<入れ替わり>苛立ちの病室~その後の日々編~(後編)

入院中の患者と、
その病院に逃げ込んだ逃亡犯が入れ替わってしまったー
そんな出来事から時は流れー、

その事件に関わった人々に待ち受ける未来はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーそうか。やはり奪われたあの病院の看護師の身体かー」
桂田刑事がそう言うと、
ギャルのような姿をしたままの女性刑事・愛唯が「はいー」と答えるー。

「ーーよし、そうと分かれば、伊藤 美冬を名乗るあの女を確保ー、
 身体を取り戻すとしようー」
桂田刑事はそう言いながら愛唯の方を見るー。

「ーー…にしても…中野ー
 お前…ホント、何にでもなれるんだなー?」
桂田刑事は少し感心した様子で呟くー。

愛唯は、逃亡犯の龍治と、足が不自由な入院患者・遥香が
入れ替わってしまった際には”入れ替わり”が本当なのかどうかを
確かめるために、遥香(龍治)に女子高生のフリをして接触したー。

そして、今度はギャルだー。

「ーーギャルっぽく振る舞う中野さん、見て見たかったなぁ~」
近くにいる若手男性警官がそう言うと、
桂田刑事が、その若手男性警官をべしっと叩くー

「ぐおっ!?」
若手男性刑事がそう声を上げると共に
桂田刑事はため息をつくと、
「ーご苦労だったー。明日、確保するー
 予定の場所にまで誘導してほしいー」と、
愛唯に対してそう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーほ、本当ですかー?」
身体を奪われて、逃亡犯・”龍治”の身体で過ごしていた
女性看護師の麻梨は戸惑うー。

”あぁ、今日、これから確保するー。
 確保でき次第、元の身体に戻す準備をするから、
 時間があれば、こっちまで足を運んできてほしい”

桂田刑事の言葉に、
龍治(麻梨)は少しだけ戸惑うー。

”どうかしたのか?”
桂田刑事のその言葉に、龍治(麻梨)は「いえー」と、だけ言葉を口にすると、

「わたしの知らない間に、何をされていたか分かりませんしー、
 元に戻るのが少しだけ怖くてー。

 それに、やっと”この身体”で過ごす日常にも嫌々ですけど、
 慣れてきたところだったのでー」

龍治(麻梨)がそう言うと、桂田刑事は
”ーーそういうものかー”と、少し納得したような口調で言うと、
”まぁ、安心しろー。入れ替わっている間にどんな罪を犯していたとしても
 それは、村瀬龍治の罪だー。
 何も気にすることはない”と、そう言葉を付け加えたー。

「本当に、ありがとうございます」
龍治(麻梨)はそれだけ言うと、
電話を終えて、ゆっくりと歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

「ーーえへへへー
 楽しいことって何ー?」
麻梨(龍治)はド派手な姿で、やってくると、
すっかりとギャル風に変装した愛唯のことを
信用しきっているのか、そう言葉を口にしながら近づいてきたー。

元々の”麻梨”の面影などまるでないー。
同一人物なのかどうかも、仮に家族が見ても
気付かないぐらいの変貌ぶりー。

「ーーー…ーーふふー」
愛唯は、少しだけ笑みを浮かべるとー、
そのまま、待機している仲間たちに合図を送ったー。

ライトに照らされて、麻梨(龍治)が目を細めながら
表情を歪めるー。

「動くな!」
桂田刑事が率いる警官隊が麻梨(龍治)を取り囲むー。

「ーーーーーえ~~~~~~~」
麻梨(龍治)が不満そうに声を上げると、
「ーわたし、何かしましたかぁ~~~?」と、
女の口調でとぼけるー。

しかし、桂田刑事は笑みを浮かべながら
「村瀬 龍治ー。猿芝居は必要ない」と、そう言いながら銃を向けると
麻梨(龍治)は「チッ」と、舌打ちをしたー。

「ーーーーー」
ギャルに変装した愛唯の方を見ると、
「そうかそうかー。お前ー、思い出したー。あの時の女かー」と、
病室で遥香の身体を使っていた時に、女子高生に変装した愛唯と
会った時のことを思い出す、麻梨(龍治)ー。

「ーー今まで気付かなかったなんてー間抜けねー」
愛唯が少しだけ笑うと、
麻梨(龍治)は悔しそうに表情を歪めたー。

”くそっー…俺はこんなところで捕まるわけにはいかねぇ”
そう思いながら、この状況を打開する方法を考え始めるー。

そしてーー

「ーーククククー
 銃を向けてるけどーお前たち、”この女”を撃てるのかー?」
麻梨(龍治)はニヤリと笑ったー。

そうー、
撃てるはずなどないー。
ここで、”麻梨(龍治)”を撃てば、麻梨の身体は死ぬのだからー。

”確か、あの後ー、俺の身体はこの女が使ってるんだったよなー。
 この女だって、自分の身体に戻りたいに決まってるー”

麻梨(龍治)のその言葉に、桂田刑事は表情を歪めるー。

「ーーー麻酔銃を撃って、眠らせることはできるー」
そう言いながら、桂田刑事は元々持っていた銃を捨てて
麻酔銃を構え直すー。

「ーーーチッー」
麻梨(龍治)は表情を歪めるー。

確かにその通りだー。
眠らされて拘束されれば、身体も元に戻されるかもしれないー。

だがーー

「ーーそうはさせねぇ!」
麻梨(龍治)はスカートの中に隠し持っていたナイフを手にすると、
それを自分の首筋につきつけたー。

「この女は人質だー」
麻梨(龍治)は”自分自身の身体”を人質にし、
笑みを浮かべるー。

「ーーーー…!」
桂田刑事は、少しだけ表情を曇らせるー。

麻酔銃を発射したとしても、命中する前に麻梨(龍治)が
自分の首を切ってしまうかもしれないー。

そうなってしまえば、龍治の身体で過ごす麻梨を
元の身体に戻してやることはできないー。

「ーーー…クククーそうだ、大人しくしてろー」
麻梨(龍治)は邪悪な笑みを浮かべるー。

「ーそんなことをすれば、お前だって逃げられなくなるし、
 そのまま、その身体で死ぬことになるぞ」
桂田刑事は銃を構えたまま言うー。

がー、麻梨(龍治)は
「へへへー脅しのつもりか?」と、笑みを浮かべるー。

「どうせ、捕まりゃ、俺はおしまいだー。
 今までやってきたことを考えりゃ、
 いずれ死刑になることは分かるー。

 だったらー」

そう言い放つと、麻梨(龍治)は、
自分の首に突き付けたナイフに力を込めて
笑みを浮かべるー。

「だったら、この女の身体を道連れにしてやろうじゃねぇか」
とー、そう言葉を口にしながらー

「ーーー……」
桂田刑事は、険しい表情を浮かべるー。

この男は、本気だー。
恐らく、何かしようとすれば、躊躇なく
”麻梨の身体のまま”自殺をするだろうー。

が、そうなってしまえば、
村瀬 龍治を逮捕するという目的も、
奪われた麻梨の身体を取り戻すという目的も、
いずれも果たせなくなってしまうー。

「ーーー中野」
小声で通信をしながら、桂田刑事は部下の中野 愛唯に指示を送るー。

「ーーこの建物の2階からー…
 上からアイツに飛び掛かれるかー?」
桂田刑事がそう言葉を口にすると、
愛唯は”やってみますー”と、それだけ返事をしてきたー。

吹き抜けになっている2階に回り込み、
2階ー…麻梨(龍治)の頭上から飛び掛かれば、
自殺される前に、捕まえることができるかもしれないー。

「ー狙撃犯の準備を」
桂田刑事はさらに、麻酔銃による狙撃も試みるー。
狙撃であれば気付かれる前に命中させることもできるかもしれないー。

そんな指示を下していると、
現場に、龍治(麻梨)が駆け付けて来たー。

「ーーー…!」
桂田刑事が振り返るー。

「ーー…あ、あれはー」
龍治(麻梨)は”変わり果てた元・自分”の姿を見つめながら
悲しそうな表情を浮かべるー。

「ーーん?お前はー、ククー
 看護師さんじゃねぇかー…
 病院で俺がJKの身体だったときは世話になったなー」
麻梨(龍治)は笑みを浮かべると、
自分の髪を触りながら
「どうだ?俺流にアレンジした”元自分”の姿はー」と、
ニヤニヤと笑うー。

がーその姿を見た龍治(麻梨)は思うー。

案外ー、何も感じなかったー。
変わり果てた自分を見たらー…
凶悪犯の村瀬 龍治に使われた自分の身体を見たらー
少なからずショックを受ける、と、そう思っていたー。

でもー”何も”思わなかったー

”ーーー…流石に2階から強襲するのは厳しいですー
 村瀬もわたしに気付いているようですし
 気付いてなかったとしても、ナイフの方が早いかもしれません”

2階に回り込んだ部下の中野 愛唯からそんな連絡が入るー。

”中野でもムリってことはー、無理ってことだなー”
桂田刑事はそう判断しながら「わかったー。そこで待機だ」と、
そう言葉を口にするー。

そして、続けざまに狙撃班からの連絡が入るー。

”その建物の中にいる人間を狙撃するのは難しいですー”
とー。

「チッー…わかったー」
桂田刑事は少し舌打ちすると、麻梨(龍治)の方を見つめたー。

「クククー狙撃班は撤収させてもらおうかー」
麻梨(龍治)がそう言うと、
桂田刑事は表情を歪めるー。

このままだと、麻梨(龍治)に逃げられてしまうー。
そう思いながら、頭をフル回転させるー。

が、その時だったー。

龍治(麻梨)が、麻梨(龍治)に向かって歩き始めたー。

「ーなっ…」
桂田刑事が少し驚くと同時に、
麻梨(龍治)も、少し驚きながら、首に突き付けたナイフを少し動かすー。

「ーーいいのか?お前の身体で自殺するぞー?
 そうしたらお前は2度と元の身体には戻れねぇ」
麻梨(龍治)がそう言うと、
龍治(麻梨)は少しだけ溜息を吐き出したー。

そしてー、
続けたー。

「ーーー別に、いいですよー」
とー。

「ーーーなに?」
麻梨(龍治)が鬼のような形相で、龍治(麻梨)を睨むー。

「ーーーちょっと待てー。自分が何を言っているのか分かってるのかー?
 お前の身体ごと自殺してやるとー、そう言ってるんだぞ!」
麻梨(龍治)がそう叫ぶと、
龍治(麻梨)は「思ったよりもー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーー思ったよりもー、何も感じませんでしたー…
 だってー…」

龍治(麻梨)はそう言いながら、麻梨(龍治)を見つめるー。

「だってー…”変わりすぎて”ー…どう見ても”わたし”には見えないからー」
とー。

「ーーー!」
麻梨(龍治)は表情を歪めるー。

”そのままのわたし”の姿で現れていたらー、
きっと動揺したし、動けなかったと思うー。

でもーーーー
今、目の前にいる麻梨(龍治)のことを、
龍治(麻梨)は”わたし”だと思うことはできなかったー。

だからこそー…
こういう行動を取ることができたー。

”別に、いいですよー”
とー。

あまりに変わりすぎていて、
”わたしの身体”だと、そんな実感が全然湧かなかったー。

麻梨(龍治)は、龍治(麻梨)の予想外の反応に表情を歪めるー。

そしてーーー

「ーーだ、だったら!」
麻梨(龍治)は焦ったような表情を浮かべてー、
自分に向けていたナイフを動かしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーこんにちはー」

まだ歩けるようにはなっていなかったものの、
無事に退院して帰宅していた遥香がやってくるー。

そこに現れたのはーー
龍治(麻梨)ーー。

今日は、遥香が退院後、どうしているのか心配していたのと
”自分のこと”を伝えるために、遥香と会う約束をしていたー。

遥香は、現在通信制の高校に通っていて、
そこで卒業を目指しているのだというー。

「ー大変ですけど、でも、頑張りますー」
そんな遥香の笑顔には、入院し始めの頃のようなー
”足が不自由になったことへの絶望”は感じられなかったー。

「ーーー」
そんな遥香を見て、安堵の表情を浮かべる龍治(麻梨)ー。

そして、今度は自分のことを口にしたー。

「ー村瀬 龍治は無事に逮捕されたわー」
とー、そう告げる龍治(麻梨)ー。

「ーー……か、身体のほうはー…
 元に戻らないんですかー?」
遥香がそう言うと、
龍治(麻梨)は苦笑いするー。

「ーずっと、迷ってたしー
 戻りたいって思ってたはずなんだけどーーー

 ”変わり果てたわたし”を見たらー
 なんだか吹っ切れちゃってー。
 もう、この身体にも慣れたし、仕事もちゃんとあるしね」

龍治(麻梨)は前向きに笑うー。

あのあとー、麻梨(龍治)は、
”お前の身体に後遺症を残してやる!”と叫びながら
自分の目を刺しー、さらには指を痛めつけたーー

その直後ー、桂田刑事たちが確保したもののー、
片目は失明、指も数本失う結果となったー。

がーーーー

龍治(麻梨)は”わたしは、この身体で生きていくと決めました”と、
そう宣言ー。

麻梨(龍治)からすれば、まさかの返答に「お、おい!ふざけんな!」と、
喚き、叫んでいたー。

「ーーそうなんですねー」
遥香は少し複雑そうに頷くと、
「そんな顔しないでー」と、龍治(麻梨)は微笑むー。

「ーわたしも、遥香ちゃんも、色々苦しいこともあるかもしれないけどー
 これからも一緒に頑張っていこー」

そんな言葉に、遥香は龍治(麻梨)が自分と同じように
”身体の変化”を受け入れて前に進もうとしていることを悟りー、
穏やかに微笑むと、「はいー」と、そんな言葉を口にしたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「苛立ちの病室」の後日談でした~~!☆

身体を取り戻すことはできませんでしたが、
きっと、前向きに過ごしていくことができそうですネ~!

お読み下さりありがとうございました~~!

コメント

  1. 匿名 より:

    麻梨が予想外に戻る気がなかったせいで、ヤケクソで自分で自傷した龍治は馬鹿を見ましたね。

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!☆

      自滅してしまいましたネ~!☆!
      龍治は立場を上手く生かすことができなかったのデス…!