観光バスは、
地獄に向かって運行を続けていく。
「この先の道をまっすぐ進め!」と叫ぶバスガイド。
果たして、乗客たちの運命は?
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「俺はさぁ…」
バスガイドの阿由菜が、自分の胸を触りながら笑う。
「--女に裏切られて、
会社をリストラされて、
家族にも見捨てられて、
友達をも失った」
阿由菜は悔しそうな表情で呟く。
本当に悔しいのは、憑依されて
好き放題されている阿由菜のほうだと言うのに。
「--だからさぁ、むかつくんだよ!」
阿由菜が乗客の方を睨みつける
「幸せそうな、お前らがなぁ!」
乗客たちは泣いているものや、
パニックに陥っている者、
なんとか隙をついて、チャンスをうかがっているもの、
色々な反応を見せている。
「--俺は死を選ぶことにしたよ!
でもよ、どうせ死ぬなら、
何か最後にしでかしたい!
俺はそう思った!
俺をこんな惨めにした世間への復讐さ!」
阿由菜が歪んだ表情で笑う。
「--あぁぁぁああ…むかつくぜ!」
阿由菜は髪の毛をかきむしり、
自分の髪をボサボサにすると、
胸を触り始めた。
「---可愛い声しちゃってよ!
俺を裏切った女もそうだった!
どいつもこいつも…!」
男は、憑依している阿由菜に対しても
憎しみをぶつけた。
「おら!おら!おらおらおら!」
胸を乱暴に揉みまくる阿由菜。
「おらおらぁああ♡ あぁああっ♡ あぁあああああん♡」
阿由菜の喘ぐ声がバスの中に響き渡る。
ただ、唖然としている乗客たち。
「--あぁああああ♡
どうだぁ♡ 見なさいよ♡
この女は今、俺の所有物だ♡
はぁああ♡ 俺の、、俺の興奮が
この女を支配してる♡」
阿由菜が顔を真っ赤にしながら言う。
制服のスカートを少し下すと、
そこは既にぐしょぐしょに濡れていた。
容赦なく、阿由菜は、そこに手を突っ込み
快感に身をゆだねる。
「んはっ♡ はぁあああ♡ すごい♡
はぁあああ♡ おれが、、♡ おれが♡
この女にこんなことをさせている♡」
勤務中のバスガイドにとんでもないことをさせている。
その背徳感が、男をさらに興奮させた
「んへへへへへへ♡
あはふふふふふふふふっ♡」
激しい勢いで、阿由菜が液体をまき散らしている。
周囲は唖然として言葉を失っている。
なおも阿由菜は自分の身体を弄ぼうと、
激しく身体を動かしている。
「いやああああああああっ!」
さっきまで男に憑依されていた女子高生が
目を覚まして悲鳴をあげた。
着ていた服は、さっき憑依されている際に
自分でバスの外に放り投げてしまった。
泣きながら恥ずかしそうに身を隠す女子高生。
親と思われる人物が、抱き寄せて、
頭をなでる。
「----あはははっ!
泣く必要なんかないじゃない!
も~すぐ、地獄に行くんだからっ♡」
阿由菜がだらしない格好のまま立ち上がる。
スカートをその場に落として、
異様な姿のまま、他の乗客を見つめる阿由菜。
その時だった。
阿由菜の立っている位置の近くにいた、
男性の若者が突然、阿由菜を殴りつけた。
「ぐふっ!」
突然のことに阿由菜がよろめく。
「--黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって!」
男は、阿由菜をそのまま押し倒し、
無理やり押さえつけた。
男は、新婚のカップルで、観光バスを利用して
旅行に向かう最中だった。
「--ーお前が何者かは知らないがな、
みんな迷惑してるんだよ!」
若い男は叫ぶ。
そして、「運転手さん、警察に連絡を!」と叫び、
自分のスマホを手渡した。
「わ、分かりました」
運転手の佐久原も頷き、
警察に連絡しようとする。
しかしー
突然、背後から男は、ものすごい衝撃を受けて
吹き飛ばされた。
「--おい、調子のんじゃねぇぞ!」
背後から男を蹴り飛ばしたのは、
男の、妻ー
新婚相手の妻だった。
「--み、美雪、な、何を…」
若い男が驚く。
バスガイドの阿由菜を離さないようにしながら、
美雪を見る男。
男と結婚したばかりの美雪は笑った。
「さっき、見てなかったのかよ。
俺は誰にでも憑依できるんだぜ」
美雪が挑発的に笑う。
「--ま、まさか…」
若い男は、唖然として手を止める。
「--おい、さっきのパンチ、痛かったじゃねぇか」
美雪が夫の胸倉をつかみながら睨む。
まだあどけなさの残る美雪の恐ろしい形相に、
男はたじろいでしまう。
「ふざけんじゃねぇよ!」
美雪が大声で叫び、夫を殴りつけた。
1発、2発、3発。
何度も何度も、夫を殴りつける。
今まで暴力をふるったこともないであろう美雪が、
手を血まみれにしながら、夫を殴り続けている。
「------!」
運転手の佐久原は警察に通報することができず、
そのまま手を止めてしまう。
「はぁ…はぁ…」
夫を殴り終えた美雪は
自分の手についた血をペロリと舐めて
微笑み、その場に倒れた。
少しして、再びバスガイドの阿由菜が起き上がる。
「おい、運転手!」
阿由菜が佐久原の方を見た。
「この先の道をまっすぐ進め!」
阿由菜が叫ぶ。
「--し、、しかし」
佐久原はうろたえた。
この先の道は、曲り道だ。
そこをまっすぐ走れば、
バスは高速道路から転落する。
「もう終わりだ!みんなで地獄に行こうぜ!
あははははははは!」
阿由菜が両手を広げて、
下半身から液体を流しながら
笑っている。
「ククク…ははははははははは!」
大笑いする阿由菜。
バスの中は悲鳴に包まれる。
しかしー
佐久原は阿由菜の指示に従わず、バスを止めた。
「な、何停車してんだテメェ!」
阿由菜が大声で怒鳴った。
「この場で全員に憑依して地獄送りに…」
「----!?」
運転手の佐久原が阿由菜を抱きしめた。
「な…な、、、何だ・・・?」
阿由菜が訳も分からずに声を絞り出す。
憑依している男にとっても、流石に
突然抱き着かれるとは思ってもみなかったのだろう。
「---辛かったな」
佐久原が、まるで子供をあやすようにして言った。
「---な、、、」
阿由菜は只々戸惑っている。
「--君の辛さはよく分かった。
誰も手を差し伸べてくれないつらさ…」
佐久原の言葉に、阿由菜は「何言ってやがる…!」と叫ぶ。
だがー
「--私もそうだった。
婚約した彼女に裏切られて、
私が一方的に婚約を破棄したかのように
言いふらされて、それが原因で実家から
絶縁されて、会社もリストラされた」
佐久原が阿由菜のことを暖かく抱きしめながら言う。
「君と同じだ」
その言葉に、阿由菜は
「お、、おっさん…」とつぶやいた。
「ま、わたしには君と違って
元々友達なんていなかったけどな」
冗談っぽく笑う佐久原。
「--わたしも君と同じように
この世の中に絶望して、死ぬことを考えた。
誰かを道連れにしてやろうと思った。
でも、死ななかった
なぜだと思う?」
佐久原の言葉に、阿由菜は呟く
「ど…どうして…?」
その言葉に、佐久原は笑う
「どうせ死ぬなら…
やりたいことをやりまくってから死のうと、
そう思ったんだ。
君みたいに、犯罪を起こすことも、
私も考えた。
けど、それをしたらそれで終わりだ。
だから私は、犯罪に手を染めず、
自分の人生を楽しむことにした。
貯金を使って美味しいものを食べまくったり、
好きなモノを買いまくったり、
働きもせずに、やりたい放題したよ。
ま、貯金なんてほとんどなかったから
1週間で有り金使い果たしたけどさ」
運転手の佐久原が過去を語る。
「-----」
阿由菜は動きを止めてその話を聞いている。
「--でもな、その1週間で私は思った。
例え一人になっても、まだ楽しいことはある、と。
飯がうまい。遊べば楽しい。
だから、私は死ぬのをやめたんだ。
死んだら、そこで終わりだー」
佐久原の言葉に
阿由菜は、下を向いた
「きみも…どうだ?
人生、終わらせるにはまだ早いんじゃないか?
ここでバスを落としたら私も君も終わりだ。
けど、どうだ?
もう1回、人生を考えてみないか。
もし辛かったら私のところを訪れなさい。
私は東部バスの第2営業所で勤務してるから。
なぁに、私は今も独身だ。友達もいない。
もしも良ければ、君と一緒に暮らしてもいい」
佐久原の優しさに、
阿由菜は涙をこぼした。
「おっさん…」
そしてー
「---すまなかった…」
阿由菜はその場に座り込んだ。
「--みなさん、
どうでしょう?
ちょっと過激なバスガイドさんのイベントだったということで、
ここは丸く収めませんか?」
佐久原が乗客たちに言う。
もちろん、不満を口にするものもいたが、
相手が憑依の力を持っているせいか、
早く丸く収めたい乗客たちは、
佐久原の提案に拍手した。
「--辛かったらいつでも尋ねてきなさい。
だから、その子を解放してやってくれ」
佐久原が言うと、
阿由菜は無言でうなずいて、
うっ…!と言うと、その場に倒れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
男は自分の身体に戻っていた。
サービスエリアの自分の車の中で、
男は涙していた。
そしてー
「うまいものでも…食うか」
サービスエリアのラーメンでも食べようか、と
男は車から降りたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1か月後。
男は有り金を使い果たした。
辛い…
やはり、人生はつらい。
だが、あの運転手が、手を差し伸べてくれた。
男は、東部バスの第2営業所に来ていた。
「もし辛かったら私のところを訪れなさい。
私は東部バスの第2営業所で勤務してるから。
なぁに、私は今も独身だ。友達もいない。
もしも良ければ、君と一緒に暮らしてもいい」
あの、手を差し伸べてくれた運転手に
合う為にー。
第2営業所の前で、どうしようか考えていると、
あの時の運転手、佐久原とその同僚が、
第2営業所前の、自販機の前で
談笑し始めた。
「---でも、佐久原、お前、阿由菜ちゃんに抱き着いたんだろ?」
同僚が笑いながら言う。
「はは、チャンスだったからね。
憑依されてたってことは、何しても、阿由菜ちゃんは
覚えてないってことだ。
だから、抱くなら今しかないって」
佐久原が笑いながら言う。
「ったく、このエロオヤジが!」
同僚の運転手が笑う。
「--にしても、あの時の男、どうしてるかな?
私が適当に作った作り話で感動して、
憑依もやめて改心してくれたみたいだけどさ。
チョロイよな。
大体ああいうやつってのは中身が空っぽだから
ちょっと親身になってる”ふり”してやれば、
すぐに心を開く」
佐久原がタバコを吸いながら笑う。
「--はは、佐久原さんも役者だねぇ」
同僚が笑う。
「--ま、私は阿由菜ちゃんにも抱き着けたし、
自分も助かったしで言うことなしだよ!
ははははははっ!」
佐久原が笑った。
その話を聞いていた男は、手を震わせた。
やっぱりこの世は終わっている。
何の、救いもないー
男は、まだ残っていた憑依薬を握りしめて、
怒りに手を震わせた。
唇を血が出るほどの力で噛みしめて、
男は、憎悪の目で、運転手の佐久原を
見つめるのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
一旦は場を収めた運転手の佐久原ですが、
このあとは大変そうですね…。
お読み下さり、ありがとうございました!!
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