<憑依>歪められたヒロイン~滅びの闇~②”再会”

悪の組織・ゼウスの一員となってしまった
イエロー=恵麻。

その幼馴染でもあるブラック=真治は、
彼女の心を取り戻そうとするも…

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「---な、なんだこの力は!!」
女幹部・アルテミスが、ブラックに投げ飛ばされる瞬間に、叫んだ。

ブラックは言う。

「俺はーーお前たちなどに屈しない!」

過去に何度も、ヒーローたちとは戦った。
一人で5人を相手にするのは、たやすかった。
なのに、何故ー?

たった一人の、
それも死にぞこないのヒーローに、
こんな…!

妖艶な女幹部・アルテミスは、信じられなかった。
たった一人の人間に、自分が敗北するなど…

「ぎゃああああああああ!」
アルテミスは侵入者排除用のトラップに
串刺しになって、そのまま絶命した。

ブラックは、アルテミスの最後を見届けることもなく、
歩き出した。

”その力は、命を蝕む”

特殊機関の男はそう言った。

だがー
それでもかまわない。

恵麻を救えるのであrばー
そして、世界を守れるのであればー

半年前ー
ゼウスの大幹部の一人・へパイストスとの戦いで、
自分は死んだと思っていた。

「---真治!真治!!」
泣き叫ぶイエロー=恵麻。

炎に包まれた建物ー。
そこで、ブラックは、大幹部のへパイストスを
鎖で捕え、自分もろとも消し去ろうとした。

そうでもしなければ、
ゼウスの大幹部を葬ることはできないー

泣き叫ぶイエローを、ブルーが
押さえていた。

「---後は、頼んだぜ」
ブラックは仲間たちに向かって敬礼し、
そのまま大爆発に巻き込まれたー

ゼウスの大幹部・へパイストスを道連れにー

しかし、ブラックは死ななかった。
半年間の間、生死の淵をさまよい、
こうして帰ってきたー。

そんなことを考えているうちに、ゼウス本部の、
広い部屋へと出たー

そこにはー

フードの男とー
鞭と弓を持つ女の姿があったー

「え…恵麻!!!」
ブラック=真治は叫んだ。

恵麻=イエロー…
今はアテナと名乗っている女は微笑んだ

「--久しぶりね…真治」
不気味な笑みを浮かべる恵麻。
恵麻は、こんな笑い方をする女じゃないー

「---…ど、、どうして…どうしてなんだ!」
ブラックが悲痛な叫びをあげる。

「--どうしてって?
 ゼウス様の偉大さにわたしは心を奪われたの。
 今やわたしはゼウス様のしもべよ」

恵麻が笑うー。

「--目を覚ませ恵麻!
 お前は、お前は、闇に操られているんだ!」

ブラックが叫ぶ。

彼女は、ゼウスの大幹部の一人・アポロンが
残して闇の瘴気に憑依されて、
闇に堕ちてしまった。

しかしー

「--バカにしないで!
 わたしは、わたしの意思でゼウス様にお仕えしているの!」
恵麻が怒りの形相で叫んだ。

「大体、いつも何よ?
 心の中では、わたしのこと、いつも見下していたんでしょ?」

闇が増幅され、恵麻は叫ぶー

小さいころからいつも一緒だった恵麻と真治。
真治は恵麻のことを気遣い、いつも親切にしていた。

「--見下す?違う!俺は!」
ブラックがそう叫ぶと恵麻は言った。

「あのときだってそう。
 アンタは、私たちを逃がして、自分ひとりだけ良い顔をして・・・!」

恵麻は叫ぶ。

半年前ー
燃え盛る建物に一人だけ残り、自らの命を犠牲にしたブラック。
恵麻が、泣き叫んだあの日ー

「---残される人の気持ちなんか、
 全然考えていない!
 わたしがどれだけ悲しかったかわかる?
 アンタにわたしの気持ちが分かる!?」

恵麻が感情をむき出しにして叫ぶ。
横にいる大幹部のアレスが表情を歪める。

「---恵麻…」
ブラックが言うと、恵麻は笑った

「--人間って愚かよね…
 ふふ・・・アンタみたいなヤツばっかり!
 だからわたしは、ゼウス様に忠誠を誓ったの!
 操られている???ふふふ…
 馬鹿にすんじゃねぇよ!」

恵麻が大声で怒鳴り声をあげた。
”自分の意思”-
そう思い込まされている恵麻は
憎悪をむき出しにした。

「---違う!目を覚ませ!恵麻!」
ブラックはなおも叫ぶ。

「---うるさい!わたしは恵麻じゃない!
 わたしはアテナだ!」

そう叫ぶと、恵麻が弓を放ち、
ブラックに攻撃を仕掛けた。

ブラックが攻撃をかわす。

二人の激闘を見守るアレス―。

しかし、ブラックは懸命に説得を続け、
アテナは、迷いがあるのか、決定打の攻撃を
与えることができていないー

「---アテナよ」
アレスは声を上げた。

「---お前では奴を殺すことはできない。
 俺に任せろー」

そう言うと、アレスは黒い霧のようなものを
放出させて、自分と、ブラックを包み込んだ。

「---!!」
一人残されたアテナは呟いた。

「--アレスの…幻術…」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---!!」
気づくと、ブラックは小学校にいた。

「--おはよ~!」
背後から声をかけてきたのは、小学時代の恵麻=イエロー。

彼女と、真治=ブラックは幼馴染で、
小さいころからずっと一緒だった。

「こ、これはー?」
戸惑う真治。

「どうしたの~?真治くん!」
無邪気に笑う恵麻。

なんだこれは?と思いつつ
真治は急速にその状態に囚われていく。

突然、場面が切り替わる。

ーー中学時代ー

中学2年の後半あたりから、
恵麻は急に可愛くなりだした。

ちょうど、女らしくなり始めた時期、とでも言おうか。
いままでは同じ”子供”だった彼女が
女を自覚し始めた時期だったー。

「---最近、わたしのこと、避けてない?」
恵麻が笑いながら言う。
この頃の恵麻は、ツインテールがよく似合う女子だった。

「え…?そ、そんなことないよ」
真治が顔を赤らめながら言う。

「--そうかなぁ~絶対避けてるよね~?
 わたし、分かるもん!」
不貞腐れた様子で、頬を膨らませる恵麻

「ご、、ごめん…
 ほ、、ほら、その、なんか、、急に可愛くなったから」
真治が照れながら言うと、
恵麻は笑いながら「なぁにそれ、そんな理由~?」と
微笑みかけた。

場面がまた変わる。

高校時代の放課後ー

女子高生の恵麻が言う。

「---ねぇ、真治…
 わたし…真治のこと、ずっと好きだったー」

心臓が高鳴るー

真治も、ずっと、恵麻のことが好きだったー

けれどー
告白できずにいたー。

何度も何度も告白しようとしたー

そんなある日ー、
大学時代に彼女は、姉をゼウスに殺され、
心を閉ざしてしまったー

告白どころではなくなってしまったー。

「---ねぇ、真治くん…」
目の前にいる女子高生時代の恵麻が言う。

「---わたしと…付き合って…
 わたし…真治君のこと…」

恵麻が真治の頬を触り、
顔を赤らめながら見つめている。

「----真治くんの、全てが欲しいの…」

エッチな想像をしてしまう真治。
ドキドキが止まらないー

「-----クク」
恵麻は笑った。

これはーー
ゼウス大幹部のアレスが作り出した幻影ー
そして、目の前にいる女子高生の姿をした恵麻はー
アレス自身ー

”闇の異世界に引きずり込んでやる”

アレスがそう思いながら、
真治を引きずり込もうとするーー

ーーーー!!

”助けて”

恵麻の声が聞こえた気がした

「----ふざけるな」
真治は突然声をあげた

「---え…ど、どうしたの?
 わ・・・わたしじゃ・・・だめ?」

泣きそうな顔で女子高生姿の恵麻が言う

「---こんな幻術ーーー!
 俺は…恵麻に告白なんて、されていない…!
 高校時代もーー
 俺と恵麻はーーずっと、友人のままだったーー

 こんな幻に、、騙されるか!」

そう言うと、真治は恵麻の腕をつかみ、
恵麻を投げ飛ばした。

教室の机に激突する恵麻。

髪を振り乱しながら恵麻が起き上がる。

「や…やめて…真治…?
 どうしたの!
 わたし!落ち着いてよ!!」

恵麻に化けているアレスは、
芝居を続けた。
しかしーー

「---ふざけるな!」
アレスが気づくと、目の前にいる真治は、
ブラックに変身していたー。

アレスの幻術に打ち勝ったのだー

「---く…くそがぁ…!」
髪を振り乱しながら恵麻は、
闇の霧のようなものを放出させながら
ブラックに襲い掛かった。

しかし、ブラックの怒りの拳が、
恵麻に化けたアレスを吹き飛ばし、
アレスは教室の黒板に激突、
黒板が、教室が、学校の見なれた風景が
砕け散り―

元いた広間の光景が広がった。

「-----…が…」
フードを被った男、アレスは信じられないという表情を
浮かべながら、その場で、ガラス片のように砕け散って消滅した。

「---恵麻…」
ブラックは、広場に残ったもう一人のゼウスの大幹部
恵麻=アテナを見つめた。

「---あら…やるじゃない」
アレスが死んだのを見ても動じない恵麻。

「---恵麻…」
ブラックは、変身を解いた。

「---は?」
恵麻が不愉快そうに表情を歪める。

「---人間の姿のままで、このわたしに勝てるつもり?」
挑発的なポーズを取り、言い放つ恵麻。

「--勝つとか、負けるとか、そんなんじゃない」
真治は、そう言いながら、恵麻の方に向かって歩き出した。

・・・・

ふと、違和感を感じた。
先ほど、女幹部のアルテミスを倒してから、
少し、身体が重い気がするー。

「---…」
一瞬、不安を感じた真治だが、
今はそんなことを気にしている場合ではない、とすぐに首を振り、
恵麻の方を見た。

「---わたしはアテナよ。
 ゼウス様の忠実なしもべ!
 お前の知る恵麻はもう死んだのよ!」

恵麻が叫ぶ。

「---違う。君はアテナなんかじゃない。
 君は、恵麻だ。」

真治がそう言いながら、恵麻の方に
ゆっくりと歩いていく。

「--はぁぁ???
 そうやっていつもわたしのことを馬鹿にして!!
 どうせ、わたしが操られているだとか、
 そんな風に思ってるんでしょ?」

恵麻が叫ぶ。
その通りなのだが、邪気に憑依されて
闇の心を増幅された恵麻には、それが分からない。

「---バカになんかしていない」
真治は強い口調で言った。

「---わたしは自分の意思でここに立っているの!
 人間を滅ぼすために!」

恵麻は闇の弓を構えた。

「---違う!君は、お姉さんのカタキをとるため、
 そして平和を取り戻すために戦っていた!」

真治の言葉に、恵麻は反論する

「--お姉ちゃん?
 ふふふふ・・・あははははははは!
 あの女は、バカだったのよ!
 ゼウス様に、殺されたのだから
 誇りに思うべきじゃない?」

「--本当に、そう思っているのか?」

真治の冷静な言葉に、
恵麻は瞳を震わせたー

恵麻は、中学時代からずっと真治のことが好きだった。
真治にアピールもした。
けど、真治から告白してもらうことはできなかったー

恵麻も、真治も、奥手で互いに告白することはできなかったー。

「---黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ!」
恵麻が狂ったように叫ぶと、闇の弓を放った。

しかしー
真治は、それを避けようともしなかった。

そしてー
弓は、真治の顔をかすめただけでー
当たらなかったー。

「---くそっ!来るな!来るな!」
恵麻は何度も弓を放ったー
しかし、それが当たることはなかったー

「---君には、俺は撃てないー」

そう言うと、恵麻の目の前にやってきた
真治は、言ったー

「---恵麻、こんな目に遭わせて、ごめん」
真治が悲しそうに言う。

元々、ヒーローに…
ゼウスと戦う道に誘ったのは真治=ブラックだった。

誘っていなければ、恵麻が、こんな風に
闇に憑依されて操られることもなかったー

「---そうやって・・・わたしを見下して!」
恵麻が真治を睨む。
そして、鞭のようなものを取り出して、
真治を攻撃しようとした。

しかしー
真治は、そんな恵麻を優しく抱きしめたー。

「---!?」
身体を震わせる恵麻。

「----ずっと、告白できなくてごめん」
真治が言う。

「---俺、ずっと、恵麻のことが大好きだー」

その言葉に、恵麻は動揺しながらも、
口を開くー

「---あ、、、あっそう! 
 でも、もう嫌いになったでしょ?
 わたしはゼウス様に忠誠を誓った女!
 アテナになったわたしを…」

「---好きだ」

真治は恵麻の言葉を遮った。

そして、続けた。

「どんなになっても、恵麻は恵麻だー」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

指令室でその様子を見ていた
ゼウスの副官・ポセイドンは笑った。

「---フン。安っぽい恋愛ドラマに興味はないぞ」

そう言うと、ポセイドンは、
手に闇のオーラを充満させながら
不気味にほほ笑んだ…

③へ続く

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次回で最終回です!
悪堕ちしたヒロインを取り戻せるのでしょうか~!

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