悪の組織・ゼウスの一員となってしまった
イエロー=恵麻。
その幼馴染でもあるブラック=真治は、
彼女の心を取り戻そうとするも…
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「---な、なんだこの力は!!」
女幹部・アルテミスが、ブラックに投げ飛ばされる瞬間に、叫んだ。
ブラックは言う。
「俺はーーお前たちなどに屈しない!」
過去に何度も、ヒーローたちとは戦った。
一人で5人を相手にするのは、たやすかった。
なのに、何故ー?
たった一人の、
それも死にぞこないのヒーローに、
こんな…!
妖艶な女幹部・アルテミスは、信じられなかった。
たった一人の人間に、自分が敗北するなど…
「ぎゃああああああああ!」
アルテミスは侵入者排除用のトラップに
串刺しになって、そのまま絶命した。
ブラックは、アルテミスの最後を見届けることもなく、
歩き出した。
”その力は、命を蝕む”
特殊機関の男はそう言った。
だがー
それでもかまわない。
恵麻を救えるのであrばー
そして、世界を守れるのであればー
半年前ー
ゼウスの大幹部の一人・へパイストスとの戦いで、
自分は死んだと思っていた。
「---真治!真治!!」
泣き叫ぶイエロー=恵麻。
炎に包まれた建物ー。
そこで、ブラックは、大幹部のへパイストスを
鎖で捕え、自分もろとも消し去ろうとした。
そうでもしなければ、
ゼウスの大幹部を葬ることはできないー
泣き叫ぶイエローを、ブルーが
押さえていた。
「---後は、頼んだぜ」
ブラックは仲間たちに向かって敬礼し、
そのまま大爆発に巻き込まれたー
ゼウスの大幹部・へパイストスを道連れにー
しかし、ブラックは死ななかった。
半年間の間、生死の淵をさまよい、
こうして帰ってきたー。
そんなことを考えているうちに、ゼウス本部の、
広い部屋へと出たー
そこにはー
フードの男とー
鞭と弓を持つ女の姿があったー
「え…恵麻!!!」
ブラック=真治は叫んだ。
恵麻=イエロー…
今はアテナと名乗っている女は微笑んだ
「--久しぶりね…真治」
不気味な笑みを浮かべる恵麻。
恵麻は、こんな笑い方をする女じゃないー
「---…ど、、どうして…どうしてなんだ!」
ブラックが悲痛な叫びをあげる。
「--どうしてって?
ゼウス様の偉大さにわたしは心を奪われたの。
今やわたしはゼウス様のしもべよ」
恵麻が笑うー。
「--目を覚ませ恵麻!
お前は、お前は、闇に操られているんだ!」
ブラックが叫ぶ。
彼女は、ゼウスの大幹部の一人・アポロンが
残して闇の瘴気に憑依されて、
闇に堕ちてしまった。
しかしー
「--バカにしないで!
わたしは、わたしの意思でゼウス様にお仕えしているの!」
恵麻が怒りの形相で叫んだ。
「大体、いつも何よ?
心の中では、わたしのこと、いつも見下していたんでしょ?」
闇が増幅され、恵麻は叫ぶー
小さいころからいつも一緒だった恵麻と真治。
真治は恵麻のことを気遣い、いつも親切にしていた。
「--見下す?違う!俺は!」
ブラックがそう叫ぶと恵麻は言った。
「あのときだってそう。
アンタは、私たちを逃がして、自分ひとりだけ良い顔をして・・・!」
恵麻は叫ぶ。
半年前ー
燃え盛る建物に一人だけ残り、自らの命を犠牲にしたブラック。
恵麻が、泣き叫んだあの日ー
「---残される人の気持ちなんか、
全然考えていない!
わたしがどれだけ悲しかったかわかる?
アンタにわたしの気持ちが分かる!?」
恵麻が感情をむき出しにして叫ぶ。
横にいる大幹部のアレスが表情を歪める。
「---恵麻…」
ブラックが言うと、恵麻は笑った
「--人間って愚かよね…
ふふ・・・アンタみたいなヤツばっかり!
だからわたしは、ゼウス様に忠誠を誓ったの!
操られている???ふふふ…
馬鹿にすんじゃねぇよ!」
恵麻が大声で怒鳴り声をあげた。
”自分の意思”-
そう思い込まされている恵麻は
憎悪をむき出しにした。
「---違う!目を覚ませ!恵麻!」
ブラックはなおも叫ぶ。
「---うるさい!わたしは恵麻じゃない!
わたしはアテナだ!」
そう叫ぶと、恵麻が弓を放ち、
ブラックに攻撃を仕掛けた。
ブラックが攻撃をかわす。
二人の激闘を見守るアレス―。
しかし、ブラックは懸命に説得を続け、
アテナは、迷いがあるのか、決定打の攻撃を
与えることができていないー
「---アテナよ」
アレスは声を上げた。
「---お前では奴を殺すことはできない。
俺に任せろー」
そう言うと、アレスは黒い霧のようなものを
放出させて、自分と、ブラックを包み込んだ。
「---!!」
一人残されたアテナは呟いた。
「--アレスの…幻術…」
と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---!!」
気づくと、ブラックは小学校にいた。
「--おはよ~!」
背後から声をかけてきたのは、小学時代の恵麻=イエロー。
彼女と、真治=ブラックは幼馴染で、
小さいころからずっと一緒だった。
「こ、これはー?」
戸惑う真治。
「どうしたの~?真治くん!」
無邪気に笑う恵麻。
なんだこれは?と思いつつ
真治は急速にその状態に囚われていく。
突然、場面が切り替わる。
ーー中学時代ー
中学2年の後半あたりから、
恵麻は急に可愛くなりだした。
ちょうど、女らしくなり始めた時期、とでも言おうか。
いままでは同じ”子供”だった彼女が
女を自覚し始めた時期だったー。
「---最近、わたしのこと、避けてない?」
恵麻が笑いながら言う。
この頃の恵麻は、ツインテールがよく似合う女子だった。
「え…?そ、そんなことないよ」
真治が顔を赤らめながら言う。
「--そうかなぁ~絶対避けてるよね~?
わたし、分かるもん!」
不貞腐れた様子で、頬を膨らませる恵麻
「ご、、ごめん…
ほ、、ほら、その、なんか、、急に可愛くなったから」
真治が照れながら言うと、
恵麻は笑いながら「なぁにそれ、そんな理由~?」と
微笑みかけた。
場面がまた変わる。
高校時代の放課後ー
女子高生の恵麻が言う。
「---ねぇ、真治…
わたし…真治のこと、ずっと好きだったー」
心臓が高鳴るー
真治も、ずっと、恵麻のことが好きだったー
けれどー
告白できずにいたー。
何度も何度も告白しようとしたー
そんなある日ー、
大学時代に彼女は、姉をゼウスに殺され、
心を閉ざしてしまったー
告白どころではなくなってしまったー。
「---ねぇ、真治くん…」
目の前にいる女子高生時代の恵麻が言う。
「---わたしと…付き合って…
わたし…真治君のこと…」
恵麻が真治の頬を触り、
顔を赤らめながら見つめている。
「----真治くんの、全てが欲しいの…」
エッチな想像をしてしまう真治。
ドキドキが止まらないー
「-----クク」
恵麻は笑った。
これはーー
ゼウス大幹部のアレスが作り出した幻影ー
そして、目の前にいる女子高生の姿をした恵麻はー
アレス自身ー
”闇の異世界に引きずり込んでやる”
アレスがそう思いながら、
真治を引きずり込もうとするーー
ーーーー!!
”助けて”
恵麻の声が聞こえた気がした
「----ふざけるな」
真治は突然声をあげた
「---え…ど、どうしたの?
わ・・・わたしじゃ・・・だめ?」
泣きそうな顔で女子高生姿の恵麻が言う
「---こんな幻術ーーー!
俺は…恵麻に告白なんて、されていない…!
高校時代もーー
俺と恵麻はーーずっと、友人のままだったーー
こんな幻に、、騙されるか!」
そう言うと、真治は恵麻の腕をつかみ、
恵麻を投げ飛ばした。
教室の机に激突する恵麻。
髪を振り乱しながら恵麻が起き上がる。
「や…やめて…真治…?
どうしたの!
わたし!落ち着いてよ!!」
恵麻に化けているアレスは、
芝居を続けた。
しかしーー
「---ふざけるな!」
アレスが気づくと、目の前にいる真治は、
ブラックに変身していたー。
アレスの幻術に打ち勝ったのだー
「---く…くそがぁ…!」
髪を振り乱しながら恵麻は、
闇の霧のようなものを放出させながら
ブラックに襲い掛かった。
しかし、ブラックの怒りの拳が、
恵麻に化けたアレスを吹き飛ばし、
アレスは教室の黒板に激突、
黒板が、教室が、学校の見なれた風景が
砕け散り―
元いた広間の光景が広がった。
「-----…が…」
フードを被った男、アレスは信じられないという表情を
浮かべながら、その場で、ガラス片のように砕け散って消滅した。
「---恵麻…」
ブラックは、広場に残ったもう一人のゼウスの大幹部
恵麻=アテナを見つめた。
「---あら…やるじゃない」
アレスが死んだのを見ても動じない恵麻。
「---恵麻…」
ブラックは、変身を解いた。
「---は?」
恵麻が不愉快そうに表情を歪める。
「---人間の姿のままで、このわたしに勝てるつもり?」
挑発的なポーズを取り、言い放つ恵麻。
「--勝つとか、負けるとか、そんなんじゃない」
真治は、そう言いながら、恵麻の方に向かって歩き出した。
・・・・
ふと、違和感を感じた。
先ほど、女幹部のアルテミスを倒してから、
少し、身体が重い気がするー。
「---…」
一瞬、不安を感じた真治だが、
今はそんなことを気にしている場合ではない、とすぐに首を振り、
恵麻の方を見た。
「---わたしはアテナよ。
ゼウス様の忠実なしもべ!
お前の知る恵麻はもう死んだのよ!」
恵麻が叫ぶ。
「---違う。君はアテナなんかじゃない。
君は、恵麻だ。」
真治がそう言いながら、恵麻の方に
ゆっくりと歩いていく。
「--はぁぁ???
そうやっていつもわたしのことを馬鹿にして!!
どうせ、わたしが操られているだとか、
そんな風に思ってるんでしょ?」
恵麻が叫ぶ。
その通りなのだが、邪気に憑依されて
闇の心を増幅された恵麻には、それが分からない。
「---バカになんかしていない」
真治は強い口調で言った。
「---わたしは自分の意思でここに立っているの!
人間を滅ぼすために!」
恵麻は闇の弓を構えた。
「---違う!君は、お姉さんのカタキをとるため、
そして平和を取り戻すために戦っていた!」
真治の言葉に、恵麻は反論する
「--お姉ちゃん?
ふふふふ・・・あははははははは!
あの女は、バカだったのよ!
ゼウス様に、殺されたのだから
誇りに思うべきじゃない?」
「--本当に、そう思っているのか?」
真治の冷静な言葉に、
恵麻は瞳を震わせたー
恵麻は、中学時代からずっと真治のことが好きだった。
真治にアピールもした。
けど、真治から告白してもらうことはできなかったー
恵麻も、真治も、奥手で互いに告白することはできなかったー。
「---黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ!」
恵麻が狂ったように叫ぶと、闇の弓を放った。
しかしー
真治は、それを避けようともしなかった。
そしてー
弓は、真治の顔をかすめただけでー
当たらなかったー。
「---くそっ!来るな!来るな!」
恵麻は何度も弓を放ったー
しかし、それが当たることはなかったー
「---君には、俺は撃てないー」
そう言うと、恵麻の目の前にやってきた
真治は、言ったー
「---恵麻、こんな目に遭わせて、ごめん」
真治が悲しそうに言う。
元々、ヒーローに…
ゼウスと戦う道に誘ったのは真治=ブラックだった。
誘っていなければ、恵麻が、こんな風に
闇に憑依されて操られることもなかったー
「---そうやって・・・わたしを見下して!」
恵麻が真治を睨む。
そして、鞭のようなものを取り出して、
真治を攻撃しようとした。
しかしー
真治は、そんな恵麻を優しく抱きしめたー。
「---!?」
身体を震わせる恵麻。
「----ずっと、告白できなくてごめん」
真治が言う。
「---俺、ずっと、恵麻のことが大好きだー」
その言葉に、恵麻は動揺しながらも、
口を開くー
「---あ、、、あっそう!
でも、もう嫌いになったでしょ?
わたしはゼウス様に忠誠を誓った女!
アテナになったわたしを…」
「---好きだ」
真治は恵麻の言葉を遮った。
そして、続けた。
「どんなになっても、恵麻は恵麻だー」
と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
指令室でその様子を見ていた
ゼウスの副官・ポセイドンは笑った。
「---フン。安っぽい恋愛ドラマに興味はないぞ」
そう言うと、ポセイドンは、
手に闇のオーラを充満させながら
不気味にほほ笑んだ…
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回で最終回です!
悪堕ちしたヒロインを取り戻せるのでしょうか~!
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