<入れ替わり>そんな風に思われていたなんて②~不穏~

憧れの子と入れ替わってしまった男子生徒。

しかし、彼女の友人から
彼女にキモい・怖いと思われていたことを知るー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーど、どうしたの香菜?今日、元気なくないー?」

教室ではー、
香菜の友達の一人が、心配そうに香菜(恭太)にそんな声をかけていたー。

「あ……う、うんーーーだ、大丈夫ー」
香菜(恭太)は、その友達と視線を合わせることもせず、
そんな言葉を口にするー。

香菜の中身は、奥手な性格の恭太ー。
いつもと違うように見えるのは当然だったー。

「ーあはは、今日、香菜、風邪気味なんだってさー
 だからそっとしておいてあげてー」
”入れ替わり”の事情を香菜本人から相談された親友・紗智が、
そんなフォローの言葉を入れると
友達は「あ、そうなんだねー…」と、納得した様子で言葉を口にするー。

「ーーーあ、あ、ありがとうー」
香菜(恭太)が、それだけ言うと、
紗智は「ーだから、そういう挙動不審な態度やめてくれる?」と、
俯きながら言葉を口にしている香菜(恭太)の方を見つめたー。

「ーぼ、ぼ、僕は普通にしてるつもりでー」
香菜(恭太)のその言葉に、紗智は大きくため息をつくー。

「ーーーーー」
恭太(香菜)は座席から、”わたし”の身体の方を見つめるー。

香菜(恭太)の横にいる紗智が”心配しないで”とジェスチャーを
送り返してくるー。
紗智と香菜は、小さい頃からの親友だー。
誰にでも優しいタイプの香菜と、気の強いタイプの紗智ー。
性格は違うものの、お互いに相手のことをカバーし合いながら
これまで仲良くやって来たー。

”ごめんね”と、申し訳なさそうにジェスチャーを返すと、
紗智は頷きながら、
香菜(恭太)のほうを見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休みー。

紗智は、香菜(恭太)を連れて
使われていない教室へと移動すると、
「昼休みはここでー。教室にいると話しかけられてあんたも面倒でしょ?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーう、うんー」
香菜(恭太)が、そう言いながら頷くと、
少し不安そうに言葉を口にしたー。

「あ、あのー…さ、さっきの話だけどー
 た、滝本さんの誤解だと…思うー」
とー。

”「ーーー……香菜、あんたのことキモがってるよー」

「ーーーバカじゃないのー?
 香菜、あんたのことマジで怖がってるから」”

今朝、紗智から言われた言葉ー。

香菜(恭太)は、色々考えていたけれど、
やっぱり誤解だと、そう感じていたー。

「ーーま、松宮さん、僕と目が合うと笑ってくれたしー、
 僕が困ってると、た、助けてくれたしー
 ぼ、僕のことバイ菌扱いもしなかったしー、

 ぼ、僕のこと怖がったり、キモいって思ったりは
 してないと思うー」

香菜(恭太)は、紗智に目を合わせないまま
早口でそう言い放つー。

”親友の身体”でのそんな振る舞いに紗智はイラッとしながら、
首を横に振るー。

「ー香菜は優しすぎて、そういうこと言えないからー
 ハッキリ言ってあげるー。

 香菜はあんたのこと怖がってるし、キモがってるー」

紗智の言葉に、香菜(恭太)は悲しそうに表情を歪めるー。

「昨日だって、そうー」
紗智はそう言いながら、
昨日、入れ替わる前に恭太も聞いていたであろう
会話を思い出すー。

・・・・

「ーーやっぱりなんか、いつも視線を感じるんだけどー…
 わたし、何か怒らせるようなことしちゃったかなー?」
香菜が不安そうにそう言葉を口にする。

紗智は苦笑いしながら、
「香菜、優しすぎるからさ~、”勘違い”されてるのかもよ?」
と、そんな言葉を口にするー。

「実は、アイツ、アンタのこと好きだったりして」
小声で呟く紗智ー。

「ーーえ~…そんなことないでしょ~?」
香菜は引きつった笑顔を浮かべながらそう言葉を口にするー

「ーー分からないよ~?結構、そういう子に限って、
 急に好意を持ったりするんだから!」
紗智が、それだけ言うと、
香菜は戸惑いながら、

「ーあはは…まさかー。
 そうだったら、どうしようー」

と、そう呟いたー。

そうこうしているうちに、香菜は紗智と会話を終えて
自分の座席へと戻っていくー。

ちょうど恭太が消しゴムを落としてしまい、
香菜がそれを拾っている姿が見えたー。

「ーーー」
そんな光景を自分の座席から見つめる紗智ー。

香菜は、恭太に話しかけられて
少し戸惑った様子に見えるー。

”あ~あ…香菜は香菜で、親切すぎるというかー、なんというかー”
紗智はそう思いながら
「香菜~~~~!」と、恭太に話しかけられて
困っている様子の香菜を”わざと”呼んだー。

香菜が恭太から離れる口実を作ってあげたのだー。

「あ、ごめん~!今行く~!」
香菜がそう言いながら、紗智の方に近付いてくると、
香菜が表情を歪めるー。

「ー消しゴム、なんかべたべたしてたんだけどー…」
香菜が恭太の消しゴムのことを、そう小声で言うと、
紗智は「拾わなきゃいいじゃんー」と、呆れ顔で言うー。

「ーーー…で、でも………目の前で落ちたのを無視して
 素通りなんてわたしにはできないよー」

香菜は優しいー。
確かに、優しいー。
だが、優しすぎるー。
イヤなことをイヤ、と言うのも時には必要だと思うし、
イヤな相手に対しても、優しく接してしまうのは
香菜の悪い癖だと、小さいころから香菜を知る紗智は思っているー。

「ーーー」
廊下に出て、手を洗う香菜ー。

恭太の消しゴムは、恭太の保管状況が悪い上に、
お菓子を食べたあとに平気で触ったりするために
べたべたしているのだー。

・・・

そんな、昨日ことを話しながら、紗智は
「昨日の放課後もそう」と、香菜(恭太)にさらに言葉を言い放つー。

昨日の放課後ー、
まだ入れ替わる前、恭太は”香菜に手を振られて”手を振り返したー。

がーー
香菜が手を振っていたのは、
”恭太の2つ後ろの座席の女子生徒に対して”だー。

明らかに向いている方向が少し違ったのに、
恭太は”僕に手を振ってくれている”と誤解して手を振り返したー。

それに気づいた香菜は苦笑いして、目を逸らすことしかできなかったー。

そのすぐあとー、
香菜は紗智に「ーなんかあの子、怖いし、気持ち悪いよー…」と、
愚痴を呟いていたー。

そしてー
紗智と別れた後に、
階段を2段飛ばしで降りて来ていた恭太とぶつかりー、
入れ替わってしまったのだー。

それを説明し終える紗智。

「ーいい?あんたは、香菜に嫌われてるの。
 勘違いしてるのかもしれないけど、
 香菜はあんたのこと”怖いし” ”気持ち悪い”って思ってる」

紗智の言葉に、香菜(恭太)は、震えながら
「ぼ、僕は、べ、別にー」と、そう言い放つー。

「ー香菜は優しいからー
 絶対アンタにはこんなこと言わないー。

 だから、わたしが代わりに言うー。

 言わないとあんた、この先もずっと勘違いし続けるでしょ?

 香菜が優しいのはアンタに対してだけじゃなくて
 誰に対しても。

 あの子はああいう性格なのー。」

紗智は、そう言うと、

「ーいつもいつもいつもいつも、香菜のことニヤニヤしながら
 見てるの、わたしも香菜も気づいてるから!」

と、そう言い放ったー。

そうー
恭太はいつも香菜を見ているー。
自分でも無意識のうちにー。

しかも、無意識のうちにニヤニヤしながら、
ブツブツと独り言をつぶやいてー、
香菜を見つめているー。

そんな恭太のことを、香菜は心底怖がり、
気持ち悪いと感じていたー。

それを打ち明けられた香菜(恭太)は呆然とするー。

「ま、とにかく元に戻れるまではわたしが見張るから」
紗智はそう言い放つと、そのまま不満そうに
香菜(恭太)のほうを見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した香菜(恭太)ー

「ーーーーーーー」
憧れの香菜に嫌われていたー。

そのことを知った恭太は
酷く落ち込んでいたー。

「ーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーー」

「ーーー黒田くんはーキモくなんかないよー」
虚ろな目のまま、香菜(恭太)は
香菜に”恭太はキモくない”と、そう言わせたー。

「ーー黒田くんは、キモくないー」
「ーー黒田くんは、怖くないー」
「ーー黒田くんは、キモくないー」
「ーー黒田くんは、怖くないー」

香菜の口で、何度も何度もそう呟き始める香菜(恭太)ー

「ーーふふふ、黒田くんはキモくないー!怖くないー!」
香菜(恭太)はブツブツとそう呟きながら、
「僕はキモくない!!!!!」と、鏡に向かって急にヒステリックに
叫び始めるー。

「ー裏切者!裏切者!裏切者!」
鏡に向かってそう叫びながら、香菜(恭太)が拳を叩きつけると、
そのまま気が触れたように、ケラケラと笑い始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

恭太(香菜)は、登校すると
香菜(恭太)の姿を探したー。

がー、その姿はなく、途方に暮れた表情を浮かべるー。

「ーーーーー」
恭太(香菜)は仕方がなく、紗智を見つけると、
「さ、紗智ー」と、
声をかけて、他の生徒たちに話を聞かれないように
場所を移動したー。

「ーーく、黒田くん、見かけなかったー?」
恭太(香菜)がそう言うと、
紗智は「ーえ?見かけてないけど?」と、そう言いながら
時計を確認するー。

「ー毎朝、昨日のことを話しておくために、
 ここで会う約束をしてるんだけどー」
と、今自分たちがいる空き教室で会う約束をしていたことを
紗智に告げるー。

昨日は、ちゃんと香菜(恭太)もここにやってきたのだー。

「ーーまだ10分あるし、学校に来るの遅れてるだけじゃないの?」
紗智がそう言うと、
恭太(香菜)は「それならいいけどー」と、不安そうな表情を浮かべるー。

”わたしの身体”を相手が使っている以上、
学校に来なかったりすればやっぱり不安だー。

それにー、”恭太”は何をするか分からないー。
いつも、ボソボソと何かを呟いているし、
香菜の方を見て、普段からニヤニヤとしているー。

昨日、紗智が恭太に言った話は嘘ではなく、
全部本当の話だー。

性格上、香菜はそれを本人の前で見せることはせず、
本人に直接”嫌だ”とも言ったことはないけれどー。

やがてー
登校時間が過ぎても、香菜(恭太)は学校にやって来ず、
恭太(香菜)は不安そうにスマホを手に、香菜(恭太)への
連絡を試みたー。

すると、ようやく香菜(恭太)が電話に出たー。

「ーーあ、黒田くんー?」
周囲をキョロキョロしながら、人の少ないところに
移動すると、恭太(香菜)は、心配そうに言葉を口にするー。

「どうしたの?何か問題あったー?
 それとも、どこか調子でもー…?」
恭太(香菜)は、香菜(恭太)が学校に来なかった理由を
不安に思い、電話で確認するー。

しかしーーー

”ー裏切者”
香菜(恭太)はボソッとそう呟いたー。

「え?」
恭太(香菜)は唖然とするー。

”ー僕のこと、キモいって思ってたんだなー
 僕の消しゴムを拾ったあとに手を洗ってたんだなー
 僕に手を振ってくれたのは、嘘だったんだなー”

そんな言葉を早口で呟く香菜(恭太)

電話の向こうから聞こえるのは”自分の声”なのに、
まるで雰囲気の違う声に戸惑う恭太(香菜)ー

「ーーーえ…」
恭太(香菜)が戸惑っていると、
香菜(恭太)は止むことのない怒りの言葉を
聞き取るのも難しいぐらいの早口で連続して投げかけて来たー。

「ち、ちょっと、落ち着いてー!」
恭太(香菜)が慌ててそう言うと、
香菜(恭太)は”僕をよくも裏切ったな!”と、
そう声を荒げたー

”裏切る”とは何のことなのだろうー?
と、香菜は不安そうに思うー。

確かに、”恭太のことを怖がっていた”のは認めるとしても、
元々恭太とは親しい間柄にあったわけじゃないー。

不安に思いながら、直接話すことを提案する恭太(香菜)ー

けれどー
”ーーは、話すことなんてあるもんか!”と、
拗ねたような声で言われてそのまま電話を切られてしまったー。

「ーー…そ、そんなー」
恭太(香菜)は慌てたような表情を浮かべるー。

”どうして、急にー?”
恭太(香菜)はそう思いながら、
戸惑いを抱いたまま、そのまま教室の方へと戻って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーあはは…あはははは…
 どうにでもなっちゃえ!」

一方ー、
香菜(恭太)は、自分の部屋で、
香菜の身体で欲望の限りを尽くしていたー。

そういう知識は全くなかったけれど、
とにかく、滅茶苦茶にしたー。

「僕はどーせキモいんだ!」
香菜(恭太)は乱れた格好で不貞腐れたようにそう叫ぶと、
親が部屋に駆け付けて来てもそれを無視して、
ケラケラと笑い続けたー。

③へ続く

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大変なことになってしまいそうな状況に…!
次回が最終回デス~!

無事に和解できるのか、
それともできないのか、
ぜひ見届けて下さいネ~!

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