<入れ替わり>そんな風に思われていたなんて③~未来~(完)

憧れの子からキモいと思われー、
怖がられていたことを知った彼は
自暴自棄になってしまうー。

一方、学校では…

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーね、ねぇ…紗智ー…!
 黒田くんに何か言ったー?」

恭太(香菜)は親友の紗智に、そんな言葉を投げかけていたー。

電話で、香菜(恭太)は
”ー僕のこと、キモいって思ってたんだなー
 僕の消しゴムを拾ったあとに手を洗ってたんだなー
 僕に手を振ってくれたのは、嘘だったんだなー”
と、そう言っていたー。

確かに、恭太の消しゴムを拾った後に手は洗ったー。
恭太の消しゴムがとてもべたべたしていたからだー。

そのことを直接見ていたのは親友の紗智だけ。
もちろん、他の子が離れた場所から見ていて
それを恭太に伝えた可能性もあるもののー、
タイミング的に”香菜の中身が恭太”だと知っているのは紗智だけで、
紗智本人が何か言ったのではないか、と、
恭太(香菜)はそう思って、紗智に問い正していたー。

「ーー昨日、話はしたけどー」
紗智が、そう言葉を口にするー。

「ーど、どうしてそんなことー」
恭太(香菜)は戸惑うー。

「ーーだってー…香菜、自分ではそういうこと言えないでしょ?
 誰かがガツンと言わないと、ああいう奴は理解しないからー

 いい機会だと思って」

紗智は、そう言葉を口にしたー。

”香菜”は優しすぎるー。
恭太のことが怖いのであれば一度ガツンと言った方がいいー。

そう思っていた親友の紗智は、
昨日、香菜(恭太)に対して
香菜の本心を伝えたー。

そもそも、”恭太本人”は自分を”ふつう”だと思っているようだがー、
少なくとも周囲からはそう見えてはいないー。

いつも一人でブツブツ何かを呟いているし、
香菜の方を見てニヤニヤしているのもほとんどのクラスメイトが知っているー。

「ーーーそ、そんなー」
恭太(香菜)は、そう呟くとたった今、電話で香菜(恭太)と話した際に
言われた言葉を口にしたー。

「よくも僕を裏切ったなって…すっごく怒っててー…
 …わたしの身体で何されるか分からないし、怖いよー」
恭太(香菜)がそう言うと、
紗智は「ーーご、ごめんー。わたし、香菜を苦しめるつもりじゃー」
と、戸惑いの表情を浮かべたー。

紗智が、”恭太”に、香菜の本当の想いを伝えたのは
別に悪意あってのことではないー。
本当に、”香菜のため”を思って”香菜はガツンと言えないから”と、
言ってしまっただけのことー。

それが、こんな事態になるとは思えなかったー。

「ーーだ、大丈夫ー。アイツに変なことする度胸なんてないよー。」
紗智は少し戸惑いながら恭太(香菜)を励ますー。

それでも不安そうな恭太(香菜)を見て
紗智は「ー今日、学校が終わったら直接会ってみる」と、
そう言葉を口にするー。

”恭太”の身体で香菜の家に行くのは少しハードルが高いものの、
”紗智”なら、香菜の親友で、香菜の家にもよく足を運んでいるー。
家に直接言っても不自然じゃないー。

「ーーーー…ありがとう」
恭太(香菜)がそう呟くと、
紗智は「ーわ、わたしのせいだしー。気にしないで」と、
心底申し訳なさそうに言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

♪~~~

紗智が、香菜の家に到着してインターホンを鳴らすー。

「ーーー…あ、紗智ちゃんー」
紗智は、香菜の母親とも面識があるー。
顔を出した香菜の母親は少し戸惑ったような表情を浮かべながら
そう言葉を口にしたー。

「ーお久しぶりですー。
 あの、香菜はー?

 今日、学校を休んだみたいなのでプリント類を届けに来ましたー」

紗智はそう言うと、3枚ほどのプリントを手にして
香菜の母親に見せるー。

”すぐに渡す必要があるもの”ではないのだが、
香菜の家を訪れる口実にそれを使ったー。

「ーーありがとねー。ただー…」
香菜の母親はそう言うと、2階の方を向いて不安そうな表情を浮かべたー。

”ひひひひっ♡ …あっ♡ あぁ… すごい…♡”

「ーーー!」
紗智は表情を歪めるー。

家の2階から、”香菜”の聞いたこともないような
甘い声が響いているー。

「ーーー…か、香菜の様子がおかしくてー」
香菜の母親が戸惑うー。

「ーち、ちょっと…すみませんー」
紗智は、険しい表情を歪めながら、
そう言葉を口にすると、
そのまま家の中へと入り込んでいくー。

「ーーちょっと!何してんの!!!」
気付いた時には、香菜(恭太)の部屋の扉を思いっきり開けて、
紗智は怒鳴り込んでいたー。

そこにはー、下着姿で下品な笑みを浮かべた
香菜(恭太)の姿があったー。

部屋は汚れていて、”香菜”が何をしていたのかは
聞かなくても理解できたー。

「ーーーあんた!何のつもり!?」
紗智が鬼のような形相で、香菜(恭太)にそう言い放つと、
香菜(恭太)は「松宮さんが悪いんだ!!僕は悪くない!」と、
香菜のせいにする言葉を口にしたー。

「ーふざけないで!こんな最低なことして…
 タダで済むと思ってんの!?」
紗智がそう言い放つと、香菜(恭太)は、
「ーそんなの僕の知ったことじゃないよ」と、ケラケラと笑いだすー。

そんな様子を見ながら、紗智は唖然とするー

”どうしようー…こんなの、香菜には伝えられないー”
とー。

香菜が、自分の身体でされたことを知れば、
香菜は酷く落ち込むー。
こんなことになってしまったことは、絶対に言えないー。

そしてー、すぐにやめさせないとー。

そう思った紗智は「あんた、いい加減にしないと、怒るよ」
と、そう言い放つー。

「ーーうるさい!僕が松宮さんになるんだ!」
香菜(恭太)は、そんな言葉を口にするー。

「どうせ僕はキモいやつなんだ!
 そんな風に思われてたなら、僕はもう、僕に戻りたくない!」
香菜(恭太)の言葉に、紗智はカッとなって、香菜(恭太)の頬を
ビンタしたー

「ーー何なのその開き直った態度!!
 大体、あんたがいつも香菜の方を見てひとりでニヤニヤしてるから
 気持ち悪いとか思われるんでしょ!?

 一人でブツブツいつも何か呟いてるし、
 全部、あんたが蒔いた種じゃん!!

 確かに、ばい菌扱いして揶揄ってる子たちは良くないけどさー、
 でも、香菜はそんなことしてないし、
 あんたが原因作ってんじゃん!」

紗智が、感情的になってそう叫ぶと、
香菜(恭太)は、今まで見たこともないような”怖い顔”で、
紗智を睨みつけて来たー。

”香菜がこんな怖い顔をできるなんて”と、
ゾワッと恐怖すら覚える紗智ー。

後からやってきた香菜の母親が
「さ、紗智ちゃんーどういうことなの?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーー…!」
後先考えず、香菜の部屋に乗り込んで香菜(恭太)を説教した
紗智は”しまった”と思いながらも、
もう隠し通すことはできない、と、
仕方がなく香菜の母親に事情を説明したー。

香菜の母親は酷く驚きー、
香菜(恭太)に対して身体を返すように要求ー。

しかし、香菜(恭太)は「うるさい!この身体は僕のものだ!」と、
それを否定して、家から飛び出し、
そのまま行方不明になってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーごめんー。本当に、ごめんーー」
紗智が申し訳なさそうに頭を下げるー。

翌日ー
恭太(香菜)は、紗智から昨日の出来事の報告を受けたー。

香菜(恭太)をさらに逆上させてしまったことやー、
香菜の母親にも入れ替わりのことを話すことになったことなどを
全て口にするー。

「ーわたし、後先考えずに行動しちゃうの、ダメだよねー」
紗智が自虐的にそう言葉を口にするー。

がー、恭太(香菜)は首を横に振ると、
「紗智は悪くないよ」と、優しく言葉を口にしたー。

「ーーー…あ……そういえば、髪ー…」
紗智は、恭太(香菜)を見て、
目まで隠れていた髪が、さわやかにカットされていることに気付くー。

「う、うんー。いくら何でもあのままはちょっと、って思ったからー」
恭太(香菜)がそう言葉を口にするー。

「ーー黒田って…そんな顔もできたんだー」
”恭太”の顔を見ながら、紗智がそう呟くと、
恭太(香菜)は、窓に反射した自分の顔を見つめるー。

”恭太”の顔は、今までに見たこともないような、
爽やかそうな雰囲気を見せているー。

「ーーー…”人”って中身で随分変わるんだねー」
紗智が、改めてそう言葉を口にすると、
恭太(香菜)は、複雑そうな表情を浮かべながら頷いたー。

「ーーーーーーー」
恭太(香菜)は、もちろん現状に強い不安を抱いているー。
紗智に対しても、思うところがないわけではないー。

紗智が香菜(恭太)に対して取った行動が
結果的に更なる事態を招いているのだからー。

けれど、紗智に悪気があったわけではないし、
紗智が香菜(恭太)に語った香菜の行動は
本当のことであるのも事実ー。

恭太(香菜)は、紗智のことをそれ以上責めることはしなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

香菜(恭太)はその後も行方不明のままー。

香菜の両親、恭太の両親とも、
恭太(香菜)は相談しつつ、互いの家を行き来するような形で
生活を続けたー。

香菜の両親は戸惑いつつも、今まで通り”娘”として
接してくれたし、
恭太の両親も、申し訳なさからだろうかー。
恭太(香菜)にとても良くしてくれたー。

学校にもその状況は伝わり、
元々香菜には人望があったからか、
周囲もとても気遣ってくれたー。

けれどー…
ついに、卒業まで”香菜(恭太)”は見つからなかったー。

「ーーー…まさか、このまま卒業することになるなんてー」
恭太(香菜)は、
すっかり爽やかな雰囲気に変わっていて、
卒業を迎えたこの時点では、男女問わず友達も多くなっていたー。

「本当に、ごめんねー」
紗智が改めてそう言葉を口にすると、
恭太(香菜)は「もういいよー。大丈夫。気にしないでね」と、
優しく微笑んだー。

「ーそれにしても、今、あいつ、どうしてるんだろうー」
紗智がそう呟きながら、恭太(香菜)を見つめるー。

”恭太になった香菜”が、元の恭太からは
あり得ないぐらいに爽やかになったことを考えるとー

「ーー今頃、ぼっさぼさの髪で目が隠れて、
 ブツブツ独り言をつぶやいたりしてるのかなー」

紗智が冗談めいた口調で言うと、
恭太(香菜)は困惑したような表情を浮かべながら
苦笑いしたー。

中身が変われば、人は変わるー。

恭太のように、容姿に無頓着な男子も
中身が変われば、
今のような爽やかな男子になることもあるー。

そしてー、
”香菜”のような人気者の美少女もー
中身が変わればーー…

その見た目を維持する努力をしなければー
その人気を維持する振る舞いをしなければー、
人は、転落してしまうー。

入れ替わる前に持っていた”モノ”など
いとも簡単に、失ってしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数年後ー。

大学生になり、学園祭を楽しんでいた
恭太(香菜)ー

結局、自分の身体に戻ることは出来ずに、
”黒田 恭太”として生きることになってしまったー。

がー、今、大学では恭太(香菜)は人気者だー。
友達も多くー、
いつも周囲には笑顔が絶えないー。

学園祭の今日も、楽しそうに笑いながら
恭太(香菜)が、大学の敷地内を歩いていたその時だったー。

「ーーあの」
背後から、女の声がするー。

恭太(香菜)が振り返ると、
そこには、”どこかで見たことのあるような女”が立っていたー。
とてもおしゃれな、可愛らしい雰囲気の子だー。

「ーーー…ーーあ、はいー?」
恭太(香菜)は”誰だったかな?”と、思いながら
表情を少し曇らせると、
相手が言葉を発する前にハッとしたー

「ーーえ…… ーーま、まさかー?」
恭太(香菜)が驚いた様子で言うー。

そこにいたのはーー
”自分自身”ー
高校生から大学生の年齢になって、
しかもかなりおしゃれになっていたために一瞬分からなかったー。

けれども、そこにいたのは
紛れもなく”わたし”だったー。

「ーーーー…久しぶりー」
そう言いながら香菜(恭太)が恭太(香菜)の方を見るー。

少し警戒の表情を浮かべた恭太(香菜)に対して
香菜(恭太)は少しだけ笑うと、
「ーーーごめんなさいー」と、突然頭を下げたー。

「ーーえ?」
戸惑う恭太(香菜)に対して、香菜(恭太)は
静かに言葉を発したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

家出したあの後、
誰にも見つからないように”変装”しながら
町を転々とするうちに、
”おしゃれ”をする楽しさに香菜(恭太)は
目覚めたのだというー。

その後、ある町のメイドカフェで、
働くことになり、素性を隠している香菜(恭太)にも
とても良くしてくれたー。

オーナーの中年女性は、”昔、自分も家出したことがある”と
香菜(恭太)に良くしてくれたのだー。

そこで住み込みで働き、今もそこのお世話になっているという
香菜(恭太)ー

おしゃれを楽しみながら、
メイドカフェで働くうちに、社交的な性格も身に着けて
香菜の身体に引っ張られるような形で、
香菜になった恭太は改心ー、
今では見違えるほどに、美人になったー。

高校卒業時、紗智が冗談で口にしていたような結果には、
なっていなかったのだー。

「ーーー本当に、ごめんなさいー。
 このまま過ごすことになってしまってー」
香菜(恭太)がそう言うと、
恭太(香菜)は静かに首を横に振ったー。

「ーーーそれにしてもーー
 ”わたし”随分、綺麗になったねー」

恭太(香菜)がそう言うと、
香菜(恭太)は照れくさそうに笑いながら
「ま、松宮さんが綺麗なだけだよー…僕は…身体を奪っただけだしー」と、
申し訳なさそうに言い放ったー。

もうー、高校時代のような
人を見つめてニヤニヤし続けたり、ブツブツ独り言をつぶやいたりする
恭太ではないー。

そう思った恭太(香菜)は
少しだけ笑いながら
「今の黒田くんなら、わたしの身体、似合ってると思うよー」
と、そう言葉を口にしたー。

「ーーーー」
もっと恨まれていて、罵倒されると思っていた香菜(恭太)は
少しだけ笑うー。

恭太(香菜)も、香菜(恭太)に対する不満はあったものの、
こうして再会して、すっかり恭太が変わっているのを見て、
負の感情が消し飛んでしまったー。

お互いに、今は上手く行っているー。
それならばー…

「ーーー……ねぇ、今のわたしはーー
 もう、キモくないよね?」
冗談っぽく微笑む香菜(恭太)ー

香菜として何年も生きたからだろうかー。
振る舞いも正真正銘の女子っぽく見えるー。

「ーーーーうんー怖くもないし、気持ち悪くもないよ」
恭太(香菜)がそう言うと、
香菜(恭太)は再び、照れ臭そうに微笑んだー。

再会した二人は和解してー
”これから”のことについても、しっかりと話し合い始めるのだったー

おわり

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コメント

憧れの子の身体を奪ったあとに
転落するタイプのお話は結構書いた気がするので
今回は、転落しないパターンでした~!☆

ここまでお読み下さりありがとうございました~!

…今日でゴールデンウィークも最終日ですネ~!
 お休みだった皆様は明日からファイトデス~!
ずっといつも通りだった皆様は…
明日からも頑張りましょうネ~!(私も←これデス~!笑)

コメント

  1. 匿名 より:

    予想外の綺麗なハッピーエンドになりましたね。
    この後の続きも見てみたいのでもし続編があったら嬉しいのですが。

    ところで、恭太が香菜の身体の影響も受けていい方向に変わったなら、逆に香菜の方は恭太の身体の影響を受けて気持ち悪い嫌な性格になってるみたいな展開でも面白くなりそうですよね? 立場逆転みたいになるので。

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!

      今回はあえてのハッピーエンドです~!☆

      確かにその展開も面白そうな感じも
      しますネ~!

      続編も前向きに考えてみます~!
      (香菜側が影響を受ける描写は今回の作品には入れないと思いますケド…★笑)