彼女の人間関係を”リセット”していき、
僕だけの彼女を作り上げようとする彼ー。
しかし、彼女の親友が家にやってきてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー…」
萌々香の親友である尚美が
萌々香の家にやってきたー。
インターホンで尚美の姿を確認した、
”萌々香を着ている達平”は、表情を歪めるー。
「ーわたしはたっくんだけのものなのにー」
萌々香として、そう呟く達平ー。
「わたしは、たっくんだけのものよーーー…!」
今度は、怒りに満ちた表情でそう呟くと、
そのまま、やってきた尚美に対して、
インターホン越しに応答したー。
「ーーー尚美ー。急にどうしたの?」
露骨に不機嫌そうな声が出るー。
”ーー近くに用があったからー…
それに、最近、萌々香、なんだか様子がおかしいし、
心配でー”
尚美がそう言葉を口にすると、
萌々香は不愉快そうに、
「ー別に何もおかしくないからー」と、それだけ言い放つー。
”ーーーーーおかしいよ!明らかにいつもの萌々香じゃない!
何かあったんでしょ!?
何で隠すの?”
尚美が声を荒げるー。
萌々香は怒りに満ちた目でインターホン越しに尚美を見つめると、
一旦インターホンを切って、
「ー萌々香は、僕のものなんだー!
お前のものじゃないー!」と、怒りの形相で呟くー。
口から怒りの言葉を吐き出さないと、
収まらなかったー。
「ーーふぅぅ…」
何とか、息を吸い込むと、再びインターホンでの会話を再開するー。
「ーー人間、気が変わることだってあるでしょ。
”いつもの萌々香”を、勝手にそっちの印象で決めないでよ」
萌々香が露骨に怒った口調で言うー。
”ーほら!それ!
萌々香、そういう言い方、普段絶対しないもん!”
尚美がなおも食い下がるー。
さすが、”親友”だけあってー、
萌々香の異変には敏感なようだー。
”ーーうるさいやつだなぁ…”
ガリガリと爪をかじりながら
”どうするべきか”迷いつつ、
モニター越しに見える尚美の姿を見つめるー。
「ーー気に入らないなら、絶交すればいいじゃん」
萌々香が少し投げやりにそう言い放つと、
”しないよ。わたしは萌々香が心配なの!”と、
尚美はすぐに反論してきたー。
「ーー…っっ…」
萌々香を着ている達平は、”どうすればいいのか”分からず
狼狽え始めるー。
元々、達平は人間関係が得意じゃないー。
萌々香の皮を着て、強気にはなっているものの、
それ以上でも、それ以下でもないー。
「ーーーーわたしは…わたしは、お前が嫌いなの!」
萌々香が吐き捨てるようにして言うー。
”も、萌々香ー…”
尚美は、親友から改めて”嫌い”と言われて
心底ショックを受けたような表情を浮かべているー。
「ーーだから、帰って!もう関わらないで!
こ、これ以上、わたしに関わるなら、
ストーカー扱いするから!」
萌々香がそう言うと、
尚美は残念そうな表情を浮かべながら
”うんー”と、それだけ言葉を口にしたー。
”わかったー…帰るー”
そう言葉を口にした尚美ー。
萌々香はニヤァ…と笑みを浮かべながら、
尚美との会話を終えると、
家の中で嬉しそうに何度も何度も飛び跳ねながら、
ガッツポーズをし始めるー。
「ーやった…!やった!やった!やった!
萌々香は僕のものだ!僕だけのものだー!」
そう言いながら、萌々香の頭だけを脱ぐと、
「ー僕の萌々香!僕の萌々香!僕の萌々香!!」と、
嬉しそうに叫ぶー。
萌々香の皮が脱げそうになるぐらいに、
顔を出したまま子供のようにはしゃぎまわると、
やがて嬉しそうに、
萌々香の皮を脱いで、その皮をぎゅっと抱きしめたー。
「ーーあぁ………えへへへ…」
そんな、達平の顔はとても幸せそうだったー。
がーー
「ーーーー!!!!!」
尚美は、”帰ったフリ”をしていただけだったー。
”ーなんで、萌々香の家からアイツの声がするのー…?”
尚美は表情を歪めながら、そう呟くー。
”萌々香”から、”達平”と同居しているー、とまでは、
尚美は聞かされておらず、
ここは”尚美の家”のはずなのに、
その中から彼氏である達平の声がしたことに
強い違和感を感じていたー。
「ーー…絶対…絶対何かあるー」
尚美はそう思いながら、言葉を口にすると、
険しい表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーわたし、そういうの興味ないからー」
友達だった子から、
サークルの集まりに誘われた萌々香は
冷たくそれをあしらうー。
「ーたっくんがわたしの全てだもん」
萌々香は、友達にそれだけ言うと、
そのまま立ち去ろうとするー。
”あえて”萌々香にそう言わせることで、
萌々香が自分の所有物であるかのような、
そんな支配欲を満たしていたー。
”ふふふふふー…
萌々香はもう、完全に僕のものだー”
勝ち誇った表情を浮かべながら、
萌々香の姿で髪を触る達平ー。
「たっくん、だ~いすきー」
萌々香はそう言葉を口にすると、
クスクスと笑いながら、
不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
今日も大学での1日を終えて、
萌々香の家に帰宅した萌々香ー。
だがー…
家の前にやってきた萌々香は、
表情を歪めたー
”え…なんで家の電気がー!?”
家の中の電気がついていることに気付いた萌々香は
険しい表情を浮かべるー。
朝、家を出た時には確かに
家の電気を消したはずだー。
それなのになぜ、家の電気がついているのだろうかー。
そう思いながら、慌てて中に入るとー、
そこにはー、萌々香の両親の姿があったー。
「ーー…え…… あ……お、お父さんー お母さんー」
萌々香が表情を歪めながら言うと、
「ー萌々香ー、急にごめんねー」と、
母親の方が言葉を口にしたー。
「ーーう、ううんー……
べ、別に大丈夫だよー」
萌々香は戸惑いながら、そう言葉を口にすると、
父親が”ちょうど近くを寄ったからなー”と、
それだけ口にしたー。
一瞬、”何かを悟られた”のではないかと、
そう思ったものの、
そうではなかったらしく、会話は普通の日常会話だったー。
”何かあった時のために”
萌々香は実家に合鍵を預けていたらしく、
こうして勝手に家の中に入ることも可能なようだったー。
”ふつう、そんなものなのかなー?”
実家暮らしだった達平には
それが普通か、あまりないことなのか分からずー、
とりあえず、萌々香として振る舞い続けるしかなかったー。
萌々香のフリをするのは、大変だったけれども、
何とか切り抜けることができたー。
「ーーー…萌々香、なんか、前と雰囲気変わったんじゃないー?」
帰り際ー…
母親が少し心配そうにそんな言葉を口にするー。
萌々香を着ている達平はドキッとしながらも、
「あ、あははー…気のせいじゃない?」と、そう誤魔化すと、
母親もそれ以上追求せずに、そのまま玄関の方に向かったー。
「ーじゃあ、また。
何かあったらいつでも電話してきていいからな?」
父親の言葉に、萌々香は「うん!」とだけ答えると、
二人は玄関から外に出て、
そのまま立ち去って行ったー。
「ーーーチッー」
萌々香は玄関の鍵を閉めながら思うー。
まさか、萌々香の両親が合鍵を持っているとは誤算だったー。
「ー萌々香は渡さないー
僕だけのものなんだからー
お前たちにもー」
両親が去って行った玄関の方を見つめながら、
萌々香は鋭い目でそう呟くー。
「ーーなんとかアイツらから合鍵を取り上げるかーー
別の場所に引っ越すかしないとー」
萌々香はイライラした様子で髪をかきむしると、
「ーたっくん大好きたっくん大好きたっくん大好きー」と
何度も何度も何度も、そう言葉を口にしたー。
そしてー、
笑みを浮かべながら、”萌々香の皮”を、上半身半分だけ脱ぐと、
「僕も萌々香が大好き、僕も萌々香が大好きー」と
嬉しそうに繰り返したー。
しかしーーー
スマホの”撮影音”のようなものが何度も何度も
響き渡りー、
”萌々香を半分脱いでいた”達平は驚いて振り返ったー
すると、そこにはー
萌々香の親友・尚美の姿があったー
「ーーあんたー……萌々香に何をしたの!?」
涙目で叫ぶ尚美ー。
達平は真っ青になりながら
「こーー…これはーー……
え……な、なんでここにいるーーー!?」と、
挙動不審な仕草をしながら叫んだー。
その言葉に、尚美は答えるー。
「ー萌々香の様子がおかしいから、萌々香のお父さんと
お母さんに頼んで、部屋の中に入れて貰ったのー。
萌々香の様子を確認するために」
尚美はそう言ったー。
そうー。
”萌々香の両親”は囮だったのだー。
尚美から話を聞いた萌々香の両親は、
”萌々香に何が起きてるのかを確認したいんです”という
尚美に賛同し、合鍵を使い、”尚美と共に”萌々香の家の中に入ったー。
そして、尚美は身を隠し、萌々香の両親が囮となって
萌々香と会話した上で帰りー、
”油断した萌々香”がどんな行動をするか、尚美が見ていたのだー。
「ーーーこれは…いったい、どういうことなの!?」
尚美が叫ぶー。
”着ぐるみ”のようになった萌々香ー
半分だけ達平に着られている状態の萌々香を見て、
「本物の萌々香はどこ!?」と、尚美が叫ぶー。
実際には、その”ペラペラの萌々香”が本物の萌々香ではあるものの、
尚美はそれを偽物だと思ったのか、そう声を上げたー。
「ーーーーー…も…も…萌々香は…萌々香は、僕のものだ!」
萌々香を半分脱いだ状態のままの達平は
そう言葉を口にすると、青ざめた様子で目に涙を浮かべるー。
「ー萌々香をどこにやったの!?
答えて!」
尚美が怒りの形相で叫ぶー。
「ーちがう…!僕は…僕はただーー!」
半泣きで、達平はそう声を上げると、
そのまま尚美を突き飛ばして外に飛び出すー。
「ーー僕は…僕は僕は僕は僕はー」
萌々香の皮を慌てて再びちゃんと着て、
どこに逃げているのかも分からないまま、
逃げ続ける達平ー
「わたしはー、わたしはたっくんだけのものなの!」
まだ、萌々香のフリをしてそんな言葉を口にする達平ー。
しかしー、
雑木林に逃げ込んだその時だったー。
「ーー気付かれたかー。この無能めー」
そんな声が響き渡るー。
「ーー…そ、その声はー」
萌々香を着たままの達平は、自分に力を与えてくれた
覆面の男の声に表情を歪めながらも
「ぼ、僕を助けて下さい!な、何とかして下さい!」と、
そう叫ぶー。
がーー
「ー凡人には”力”を与えても、それを使いこなすことすらできないー。
それを今回知ることができたー」
覆面の男はそれだけ呟くと、
萌々香の頭を掴んで、萌々香の皮を強制的に取り除いたー。
「ーーぁ… ぅ…???」
萌々香の皮を強制的に脱がされた達平は、
表情を歪めると、
「ーぼ、ぼ、僕を助けてくれますよね?」と、
覆面の男に縋りついたー。
「ーーーー」
覆面の男ー、通称”ビショップ”は、冷たい目で
達平を見つめながら言ったー。
「ーあぁ。助けてやるとも。
ーー”恐怖”からなー」
そう呟くと、ビショップは達平に手をかざすと、
達平を”処分”したー。
”人間は愚かだ”
ビショップは、そう思いながら
”萌々香”は処理しなくても問題なしと判断ー、
そのまま”皮にされた萌々香”をその場に残し、
静かに姿を消したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
「ーーでも、ホントによかったー」
親友の尚美がそう呟くと、
”萌々香”は、戸惑った笑みを浮かべながら、
「ーーうんー…なんだかごめんねー」と、
そう言葉を口にするー。
あのあとー、
”皮”の状態で放置されたままの萌々香は
雑木林の中で人間の身体に戻り、意識を取り戻したー。
しばらく、皮のまま放置されると人間に戻るー
そんな力であったために、達平が消滅したあと、
萌々香は元に戻ったのだー。
「ーーーホントに、何も覚えていないの?」
尚美が心配そうに言うと、
萌々香は頷くー。
「ーうんー…
ここ最近の記憶は全然ー」
萌々香の言葉に、
尚美は表情を歪めるー。
”萌々香の彼氏・達平が本物の萌々香を拉致して、
何らかの方法で萌々香になりすましていた”
尚美は、一連の出来事をそんな風に思っていたー。
けれどー、達平がどこに行ったのか、
どんな方法で”萌々香になりきっていた”のかー、
それは分からなかったー。
「ーーー…」
”萌々香になりすましていた”のではなく、
萌々香そのものを皮にして乗っ取っていたーー
と、いう真実に尚美がたどり着くことはなかったー。
「ーたっくん、どこに行っちゃったんだろうー」
少し心配そうにする萌々香ー。
尚美から”達平の仕業”だとは聞かされているものの、
萌々香は、達平のことを未だに心配していたー。
「ーーー…さぁ…」
尚美は、ため息をつきながらそう言葉を口にすると、
「ーーでも、萌々香が無事でよかったー」
と、静かにそう言葉を口にしたー。
人間関係を突然リセットし始めた萌々香はー、
無事に正気に戻り、
またー、元通りの人間関係を築いていくのだったー…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
最後は、思ったより(?)穏やかな結末になりました~!☆笑
達平くんは…
自業自得なので、仕方がないですネ~…☆!
お読み下さりありがとうございました~!
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