雷に打たれたことが原因で女体化してしまった
男子大学生ー。
苦悩の日々を送る彼の運命は…?
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女体化した貞夫は、
理髪店で髪をバッサリと切り落とすと、
「ーこれで、少しはスッキリしたなー」と、
短くなった髪を見つめながら、そう呟いたー。
女体化した後、長くなった髪を
しばらくはそのままにしていたものの、
やはり、髪が長いと色々不便に感じることも多く、
貞夫は髪をバッサリと切り落とすことを決意、
今日、こうして男だった頃と同じぐらいの
短い髪に戻したのだったー。
「は~…これで、多少は落ち着くー」
髪をバッサリと切っただけで、
”少し”元に戻れたような、そんな気持ちになるー。
がー、鏡を見つめた貞夫は、
やはり大きなため息をつくー。
胸の膨らみは隠しようがないし、
アソコのあたりに手を触れれば、
どうしても、自分が女体化してしまったことを
実感させられるー。
かと言って、そればっかりはどうしようもない。
髪は男だった頃と同じような条件に出来ても、
残りの部分に関してはどうしても限界があるー
「声も…どう考えても女子だしなー」
貞夫は、今一度大きなため息をつくと、
”ホント、早く元に戻りたいよ”と、静かにそう呟いたー。
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翌日ー。
貞夫が大学にやってくると、
周囲の男子たちが
「え~!?髪、切っちゃったのかよ~!」
「可愛かったのに~!」
「いや、俺は今のほうがいいー。なんだかエロさを感じる」
などと、色々なことを言い始めたー
「べ、別にいいだろー。俺は男なんだからー」
貞夫が戸惑いながら言うと、
「ーえ~~~…でも、今までの方が可愛いと思うけどなー」と、
男子の一人が少し残念そうに呟くー。
「ーかわいいかわいいってー…俺は男だぞ?」
貞夫は不満そうにそう言うと、
そのまま立ち去っていくー。
親友の友則も、貞夫が髪をバッサリと切ったことには
少し驚きつつも、
「まぁ、確かにー。髪、長いと邪魔そうだもんなー」と、
友則は理解を示してくれたー。
そんな反応にありがたいと感じつつも、
貞夫は「そういや、一昨日、病院の診察日だったんだけど、
やっぱ、男に戻るのは難しいってさ」と、自虐的に笑いながら呟いたー。
「ーそ、そっかー」
友則は少し戸惑いながらそう言うと、
突然、近くに別の男子がやってきて、
「お~!友則!最近、その子とよく一緒にいるけど、
彼女でもできたのか~?」などと揶揄う言葉を口にしたー。
「ーえ、あぁ、いやー。こいつは友達だよ」
友則が苦笑いしながら言うと、
友則の知り合いらしきその男子は、
「ははははー。でも、そのうち付き合い始めちゃったりしてなー」
と、揶揄うようにして笑うー。
「ーーー…」
ムスッとした表情の女体化した貞夫ー。
「ーー俺…男なんだけど」
貞夫がそう言うと、友則の友人は少し気まずそうに、
「えっー」と、表情を歪めるー。
友則は戸惑った様子で貞夫と、自分の別の友人の方を見つめるー。
「ーーー…え???ど、どういうことー?女装ー?」
友則の友人に悪気はないー。
が、まさか”女体化した人間”がそこにいるとは思わなかったのだー。
「ーー女装じゃないよ!
そのー…少し前に雷に打たれてー…」
貞夫がそう言うと、友則の友人はすぐに申し訳なさそうな表情を浮かべたー。
”雷に打たれて女になってしまった学生がいる”
それは、大学側からのお知らせで知ってはいたー。
しかし、この友人は貞夫とは普段、接点がないために
”誰が”女体化したのかまでは知らなかったしー、
自分の身の回りの学生の話ではなかったために、
友則の友人は、話半分程度にしか、そのことを知らなかったー
「ーーーーわ、悪いー…
き、君がそうだったのかー
俺、知らなくてー」
友則の友人が、女体化した貞夫に言うと、
貞夫は「いや、いいよー…俺だって同じ反応するかもしれないしー」と、
そう言うと、友則も申し訳なさそうに
「なんかー二人ともごめんなー。」と、そんな言葉を口にしたー。
友則の友人は
「ーーホントに悪かった」と、謝りながら
そのまま立ち去っていくー。
「ーーーーー」
残された友則と女体化した貞夫の間にも、
イヤな感じの空気が流れるー。
「ーーーーーーーーすまん」
友則が、そう呟くー。
貞夫と先程の友人には接点がないー。
仕方がないこととは言え、申し訳なさそうに言葉を口にするー。
「ーーー…いや、俺の方こそごめんなー
俺といると、そういう風に見られちゃうからー、
あんま、俺と一緒にいない方がいいかも」
女体化した貞夫は落ち込んだ様子で言うー。
「い、いやいやいや、俺は気にしないから!
そ、それに今のは、別にお前は何も悪くないし!」
友則が慌てた様子で言うも、
貞夫は落ち込んだ様子で、
「もう、キラキラした女子大生にでもなってやろうかな」と、
自虐的に笑ったー。
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それからは、大学内でも人目を避けるようになってしまった
貞夫ー。
友則が心配そうに言葉を掛けるも、
「俺は大丈夫ー」の一点張りー。
だがー、誰もいない場所で一人、
胸を押しつぶそうと意味のない行動を繰り返したり、
必死に”低い声”の発声練習をしようとしたり、
そんなことをしている貞夫の姿を見つけてしまった友則は、
心底心配そうに、表情を曇らせるー
「ーーなぁ…貞夫ー」
低い声の練習をしていた貞夫は、友則に声を掛けられて
ビクッと驚いた表情を浮かべるー。
「あんま…気にすんなってー。
だんだん、周囲も慣れていくさー」
友則がそう言葉を口にするー。
「ーーーははー…みんな、そう言うよ」
貞夫は自虐的にそう呟くと、
「でも、俺はさ…慣れたくないんだー。
男に戻りたい」と、そんな言葉を口にしたー。
「ーー貞夫ー」
友則は困惑の表情を浮かべながら、
貞夫を見つめるー。
「髪はどうにかなるけど、
声はさー、なかなか難しいよなー。
地声がどうしても”女”だし、
意識して、低い声を出そうとしてると、
どうしても疲れるしー。
油断すると、女の声になっちゃうからさー」
無理に低い声を出しながら、貞夫が笑うー。
貞夫は、悲しそうな目で貞夫を見つめる
友則の方を見ると、
「胸も、どうにもなんねぇよ」と、ため息をつくー。
分かりにくいようにすることはできても、
それが限界ー。
それ以上のことは、できないー。
「ーーーー貞夫ーー…
あまり抱え込むなってー。
俺にできることは少ないけど、
それでも、何かできることがあれば、いつでも力になるから」
友則が心底心配そうにそんな言葉を口にすると、
貞夫は少し申し訳なさそうにしながら
「ありがとなー」と、そう言葉を口にしたー。
そのまま立ち去っていく貞夫ー。
「ーーー」
”女体化”すれば、喜ぶやつも、中にはいるだろうー。
だが、少なくとも貞夫は違うー。
貞夫は、元に戻りたがっているー。
女であれ、男であれ、
望まないのに性別が変わってしまうことは、
とても辛いことだろうー。
「ーーどうにかしてやりたいけど…」
友則はそう呟きながらも、
何もできない自分を呪うように、
悔しそうな表情を浮かべたー。
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数日後ー。
貞夫は、今日も大学での授業が終わると、
隠れるようにして、
”低い声”の練習をしていたー。
「ーー俺も付き合うよー」
そんな、貞夫に友則はそう声をかけたー。
「ーーー…友則ー…」
貞夫は少しだけ表情を歪めるー。
「ー俺にできることは…このぐらいしかないからさー」
友則がそう言うと、貞夫は少しだけ考えるような表情を浮かべてから、
「発声練習を近くで見られるのは、恥ずかしいけどなー」と、
苦笑いするー。
「はは、照れるな照れるなー」
友則は冗談っぽく、そう言葉を口にすると、
一緒に発声練習を始めようとするー。
正直、一緒に発声練習をして”何か意味はあるのか?”と
言われれば、”ない”。
しかし、それでも少しでも親友の気持ちが楽になるのであれば、と、
友則はそんな風に思い、付き合うことにしたー。
がーー
「ー!?」
突然、窓の外がピカッと光り、轟音が轟いたー
「ーうぉっ!?びっくりした」
友則がそんな声を上げるー。
さっきまで晴れていたのに、確かに急に空が暗くなってきてはいたー。
しかし、あまりにも突然の”雷”に、まだ心の準備が出来ていなかったのだー。
「ー全くー、急にでかいのは勘弁してほしいよな」
友則が苦笑いしながら、女体化した貞夫の方を見つめると、
貞夫は窓の外の方を見つめたまま、
目を輝かせていたー。
「貞夫ー?」
友則が少し心配そうに声を掛けると、
貞夫は、嬉しそうに声を震わせたー。
「これだー」
とー。
「え?」
友則が反応すると同時に、貞夫が走り出すー。
「え!?おいっ!?どこに?発声練習はー!?」
友則が戸惑いながらそう声を上げると、
女体化した貞夫は、心底嬉しそうにしながら言い放ったー。
「雷が鳴ってるー…!
あの日以来だー!」
その言葉に、友則は首を傾げるー。
「雷に打たれたら女になっちまったってことは、
もう1回、雷に打たれたら元に戻れるかもしれないだろ!?」
女体化した貞夫は、心底嬉しそうにそんな言葉を口にしたー。
だがーー
それで元に戻れる保証なんて、どこにもないー。
「ーえっ!?おいっ!?いやいや、やめろって!」
友則が貞夫の後を追いかけるー。
しかしー、貞夫はそのまま外に飛び出すと、
急激に強くなってきた雨に打たれながら
笑みを浮かべたー。
「ーーおい!雷!俺を男に戻してくれ!」
傘も刺さずにズブ濡れになりながら、
嬉しそうにそう叫ぶ貞夫ー。
周囲もその状況に気付き、
「お、おい!危ないって!」などと声をかけているー。
しかし、貞夫は
「やっぱ俺、このまま生きてくなんて耐えられないー!
俺は男に戻るんだー!」と、
そう言葉を口にするー。
友則が、校舎の中から「貞夫!!」と、そう叫びつつー
外に飛び出そうとするー。
がーーー
激しい稲光と共にー、轟音が鳴り響き、
それが”貞夫”に直撃したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
病院で目を覚ました貞夫は、
ガバッと起き上がるー。
「ーーーーーーお…俺ーーー」
貞夫がそう声を出すと、
その声は”女”の声ではなくー、
”男”のー、
よく聞き慣れた自分の声に戻っていたー。
「ーーー…!」
貞夫は、思わず嬉しそうに表情を歪めるー。
「ーーお、俺ー…も、元に戻れたんだー…!」
そう思いながら起き上がり、
鏡を見つめると、
そこにはーーー
”自分自身の”
そう、男に戻った自分の姿があったー。
「ーーははは…はははは…
やった…!やった!!!!」
貞夫は心底嬉しそうにそう叫ぶー。
やがてー、病室の扉が開くと、
そこには、女性看護師の姿があったー。
「ーーおめでとうございますー
無事に、元に戻ることができましたね」
そんな祝福の言葉に、貞夫は
「はいー。本当にありがとうございます」と、
嬉しそうにそう言葉を口にするー。
雷に打たれて、女体化してしまった貞夫ー。
その貞夫は、再び雷に打たれることで、
元に戻ることができたのだったー
ーーー否
「ーーーありがとうーーございますーー」
貞夫は、嬉しそうにそう微笑んだー。
その姿は、男になど戻れていないー。
”女体化”したままだー。
「ーー何だって!?おいっ!おいっ!」
親友の友則が、慌てた様子でそう言葉を口にするー。
雷に打たれた貞夫は”夢”を見ていたー。
自分が、男に戻ることのできる夢をー。
何よりも彼自身が願った光景をー。
友則がすぐに救急車を呼びー、
やがて、救急隊員が駆け付けるー。
しかしー、
病院に到着したころには、既に、貞夫は息を引き取っていたー。
けれどー
何故だか、その表情はとても穏やかでー、
何かに喜んでいるような、そんな表情を浮かべていたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
雷に打たれることで女体化してしまう物語でした~!
最後は、何だか悲しい感じですネ~…!
お読み下さりありがとうございました!★
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