<憑依>廃校② ~憎悪~

憎悪のチャイムがなる…。

チャイム鳴り響くたびに、生徒が一人、犠牲になる。

一体何故…?
そして、また、憎悪のチャイムが鳴り響く・・・

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月明かりに照らされた廃校に、
少女が一人、たたずんでいた。

「---くだらない」
少女は呟く。

少女は、廃校に潜んでいた怨霊に憑依されていた。

怨霊はーー
30年前、女子生徒たちに執拗にいじめられて、
そして、自ら命を絶った。

今の彼を突き動かしているのは、
女子たちに対する憎しみ。

じゅる…

揉んでいた胸から、イヤらしい液体が垂れ流れる。

「--ーくくくくく、思いのままだ」

少女は目を赤く光らせた。
このからだは復讐のための”器”

少女は、服も身に着けず、
月光にその身を捧げた。

両手を広げて、少女は表情をゆがめる。
「---あいつらに、神罰をーーーー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・」
美琴は、恐怖に満ちた表情で変わり果てた
クラスメイトの姿を見つめたー。

また、あの”チャイム”がなった。

いつものチャイムー。
けれど、おどおどしい、不気味な鐘のような音ー。

ゴーン ゴーン と低い重低音で
響くチャイム。

1週間前、廃墟の高校を訪れてから、
美琴の耳に、度々聞こえてくるこのチャイム。

そして、この”不気味なチャイム”が聞こえる度に、
生徒が一人、死んでいく。

先生たちは、異常事態なのに、何の対策も講じない。

いや、
保護者もー
世間もー

一体、どうして?

変わり果てた姿となった
クラスメイトは、
さっき、あの低い音のチャイムが聞こえた直後に、
突然、自ら黒板に頭を強く打ち付け初めて、
そのまま死んでしまった。

「--どうして…もう嫌…」
美琴が叫んでしゃがみこむ。

「美琴…」
あの日、一緒に廃墟の高校を訪れた
瑠那が寂しげに、美琴を見つめる。

「--ねぇ、またあのチャイムがなってた!
 やっぱりあのチャイムに何か秘密があるのよ!」
美琴が周囲の生徒に向かってそう叫ぶ。

だがー。

「--あのチャイムってなんだよ?」
一人の男子生徒が言う。

「そうよ、この前も言ってたけど、
 私たちにはいつも通りの普通のチャイムにしか
 聞こえないけど?」

保健委員の巴菜が言う。

「--そ、そんなはずない!
 いつものチャイムと違う、変なチャイムが
 聞こえてるでしょ?」

美琴が必死に言う。

けれどー、
周囲のクラスメイトたちは、まるで美琴がおかしくなったんじゃないか、
とでも言いたげに、美琴の方を不安そうな目で見つめた。

「---な、何よ!
 わ、、わたしには聞こえたの!あの不気味なチャイムが!」
美琴がパニックを起こしながら叫ぶと、
友人の瑠那が口を開く。

「美琴…
 ごめん…
 わたしも、”普通のチャイム”にしか聞こえない」

瑠那が言う。

美琴は恐怖した。

”自分にだけ 変な音のチャイムが聞こえている”

そしてー。
ふと、横を見ると、あの時、廃墟で見た黒い煙が、
人のような形を作って立っていた。

「きゃあああああああああああ!」
美琴が悲鳴をあげて指をさす。

周囲の生徒たちが振り返る。
だが、他の生徒たちには見えていないようだ。

こ れ は 復 讐 だ。
お ま え た ち 女 子 は
僕 を 自 殺 に お い こ ん だ
3 0 年 前 か ら 何 も
変 わ っ ち ゃ い な い

黒い煙から声が聞こえた。

「や…やめてよ!私たちと、
 30年前の子たちを一緒にしないでよ!」
美琴は叫んだ。

瑠那も、他の生徒たちも、気味悪そうに
美琴を見ている。

恐 怖 し ろ 絶 望 し ろ

黒い煙はそう言って笑い声のようなものを上げると、
また”あの不気味なチャイム”が鳴った。

「きゃあああああ!チャイム!チャイム!」
美琴の視界が真っ赤になる。

パニックを起こして美琴はその場にしゃがむ込む。

そしてーーー

「え…か、、からだが…勝手に!?」

声が聞こえた。

次の瞬間、窓ガラスが割れる音がしたー。

美琴は震えながら目を覚ますと、
クラスメイトたちは悲鳴をあげて震えていた。

保健委員の巴菜が、突然4階から飛び降りたのだ…。

すぐに駆け付けた先生によって
救急車で搬送されたけれど、巴菜は助からなかった。

「---どうして、どうして…」
美琴は机にうつ伏せになって、
泣きじゃくった。

廃墟の高校を訪れた時の気の強さは、
もうどこにもなかった。

「---ねぇ」

ふと、声をかけられて美琴が、顔をあげると、
クラスメイトで生徒会長の由月 璃子(ゆずき りこ)の姿があった。

放課後、話をしたいのだと言う。

美琴はうなずき、
放課後に生徒会室で、璃子と会う約束をした。

璃子は、去り際に言った。
「わたしは、あなたのこと、信じるからー」

「・・・・ありがとう」
美琴はそう返事をした。

少なからず、
クラスメイトたちも、動揺していた。
既に6人の女子生徒が突然の奇行によって
命を落としている。

加えて、美琴がおかしな発言をしている、と思っている
生徒たちは、余計にパニックに陥っていた。

何故、先生たちは対応しないのか。
保護者は何も言わないのか。
世間は騒がないのか。

「--あぁ、もう!」
美琴は考えるのもつらくなって、再び机に突っ伏した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

親友の瑠那に声をかけられた。

「あぁ…瑠那…」
美琴が振り返る。

「--大丈夫?」
瑠那が心配そうに美琴の方を見る。

「---うん…」

美琴は気づいていた。
最初は、あの廃墟の肝試しは夢だと思っていた。

けれど、違う。

翌日、瑠那の”唇”を見て、美琴は気づいた。
瑠那の唇が切れていて、
瘡蓋になっていた。

あの日ー
怨霊に取りつかれた瑠那は、不気味に口元を
歪めて笑ったー

その時のキズだ。

だが、瑠那に変わりはない。
いつもの瑠那。

けれども、美琴は、瑠那にあの怨霊が潜んでいると
考えていた。

「---ねぇ、瑠那…あんたこそ、大丈夫なの?」
美琴が尋ねると、
瑠那はえ?と言いながら笑う。

そういえば…
こんな状況なのに、
瑠那は”いつものように元気”だ。

おかしいー。
気弱なはずの瑠那なのに。

「ねぇ!瑠那!アンタがあのチャイムを…!」

そう言いかけると、
また”あの不気味なチャイム”が聞こえてきた。

「ひっ…ちゃ、、チャイム!
 ね、、ねぇ、瑠那!もうやめてよ!
 お願い!謝るから!何でもするから!」

パニックを起こしながら美琴が泣きわめく。

瑠那は、
そんな美琴を見下すように見ていた-。

「---」
瑠那と視線を合わせた美琴は、瑠那の冷たい視線に
気づき、悲鳴をあげた。

やっぱり瑠那はーーー。

「きゃああああああ!」

そう叫びながら、美琴は生徒会室を目指した。
生徒会長の璃子に相談しよう…
瑠那が憑依されている。
瑠那を助けなきゃ…!

走り去った美琴を見つめながら瑠那は
首を不気味に傾げながら笑った。

「・・・変なの」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「り、璃子!」

生徒会室に入ると、
璃子は先に到着していた。

窓の方を見つめたまま、
返事をしない。

「り…璃子…?」

璃子は、ようやく振り返った。

けれどー

その首は…真後ろまで振り返り…
そのまま、床に”落ちた”

「ひぃああああああああああああっ!」

美琴は大声で悲鳴を上げた。

さっき、廊下で聞いた”不気味なチャイム”の影響で、
璃子はーー死んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うふふふふふふふふふっ…」

スキップしながら、笑う少女。

嬉しそうに、スカートをふわふわさせながら、
まるで子供のようにスキップしている。

彼女は、赤く目を光らせて、クラスメイトに
暗示をかけて、一人ひとり、地獄へと引きずり込んでいた。

先生や、保護者、世間ーー。
この事件に関わろうとするものには、怨念の一部を憑依させて、
”事件に関わらないようにした”
やつらはターゲットではない。
自分をいじめた女子高生たちが、憎いのだ。

「ひとり、ひとり、地獄に落としてやる。
 そして、最後にはーー」

自分の髪を、美味しそうに舐めながら、
少女は目を赤く光らせて笑うー。

その表情は、憎悪に満ちていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

美琴は決意した。

瑠那に話を聞かなくてはならないーと。

瑠那から怨霊を追い出して、
この呪いを終わらせなくてはいけないと。

「ねぇ、瑠那…
 放課後、ちょっとお話しできる?」

美琴が言うと、
瑠那は鼻で笑った。

「お話し…?」
その表情は”バカにしているように”見えた。

「そう。3-B横の空き教室に来てくれる?」
美琴が言うと、
瑠那は含み笑いを浮かべながら頷いた。

ーー美琴は決意した。
瑠那を必ず、救って、あの怨霊を消し去ってやる、と。

③へ続く

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その恐ろしい結末とは…。
何が待ち構えているかは明日のお楽しみです!

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憑依<廃校>

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