているー。
「--!」
手には、500円の弁当ー。
「---!!!!」
大五郎はスマホを見つめたー
「なっ…!」
”怪しげな風貌の男”に
出会った日ー
”怪しげな風貌の男”から
憑依薬を貰った日に戻っているー
”翌日ー
暴れてから自ら命を絶とうー
今日は最後の晩餐として高い弁当をー”
そう、思った日にー
「--な、、、な…」
周囲の人々が、普通に歩いているー
大五郎が、憑依薬を使って
憑依しまくって、世界を壊した
絶望の2か月後とは違うー。
普通にーー
「--…な、、…」
大五郎は、周囲を見回すー
怪しげな風貌の男の姿はないー
”まさか、夢ー?”
大五郎は一瞬そう思ったー。
だが、夢であるはずがない。
”2か月分”の長さの夢など見るはずがないしー
確かに、あの感触は本物だったー
「--”次元修復装置ー”
”もしも”を実験するときに使うもので、
実験開始前まで時を戻すことのできる装置だー。
まぁ、貴様が知ったところで何も意味はないがな」
怪しげな風貌の男の言葉を思い出すー
「まさかーーー
俺が憑依薬を受け取る前に戻って…!?」
家に慌てて帰宅した大五郎はスマホでニュースを確認するー
”憑依薬を受け取る前”に
戻っていることを確信した大五郎ー。
”くそっ!”
大五郎は何度も何度も歯ぎしりをしたー。
そしてー
”こうなったら、最初の予定通り、駅前で暴れてやるー”
大五郎は、駅前で暴れて
最後には自分の首を掻き切って死んでやろうー、
と、自暴自棄になりながら、そう決意したー
しかしー
翌日ー
「うあああああああああああああ!」
刃物を手に、暴れようとした大五郎をー
警察官が取り押さえたー。
”憑依薬”を使って殺したはずの刑事・曾我部に
取り押さえられる大五郎ー
”こいつ…見たことあるぞ!?
俺が看護師の身体で始末したーー”
時が戻ったことにより、刑事の曾我部や新崎も
普通に生きていたー。
当然、彼らに”大五郎が憑依薬を手にした場合の未来”の
記憶はないー。
「---現行犯逮捕!」
曾我部が叫ぶー。
大五郎はもがくー
「くそっ!!!くそっ!!!」
「くそおおおおおおおおおおおおお!」
大五郎は、悲鳴のような大声をあげながらー
そのまま警察に連行されたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2517年ー
研究所で、怪しげな風貌の男が呟くー
「実験は完了ー
やはり、危険な思想を持つ人間に憑依薬が渡れば
世界が滅ぶリスクがある。
その点は、なんとか対処しなければ、
実用化は難しいだろう」
その言葉に、
もう一人の男が「そうか。使える人間を制限する必要があるな」と
頷いたー
「--”ちゃんと”後始末はしたか?」
「--もちろん」
男は頷くー。
過去で、”もしも危険人物が憑依薬を手にしたら?”を実験したー。
そのままこの時代に戻ってくれば、当然”未来に影響”が出てしまうー。
そこで、実験終了後に”時間を戻す”ことにより、未来に影響が出ないようにしたー。
「----ついでにー」
「--ん?」
「--いや」
怪しげな風貌の男はそう呟きながら、
自分の席に戻るー
”駅前で大五郎が暴れることを事前に警察に通報してから
この時代に戻って来たー
本当は、あの時代で、あの男が駅前で暴れてー
犠牲者が出るのだがー
つい、放っておけなかったー”
「---歴史には、、そんな影響ないだろ」
怪しげな風貌な男は、一人そう呟くと、
憑依薬の研究のため、ホログラム映像の方を見つめるのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依薬を、何も失うモノがない人が手に入れてしまったら…?を
描いたお話でした~!
ちゃんと、最後は元通り…(?)になりましたネ~!
お読み下さりありがとうございました!!
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