悪の組織・ゼウスと戦うヒーローたちの
紅一点であるイエローこと恵麻が憑依されて
悪の女幹部の手先になってしまった。
果たして、恵麻の心を呼び覚ますことはできるのか?
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倒れてピクリとも動かないグリーン=松朗。
もはや、死んでいるのは明らかだった。
レッドにとっても、ブルーにとっても、
衝撃的だった。
しかも、グリーンを殺したのは、
他ならぬ、仲間のイエローこと、恵麻なのだから。
「--どうしたの?何驚いてるの?
あははははははっ!」
恵麻が笑うー。
優しい恵麻の面影は既になく、
妖艶な悪女の姿がそこにあった。
普段の恵麻なら恥ずかしがりそうな
格好をしながら、不気味にほほ笑む。
「--え…恵麻ちゃん…!」
ブルーが悲痛な声を上げる。
ブルー=竜也は、恵麻のことが
好きだった。
いつも、優しくて、前向きな恵麻がー。
親友を奪われて、自暴自棄になっていた
ブルーを諭し、導いてくれたのが
イエロー=恵麻だった。
「--恵麻ちゃん!どうして!どうして!」
ブルーが泣き叫ぶようにして言う。
「--ふふ♡」
恵麻は答えない
邪気に憑依されて、その思考は、悪に染まってしまった。
「--ザンネンだったわね。
この小娘は、もう、アタシたちの仲間よ」
ゼウスの女大幹部・アルテミスが不敵にほほ笑む。
「-ーーわたし、ゼウス様に全てを捧げます」
恵麻が嬉しそうにつぶやいた。
「--ふふ、可愛いじゃない」
アルテミスはそう言うと、妖艶な唇を、
恵麻に合せてキスをしたー。
「貴様ぁ!恵麻ちゃんに触れるなぁ!」
ブルーが叫ぶ。
「落ち着け!」
レッド=幸信がブルーを制止する。
「落ちついてなんか、いられるか!」
ブルーが叫ぶ。
分かっているー
そんなことは、分かっているー。
だがー。
レッドは思う。
イエローの心は完全に悪に奪われている。
演技とは思えないし、
躊躇なくグリーンを殺したところを見ると、
説得も難しいかもしれない。
最悪の場合、
自分たちの手で、イエロー=恵麻を葬らなくては
いけないかもしれない。
「--どうしたの?かつての仲間として
わたしがあんたたちを葬ってあげるわ!」
妖艶な姿の恵麻が、
自信に満ち溢れた様子で叫んだ。
「--ふ、、ふざけるな!恵麻!
今、助けてやる!」
ブルーが剣を取り出して、
恵麻の方に向かう。
恵麻は、それを見て、
微笑みながらいつもイエローが使っていた
武器である”弓”を取り出した。
しかし、その弓、
”光の弓”は、
漆黒に染まっていたー。
今の恵麻にふさわしい
”闇の弓”にー。
「--うあああああああ!」
ブルーが恵麻の方に向かっていき、
ブルーと恵麻の戦いが始まった。
「---あなたは?」
幹部のアルテミスがレッドを見て笑う。
「--俺は、お前たちの思うつぼにはならない」
レッドは、あくまでも冷静だった。
いやー
”平静を装っていた”
ここで、取り乱しては敵の思うツボだ。
「--お前の相手は俺がする」
大幹部の相手を一人ですることは
困難だ。
だが、2対2の入り乱れた戦闘になれば、
誰かが犠牲になる可能性もある。
ここは、ブルーを信じてー、
ブルーがイエローの心を呼び覚ますことを信じてー
自分がやるしかない
「--うふふ・・・その勇気だけは認めてあげる…」
アルテミスがほほ笑みながら武器を構える。
レッドは覚悟を決めて、アルテミスとの戦いに
挑むのだった。
「--目を覚ませ!恵麻ちゃん!」
ブルー=竜也が必死の叫びを恵麻にぶつける。
しかし、恵麻は攻撃の手を緩めない。
「正気?わたしは正気よ!
ゼウス様に身も心も捧げる決意をしたの!」
恵麻が不気味に笑う。
「--忘れたのか!?
お姉さんのことを!
お姉さんを奪ったのは、ゼウスだろうが!」
ブルーが剣を振るいながら叫ぶ。
それを、闇の瘴気で防ぎながら、
恵麻は笑う。
「-ーお姉ちゃん、ふふふふ…
ま、仕方ないんじゃない?」
まるで他人のように言う恵麻。
「ふざけるな!俺の知る恵麻ちゃんは、
そんなこと言わない!
目を覚ませ!」
ブルーはなおも叫ぶ。
恵麻はバカにしたようにして笑いながら言う。
「--だ・か・らぁ、これがわたしの意思なの!
わたしは自分の意思で、ゼウス様に従う道を
選んだの!」
恵麻が、大胆に露出した胸のあたりを
触りながら微笑んでいる。
「---くそっ…」
ブルーは悔しそうにつぶやく。
しかしー
「--俺さ…恵麻ちゃんのこと、ずっとずっと
好きだった」
ブルーが、胸の奥にしまっていた
感情を吐き出した。
「--いつも優しくて、まだ俺とほとんど年も変わらないのに、
いつも一生懸命で、
俺にとって、憧れだったし、お姉さんみたいな存在だった」
そんなブルーの言葉を、
恵麻は鼻で笑う。
「--なのにさ…なのに、なんで!
なんでそうなっちゃうんだよ!」
ブルーが叫ぶ。
「--頼むから冗談だって言ってくれよ!
そんな恵麻ちゃんの姿、見たくねぇよ!」
ブルーが竜也の姿に戻り、
泣き叫んだ。
その目には涙が浮かんでいる。
「-----!」
あざ笑うようにしていた恵麻に
一瞬、迷いの表情が浮かんだ。
「---り…竜也…くん…」
恵麻が弱弱しくつぶやく。
「--え、恵麻ちゃん?」
泣いていた竜也が、希望を見出して
恵麻の方を見つめた。
しかしー
「---うああああああああああああああ!」
恵麻の身体から、紫色のオーラが溢れだした。
「え、恵麻ちゃん!」
竜也が叫ぶが、
恵麻は、笑みを浮かべた。
「あぁぁあ…気持ちイイ…ゾクゾクする…
あぁぁあああ、もっと、もっと、私を闇に染めて…
あふふふふ・・・えへへへへへへへぇ」
紫色の瘴気に包まれたままの恵麻は、
竜也を見て微笑んだ。
「くっそぉ!」
竜也と恵麻が再び戦いを始める。
戦いの中で、心に呼びかけるしか、ない。
「---なぁ、目を覚ましてくれ!なぁってば!」
竜也が人間の姿のまま、剣を振るう。
恵麻は妖艶な笑みを浮かべたまま
その攻撃をかわす。
そしてー
恵麻は、竜也に突然抱き着いた。
「むぐっ…あ」
竜也が声をあげる。
恵麻の胸があたる。
露出している恵麻の太ももがあたる。
「どう…ドキドキするでしょ?」
恵麻がイヤらしく微笑んだ。
「や、、、やめろぉ…!」
竜也は拒絶の言葉を口にしたが、
恵麻の指摘する通り…
ドキドキしてしまっていた・
「お…俺は…俺はぁ…!
優しい恵麻ちゃんが…むぐっ…!」
恵麻が、赤く染まった唇で、竜也にキスをした
「ふあぁ…」
竜也の股間が興奮で反応してしまう。
「ふふふ…♡ りゅうやくん…♡」
色っぽい声を出す恵麻。
「あ・・・あ・・・♡」
竜也はあまりの幸せにその場で放心状態に
なってしまった。
どんな状況とはいえ、恵麻は恵麻。
その恵麻に抱き着かれて、キスをされてしまった。
竜也は、あまりの衝撃に言葉を失って
その場で、顔を赤らめて立ち尽くした。
「---ファイアーキック!」
レッドが、ゼウスの大幹部・アルテミスを吹き飛ばす。
「くっ・・・おのれ…!」
アルテミスが険しい表情で言う。
そして、レッドを見る。
今までのレッドとは違う。
こいつら4人を防ぐことなんて
簡単なはずだった。
レッド一人如きであれば、それこそ片手でも…
なのに、何故?
「--仲間たちを弄びやがって」
レッドの背中から炎のようなオーラが放出された。
「---俺はお前たちを許さない!絶対に!」
ーー人間の可能性。
アルテミスにとっての誤算。
レッドは、グリーンを奪われ、イエローを奪われ、
その怒りに燃えて、自分の力以上の力を
出していたのだ。
「-トドメだ!」
レッドが炎を拳に込める。
「おのれ…アタシが負けるなんて…!」
アルテミスが弓と剣が混じったような武器を
構えて応戦しようとする。
ーーーーー!?
闇が、レッドを貫いた。
「がっ…!」
レッドが驚いた表情で後ろを見る。
背後には―
恵麻が居た。
「---リーダー…!おつかれさまで~す♡」
ふざけた調子で言うと、
さらに闇の弓を放ち、2発、3発とレッドの身体を
貫いた。
「うううぁ……え、、、恵麻…!」
レッドは、ブルーの方を見る。
恵麻はブルーが抑えてくれていたはず。
だからこそ、ブルーに背中を預けて…
しかし、ブルーはだらしない笑みを浮かべて
メロメロになっていた。
「くっ・・・くそ…」
レッドはその場に膝をついた。
あと少しで、、
あと少しで、アルテミスを仕留めることができたのに。
「---さよなら…!うふふっ♡」
恵麻は躊躇なく、トドメの攻撃を加えて、
レッドはその場に倒れて動かなくなった。
「--あらあら、かつての仲間を容赦なく、
手にかけるなんて、お前はとんだ悪女だわ」
アルテミスが言うと、
恵麻はうふふ、とほほ笑んだ。
「---あ・・・あ」
ようやくブルー=竜也が放心状態から戻る。
メロメロになっている間にレッドまで
殺されてしまった。
「--どうしようもないわね。」
アルテミスが笑う。
「え…恵麻ちゃん!」
竜也が叫ぶ。
「--あなたのせいで、レッドは死んだのよ。
ふふふ…
わたし、竜也君みたいな男、ほんと、嫌い!」
恵麻が吐き捨てるように言う。
「--殺す価値もないわね」
アルテミスも失笑するー
そして、恵麻とアルテミスは微笑みあって、
そのまま姿を消した。
「うっ…うあああああああああああ!」
ブルーはその場で頭を抱えて絶叫した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一人―
一人だけ、生き残ってしまった。
そう、一人だけ。
もう、自分に希望も何もない。
戦士ですら、ない。
竜也は、バーで、
飲んだくれていた。
バーのマスターは、レッドたちの顔なじみだった。
竜也の様子を見て、マスターは、レッドたちが死んだことを悟る。
「--オヤジ!もう一杯くれよ!」
ブルーが叫ぶ。
渋い顔をして、バーのマスターは言った。
「竜也君、もうそろそろ終わりにしといたらどうだい?」
マスターの優しく、諭す様な言葉。
「うるせぇ!俺は、俺は!
もう、飲んでねぇとやってられねぇんだよ!」
竜也が叫ぶ。
「---終わりにするのはーーー」
突然、マスターの腕が異形のカタチに変形して、
竜也の頭を掴み、そのまま握りつぶした。
「---きみの人生だよ」
マスターは不気味に微笑んだ。
ーーゼウスの大幹部・ハデス。
人間界に潜伏し、レッドたちに接近、
情報をゼウス本部に流していた男ー。
「--君みたいのは、また立ち直るかもしれない。
だから、早めに消しておくに限るー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー新たな大幹部の誕生だ!」
ゼウス本部では、
新たな大幹部の誕生式が行われていた。
ーーアテナ。
「---ふふふふふ・・・人間どもに
地獄を見せてあげるわ」
妖艶な格好をした女性…
彼女はーー”恵麻”であった女性ー。
その名を捨て、彼女は、アテナとして生まれ変わった。
ヒーローたちに倒された
大幹部アポロンとへパイストスの穴埋めをする存在。
「--ふふふ…かつての仲間を支配することに
迷いはないのかしら?」
アルテミスが問うと、恵麻=アテナは微笑んだ。
「--ないわ」
と。
その様子を見ていた
他の大幹部二人も、不気味にほほ笑んだ。
「---邪魔者は排除したーーー」
奥に座っていた威厳に満ち溢れた人物が立ち上がるー。
異次元からの侵略者・ゼウス。
ゼウスに向かって
大幹部のアルテミス・アテナ・アレス・ハデスが
礼をする。
「--人間どもを、我らが統治下にー」
ゼウスが言うと、
かつて恵麻だった、アテナも嬉しそうにそう呟いたー
彼女の歪んだ心はー
もう、2度ともとには戻らないー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ヒロインは歪んでしまいました!
普通の特撮なら、無事に元に戻るんですけどね…(汗
ゼウスとの戦いの行方はどうなってしまうのでしょうか!
お読み下さりありがとうございました。
コメント
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あれ?ブルーも倒され戦隊は全滅したはずだが、何か思わせぶりの作者コメント。
もしかして続きあるのか?まあもしあったら見ます。
正直この展開からだとイエローが正気に戻っても逆転の一手は見えないんですよね。
俺ならこれでも覆せるけど、流石に参戦は出来ないし笑
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台風の片付けとかでコメント書く時間がありませんでした…。バットエンドですね(笑)正義のヒロインが悪の幹部になっちゃうという。最高ですね。リクエストで書いてくれてありがとうございました。また作品期待してます
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> 台風の片付けとかでコメント書く時間がありませんでした…。バットエンドですね(笑)正義のヒロインが悪の幹部になっちゃうという。最高ですね。リクエストで書いてくれてありがとうございました。また作品期待してます
ありがとうございます~!
続きもいつかかけるかもしれません!
楽しみにしていてください!
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>無様
ありがとうございます!
ゆるキャラの逆転の一手は果たして…?
歪められたヒロインは、とある逆転の一手が
残されているのですが、
それを書くかどうかは、不明です。
敵の大幹部も強そうですし、どうにもならなそうですが…笑