<皮>僕が誰だか分かるかな?②~恐怖の隣人~

アパートの隣の部屋に引っ越してきた女性ー。

彼女は、入居初日に”僕が誰だか分かるかな?”と
意味深な言葉を残したー。

そんな彼女の目的はー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーよし」
康雄は、支度を終えて会社に向かう準備を済ませると、
そのまま家の中の戸締りを再度確認して、
玄関の扉を開けたー。

がーー

「うぉっ!?び、びっくりしたぁ…」
康雄が思わず声を上げるー。

部屋の目の前の壁に寄りかかるような形で、
昨日引っ越してきた隣人の女性・恵美が待ち構えていたのだー

「おはようございますー」
にこっと微笑む恵美ー。

「お、おはようございますー」
康雄は少し戸惑いながらそう挨拶を返すー。

昨日の夜、隣から聞こえてきた喘ぎ声を
思い出してしまい、こんな綺麗で穏やかそうな人があんなー…と、
少しドキッとしてしまうー。

「ー”僕”が誰だか、思い出せましたか?」
クスッと笑う恵美ー

「ーい…いえ…そのー、すみませんー
 峯崎さんのこと思い出そうと思って、昨日卒業アルバムとか
 見てみたんですけどー…見当たらなくてー」

康雄はそんな言葉を口にするー。

少なくとも小学、中学、高校、大学の卒業時の
アルバム類には載っていなかったー。
大学は色々間接的に関わっている人間も多いから、
大学で出会った子なのかもしれないが、
それ以前となると、考えられるのは
”先輩か後輩”あるいは”中学時代に転校した名前を思い出せない女子”
あたりである可能性が高いー。

「ーーーーあの…俺と会ったことがあるのは、大学で、ですか?」
康雄がそう確認すると、
「ーーふふ 違いますよー もっと”前”ですー」と、
恵美はそう言葉を口にしたー。

「ーも、もっと前ー」
康雄は目を逸らしながら困惑の表情を浮かべるー。

「ーーーーふふふふー
 そういえば、さっきから何だか顔が赤いですけど、
 大丈夫ですか?」

揶揄うように言葉を口にする恵美ー。

「ーい、い、いえ、それはー」
戸惑う康雄ー。

まさか”あなたの声でドキドキしてしまっている”なんて言えないー。

「ーーーー……」
ニヤリと笑う恵美ー。

「ふふふふー…あ、ごめんなさいー
 これからお仕事ですよね」
恵美はそれだけ言うと、寄りかかっていた壁から身体を離して
そのまま自分の部屋の方に向かっていくー。

「ーヒント」
部屋の前で立ち止まると、恵美はそれだけ呟くー。

「ー”わたし”を見ているだけじゃ、いつまでも思い出せませんよー?」
そう言葉を続ける恵美ー。

康雄は混乱しながら「そ、それはどういう意味ですかー?」と、
確認の言葉を投げかけるも、恵美はそれ以上は何も答えてはくれなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお、今日はなんかシケたツラしてるじゃないかー」

会社にやってくると
笑いながら会社の先輩である倉川(くらかわ)に声を掛けられたー。

「ーあ、倉川先輩ー。聞いて下さいよー」
この倉川先輩は、康雄が入社した去年から世話になっている
頼れる先輩だー。
仕事上のことだけではなく、プライベートの相談にも
乗ってくれるー。

そんな、倉川先輩に”隣人”のことを話すと、
倉川先輩は笑ったー

「ははは、いいじゃないかーそういうのー。
 もしかしたらアレじゃないか?
 小さい頃は男だと思ってた子が実は女だったとか
 そういうやつー。」

冗談めいた口調でそう呟く倉川先輩ー。

「ん~~~~… あ~~~~…
 確かに、男子の方は確認しませんでしたけどー」
康雄は苦笑いしながらそう言葉を口にするー。

昨日、卒業アルバムを確認した際に確認したのは
主に”女子”のほうだー。
”峯崎 恵美”と名乗っている以上ー、
女性だと思うし、アルバムでも女子の方ばかりを確認していたー。

がー、もしかしたら男子に”恵美”という名前の子がいたのかもしれないー。

そんな風にも思い始めたー。

「ーーー……ま、ほら、その子と運命の再会かもしれないしー」
倉川先輩はそれだけ言うと”そんな悩む必要はないんじゃないか?”と、
そうアドバイスしてくれたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅するとー、しばらくして
隣人である”恵美”も帰宅する音が聞こえたー。

「ーーー峯崎さんも帰って来たのかなー」
そんなことを呟く康雄

隣人の恵美は”大学生”らしいー。
”大学生”と言うだけで下の世代だと判断することは出来ないため、
何とも言えないものの、
康雄は社会人2年目ー。

”後輩”であった可能性も考えながら、頭の中で色々と考え始めるー。

「ーーそういえばー…」
康雄は、ふと高校時代に生徒会副会長をやった際に
”自分のことを”僕”と言う女子生徒がいたような気がする”ことを
思い出したー。

「ーー…まさかあの子が峯崎さんかー…?」

中学時代までは適当に過ごしていて、
悪さもしていた康雄ー。
が、高校生になって心を入れ替えて、真面目に過ごすようになり、
3年の時には生徒会副会長もやっていたー。

あの時の後輩の女子がー”僕”と言っていたようなー
そんな気がするー。

「ーーー!」

”ははははは♡ ははははははっ♡”
隣の部屋から、恵美の笑うような声が聞こえて来るー。

また”Hなこと”をしているのだろうかー。

表情を歪めながら、
”何がしたいんだー峯崎さんはー”と、困惑する康雄ー。

そんな状況の中、康雄はふと思い立って
実家に連絡を入れたー。

「あのさー、中学の時のプリント類って、机に取ってあったじゃんー?
 あの中にクラス替えの名簿あったと思うんだけど、
 2年の時のクラス替えの紙、もしあったら写真で送ってくれないかなー?」

康雄は実家の母親にそんなお願いをしたー。

”中学時代、途中で転校した女子生徒”ー
その名前が気になったからだー。
確か、彼女は2年の時に転校したー。
クラス名簿を見れば、卒業アルバムと照らし合わせて
名前は分かるはずだー。

そしてー

”え?生徒会の時のー?”
高校時代のクラスメイトで、今でも時々連絡を取り合っている
女子・崎井 由麻(さきい ゆま)に、連絡を入れた康雄は
「そうそう、生徒会で”ボクっ娘”いたじゃん?
 名前、何だったか覚えてるー?」と、そう言葉を口にするー。

”あ~、あの子ねー”
由麻はそう言いながら、”え?っていうか何でそんなこと調べてるの?”と
不思議そうに言葉を口にするー。

由麻に隠しても仕方がないか、と、
康雄は「実はー」と、事情を説明すると、
”へ~…その子、あんたのこと好きで隣に引っ越して来たんじゃない?”と、
冗談を口にする由麻ー。

”でも、峯崎 恵美ーーなんて子、わたしにも記憶にないなぁー…

 ま、高校以外で出会ったじゃんない?”

由麻の言葉に、康雄は「ーーう~ん…俺も思い出せないんだよなー」と
呟くー。

今朝、恵美本人は”大学で出会ったのではない”と
言っていたー。
そして、由麻の記憶にもないとなると、
もっと前だろうかー。

”あ、あったー!生徒会の時の名簿ー
 ーーあ~その”ボクッ娘”ちゃんは、
 斎藤 美鈴(さいとう みれい)ちゃんだねー”

由麻がそう言葉を口にするー

「あぁ、そうだー美鈴ちゃんだったー」
康雄はそう言葉を口にするー。

「ー急に連絡して、悪かったなー。助かったよ」
康雄がそう言うと、
”いいよいいよ大丈夫”と、由麻はそう言葉を口にしながら、
少し揶揄うような口調で言葉を続けたー。

”ーその”峯崎さん”の正体が分かったら、わたしにも教えてね?”
とー。

「ーーははは…分かったー。正体が分かったら教えるよ」
康雄は、そう言葉を口にしながら電話を切ると、
静かにため息をついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドン!

ドン!

ドン!

コルクボードに貼り付けられた写真に、
隣人の恵美は”釘”を打ち付けていたーー。

ドン!
ドン!
ドン!
何度も、何度も、その写真に打ち付けた釘を
ハンマーで叩きながらクスクスと笑う恵美ー。

「ーーえへへへー
 やっぱ”僕”のこと、思い出せないよねぇー」

恵美はそう言うと、
”写真”に写る康雄ーーー
”昔の康雄”を見つめながら、その表情から笑顔を消すー。

「ーーいいよなァ…
 ”そっち”は何事もなかったかのように忘れてるんだからー」
憎しみに満ちた目で、恵美は”昔の康雄”を見つめるー。

僕はー、
僕は絶対に忘れないー。
そう、絶対にー

恵美を”乗っ取っている男”は、そう何度も何度も呟くと、
低い声でクスクスと笑い始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝ー。

♪~~~

インターホンが鳴り、康雄が「はい」と反応すると、
モニターには、隣人の恵美の顔が映し出されていたー。

”ーーおはようございますー”
恵美の言葉に、少し戸惑う康雄ー。

最初は”こんなに可愛い子が隣の部屋に来るなんて”と、
少し喜んだものの、3日目にして
既に、なんだか苦手意識が芽生えつつあったー。

朝からいきなり、こんな風に訪問してくるなんて、
何のつもりだろうかー。

”ーー”僕”のこと、思い出せましたか?”
恵美が言葉を口にするー。

康雄は愛想笑いを浮かべながら、
「ーいえ…すみませんー」と、言葉を口にした上で、
「ー答え…教えてくれたりしませんかー?」と、そう言葉を口にするー。

”峯崎 恵美”という名前に正直思い当たるものはないー。

”申し訳ないんですけどー”と、切り出した上で
恵美に対して全く覚えがないことー、
思い出そうとしたけれど、やっぱり心当たりがないことー、
それを告げたー。

その上で、
”人違いかもしれないですし、そろそろ答えを教えてくれませんか?”と、
康雄はそう言葉を口にしたー。

がー、それを聞いた恵美はクスクスと笑いだすと
言葉を続けたー。

”ーーじゃあ、重大なヒントをあげますー”
とー。

インターホン越しに見える恵美の顔から笑顔が消えるー。

”ーー僕はお前に地獄に叩き落とされたー。
 お前のことは絶対に忘れないー”

恵美の言葉に、康雄はインターホン越しに恐怖すら覚えるー。

「ど…どういうこと…ですか?
 い、いったい何を言ってー?」
康雄がそう言うと、
恵美はインターホンのカメラに目を近づけながら
怒りの形相で、インターホンの向こうで自分の目を
見ているはずの康雄を睨みつけたー。

”ーー僕はお前の言う通りにしたんだー。
 ーーどう?今の僕は美人女子大生だよ?

 ーなぁ?お前の望み通りにしてやったんだぞ?
 これで満足か?あ?”

今にも怒鳴り声を上げそうな勢いでそんな言葉を
口にする恵美ー。

”これで思い出しただろ?
 僕が誰だか分かっただろ?
 ほら、答えろよー”

恵美が扉をガン!と蹴りつけると、
康雄は「お…落ち着いて下さいー」と、震えながら
そう言葉を口にするー

”普通じゃないー”
そう思ったー。

何を言っているのか、全く分からないー。
一体、何が目的なのかー。

いやー、この人はただ、”頭がおかしい”だけなのかも
しれないー。

そう思いながら、康雄は
「ーお、思い出しますー 思い出しますからー」と、
必死にそう言い放つと、恵美は「ふ~~~~~~…」と、
自分の怒りを抑え込むかのような仕草をすると、
にっこりと笑顔を浮かべたー。

”じゃあ、あと3日以内に思い出してくださいー。
 僕のことー”

恵美の言葉に、康雄は困惑するー。

”ーーお前が”傷つけた”僕だよー
 分かるだろ?”
恵美は低い声で脅すような言葉を口にすると、
そのままニヤリと笑って、玄関の前から立ち去って行ったー。

「ーーーな…なんなんだよアレ…」
康雄は、インターホンを切ってからも
しばらくの間、一人でガクガクと震え続けるー。

訳が分からないー。
いったいー…いったい、何なのかー?

”峯崎 恵美”の目的は何なのかー。
全く分からないー。

「ーー俺が何をしたって言うんだー」
そう呟きながら、しばらく恐怖に震えつつも、
会社に向かわないといけないことを思い出し、
慌てて支度を終える康雄ー。

そして、困惑した表情のまま玄関から飛び出すー。

幸い、恵美の姿は廊下にはなかったー。
康雄は逃げるようにしてそのままアパートの階段を駆け下りると、
安堵のため息をつきながら会社に向かって歩き出したー

「ーーーーー」
がーーー
そんな様子を、アパートの物陰から
恵美が怨念に満ちた目で見つめていたー…

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!☆
だんだんと恐ろしい状況に…!!☆

ぜひ明日の最終回も見届けて下さいネ~!

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