<憑依>歪められたヒロイン①~悪意~

異世界からの侵略者”ゼウス”が、
人間たちを脅かしていた。

そんなゼウスに立ち向かう4人のヒーロー。
しかし、そんなヒーローたちを待ち受けていたのは…?

※リクエスト頂きました
 「特撮系によくあるヒロインが敵になる展開」を
 題材とした小説です☆

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悪の組織・ゼウス。
異世界から出現した謎の存在で、
”全知全能の存在である自分たちが、
 人間を統治するべきだ”という活動方針のもと、
人類に対する侵略行為を続けている。

ゼウスは、神出鬼没。

ある時、どこからもなくあらわれ、
悪事を行うのだー。

「--ひっ…や、やめて!」

ゼウスの大幹部・アポロンが、
とある女性を追跡していた。

追われている女性は、
警察組織のトップの娘ー

この娘を拉致することにより、
警察組織を混乱させようと言う、
アポロンの計画なのだ。

「--大人しく、我々についてこい」
アポロンが言う。

アポロンに追い詰められた女子高生は
ただ泣きじゃくるしかなかった。

その時だった。

「そこまでだ!」
男の叫び声が聞こえ、
アポロンが振り返る。

そこには、4人の、戦士が居た。

赤、緑、青、黄。

4色の戦士たち。
まるで戦隊ヒーローのような
装いの彼らは、
ゼウスと戦う戦士たちだった。

4人は、政府の特殊機関によって
召集され特殊な改造を受けた人物たち。

若い男女4人の戦士―。
彼らは皆、ゼウスによって大切なものを
奪われた人間たちだ。

アポロンが四人を見て、ほほ笑む。

「出たな、いつも我々の邪魔をする憎き奴らめ!」

アポロンが言うと、
「--今日こそ、決着をつけてやる!」と、
赤い服のヒーローが叫んだ。

彼はレッド。
幸信(ゆきのぶ)という青年で、妹をゼウスに奪われた。
今では、大学生をやりながら、ヒーローとして戦いを続けている。
4人のリーダーを担っている

「--これでもくらえ!」
バズーカ方を発射した緑色のヒーロー。
彼はグリーン。
松朗という名の28歳の男性で、チームのクールなまとめ役だ。
戦いでは、援護を行っている。
妻をゼウスに奪われたことで、仕事を辞め、現在は
ゼウスとの戦いに人生を捧げている。

「---お前を倒すのは。俺だぁ!」
ブルー。竜也という名前の18歳の青年。
親友をゼウスに殺されたことから、ヒーローとして
戦いに身を投じることになった。

「みんな!気を付けて!」
そして、イエロー。
唯一の女性で、現役の女子大生。
名前は恵麻。
大事な姉を殺されたことから、
ゼウスとの戦いを続けていく。

4人のヒーローと
ゼウスの大幹部・アポロン。

その激闘は続く。

狙われていた警視総監の娘は、
レッドの誘導で、逃げ出し、
アポロンとヒーローは激戦を続けていた。

4人がかりでやっと互角の戦いができるー。
逆に言えば、1VS1では、ゼッタイにアポロンを
倒すことができないー。

それほどまでに、アポロンの力は強力だった。

「---喰らいなさい!」
イエローが叫んだ。

魔力で具現化した光の弓を構えて、
攻撃するイエロー。

その光を見て、ブルーがつぶやいた。
「美しい…」

ブルーは、イエローに一方的な好意を
抱き、常日頃からアプローチを続けていた。

ブルーが見とれていると、
光の矢が発射され、グリーンとレッドへの
対処で精一杯だったアポロンの鎧を貫いた。

「ぐおおおおおおおっ!」
アポロンが4人の前で初めて苦しそうな表情を浮かべる。

そしてー
レッドが、強力な炎をまとったキックをアポロンに命中させた。

「ぐあああああっ!」
吹き飛ばされ、地面にたたきつけられるアポロン。

「か…が…」

「--勝負あったな」
4人のヒーローが人間の姿に戻り、
倒れたアポロンの前に立つ。

「くくく…これで勝ったつもりか…?」
アポロンが苦しそうに笑う。

「--我々ゼウスは全知全能…
 お前たちは、統治されるべき存在なのだ…」

アポロンの言葉を
ブルー=竜也が遮った

「うるせぇ!俺たちの生き方を」
 お前らなんてに決められてたまるかよ!」

「そうよ!私たちの生き方は、私たちが決める!」
イエロー=恵麻が叫ぶ。

「---くくく…おろ…かな」
アポロンはそう言うと、液体化して、そのまま蒸発した。

ようやく、ゼウスの大幹部を一人、倒すことができた。

「よし」
レッド=幸信が頷く。

レッドも、グリーンも、ブルーも嬉しそうだ。
もちろん、イエローも。

喜びながら4人は帰路につく。

しかし、ふと、イエロー=恵麻が振り返った。

「あれ…これは何だろう…?」
謎の水晶玉のようなものが、
アポロンの消えた場所に残されていた。

禍々しい紫色に光る水晶玉。
恵麻は、不思議とそれに引き付けられた

「------」
吸い込まれそうになりそうな表情で、
その水晶玉をじっと見つめる。

「--お~い!どうかしたか~?」
グリーン=松朗が恵麻を呼ぶと、

「あ、ううん、なんでもない!」と恵麻は、
仲間たちのもとに駈け出した。

紫色の水晶玉を、
大切にしまいこんで…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

恵麻は、疲れた身体をシャワーで癒しながら
ため息をついた。

優しかった姉ー。
大切な姉ー。

そんな姉が、目の前で殺された日のことは
忘れない。

あの日から、恵麻は女としての人生よりも、
戦士として戦う道を選んだ。

髪の毛を乾かして、リビングへと戻る恵麻。

するとー
紫色の水晶玉が謎の輝きを放っていた。

「----綺麗」
思わず、恵麻は呟いた。

ゼウスの大幹部・アポロンが残した謎の
水晶玉。

本来であれば警戒するべきはず存在。

「---」
恵麻はそれに吸い込まれるようにして、
じ~っとそれを見つめた。

その水晶玉は、アポロンの邪気が、
具現化したものだった。

しかし、恵麻は、それに吸い寄せられるように
してそれを見つめている。

そしてーー

「----あぁ…」
恵麻はそれを口に運び込もうとしていた。

ビー玉よりも少し大きいぐらいのサイズ。
確かに、危険ではあるものの、
飲み込むことはできるかもしれない。

恵麻は、嬉しそうにそれを口の中に放り込んだ。

紫色の光が、恵麻全体を包み込む。
苦しそうな表情を浮かべる恵麻。

「あ・・・こ、、こ、、、これは・・・なに…?」
訳が分からず苦しそうにもがく。

そして、紫色の光がより一層強くなると、
恵麻の身体が痙攣するかのように、震えた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

ゼウスの大幹部・アルテミスが、
政府の要人を射殺しようと、
とある場所に赴いていた。

「---待て!」

そこに、4人の戦士が駆け付けた。

レッド・グリーン・ブルー・イエロー。

振り返り、アルテミスは
不気味にほほ笑む。

「あら…お出ましね。」
妖艶な大幹部のアルテミスは、
ヒーローたちの方を見て、
一瞬表情を変えた。

アルテミスの目は、イエローの方を
見ている。

「ーーあらら…闇の虜になったのね…」
アルテミスがつぶやく。

「--」
イエローはアルテミスの方を見つめる。

アルテミスこそが、自分の姉を殺した張本人。
忌々しい弓で、命乞いをする姉を、
容赦なく射抜いた、悪魔。

「--お前も、アポロンのところに送ってやるぜ!」
ブルーが威勢よく、剣を振るう。

アルテミスは、弓と剣が一体化した
ような武器を使い、ブルーの攻撃をはじく。

「ははは、アタシはアポロンのようにはいかなくてよ?」
笑いながらブルーの攻撃をかわしていく。

ゼウスの大幹部は全部で5体。
昨日葬ったアポロン、
そして、2か月前に葬ったへパイストス、
今対峙しているアルテミス―。

いずれも、ヒーロー一人では太刀打ちできないほどの
圧倒的な力を有しており、
ヒーローたちは、限界状態での戦いを強いられている。

先日のアポロンもそうだったが、ヒーロー全員の力を
合せることで、ようやく倒すことができるのだ。

彼らは、2か月前の、大幹部・へパイストスとの戦いで
仲間を一人失っている。
だからこそ、4人はより結束を強めている。
「もう、二度とあんな思いはしない」と。

アルテミスが次第に押されていく。

大幹部5人の中でも、
比較的直接的な戦闘能力は低い
アルテミスは、普段、直接勝負を挑んでくることは
少なかった。

レッドは何故今日、護衛も連れずに、アルテミスが一人で姿を
現したのか、疑問に思いながらも、戦っていた。

「--うりゃあ!」
ブルーが、剣をふるう。

その剣が、アルテミスに直撃した。

「がっ…」
アルテミスが膝をつく。

「--終わりだ!」
レッドが叫び、トドメの攻撃を与えようとした
その時だった。

「---!?」
イエローが、恵麻の姿に戻り、
アルテミスの前に立ったのだ。

「--な、何をしている?」
攻撃の手を止めて、レッドが驚いた表情を浮かべる。

「---ーー」
恵麻は、無言のまま、アルテミスを庇うようにして
目の前に立ちはだかっている。

「え、恵麻!」
ブルーが叫ぶ。

恵麻は、不気味な笑みを浮かべた。

そして、それと同時に紫色のオーラが
恵麻の周りに充満し始めた。

「こ…これは・・・」
グリーンが叫ぶ。

「--あははははははは!」
アルテミスが笑い始めた。

「彼女はねぇ、アポロンの残した邪気に
 憑依されちまったのさ!」

アルテミスが恵麻の頭をなでながら言う。
恵麻は嬉しそうに笑みを浮かべている。

「--邪気が、彼女の正義の心を歪めて、
 腐らせて、邪悪に染めたのさ…。
 純粋な心ほど、闇に染めるのはたやすい」

アルテミスがそう言うと、
恵麻から離れて叫んだ。

「さぁ、生まれ変わった力を見せておやり!」
アルテミスが叫ぶと、
恵麻の姿が、紫色のオーラに包まれて
見えなくなる。

そしてー

露出度の高い、悪の女幹部風の
衣装になった恵麻が姿を現した。

「---え、、恵麻!」
恵麻に好意を抱いていたブルーが
悲痛な叫びをあげる。

レッドとグリーンも動揺している。

「--ふふふ」
恵麻は妖艶にほほ笑んだ。

色っぽい表情で、鞭のような武器を取り出す。

「---おい!」
グリーンが恵麻の方に近づいていく。

「目を覚ませ!恵麻!
 やつらの邪気なんて負けるな!」
グリーンが必死に叫ぶ。

最年長なことから、抑え役のグリーンは
どんな時でも、冷静で、レッドからも
信頼されていた。

「恵麻!心を強く持て!」
グリーンが恵麻をつかみ、言う。

その強いまなざしを見て、
恵麻は微笑んだ。

「--ふふふ…♡」

笑う恵麻。

しかしー
その笑みは、いつもの優しい微笑みなどではなかったー。

鞭を振るう音が響き渡る。

そしてーーー

グリーンが、その場に倒れた。

「---私はゼウス様に仕える女よ!
 ふふふ…私は、生まれ変わったの!」

倒れたグリーンは、松朗の姿に戻ってしまう。

恵麻は、そんな松朗を踏みつけ、
トドメの一撃を加えた。

「---グ、グリーン!」
レッドが叫ぶ。

恵麻は笑いながら二人を見た。

「さぁ、次はどっちが死にたいのかしら…?
 うふふふふふ♡」

色っぽく笑う恵麻の前に、
残された二人のヒーローは戸惑うしかなかった…

②へ続く

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コメント

特撮風のヒロインが敵になるお話し、という
リクエストをもとにした小説です!

ついに悪堕ちしてしまったヒロイン。
その運命は…?

コメント

  1. より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    純粋だからこそ悪にも確かに染まりやすいですな。
    奇遇にもだいぶ前に正にそんなアニメ見ましたわ。
    儚い願いかもしれんが、どうかバッドエンドでありませんように。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 純粋だからこそ悪にも確かに染まりやすいですな。
    > 奇遇にもだいぶ前に正にそんなアニメ見ましたわ。
    > 儚い願いかもしれんが、どうかバッドエンドでありませんように。

    コメントありがとうございます~
    結末は…お楽しみデス!