ある日ー
彼氏の親友が女体化したー。
その”女体化した親友”に、
彼氏が奪われていくー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー沼田(ぬまた)くんー
お疲れ様ー」
放課後ー。
図書委員会の仕事を終えて、図書室の後片付けをしていた
沼田 誠吾(ぬまた せいご)は、そんな声を聞いて
振り返ったー。
「ーーあ…若松(わかまつ)さんー」
背後から声をかけて来たのは、
同じクラスの生徒で、今は”彼女”の
若松 美鈴(わかまつ みすず)ー。
これまで、恋愛はサッパリだった誠吾ー。
しかし、本が好きで頻繁に図書室に通っている美鈴と、
いつしか本の話題で喋る機会が多くなりー、
誠吾からすれば信じられないことに、美鈴から告白されてー、
”人生で初めての彼女”が出来たー。
美鈴も、友達はそれなりにいるものの
恋愛に関してはかなり奥手な方で、
誠吾が初めての彼氏かつ、告白したのも誠吾が初めてだったー。
「ーーあ、ごめんー
片付け遅くなっちゃってー」
一緒に帰る約束をしていた誠吾が、申し訳なさそうに言うとー、
「ううんー。生徒会の話し合いもさっき終わったばかりだからー気にしないで」と、
美鈴は優しく微笑みながら言ったー。
「ーーあれ?でも、もう一人、1年生の子、一緒だったよね?」
美鈴は、誠吾の片づけを手伝い始めながらそう言うと、
「ーーあ、うんー。その子、今日の5時間目に体調を崩して
早退しちゃったみたいでー、今日は僕ひとりになっちゃったからー」と、
苦笑いしながら誠吾はそう言ったー。
「あ~そうだったんだ~…それは大変だったねー」
美鈴はそう言いながら、片付けの手伝いを続けるー。
「ーーあ!そういえば若松さん!あの本読んだー?」
「ーえ?あ!うん!読んだ読んだー!沼田くんも?」
片づけをしながら本の話で盛り上がる二人ー。
2人とも奥手なせいか、付き合い始めてから数か月が
経過しているものの、
お互いにまだ名前で呼んだことはないし、
キスをしたことも、手を繋いだこともないー。
ただー、喧嘩をするようなこともなく、
2人の間には平和な時間が流れていたー。
「ーーー手伝ってくれてありがとうー
おかげで早く片付いたよー」
誠吾の言葉に「ーどういたしましてー」と、笑う美鈴。
この日も、二人は楽しそうに雑談をしながら
そのまま帰路へとつくのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーはぁ~…」
帰宅した美鈴は、ため息をつくー。
「ーーーー…ーーー」
机の上に飾ってある彼氏・誠吾との写真を見つめる美鈴ー。
美鈴は、誠吾のことが今でも好きだし、
一緒にいて楽しいと思っているー。
けれど、美鈴の友達・葵(あおい)からは
”え~?まだ手も繋いでないの~!?沼田くん可哀想だよ~!”とか、
”他の子がもし沼田くんに告白したら取られちゃうよ!?”とか
そんなことを言われていて、自信を少し喪失しているー。
しかしー、誠吾も奥手な性格で、
手が触れただけで謝るようなタイプだし、
なかなか手を繋ぐ、ということもしていいものなのかどうか、
美鈴自身も悩んでいるー。
”沼田くんに、だんだん嫌われたりしてないよねー…?”
美鈴は不安そうにそんなことを考えると、
”恋愛ってなんか難しいなぁ…”と思いながら、
そのまま学校の荷物の片づけを始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「おうー誠吾ー」
幼馴染で親友の栗本 尚樹(くりもと なおき)と、
昇降口で鉢合わせした誠吾ー。
「ーーあ!尚くんーおはようー」
誠吾はそう言葉を口にしながら、上履きに履き替えると、
いつものように、尚樹と雑談をしながら教室に向かうー。
尚樹は、誠吾とは正反対の明るく活発な性格ではあるものの、
小さい頃から仲良しで、
高校生になった今でも、親友と呼べるような間柄だー。
互いに、正反対の性格だからこそ、
色々な発見もあったりして、何だかんだで親友として
これまでずっとやってきたー。
「ーーで?美鈴ちゃんとはもうキスとかしたのかー?」
ニヤニヤしながら揶揄うような口調で言う誠吾ー。
「ーえっ…えぇっ!?し、しないよー…
僕も、若松さんも、そういうタイプじゃないしー
それにー一緒にいるだけで楽しいしー」
そんな風に、誠吾が照れ臭そうに言うと、
廊下を歩きながら、尚樹は「なんだよ~もったいないー」と、
揶揄うように笑いながら
「っていうか、まだ”さん付け”呼びなのかよー?」と、
そう指摘してくるー
「え?う、うんー
若松さんも、僕のこと”くん付け”だし、特に気にしたことなかったけどー」
誠吾がきょとんとした顔で言うー。
「は~~~…
お互い奥手だと大変だなぁ」
やれやれ、という様子の尚樹を見て、
「別にいいじゃないかー」と、誠吾がそう言い返すー。
「ーもしも俺が女だったら、喜んで誠吾の彼女になって
何でもさせてあげるのになぁ~…」
尚樹が笑いながら言うー。
「ーぶっ…ーーじ、冗談はやめてよー」
誠吾が笑うと、
尚樹は「いやいや、俺は意外とマジだぜー
男だから告白しねぇけど、女だったらお前に告白してると思うぜ?
一緒にいて楽しいし、引っ張りがいもありそうだしー」
と、冗談と感じさせないような笑顔を浮かべながら言うー。
「ーーーあはははー…
でも、尚くんは男だしー」
誠吾が、そう言いながら、教室の前にたどり着くと、
尚樹は「ーへへー。マジで残念だよー俺が女に生まれてればよかったのにー」と、
そう言葉を口にしつつ、教室の中へと入るー。
「ーーーー」
そんな二人を、先に到着していた彼女の美鈴が
少しだけ不安そうに見つめるー。
誠吾と尚樹は”小さい頃からの親友”で、
2人とも本当に仲が良いー。
”男子同士”の友情なのに、
彼女の美鈴が、ほんの少しだけ嫉妬してしまうぐらいには
仲良しだー。
”ーー仲良しな幼馴染が、男の子でよかったー”
そんなことを内心で思う美鈴ー。
あそこまで仲良しな”幼馴染の親友”が、もしも男子じゃなくて
女子だったらーー
少しだけ、そんなことも考えてしまった美鈴は、
少し息を吐き出すと、「ー沼田くんおはよ~!」と、いつものように
誠吾に声をかけるのだったー。
しかしーーーー
土曜日と日曜日を挟んだその翌週ー
月曜日に”それ”は起きたー。
いつものように、学校に到着した誠吾が、
休み時間に飲む飲み物を自販機で購入しようとしていると、
背後から「誠吾!」と、”女子”に名前を呼ばれたー。
「ーーーえ?」
誠吾が戸惑いながら振り返ると、
そこには”見知らぬ女子”の姿があったー。
活発そうな雰囲気を持つ、
正統派の美少女ー
そんな、見知らぬ子が突然声をかけて来たのだー。
しかも、下の名前でー。
「ーーえ…ーーーえ…????」
誠吾が慌ててクラスメイトの顔を思い浮かべるー。
特別接点のない女子も多いものの、
一応、顔ぐらいは覚えているつもりだー。
しかし、今、目の前にいる謎の美少女は
どんなに思い出そうとしても思い出すことができないー。
”あー図書委員のー…?”
そう思いつつ、図書委員の後輩や先輩の顔も思い浮かべるー。
がー、こんな子はいなかったと思うし、少なくとも
下の名前で呼ばれるほどに親しくなった相手は
いなかったと思うー。
そう思いつつ、戸惑っていると、
「ー俺だよ誠吾!尚樹だよ!」と、その美少女は言ったー。
「ーーーえ…????」
誠吾がさらに戸惑うー。
「ーな、尚くんは男…ですけどー?」
知らない相手だからか、敬語でそう答えると、
「へへへちげーよ!朝起きたら俺、女になってたんだよ!」と、
そう言いながら、
そのまま誠吾に抱き着いて来たー。
「ーぶっ!?!?」
胸と髪が当たってドキっとしてしまう誠吾ー。
しかも、最悪なタイミングでーー
彼女の美鈴も登校してきて、
その場面を見られてしまったー。
「ーーーえ……」
”見知らぬ女子に抱き着かれている彼氏”を見て
茫然とした表情を浮かべる美鈴ー。
「ーーーー…あ……わ、若松さんーち、ちがっ!
これは違うんだー!」
慌てた様子で誠吾がそう言いながら、
”女体化した尚樹”を引きはがすとー、
美鈴は困惑した様子で「ーー…ど…どういうことー…?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーーーえへへへー
わたし、先輩と付き合ってるんです!」
”女体化した尚樹”がふざけて、尚樹じゃないフリをして
”誠吾と付き合っている後輩の女子”っぽいセリフを口にするー
「ーーーえ……?え……?」
美鈴は涙目になりそうな雰囲気で、誠吾の方を見つめるー
「ち、ちがっ!ちょっと!そういうのやめてよ!」
誠吾が女体化した尚樹の方に向かって声を上げると、
「ーーーへへー悪い悪いー」と、女体化した尚樹を名乗る女が
そう言葉を口にしたー。
戸惑う美鈴に向かって
女体化した尚樹は「あ~、その俺だよー。誠吾の幼馴染の栗本 尚樹ー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーえ…???? ええ…????」
今度は、別の意味で戸惑いを隠せない美鈴ー。
「ーーぼ、僕もまだ戸惑ってるんだけど、
この子、”朝起きたら女になってた尚くん”なんだってー」
誠吾がそう補足するー。
誠吾自身、まだ完全に信じたわけではないものの、
振る舞いから、確かに尚樹のような、そんな感じがし始めていたー。
「ーー…そ、そんなことって本当にあるのー…?」
美鈴がそう言うと、女体化した尚樹は
「俺だって信じられないけどー、でもほら、実際に女になってるわけだし」と、
笑いながら言葉を口にするー。
「ーーー…う、う~ん…」
困惑した様子の美鈴ー。
誠吾はそんな美鈴に対して「さっきのは急に尚くんに抱き着かれてー」と、
そう説明を付け加えたー。
「そ、それならー…と、取り乱してごめんねー」
美鈴は申し訳なさそうに笑うと、
「あ、いやー…ぼ、僕の方こそごめんー。間際らしいもの見せてー」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーはは…でもほら、ホントに女装とかじゃないんだぜー?
胸も本物だしー」
女体化した尚樹は、”触って確かめてみろよ”と言わんばかりに
誠吾の方を向くー。
が、誠吾が顔を真っ赤にして躊躇したため、
美鈴の方に「ーほら、本物だぞ?」と、胸を触って欲しそうな
素振りを見せるー。
「ーーーえ…… あ…うんーー ……~~~そ、そうだねー」
美鈴は顔を赤らめながら
女体化した尚樹の胸を触ると、
そう言いながら、目を少しだけ逸らしたー。
「ーでさ、土曜日に女になっちゃったから、
学校とも話し合ってさー…
とりあえず、今日から女子として学校に来ることになったんだよー」
女体化した尚樹が笑いながら言うと、
「えぇ……そ、その身体、大丈夫なのー?ほら、いきなり性別変わったなんてー
なんかヤバい病気とかなんじゃー?」と、心配そうに言い放つ誠吾ー。
確かに”何もしてない”のに、いきなり性別が変わる、などと言うのは
不安になっても仕方がないー。
「ーーへへーまぁ、大丈夫だろ?
別に女になった以外に調子悪いところなんてないしー
それにーー」
女体化した尚樹はそう言うと、
誠吾に顔を近づけながら言ったー。
「ーー女になったら、誠吾の彼女になれるしー」
とー。
「ーーー!?!?!?」
誠吾が顔を赤らめながら「なっ…!?」と、声を発すると、
女体化した尚樹は揶揄うようにして笑い始めるー。
「ーえ…ど、どういうことー…?」
彼女の美鈴が戸惑いながら口を挟むと、
女体化した尚樹は笑いながら、
「ーー”わたし”負けないからね~?」と、
美鈴に”宣戦布告”をするー。
「ーちょ、ちょっと!尚くん!やめてよ!
ぼ、僕は若松さん一筋だから!」
誠吾がそう言うと、
女体化した尚樹は、表情を曇らせるー
てっきり、”冗談”で言ってるのかと思っていた誠吾は
その表情に「えっ…!?」と、思い、戸惑うー。
「ーふふー絶対”俺”の方を振り返らせてやるから待ってろよー」
女体化した尚樹は気を取り直した様子でそう言葉を口にすると、
「そうだー先生に呼ばれてるんだった」と、そう言いながら
立ち去っていくー
そんな”女体化した尚樹”の後ろ姿を見つめながら、
誠吾も、誠吾の彼女の美鈴も、不安そうな表情を浮かべることしか
できなかったー。
②へ続く
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コメント
”女体化した彼氏の親友”に、彼氏が奪われていく…
そんなお話デス~!!
どんな風になってしまうのかは、また明日以降のお話を
みて下さいネ~!
今日もありがとうございました~!☆!
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