<憑依>歪められたヒロイン②~叫び~(完)

悪の組織・ゼウスと戦うヒーローたちの
紅一点であるイエローこと恵麻が憑依されて
悪の女幹部の手先になってしまった。

果たして、恵麻の心を呼び覚ますことはできるのか?

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倒れてピクリとも動かないグリーン=松朗。

もはや、死んでいるのは明らかだった。

レッドにとっても、ブルーにとっても、
衝撃的だった。

しかも、グリーンを殺したのは、
他ならぬ、仲間のイエローこと、恵麻なのだから。

「--どうしたの?何驚いてるの?
 あははははははっ!」

恵麻が笑うー。
優しい恵麻の面影は既になく、
妖艶な悪女の姿がそこにあった。

普段の恵麻なら恥ずかしがりそうな
格好をしながら、不気味にほほ笑む。

「--え…恵麻ちゃん…!」
ブルーが悲痛な声を上げる。

ブルー=竜也は、恵麻のことが
好きだった。
いつも、優しくて、前向きな恵麻がー。

親友を奪われて、自暴自棄になっていた
ブルーを諭し、導いてくれたのが
イエロー=恵麻だった。

「--恵麻ちゃん!どうして!どうして!」
ブルーが泣き叫ぶようにして言う。

「--ふふ♡」
恵麻は答えない
邪気に憑依されて、その思考は、悪に染まってしまった。

「--ザンネンだったわね。
 この小娘は、もう、アタシたちの仲間よ」
ゼウスの女大幹部・アルテミスが不敵にほほ笑む。

「-ーーわたし、ゼウス様に全てを捧げます」
恵麻が嬉しそうにつぶやいた。

「--ふふ、可愛いじゃない」
アルテミスはそう言うと、妖艶な唇を、
恵麻に合せてキスをしたー。

「貴様ぁ!恵麻ちゃんに触れるなぁ!」
ブルーが叫ぶ。

「落ち着け!」
レッド=幸信がブルーを制止する。

「落ちついてなんか、いられるか!」
ブルーが叫ぶ。

分かっているー
そんなことは、分かっているー。

だがー。

レッドは思う。
イエローの心は完全に悪に奪われている。

演技とは思えないし、
躊躇なくグリーンを殺したところを見ると、
説得も難しいかもしれない。

最悪の場合、
自分たちの手で、イエロー=恵麻を葬らなくては
いけないかもしれない。

「--どうしたの?かつての仲間として
 わたしがあんたたちを葬ってあげるわ!」

妖艶な姿の恵麻が、
自信に満ち溢れた様子で叫んだ。

「--ふ、、ふざけるな!恵麻!
 今、助けてやる!」

 ブルーが剣を取り出して、
恵麻の方に向かう。

恵麻は、それを見て、
微笑みながらいつもイエローが使っていた
武器である”弓”を取り出した。

しかし、その弓、
”光の弓”は、
漆黒に染まっていたー。

今の恵麻にふさわしい
”闇の弓”にー。

「--うあああああああ!」
ブルーが恵麻の方に向かっていき、
ブルーと恵麻の戦いが始まった。

「---あなたは?」
幹部のアルテミスがレッドを見て笑う。

「--俺は、お前たちの思うつぼにはならない」
レッドは、あくまでも冷静だった。

いやー
”平静を装っていた”

ここで、取り乱しては敵の思うツボだ。

「--お前の相手は俺がする」
大幹部の相手を一人ですることは
困難だ。

だが、2対2の入り乱れた戦闘になれば、
誰かが犠牲になる可能性もある。

ここは、ブルーを信じてー、
ブルーがイエローの心を呼び覚ますことを信じてー

自分がやるしかない

「--うふふ・・・その勇気だけは認めてあげる…」
アルテミスがほほ笑みながら武器を構える。

レッドは覚悟を決めて、アルテミスとの戦いに
挑むのだった。

「--目を覚ませ!恵麻ちゃん!」
ブルー=竜也が必死の叫びを恵麻にぶつける。

しかし、恵麻は攻撃の手を緩めない。

「正気?わたしは正気よ!
 ゼウス様に身も心も捧げる決意をしたの!」

恵麻が不気味に笑う。

「--忘れたのか!?
 お姉さんのことを!
 お姉さんを奪ったのは、ゼウスだろうが!」

ブルーが剣を振るいながら叫ぶ。
それを、闇の瘴気で防ぎながら、
恵麻は笑う。

「-ーお姉ちゃん、ふふふふ…
 ま、仕方ないんじゃない?」

まるで他人のように言う恵麻。

「ふざけるな!俺の知る恵麻ちゃんは、
 そんなこと言わない!
 目を覚ませ!」

ブルーはなおも叫ぶ。
恵麻はバカにしたようにして笑いながら言う。

「--だ・か・らぁ、これがわたしの意思なの!
 わたしは自分の意思で、ゼウス様に従う道を
 選んだの!」

恵麻が、大胆に露出した胸のあたりを
触りながら微笑んでいる。

「---くそっ…」
ブルーは悔しそうにつぶやく。

しかしー

「--俺さ…恵麻ちゃんのこと、ずっとずっと
 好きだった」

ブルーが、胸の奥にしまっていた
感情を吐き出した。

「--いつも優しくて、まだ俺とほとんど年も変わらないのに、
 いつも一生懸命で、
 俺にとって、憧れだったし、お姉さんみたいな存在だった」

そんなブルーの言葉を、
恵麻は鼻で笑う。

「--なのにさ…なのに、なんで!
 なんでそうなっちゃうんだよ!」
ブルーが叫ぶ。

「--頼むから冗談だって言ってくれよ!
 そんな恵麻ちゃんの姿、見たくねぇよ!」

ブルーが竜也の姿に戻り、
泣き叫んだ。

その目には涙が浮かんでいる。

「-----!」
あざ笑うようにしていた恵麻に
一瞬、迷いの表情が浮かんだ。

「---り…竜也…くん…」
恵麻が弱弱しくつぶやく。

「--え、恵麻ちゃん?」
泣いていた竜也が、希望を見出して
恵麻の方を見つめた。

しかしー

「---うああああああああああああああ!」
恵麻の身体から、紫色のオーラが溢れだした。

「え、恵麻ちゃん!」
竜也が叫ぶが、
恵麻は、笑みを浮かべた。

「あぁぁあ…気持ちイイ…ゾクゾクする…
 あぁぁあああ、もっと、もっと、私を闇に染めて…
 あふふふふ・・・えへへへへへへへぇ」

紫色の瘴気に包まれたままの恵麻は、
竜也を見て微笑んだ。

「くっそぉ!」
竜也と恵麻が再び戦いを始める。

戦いの中で、心に呼びかけるしか、ない。

「---なぁ、目を覚ましてくれ!なぁってば!」
竜也が人間の姿のまま、剣を振るう。

恵麻は妖艶な笑みを浮かべたまま
その攻撃をかわす。

そしてー
恵麻は、竜也に突然抱き着いた。

「むぐっ…あ」
竜也が声をあげる。

恵麻の胸があたる。
露出している恵麻の太ももがあたる。

「どう…ドキドキするでしょ?」
恵麻がイヤらしく微笑んだ。

「や、、、やめろぉ…!」
竜也は拒絶の言葉を口にしたが、
恵麻の指摘する通り…
ドキドキしてしまっていた・

「お…俺は…俺はぁ…!
 優しい恵麻ちゃんが…むぐっ…!」

恵麻が、赤く染まった唇で、竜也にキスをした

「ふあぁ…」
竜也の股間が興奮で反応してしまう。

「ふふふ…♡ りゅうやくん…♡」
色っぽい声を出す恵麻。

「あ・・・あ・・・♡」
竜也はあまりの幸せにその場で放心状態に
なってしまった。

どんな状況とはいえ、恵麻は恵麻。
その恵麻に抱き着かれて、キスをされてしまった。

竜也は、あまりの衝撃に言葉を失って
その場で、顔を赤らめて立ち尽くした。

「---ファイアーキック!」
レッドが、ゼウスの大幹部・アルテミスを吹き飛ばす。

「くっ・・・おのれ…!」
アルテミスが険しい表情で言う。

そして、レッドを見る。

今までのレッドとは違う。
こいつら4人を防ぐことなんて
簡単なはずだった。

レッド一人如きであれば、それこそ片手でも…

なのに、何故?

「--仲間たちを弄びやがって」
レッドの背中から炎のようなオーラが放出された。

「---俺はお前たちを許さない!絶対に!」

ーー人間の可能性。
アルテミスにとっての誤算。
レッドは、グリーンを奪われ、イエローを奪われ、
その怒りに燃えて、自分の力以上の力を
出していたのだ。

「-トドメだ!」
レッドが炎を拳に込める。

「おのれ…アタシが負けるなんて…!」
アルテミスが弓と剣が混じったような武器を
構えて応戦しようとする。

ーーーーー!?

闇が、レッドを貫いた。

「がっ…!」
レッドが驚いた表情で後ろを見る。

背後には―

恵麻が居た。

「---リーダー…!おつかれさまで~す♡」
ふざけた調子で言うと、
さらに闇の弓を放ち、2発、3発とレッドの身体を
貫いた。

「うううぁ……え、、、恵麻…!」
レッドは、ブルーの方を見る。

恵麻はブルーが抑えてくれていたはず。
だからこそ、ブルーに背中を預けて…

しかし、ブルーはだらしない笑みを浮かべて
メロメロになっていた。

「くっ・・・くそ…」
レッドはその場に膝をついた。

あと少しで、、
あと少しで、アルテミスを仕留めることができたのに。

「---さよなら…!うふふっ♡」
恵麻は躊躇なく、トドメの攻撃を加えて、
レッドはその場に倒れて動かなくなった。

「--あらあら、かつての仲間を容赦なく、
 手にかけるなんて、お前はとんだ悪女だわ」

アルテミスが言うと、
恵麻はうふふ、とほほ笑んだ。

「---あ・・・あ」
ようやくブルー=竜也が放心状態から戻る。

メロメロになっている間にレッドまで
殺されてしまった。

「--どうしようもないわね。」
アルテミスが笑う。

「え…恵麻ちゃん!」
竜也が叫ぶ。

「--あなたのせいで、レッドは死んだのよ。
 ふふふ…
 わたし、竜也君みたいな男、ほんと、嫌い!」

恵麻が吐き捨てるように言う。

「--殺す価値もないわね」
アルテミスも失笑するー

そして、恵麻とアルテミスは微笑みあって、
そのまま姿を消した。

「うっ…うあああああああああああ!」
ブルーはその場で頭を抱えて絶叫した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一人―

一人だけ、生き残ってしまった。

そう、一人だけ。
もう、自分に希望も何もない。
戦士ですら、ない。

竜也は、バーで、
飲んだくれていた。

バーのマスターは、レッドたちの顔なじみだった。
竜也の様子を見て、マスターは、レッドたちが死んだことを悟る。

「--オヤジ!もう一杯くれよ!」
ブルーが叫ぶ。

渋い顔をして、バーのマスターは言った。

「竜也君、もうそろそろ終わりにしといたらどうだい?」
マスターの優しく、諭す様な言葉。

「うるせぇ!俺は、俺は!
 もう、飲んでねぇとやってられねぇんだよ!」

竜也が叫ぶ。

「---終わりにするのはーーー」

突然、マスターの腕が異形のカタチに変形して、
竜也の頭を掴み、そのまま握りつぶした。

「---きみの人生だよ」

マスターは不気味に微笑んだ。

ーーゼウスの大幹部・ハデス。
人間界に潜伏し、レッドたちに接近、
情報をゼウス本部に流していた男ー。

「--君みたいのは、また立ち直るかもしれない。
 だから、早めに消しておくに限るー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー新たな大幹部の誕生だ!」

ゼウス本部では、
新たな大幹部の誕生式が行われていた。

ーーアテナ。

「---ふふふふふ・・・人間どもに
 地獄を見せてあげるわ」

妖艶な格好をした女性…
彼女はーー”恵麻”であった女性ー。
その名を捨て、彼女は、アテナとして生まれ変わった。

ヒーローたちに倒された
大幹部アポロンとへパイストスの穴埋めをする存在。

「--ふふふ…かつての仲間を支配することに
 迷いはないのかしら?」
アルテミスが問うと、恵麻=アテナは微笑んだ。

「--ないわ」

と。

その様子を見ていた
他の大幹部二人も、不気味にほほ笑んだ。

「---邪魔者は排除したーーー」
奥に座っていた威厳に満ち溢れた人物が立ち上がるー。
異次元からの侵略者・ゼウス。

ゼウスに向かって
大幹部のアルテミス・アテナ・アレス・ハデスが
礼をする。

「--人間どもを、我らが統治下にー」
ゼウスが言うと、
かつて恵麻だった、アテナも嬉しそうにそう呟いたー

彼女の歪んだ心はー
もう、2度ともとには戻らないー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ヒロインは歪んでしまいました!
普通の特撮なら、無事に元に戻るんですけどね…(汗

ゼウスとの戦いの行方はどうなってしまうのでしょうか!

お読み下さりありがとうございました。

コメント

  1. より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    あれ?ブルーも倒され戦隊は全滅したはずだが、何か思わせぶりの作者コメント。
    もしかして続きあるのか?まあもしあったら見ます。
    正直この展開からだとイエローが正気に戻っても逆転の一手は見えないんですよね。
    俺ならこれでも覆せるけど、流石に参戦は出来ないし笑

  2. AKB48グループオタク より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    台風の片付けとかでコメント書く時間がありませんでした…。バットエンドですね(笑)正義のヒロインが悪の幹部になっちゃうという。最高ですね。リクエストで書いてくれてありがとうございました。また作品期待してます

  3. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 台風の片付けとかでコメント書く時間がありませんでした…。バットエンドですね(笑)正義のヒロインが悪の幹部になっちゃうという。最高ですね。リクエストで書いてくれてありがとうございました。また作品期待してます

    ありがとうございます~!
    続きもいつかかけるかもしれません!
    楽しみにしていてください!

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >無様

    ありがとうございます!

    ゆるキャラの逆転の一手は果たして…?

    歪められたヒロインは、とある逆転の一手が
    残されているのですが、
    それを書くかどうかは、不明です。
    敵の大幹部も強そうですし、どうにもならなそうですが…笑