<入れ替わり>苛立ちの病室~その後の日々編~(前編)

追いつめられて病院に逃げ込んだ逃亡犯が、
病院内で歩けない少女と入れ替わってしまったー。

不自由な身体に苛立つ彼と、
逃亡犯として逮捕されて戸惑う彼女ー。

2人の入れ替わりの”その後”の物語ー…

※「苛立ちの病室」の後日談デス!
 先に本編を読んでくださいネ~!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある病院ー。

事故により、足が不自由になってしまい、
”治る可能性は低い”と、言われていた少女、
杉原 遥香(すぎはら はるか)ー。

そんな彼女が入院していた病院に、
偶然逃げ込んだのが、逃亡犯の村瀬 龍治(むらせ りゅうじ)だったー。

病院内で龍治は遥香と接触ー、転倒してしまい、
その際に二人の身体は入れ替わってしまうー。

結果ー、
遥香になった龍治は、遥香として入院を続けー、
龍治となった遥香は、逃亡犯として逮捕されてしまう結果となったー。

しかし、龍治(遥香)の取り調べを行い、
違和感に気付いた刑事・桂田(かつらだ)は、調査を行い
2人が入れ替わっていることを突き止めたー。

病院内で、遥香(龍治)を追いつめるも、
最後の最後で、遥香(龍治)と女性看護師の麻梨(まり)が
入れ替わってしまい、
龍治は麻梨の身体で逃亡ー、
最終的に、遥香は自分の身体に戻れたものの、
看護師の麻梨は、龍治の身体で生活することを
余儀なくされてしまっていたー。

そしてーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
夜の街で、金髪に派手なサングラスー、
派手な服装の女が、笑みを浮かべながら街を歩いていたー。

「ーマジで!?”ナース”だったのー?」
隣にいる柄の悪い男が笑うとー、
「ーえへへーまぁねー」と、その女は笑うー。

その女はー、
数か月前まで”看護師”だった麻梨ー。
しかし、逃亡犯の入れ替わりを巡るトラブルで、
最終的に、逃亡犯・龍治が麻梨の身体になってしまい、
今の麻梨は、もはや”別人”だったー。

麻梨の身体で逃亡した龍治は、
元の麻梨の面影が全くないぐらいにイメチェンをしー、
現在は、伊藤 美冬(いとう みふゆ)などという偽名を
名乗って、夜の街で遊ぶ日々を送っていたー。

「ーーえ~じゃあ、美冬ちゃん、今度
 ”診察”してくれよー」
ニヤニヤしながら男がそう言うと、
「ーお金、くれたらね」と、美冬を名乗る麻梨(龍治)は
邪悪な笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーあ、こんにちはー」

車いすに乗った少女ー…遥香がそう言葉を口にすると、
反対側から、威圧感のある男が姿を現したー。

相手は”村瀬 龍治”ー
かつて、罪を重ねて、逃亡犯として生きていた男だー。

しかし、今ー、その龍治の中身は遥香が世話になった
女性看護師・麻梨だったー。

「リハビリ、頑張ってるー?」
龍治(麻梨)がそう言うと、
遥香は「あ、はいー。車いすでの移動も大分上手になりましたよ」と、
少し自慢げに笑うー。

「ーーふふー元気そうでよかった」
龍治(麻梨)が、安堵の表情を浮かべながら言うと、
遥香は少し暗い表情を浮かべるー。

あれから、1か月ほどが経過したー。

しかし、遥香は未だに
”看護師さんが身体を奪われてしまったのはわたしのせい”だと、
そんな風に自分を責めていたー。

「あ、あのー…わたしー…」
遥香がそう言葉を口にすると、
龍治(麻梨)は「この身体ー…体力はあって、走っても全然疲れないのー」と、
突然、そんな言葉を口にしたー。

「力もあるし、体力もあるしー、
 あと、ごはんもわたしの身体よりおいしいー。

 結構、この身体になっていいこともあったからー
 気にしないで」

龍治(麻梨)がそう言葉を口にする。

遥香は「で、でもー…」と、悲しそうに龍治(麻梨)を見つめるー。

元々は看護師だった麻梨ー。
しかし、龍治の身体になってしまい、そのまま仕事を
続けられなくなってしまったことから、
看護師の仕事は既に退職していたー。

その後、事件の担当者だった桂田刑事が
運送業の仕事を紹介してくれて、
今、龍治(麻梨)は運送の仕事をしているー。

「ーふふー、遥香ちゃんは、何も悪くないから気にしないで。
 遥香ちゃんだって、被害者なんだからー。ね?」
龍治(麻梨)の言葉に、遥香は静かに頷くー。

遥香はー、もし、自由に歩けるようになったらー、
”看護師さんの身体”を探したいと思っていたー。

つまり、麻梨になった龍治を見つけ出したいのだー。

警察で色々な方法を試した結果、
入れ替わってしまった者同士を入れ替える方法は見つかっているー。

その方法で、龍治になってしまった遥香と、
遥香の身体になってしまった麻梨は入れ替わりを行い、
結果的に遥香は自分の身体を取り戻したのだからー。

だからー…
麻梨(龍治)を捕まえれば、
身体を取り戻してあげることができるのだー。

「ーーじゃあ、わたし、仕事があるからー
 これでー」
龍治(麻梨)が笑いながら言うと、
遥香は「いつも本当にありがとうございますー」と、
ぺこりと頭を下げるー。

「ーふふふー…
 それにしても、色々あったけど、
 元気そうでよかったー」
龍治(麻梨)が言うと、遥香は少しだけ申し訳なさそうに
しながらも、
「ー色々な人に助けてもらってるのでー…
 わたしも前向きに頑張らないとって思ってー」と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遥香のお見舞いを終えた龍治(麻梨)は、
病院の外に出るー。

かつての勤務先だった病院ー。
しかし、もう今は看護師として
ここで働くことはできないー。

「ーーーーーー」
悲しそうな表情を見せる龍治(麻梨)ー

”いいこと”は、確かにあるー。

でもー、
やっぱり、自分の身体に戻りたいー。
そんな想いを捨て去ることはできないー。

龍治(麻梨)自身も、
”自分の身体”の行方を捜しているものの、
未だに見つからないままだったー

いいやー…
龍治(麻梨)は、どこかで
”本気”で元自分を探す気にはなれていなかったー。

もちろん、自分の身体を見つけ出したいという思いはあるし、
実際に自分の身体を見つけるための行動もしているー。

けれどー、どこかでー、
無意識のうちに”ブレーキ”がかかってしまっていて、
”見つからなそうな場所”ばかり探したり、
確信を得るような情報に触れることを避けたり
してしまっているー。

そんな風になってしまっているのにも”理由”はあるー。

”怖い”のだー。
”今の自分”がどんな風になっているのかー
”わたしの身体”がどんな風に使われているのかー、
それを知るのが、とんでもなく怖いのだー。

「ーーーーー」
龍治(麻梨)は、ふぅ、と息を吐き出すと、
「遥香ちゃんも頑張っているんだからー…わたしも頑張らないと」と、
そんな言葉を、自分に言い聞かせるかのように吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー桂田さんー」
若手の男性刑事が、
当時、龍治と遥香が入れ替わってしまった事件を担当していた
年配の刑事・桂田の元にやって来るー。

「ーーあん?」
桂田刑事がそう言葉を口にすると、
「ー見つけましたー例の人ー」と、若手の刑事が言ったー。

「ーー例の人?」
桂田刑事が言うと、
その若手刑事は、”麻梨(龍治)”の写真を手渡したー

繁華街で男たちと笑いながら歩いている麻梨(龍治)の姿をー。

ド派手な雰囲気になっていて、まるで別人のように見えるが
確かに”麻梨”のように見えるー。

「ーーーー確かに、あの女かもしれないなー…」
桂田刑事はそう言葉を口にすると、
少し考えてから言葉を口にしたー。

「よし、中野(なかの)を使おうー」
とー。

中野 愛唯ー
20代後半の女性刑事で、
以前、遥香と龍治が入れ替わっている際には、
遥香の友人の女子高生のフリをして、遥香(龍治)に接触、
龍治がボロを出す際に一役買った刑事だー。

呼び出された愛唯が、桂田刑事の前にやってくると、
桂田刑事は「この女が、龍治かもしれないー」と、そう言葉を口にしながら
写真を手渡すと、
「ー探れと言うことですね?」と、愛唯は確認するように言葉を口にしたー。

「ーそうだー。この仕事はお前にしか頼めないー。頼むー」
桂田刑事のその言葉に、愛唯は頷くと、
そのまま「早速準備しますー」と、そう言葉を口にして
立ち去っていったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

ガラの悪い男たちと共に
バーで酒を飲んでいた麻梨(龍治)ー。

派手な格好で、近くにいる男に
時々キスをしたりして、
ゲラゲラと笑うその姿にー、
もはや”麻梨”の元々の面影はないー。

麻梨(龍治)は、ご機嫌そうに立ち上がると、
「ちょっとトイレー」と、そう言葉を口にするー。

今では当たり前のように女子トイレに入る麻梨(龍治)ー。

「女だと、少しトイレが面倒だよなー」
麻梨(龍治)はブツブツ言いながらトイレを済ませると、
手を洗い始めるー。

手を洗いながら、自分の姿を鏡で見つめる
麻梨(龍治)ー。

もはやその姿は別人ー。

”俺がこの女をここまで変えてやったー”という、
快感を噛みしめながら
思わず笑みを浮かべるー。

そしてー、トイレを出ようとしたタイミングで、
別の女ー、派手なギャルのような風貌の女が入ってきて、
”肩”がぶつかったー。

「ーーー…っーー痛いんだけど」
麻梨(龍治)が露骨に舌打ちをしながらそう言うと、
ギャル風の女が、振り返りながら
「ごめんなさ~い」と、そう言葉を口にしたー。

「ーー…ーー…あんた、喧嘩売ってんのー?」
一応、女っぽく振る舞う麻梨(龍治)。

そんな麻梨(龍治)に対して
「喧嘩だなんて、そんな~…
 あ、じゃあ、あたし、お詫びに色々奢りますよー」
と、ギャル風の女はそう言葉を口にするー。

そんな様子に麻梨(龍治)は、少しだけ戸惑いながらも、
ギャル風の女と共に、仲間の待つ場所へと戻っていくー。

「ーーあれ?その女はー?」
仲間の男の一人が言うと、麻梨(龍治)は
「トイレでぶつかったお詫びに、奢ってくれるんだってさ~」と、
そう言いながら、仲間たちにギャル風の女を紹介したー。

がーー
その女はー
”龍治”も前に会ったことのあるはずの女ー

警察官の愛唯だったー。

桂田刑事から頼まれた愛唯は、
今回は”ギャル”になりきって、麻梨(龍治)に接触したのだー。

「ーーあはは、ぶつかっちゃったからそのお詫びにと思って~
 よろしくね~」
軽い調子でそう言葉を口にする愛唯ー。

本来物静かで落ち着いた雰囲気の愛唯は、
見た目も振る舞いもかなり無理をしているものの、
彼女はこういったことを平然とこなすことから、
桂田刑事にも強く信頼されていたー。

少し時間が経過しているとは言え、
会ったことのある愛唯に、麻梨(龍治)が気付けないほどの
変貌ぶりだったー。

”ーーまずは成功ねー。
 で、後はこの身体が麻梨さんのものかどうか、確認しないとね”

愛唯は嬉しそうに、麻梨(龍治)に話を合わせながら、
どんな話にも対応して、意気投合している”フリ”をしていくー。

そんな日が、何日も続くー。

麻梨(龍治)は、”麻梨”の身体で男遊びを繰り返し、
連日のように男とヤッているような有様だったものの、
愛唯はそんな状況を前にしても焦ることなく、
地道に調べを続けたー。

”その人の身体で、そんなことするなんて許せない”と
感情的になれば、捜査は失敗ー、
もしも相手が”麻梨(龍治)”なら、より麻梨の身体が
傷つくだけだー。

だからこそ、愛唯は慎重に調べを続けたー

”伊藤 美冬って名乗ってるけどー
 恐らく偽名ねー”

本名を聞き出そうと、愛唯は
「ーねぇねぇ、女同士のHに興味あるー?」と、
突然、麻梨(龍治)にそんな言葉を持ちかけるー

”中身が男”なら、興味があるはずだと愛唯は
そう踏んで、誘惑するー。

すると、麻梨(龍治)は乗って来たー

”さらに親密な関係になって、本名を吐かせるー”
愛唯は、そう思いながら、
麻梨(龍治)を見つめるー。

”伊藤 美冬”を名乗るこの子が、
麻梨の身体を奪った龍治であることを”確認”できれば
あとは桂田刑事に報告しー、
身柄を確保するー。

愛唯は、捜査のために何度も何度も麻梨(龍治)と
身体を交らわせながらー、
そしてー、ようやく聞き出すことに成功したー。

「ーーーわたし、本名は麻梨って言うんだよねぇ~
 元々、看護師もやっててー ふふー」

麻梨(龍治)のその言葉に、
愛唯は、心の中で微笑むのだったー。

<後編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「苛立ちの病室」の後日談デス~!

見たいというお声を頂いたことがあったので
描いてみました~~!☆

続きの後編は、毎週火曜日のみ予約投稿の都合上、
来週になってしまいますが、
楽しみにしていて下さいネ~!

コメント