<皮>人間関係をリセットしたい②~欲望~

友達の多い彼女に対し、
歪んだ感情を抱いてしまい、
彼女を皮にしてしまった彼氏…。

乗っ取った彼女の身体で、
彼は人間関係のリセットを試みるー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
彼女である”萌々香”の家に
”萌々香”の身体で帰宅した達平は
ニヤリと笑みを浮かべるー。

「ーー……ん~~~~~~♡」
萌々香の家の中にニオイを嗅ぎながら、
ニヤリと笑うと、
そのまま「ただいま~~!」と、言葉を口にしたー。

すぐに”萌々香”の皮の頭の部分だけを脱ぐと
「内藤さん!おかえり~!」と、
達平の”声”で返事をするー。

またすぐに”萌々香”の皮を身に着けるー。

今度は「も~!同居始めたんだから、”萌々香”でいいのに~!」と、
恥ずかしそうにしながら一人で言うと、
さらにもう一度”萌々香の皮”の頭の部分を脱いで
「ーーえ…えぇ~…じ、じゃあ…も、ももーー…」
と、恥ずかしそうに言葉を口にするー。

既にー、”皮”にされた萌々香の意識は
少なくとも、表にはないー。
本人に、言葉は届いていない可能性も高いー。

それなのに、恥ずかしそうにしながら
達平は言うー。

「も、も、萌々香ー」
と、顔を赤らめながらー。

すぐに赤くなった顔を隠すようにして”萌々香”の皮を
再びしっかりと身に着けると、
「ーーうふふふ… 嬉しい♡」と、嬉しそうに
萌々香の顔も真っ赤に染めながら、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「僕だけの萌々香ー…」

翌日ー。
萌々香として大学にやってきていた達平は
笑みを浮かべながら、鏡で萌々香の顔を見つめるー。

”萌々香の人間関係”には、僕しかいらないー。

そう、思いながら、
萌々香の人間関係を達平はリセットしていくー

「わたしにはたっくんがいれば、他には何もいらないもんー」
萌々香の声でそう呟くだけで、
達平はとても強い幸せを感じながら笑みを浮かべるー。

鏡に映る”今は”自分の顔となった萌々香の顔を
満足そうに見つめながら、
しばらくして、ようやくその場を離れようとすると、
”萌々香の親友”だった尚美がやってきたー。

「ーーねぇ、萌々香ー
 ちょっと、大事な話があるんだけどー」
尚美が困惑した様子で言うー。

しかし、萌々香は「ごめんね。わたし、忙しいからー」と、
そのまま尚美を無視して立ち去ろうとするー。

「ーー萌々香!みんな心配してるよ!何かあったの!?」
尚美は、立ち去ろうとした萌々香にそんな声をかけるー。

「ーーーー…」
萌々香は立ち止まると、尚美に背を向けたまま、
歯軋りをするー。

”うるさいなぁ…萌々香は僕のものなのにー”
そう思いながら振り返ると、
「ーわたし、忙しいって言ったよね?」と、
無理に笑顔を作りながら、そう言葉を口にするー。

ピリピリとした雰囲気が、尚美にも伝わるー。

「ーーー…も、萌々香ー…?
 な、何でみんなを急にブロックしたり、
 遠ざけようとしてるのー?

 みんな、ホントに心配してるんだよー?
 何か理由があるなら教えてよー」

尚美がそう言うと、
萌々香は大きくため息をついてから、言葉を口にしたー。

「ーーー人間関係、リセットしたくなったのー。
 ただそれだけー。理由なんてない」

その言葉に、尚美はなおも食い下がるー。

「急にどうして!?萌々香が理由もなく、
 そんなことするはずないよ!」

尚美と萌々香は、高校時代からの親友ー。
だからこそ、萌々香のことは良く知っているー。
急に理由もなく”全ての人間関係をリセット”なんてことを
するような子じゃないー。

”あ~~~…僕の萌々香なのにー”
萌々香を”着て”いる達平は不満そうに尚美の方を見つめるー

”だいたい、いつもいつも、萌々香の周りにいてー
 鬱陶しいんだー…!”

”萌々香”と”尚美”は同じ高校出身ー。
幼馴染の達平も、萌々香とは同じ高校であったため、
尚美とも同じ高校出身だー。

しかし、奥手な達平と、尚美はお互いに接点がほとんどないー。

「ーーうるさい!わたしはたっくんのものなの!邪魔しないで!」
感情的になってそう言い放つ萌々香ー。

「ーーーー」
尚美は、表情を歪めながら、少し躊躇した後に口を開くー。

「ーあの子に何か言われたの?」
とー。

「ーーー…」
萌々香は答えないー。

「ーーー萌々香の彼氏のこと、悪く言いたくはないけどー…
 あの子、何考えてるか分からないしー、
 やっぱり、萌々香、別れたほうがいいと思うー」

尚美はそう言い放つー。

萌々香と達平が付き合っているのは知っているし、
お互いに幼馴染であることも、萌々香本人から聞いて知っているー。

がー、尚美は達平のことを良く思っておらず、
今回、萌々香が”急に人間関係をリセットし始めた”ことも、
達平のせいだと思い始めていたー。

「ーーは?」
萌々香は、怒りの形相を浮かべるー。

「ー前に言ってたでしょ?
 あの子に、”友達と付き合わないでほしい”って言われたってー

 また、そういうこと言われたんじゃないの?」

心底心配そうに言う尚美ー。

がーーー…
まさか、”目の前にいる萌々香”の中に、その”達平”がいるとは
夢にも思っていなかったー。

「ーーーうるさいー…!これはわたしの意思!」
萌々香は露骨に怒りの表情を浮かべながら言うー。

「ーー…萌々香!
 こんなこと言いたくないけどー、
 あんまり、彼氏にのめり込みすぎるのはよくないよ!」
尚美がそう叫ぶと、
萌々香は「うるさい!!!萌々香はたっくんのものよ!」と、
そう叫びながら、尚美をビンタしたー。

「ーーふん!」
不機嫌そうに立ち去っていく萌々香ー。

尚美は呆然としながら、そんな萌々香の
後ろ姿を見つめるー。

「ーーふふー…そうだー
 萌々香は僕のものだー
 あんな奴に渡すもんかー!」

尚美に背を向けて歩き始めた萌々香は
ニヤニヤと笑うー。

「ー萌々香は僕のものなんだー
 萌々香は、僕だけのものなんだー」

萌々香を乗っ取った達平は、
すっかりと、自らの独占欲を抑えることができなくなって、
”暴走”しつつあったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

♪~~

萌々香のスマホに連絡が入るー。

同じ大学に通う女子の一人からだー。
内容は萌々香のことを心配するようなメッセージ。

恐らくは、尚美に言われたか、
既にブロックした友人たちの誰かに言われたかしたのだろうー。

「ーーー」
それを見つめていた萌々香の顔がぱっくりと割れると、
その中から達平が出て来るー。

「ーうるさいうるさいうるさいー!
 僕の萌々香に勝手に話しかけるなー!」

達平はそう呟くと、
そのまま萌々香の友達の一人をブロックして
メッセージを送れないようにしていくー。

ブロックを終えると、満足そうに笑みを浮かべながら
再び”萌々香の皮”を、ちゃんと着直すー。

「ーーそうよー わたしはたっくんだけのものー」
萌々香として、そう”言わせて”笑みを浮かべるー。

連絡してきた友達を次々とブロックして、
満足そうに笑みを浮かべた萌々香は、
「ー今日もわたしは、たっくんだけのものだからねー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

”萌々香”の皮を着たまま、
嬉しそうに鏡の前に立ち、色々なポーズや
表情を楽しんでいた達平ー。

「ーーあぁ…萌々香ー すごいやー」

「ーふふー
 たっくんのためなら、どんなポーズもしちゃうもん!」

萌々香の皮を脱いだり、着たりしながら
一人二役を続ける達平ー。

ようやく、それに飽きたのか、
萌々香の皮をちゃんと着直したその時だったー。

♪~~

達平のスマホの方が鳴り、萌々香を着たまま
スマホを確認すると、
そこには”母さん”と表示されていたー。

「ーーあぁ、母さんかー」
萌々香はそう呟くと、そのまま自分の頭を触りー、
”皮”を脱ぎ捨てるー。

萌々香を脱いで、雑にソファーに置くと、
そのまま達平は電話に出たー。

「もしもし、母さんー?」
達平がそう言うと、
達平の母親は、
”ーあ、達平ー。元気?萌々香ちゃんと上手くやってる?”
と、そんな言葉を口にしたー。

萌々香を皮にして乗っ取って以降は、
達平は”萌々香の家”で生活をしているー。

それまでは実家暮らしであったために、
達平は両親には
”彼女と同棲することになった”と、説明しているー。

「ーうん!順調順調ー」
達平がそう言うと、
母親は”ふふーならよかったー”と、言葉を口にした上で、
”萌々香ちゃんを困らせるようなことしちゃだめだからね?”と、
諭すように言葉を続けるー。

「ーわかってるよー。母さんは心配性だなぁ~」
苦笑いしながら、達平はソファーの方に置かれている
”萌々香の皮”を見つめるー。

”あ、そうだー…
 萌々香ちゃんとも話せたりする?
 ほら、まだ、”息子をお願いします”みたいな挨拶できてなかったしー”

達平の母親のそんな言葉に、
達平は一瞬ドキッとしたものの、
すぐに「ーあ、あぁ、うんーいいよー今呼んでくるー」
と、そう言葉を口にして、スマホを置くー。

「ーももか~~~!」
わざとらしく、電話の向こうにも聞こえるようにそう言葉を口にして、
すぐに”萌々香の皮”を着るー。

「え?なに~?」
わざとらしくそう言いながら、萌々香の”顔”だけを脱いで
また達平の”声”で「母さんが、萌々香と話したいみたいでー」と、
そう言いな初ー。

そして、萌々香の皮を着て「え?うんーわかった」と
そう返事をすると、何食わぬ顔で、
”萌々香”として達平はスマホを手にしたー。

「ーあ、たっくんのお母さんー
 お久しぶりですー」

”萌々香のフリ”をして、萌々香を着た達平がそう言うと、
達平の母親も”電話の向こうで起きている恐ろしいこと”を
全く想像もせずに、
”ごめんね~急に達平がお世話になることになっちゃって~”と、
達平の母親がそう言葉を口にしたー。

「いえ、わたしがたっくんと一緒に住みたいって言ったのでー。
 こちらこそ、すみませんー」

萌々香として、そう言葉を口にするー。

適当に”萌々香”のフリをしながら雑談を続ける達平ー。

最後に”達平のこと、よろしくねー”と、
母親から言われると、
萌々香として、達平は笑みを浮かべながら答えたー。

「ーはいーたっくんのことは、わたしに任せて下さいー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー絶対、彼氏が何か言ったのよー」

翌日ー。
萌々香の親友である尚美は、
不満そうに、友達の一人・和江に対してそう言葉を口にしたー。

「ーでも、内藤さん、そこまで彼氏くんにのめり込む
 タイプだったっけ?
 彼氏くん以外のことも大事にしてる感じだったけど」

和江が自販機で買ったばかりの飲み物を口にしながらそう言うと、
尚美は「ーでも…昨日の萌々香は変だったからー」と、
そう言葉を口にするー。

”わたしはたっくんのもの”と、言っていたことや、
ビンタされたことまで説明すると、
和江は「うわぁ…」と、困惑したような表情を浮かべるー。

「ーー絶対何かあると思うのー。
 だから、今度、萌々香の家に行ってみようと思ってー」

尚美が不満そうにそう呟くー。

「ーう~ん、そこまで深追いしなくても良くない?
 彼氏くんに夢中になっちゃったなら、
 自分で目を覚まさないとダメだろうしー」

和江はなおもジュースを飲みながらそう言うと、
尚美は「ーーでもー」と、少し戸惑いながら
「わたし、萌々香のこと高校の時から知ってるけどー
 あんな子じゃないと思うからー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜ー。

”ーー”力”を堪能しているようだなー”

萌々香は、スマホで
自分自身に”力”をくれた覆面の男と会話していたー。

「ーはいー本当にありがとうございますー
 おかげで、萌々香が僕のものになりましたー!」
萌々香の皮を着たまま、嬉しそうにそう報告すると、
覆面の男は”くくーそうか”と、だけ答えるー。

”ーーーそれより、”約束”は忘れてないだろうな?”
覆面の男が、確認するかのように呟いた言葉に、
萌々香は「あ、はいー」と、頷きながら
「ー”この力のことは誰にも言ってはいけない”ですよね?」と、
そう言い放つー。

”そうだー。それさえ分かっていればいいー
 これからも、存分に楽しむといいー”

覆面の男は、そう呟くと電話をそのまま切ったー。

「ーー」
萌々香も、スマホを机に置いて、
「ーじゃあたっくん、今日はわたしからお風呂に入るね!」と、
一人で言葉を口にしてから、
萌々香の”頭”だけを脱いで「ーわかった」と、達平自身の声で返事をするー。

がー
その時だったー。

♪~~~

インターホンが鳴り、ビクッとする達平ー。

来客をモニターで確認すると
そこには萌々香の親友である尚美の姿が映し出されていたー。

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!☆

欲望の一人二役生活(?)を送る達平くんと、
乗っ取られてしまった彼女の結末を
ぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!

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