あの世の”手違い”によって
命を落としてしまったいじめられっ子ー。
しかも、彼はいじめっ子の女子の身体で
生き返ることになってしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーじゃ、死ぬかー?」
あの世の案内人・リクがそんな言葉を発するー。
「ーー…ーし、し、死にたくはないよ!
で、でも、な、なんでこの身体ー!?」
いじめっ子の女子・春奈の身体でそう叫ぶと、
リクは面倒臭そうに言ったー。
「ーお前の身体は手違いで死んじまったー。
もう、火葬されちまったし、
仮に火葬されてなかったとしても、
死んだ身体に魂を入れることはできない。
だから、お前をお前の身体で生き返らせることはできなかったー。
で、その身体は
本来、死ぬはずだった女の身体だー。
だから、行き場を失ったお前をそこに憑依させたー。
他に何か質問はあるか?」
リクは淡々と説明すると、
春奈に憑依してしまった恭太はなおも不満を口にしたー。
「で、で、でも!そっちのミスなのに、
何で僕がこんな目にー!?」
春奈が、自分の手を見つめながら
心底不愉快そうに言うと、
リクは「ーミスをしたから、その身体に憑依させて生き返らせて
やったんだー。そいつは金持ちの娘だし、見た目も可愛いー。
元のお前よりも、いい人生が送れるはずだ」
と、それだけ言葉を口にしたー。
「ーか、勝手に決めるなよー!
僕はお金持ちになんてならなくてもいいし
どんなに可愛くたって、こんなやつの身体、嫌だよ!
だいたいー、僕の身体が火葬されたなんて嘘に決まってる!
まだ、そんなに時間経ってないだろ!」
春奈が嫌悪感を丸出しにしながらそう叫ぶと、
案内人・リクは「あの世とこの世に多少距離があってなー。
死んでから、お前があっちで目を覚ますまでに数日経過してるし、
こっちに戻って来るまでにも数日経過してるー。」
と、リクはそう説明したー。
「ーーむぅ…」
春奈は頬を膨らませながら、不満そうな表情を浮かべるー。
「ーーとにかく、何を言われても
できないことはできないー。
そいつにお前の魂を入れることができたのも、
本来はそいつの方が死ぬ予定だったからだー。
他に身体を用意することはできない。
話は以上だ」
リクはそれだけ言うと、春奈に憑依した恭太の話を
聞くこともなく、そのまま姿を消してしまったー。
「あ!ちょっと!!」
春奈はそう叫ぶと、
「ーはぁ」と大きくため息をついてから、
鏡を見つめたー。
”この顔”を見るだけで腹立たしい気持ちになるー。
本人に面と向かって立ち向かうことは
ほとんどできなかったけれどー、
春奈に対して、恭太は強い怒りを日々、覚えていたー。
その春奈の顔が鏡に映ってるだけで、
不快になるー。
「ーー…なんで僕がこんなやつにー」
春奈は鏡の前で”自分”を見つめながら
不満そうにそう言葉を口にすると、大きく息を吐き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「~~~~~~」
春奈として、やむを得ず生活することになった恭太ー。
いきなり、豪華な食事が並んでいるのを見て、表情を歪めるー。
「ーー春奈ー。どうかしたのかー?」
春奈の父親・皆口 洋一郎(みなぐち よういちろう)が、
不思議そうに言葉を口にするー。
「あ…う、ううんー、な、な、なんでもないよー」
春奈の身体で生き返った恭太は、咄嗟にそんな言葉を口にして誤魔化すー。
”ー皆口さん、いつもこんないいものばかり食べてるのかぁー…”
そんな風に思うと同時に、
”うっー”と、食事を口に咥えてから表情を歪めるー。
”僕の口には合わないー”
”そ、それにー…お嬢様っぽく行儀よく食べるなんて僕にはできないかもー”
色々な不安や変化に戸惑う春奈になった恭太ー。
”絶対すぐに異変に気付かれる気しかしないんだけどー…”
恭太は心の中でそんなことを口にするー
そしてーーーー
「~~~~~~~~~~~~~~~」
今度は、お風呂ー。
春奈の身体で、身体を洗いながら
恭太は顔を赤らめていたー。
もちろん、恭太自身ではなく、恭太の代わりに
春奈の顔が赤くなるー。
まるで、自分にドキドキしているかのような表情を
浮かべながら、春奈は身体を洗うー。
「ーーーはぁ…なんで僕がこんなやつにドキドキしなくちゃいけないんだー」
春奈の身体にドキドキしてしまっている恭太ー。
けれど、同時に春奈はいじめっ子のリーダー格であり、
恭太からすれば”大っ嫌い”な相手ー。
その大っ嫌いな相手の身体に興奮してしまっているという現実はー
恭太にとって何よりも悔しいことだったー。
「ーーあ~~~もう!」
春奈はうんざりした様子でそう言葉を口にすると、
そのまま目を閉じて、雑な手つきで残りの箇所も洗い始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーーう~ん…これでいいのかなー…?」
春奈として、学校に行くことになってしまった恭太は
慣れない手つきで、女子の制服を身に着けていくー。
当然、スカートなんて履いたことないし、
スカート以外の部分も、恭太からすれば慣れないことだらけー。
「ーーはぁ~~……なんで僕がミスで死なされて
こんな身体で生きて行かなくちゃいけないんだよー」
春奈は自虐的な表情を浮かべながら、そう呟くと
そのまま学校に向かって歩き始めるー。
「~~~~」
スカートで歩くの落ち着かないなぁ、とかー、
周囲の視線が何だか気になる気がするー、とかー、
色々なことを考えながらようやく学校にたどり着くとー、
”いじめっ子”仲間の二人がいつのように、
春奈の近くにやってきたー。
自分のことを可愛いと信じて疑わない沙耶と、
眼鏡とツインテールが特徴的な愛唯。
沙耶は明るい性格で、
愛唯は大人しめの性格の持ち主ー。
唯一、沙耶だけは、春奈の嫌がらせが
エスカレートするようなことがあると
”もうやめようよ”などと、守ってくれるような
発言をしていた子だー。
「ーーー…あれ?今日、なんだか雰囲気違くないー?」
自分のことを可愛いを信じて疑わない沙耶が、
いきなりそんな指摘をしてくるー。
「ーえっ!?そ、そうかなぁー…」
春奈がそう言うと、沙耶は「ーどこか調子でも悪いの?」と、
心配そうに、春奈の額のあたりに手を触れて
熱がないかどうかを確認し始めたー。
そんな行為にも、ドキッとしてしまう春奈ー。
「ーーーーー」
春奈は、ふと周囲を見渡すー。
”恭太がいない”こと以外、
学校の教室の光景はいつも通りだったー。
あれから、半月ちょっとが経過していることを
昨日のうちに確認しておいたしー、
クラスメイト達にとって”半月前に死んだ恭太”のことなど
もう過去の人間なのかもしれないー。
誰も、何もー、
特に気にしている様子はなく、
”恭太がいなくても、何も問題はない”と、
そんな様子にも見えて、春奈は少しだけ不満そうな表情を浮かべたー。
「ーーーーどうかした?」
大人しい性格の愛唯の方が口を開くー。
春奈は少しだけ考えるような表情を浮かべると、
「ーーーーーぼーーーー」と、
うっかり”僕”と言いかけてしまってから
一旦口を閉ざすー。
そして、頭の中で”皆口 春奈”として言葉を口にするー
「ーーー…まーー、丸山が死んだことーー
みんな、あまり気にしてないみたいねー」
とー。
春奈は普段、沙耶・愛唯の二人の前では
恭太のことを”あいつ”と言っていたものの、
春奈に憑依した恭太には、どうしても、
”自分”のことを、”あいつ”と言うことはできずー、
”丸山”と名字で呼んだー。
それも違和感があったものの、
春奈の身体でいきなり”丸山くん”などと言ったりすれば、
それはそれで逆に奇妙に思われてしまうー。
だから、我慢してそう呼んだー。
「ーー丸山?」
自分のことを可愛いと信じて疑わない沙耶が、
そう言葉を口にすると、
「ーーあぁ、アイツねー」と、笑うー。
「ーー誰も気にしてなんかいないよー
そりゃ、死んだって聞いた日はみんな戸惑ってたけどー
元々目立つ子じゃなかったしー
いてもいなくても同じじゃん? あはは」
沙耶が、面白そうに笑うのを見て、
春奈はギリッと歯軋りをするー。
「ーそもそも、階段で”勝手に”足を滑らせて
頭打って死んだみたいだしー
笑っちゃうよねー」
沙耶のその言葉に、春奈は思わず机をドン!と叩いてしまうー。
「ーーーー…は?」
沙耶が戸惑うー。
眼鏡とツインテールがトレードマークの大人しい性格の愛唯は
そんな様子を困惑した表情で見つめているー。
「ーーーーー~~~~~」
”僕を何だと思ってるんだー”と、今にも大声を出してしまいそうなのを
必死に堪えた春奈は「なんでもないー」と、
そのまま廊下に向かって歩き出すー。
誰もいないところまでやってくると、
廊下の壁を何度も何度も叩きながら、
「ーーー何で僕がこんな目にー!何でー!」と、目に涙を浮かべながら
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー。
「ーーーー」
帰宅した春奈は、制服姿の自分を鏡で見つめるー。
恭太も、年頃の男子ー
自分が”女子”になっていることに、少なからずドキドキすることはあるし、
胸に手が触れたり、髪に手が触れたりー、
スカートの感触にも、色々なことにドキドキするー。
トイレやお風呂もそうー。
けれどー…
「ーふざけるなよー…お前のせいで、僕はー!」
鏡に映る春奈に向かって声を上げるー。
”怒り”が、ドキドキを上回っていたー。
”何で僕がこんなやつに”
という怒りでいっぱいになるー。
自分が憑依する前の春奈のことを思い出すー。
その友達の沙耶と、愛唯のことを思い出すー。
自分のことなんてどうでもいいクラスメイトたちのことを思い出すー。
ミスした癖に、謝りもせずに
しかもいじめっ子の身体で生きろと言ってきた無茶苦茶な死神・リクのことも
思い出すー。
「ーーーなんだよその顔ー…
謝れよ…!!僕に謝れよ!」
鏡に映る春奈に向かって叫ぶー。
けれどー、鏡に映る春奈もいっしょに怒っていて、意味がないー。
怒りをぶつける相手さえ、
自分が憑依したことでいなくなってしまったー。
「ーーー~~~~ふざけるな…ふざけるな…!」
春奈の顔ーー
今は自分自身の顔を自分の手で思いっきりつねってみるー。
それでも怒りが収まらずに、春奈の手で、春奈の顔を殴り始めるー。
「ーふざけるな!!ふざけるな!!
僕の人生を返せ!!返せよ!!」
自分自身を殴りながら、泣き叫ぶ春奈ー
痛みも忘れるほどに、春奈への怒りを、春奈の身体にぶつけるー
こんなことをしても、春奈の意識はもうないのかもしれないー。
けれど、春奈に憑依した恭太は、春奈の手で春奈の顔を叩きー、
さらには壁に自分の頭を打ち付けたー。
「ーーは、春奈ー!?」
やがてー、父親の洋一郎が、”部屋で一人、叫び声を上げている娘”に
気付いて駆け付けるー。
「ーーーーふざけるなー…ふざけるなよー」
少し血を流しながら、それでも怒りを露わにしている春奈を見て、
父・洋一郎は困惑した様子で、「は、春奈ー!?どうしたんだー!?」と、
そう声を上げながら、春奈の方に駆け寄ったー。
「ーーーーーーーーーーー」
その様子を見つめていたあの世の案内人・リクは
腕組みをしながら大きくため息を吐き出すー。
普通の人間には、彼の姿は見えないし、
春奈に憑依している恭太にも、”姿を見せようとしなければ”見えないー。
「ーーーーーーー」
治療のために、父・洋一郎に抱えられていく春奈ー。
「ーー」
リクは、そんな様子を見つめながら
「面倒くせぇなー」と、そう言葉を口にすると、
今一度、大きくため息を吐き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
治療を終えて、ぶすっとした表情を浮かべながら
部屋に戻って来る春奈ー。
顔を見るだけでー
いや、”声”を発するだけで、”ふざけるな”と、そう思って
怒りを感じてしまうー。
♪~~~
が、その時だったー。
春奈のスマホに、”友達”のひとりー、
ツインテールと眼鏡が特徴的な大人しい子ー…愛唯から
メッセージが届くー。
いつも、”いじめ”の時に恭太のことを
たまに庇う発言をしていた子だー。
「ーーー」
春奈はイライラしたまま、愛唯からのメッセージを確認すると、
そこにはー
”次は太田(おおた)くんがターゲットねー”
と、そう書かれていたー。
「ーー?」
春奈は表情を歪めるー。
”太田くん”とは、確か隣のクラスにいる気弱なぽっちゃり系の男子だー。
ターゲットとはどういうことだろうかー。
そう思っていると、
突然、あの世の案内人・リクが姿を現したー。
「ーぶわっ!?!?」
春奈が驚いて飛びあがると、
「き、急に出て来るなよー!?」
と、そう叫ぶー。
が、リクは謝ることはせずに、
そのまま言葉を口にするー。
「ーお前に”見せたいもの”があるー」
とー
「見せたいものー?」
春奈が表情を歪めると、
案内人・リクは言葉を続けたー。
「ーーあぁー。
お前が、あの世からここに戻ってくる間に行われたー
”お前の葬式”だー」
リクはそう言うと、春奈に向かって手をかざしたー…
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回デス~!
大嫌いな子の身体で生きることになってしまった恭太くんが、
どんな未来を選ぶのか、
見届けて下さいネ~!!★
今日もお読み下さりありがとうございました!★!

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