<入れ替わり>そんな風に思われていたなんて①~憧れ~

クラスの憧れの子と入れ替わってしまった奥手な男子。

しかし、入れ替わった後に彼は知ることになるー。

”憧れの子”から”キモい”と思われていたことをー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
いつも教室の端っこにいる男子生徒・
黒田 恭太(くろだ きょうた)は、
今日も、”憧れの子”のことを見つめていたー。

恭太は、友達がいないタイプの男子高校生ー。
伸びた前髪で、いつも目も隠れていることが多く、
コミュニケーションも苦手なタイプー。
女子の一部からは”キモい”と、言われてしまっているような、
そんな子だったー。

「ーーえ~…そんなことないでしょ~?」
友達の女子の恋愛相談にでも乗っているのだろうかー。

そんな言葉を口にしながら、今日も楽しそうに笑っているー。

彼女はークラスの女子の中でも中心的存在の一人、
松宮 香菜(まつみや かな)ー。
とても可愛らしい見た目ながら、誰にでも優しい性格で、
恭太にとっても憧れの存在だー。

「ーー分からないよ~?結構、そういう子に限って、
 急に好意を持ったりするんだから!」
香菜の友達の方がそんな言葉を口にするー。

「ーあはは…まさかー。
 そうだったら、どうしようー」
香菜がそう言葉を口にするー。

どうやら、友達の恋愛話じゃなくて、香菜の方の恋愛話のようにも聞こえるー。

がー、いずれにしても、
その話と、恭太には縁がない。

男子の友達すらほとんどいないような恭太と、
クラスの中心的な存在の一人である香菜は
”住む世界”が違うー。

香菜を”豪邸”に例えるのであれば
恭太は狭いアパートーー

いや、アパートに例えるのすらおこがましいー。
香菜が豪邸なら、自分はテントだ。
そのぐらい、住む世界が違うー。

だがーーー

「ーーあっ…」
香菜のことを考えていた恭太は、うっかりと机から
消しゴムを落としてしまうー。

しかも、最悪のタイミングで消しゴムを落としてしまい、
ちょうど、友達と話していた香菜が
自分の座席に戻ろうと、恭太の机の横を通り抜けようとした
タイミングだったー。

香菜の目の前に消しゴムが落ちるー。

「ーーーあ」
戸惑いながら、消しゴムの方を見つめる恭太ー。

がー、そんな恭太を見て、
恭太が落とした消しゴムを香菜はイヤな顔一つせずに
拾うと
「黒田くんー落ちたよ?」と、微笑みながら
消しゴムを手渡してくれたー

「ーーーあ……はいー」
恭太は、お礼の言葉すら発する言葉が出来ずに、
挙動不審になって頷くー。

”松宮さんが僕の消しゴムを拾ってくれたー”
そんなことを思いながら、嬉しそうに笑みを浮かべる恭太ー。

クラスの女子の中には、恭太のことを”菌扱い”するような子もいるー。
そんな中でも、香菜は全くそういう素振りも見せず、
今みたいに、何か困っていれば助けてくれるし、
時々、話しかけてくれることもあるー。

「ーーあ、あのーーーま、松宮さんー」
恭太は、お礼をちゃんと言おうと、
改めてそう言葉を口にするー。

がー、その時だったー。

「ーー香菜~!」
香菜を呼ぶ声が聞こえるー。

香菜の親友で、クラスメイトの滝本 紗智(たきもと さち)ー。
さっきまで香菜と話をしていた子だー。
紗智は気の強い性格で、恭太のことも嫌っている様子にも見える。

恭太は、香菜のことは大好きだったが、
紗智のことは大嫌いだったー。

「あ、ごめん~!今行く~!」
香菜が振り返って、紗智の方に向かってそう返事をすると、
「ーじゃ、午後も頑張ろうねー」と、恭太に向かって
それだけ言うと、そのまま立ち去って行ったー。

「ぁ…」
一人残された恭太は”結局、ちゃんとお礼を言えなかったー”と、
そんな風に落ち込むのだったー。

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♪~~~~

6時間目の授業が終わるー。

今日は、本当にいい日だったー。

”松宮さん”が消しゴムを拾ってくれたし、
さっきは、松宮さんが”僕”のほうを見て
ニコッと笑ってくれたー

松宮さんは、本当に可愛くて、性格も可愛いー。

恭太が、”可愛い”で頭がいっぱいになりながら
一人、笑うー。

「ーーあ」
そんな恭太の方を見て、香菜が手を振ってくれるー。
恭太が嬉しそうに香菜に手を振り返すと、
香菜は苦笑いしながら、そのまま別の方向へと視線を変えたー。

”あぁ…松宮さんって本当にいい子だなぁ…”

大好きな”松宮さん”のことを考えながら
少しだけ笑みを浮かべる恭太ー。

ようやく担任の先生がやってきて、
ホームルームの時間が始まりー、
この日の学校生活が終わるー。

恭太は、終わると同時にダッシュで教室を飛び出して
そのまま職員室に向かうー。
先生に、提出するプリントがあるため、
それをさっさと済ませて、今日は速攻で帰ろうとしていたー。

と、言うのも、今日は恭太が楽しみにしている
漫画の最新刊の発売日なのだー。

職員室に入った恭太は「失礼します!」ーーーと、
言ったつもりになりながら頭を下げて、
提出物を提出する相手ー、理科の先生の机に行くと、
そのプリントを提出するー。

「失礼しました!」と、礼儀正しく職員室を出た
”つもり”になって、そのまま階段を2段飛ばしで降りながら
走っていたその時だったー。

「ーーえっ!?」

「ーーあっ!」

偶然ー
生徒会室から出てきて、階段を上ろうとしていた
”香菜”が目の前に姿を現すー。

「ーー!!!!!!」
2段飛ばしで階段を駆け下りていた恭太はー
急に止まることができないまま、
そのまま香菜とぶつかってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーごめんなさいーごめんなさいー」
そう言おうと思ったものの、
声が出なかった”香菜”になった恭太は、
ぺこぺこと頭を下げたー。

正面衝突してしまった香菜と恭太は
信じられないことに、”入れ替わって”しまっていたー。

香菜が恭太の身体に、
恭太が香菜の身体になってしまったー。
そんな状態だー。

色々と元に戻る方法を試してみたものの、
やはり上手くいかず、恭太(香菜)は戸惑いの表情を浮かべていたー。

「ーーーーそんなに気落ちしないでー。
 きっと、元に戻れるから」

恭太(香菜)がそう言うと、
香菜(恭太)は「ーーあ、はいー」と、だけ言葉を口にしながら、
ソワソワした様子で、真っすぐを見つめたー。

「ーー…あははー」
恭太(香菜)は苦笑いしながら、香菜(恭太)を見つめるー。

極度なまでに異性に慣れていない恭太は
異性のー…しかも、自分にとって憧れである香菜の身体に
なってしまったことに緊張してー、
”僕なんかが松宮さんの身体を見ることも失礼だー”と、
ひたすら、何もしないようにしていたー。

「ーーー…とりあえずー…元に戻れるまでは、
 ”わたしのフリ”できたりするー?」
恭太(香菜)が申し訳なさそうに言うー。

「ーーま… ま、松宮さんーーー の?」
香菜(恭太)は
”松宮さんの声で喋るのも死刑に値するー”と、
自分のことを思いながらも、
仕方がなく口を開くと、
恭太(香菜)は、少しだけ考えるような表情を浮かべたー

そして、少し間を置いてから、
恭太(香菜)は「今日は、”わたしの家”に帰ってくれるー?
部屋にいれば問題ないと思うからー」と、少し戸惑いの表情を浮かべながら
そう言葉を続けたー。

「ーあ、はいーーー」
香菜(恭太)が目を逸らしながらそう言うと、
恭太(香菜)は「元に戻れるまで、一緒にがんばろ!」と、
そう言葉を口にしたー。

結局、色々話し合った結果ー、
二人は、元に戻ることができるまでお互いに相手のフリをして
過ごすことになりー。
恭太は香菜の身体で香菜の家に、
香菜は恭太の身体で恭太の家へと帰宅したー。

戸惑いながらも、それぞれの家に帰宅する二人ー。
そして、
恭太(香菜)は家に帰ると同時に、
目に涙を浮かべながら、”香菜”の親友である紗智に
スマホで連絡を取り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

昨日は、何もできなかったー。

着替えることもできなかったし、
お風呂にも入れなかったし、
トイレはどうしようもなくなって駆け込んだけれどー、
それ以上のことは何もしていないー。

香菜(恭太)は、そう思いながら
学校へとやってくるー。

「ーーーーえ… えぇ…?」
校舎に入る前に、事前にスマホで連絡を取り合って
打ち合わせをしていた通り、恭太(香菜)と合流すると、
恭太(香菜)は困惑した様子で言葉を口にしたー。

お風呂にも入らず、着替えもせず、
そのまま学校にやってきた”香菜(恭太)”の姿に驚いた様子だったー。

「ーーーえ…え~っと…黒田くんー?」
恭太(香菜)は、いつものようにニコニコしながらも
戸惑った様子を見せるー。

「ーー…え……ぼ、僕… な、何かー?」
香菜(恭太)が、戸惑いながら言葉を口にすると、
「ーーあ~~うん…え、えっと~…」と、恭太(香菜)は
周囲をキョロキョロしながら「こっちに来て」と、
それだけ言うと、後者の建物脇に香菜(恭太)を連れて移動したー。

昨日のことを色々と聞かれる香菜(恭太)ー。
お風呂にも入っておらず、着替えてもいないことを伝えると、
恭太(香菜)は表情を歪めながら、
「ーー…そ、それじゃ、わたし、困っちゃうよ~…」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーご、ご、ごめんなさい……
 どうしたらいいか…わ、分からなくてー」
香菜(恭太)がそう言うと、
恭太(香菜)は苦笑いしながら、言葉を吐き出すー。

「ーー…お風呂とか、着替えとか、
 できたら、ちゃんとしてほしいなー?
 わたしも、元に戻れるまでは黒田くんの身体でちゃんと生活するからー

 ね?わたしのためにも、お願い!」

恭太(香菜)の言葉に、香菜(恭太)は俯きながら
「あ、は、はいー」と頷くー。

”わたし”がオドオドして俯いている姿に戸惑いながらも、
恭太(香菜)は「ーー分からないことがあれば、わたしが
教えてあげるから、がんばろ!」と、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”こんなゴミみたいな僕と入れ替わっても、
 松宮さんは、イヤな顔ひとつせずに、
 優しいんだなぁ…”

香菜(恭太)は、そんなことを思いながら
教室へと向かうー。

がー、その時だったー。

クラスメイトの紗智ー…
香菜の親友である紗智が突然、背後から声をかけて来たー。

「ーーーぁ……」
女子とほとんど喋ったこともない恭太は、
今は”香菜”の身体なのに、まともな反応もできずに
挙動不審な反応をしてしまうー。

「ー香菜の身体で、そんな反応しないで!キモすぎ!」
紗智がそう言うと、香菜(恭太)はますます会話が出来なくなり、
「あ……はい」と、だけ言葉を吐き出すー。

「ーー昨日、香菜から事情は聞いてるからー」
そう呟く紗智ー。

昨日の夜、恭太の身体で帰宅した香菜が、
涙ながらに紗智に相談ー、
最初は”あんた何言ってんの!?”と、入れ替わりを信じなかった紗智も、
話をしているうちに、”恭太の中身は香菜”だと確信したー。

「ーーとりあえず、あんたが変な行動をしないように
 わたしが見張るから、よろしくー。

 下校までは、常にわたしと一緒に行動すること」

紗智は、そう言い放つー。
どうやら、香菜(恭太)が学校内で変な行動をしたりしないように監視しつつ、
香菜(恭太)が友達から話しかけられたりした際に
フォローを入れるために、紗智が、香菜(恭太)に張り付いて
見張ることに決めた様子だったー。

「ーーあ、ーーーはい、宜しくお願いします」
ボソボソと呟く香菜(恭太)ー。

紗智は早速、香菜(恭太)に対して
「そのボソボソ呟くのやめてくんない?」と、
うんざりした様子で言い放つー。

「あ、はいー、す、すみませんー」
俯きながら、香菜(恭太)はそれだけ口にするー。

が、紗智はさらに苛立った様子で、
「ー香菜はそんな喋り方しないから!
 もうちょっと普通に話せって言ってんの!」
と、声を荒げるー。

「ーーあ…… ぅ」
香菜(恭太)は、オドオドしながら
目を逸らすー。

紗智は「チッ」と、苛立った様子で、
香菜(恭太)を見つめると、
「ーっていうかさ、この状況、あんたが仕組んだんじゃないの?」と
不満そうに呟くー。

「ーーー…ぇ?」
香菜(恭太)は、突然の言いがかりに戸惑いの表情を浮かべる。

やっぱり、いつも優しい香菜とは違って、
この紗智は苦手だー。

そんな風に思うー。

がー、紗智は続けて、不満そうに言葉を口にしたー。

「ーあんた、いつも香菜の方、見てニヤニヤしてたしー、
 ”この状況”も、あんたが何かしたんじゃないの?」

とー。

「ーそ、そ、そんなことはー…」
確かに、”松宮さん”をいつも見てはいたかもしれないー。
でも、ニヤニヤしていたつもりはないー。

「ーーーー…」
紗智は、不満そうに香菜(恭太)を見つめながら、
少しだけ間を置くと、
さらに言葉を続けたー。

「ーーー……香菜、あんたのことキモがってるよー」
とー。

「ーーー…え」
香菜(恭太)は信じられない、という表情を浮かべるー。

「ーそ、そ、そ、そんなこと、ないよー」
香菜(恭太)は、少しムキになって言葉を口にすると、
「松宮さんは、ぼ、僕を見ていつも笑ってくれるし、
 昨日だと、消しゴムを拾ってくれたし!」
と、さらに言葉を続けるー。

しかしー
紗智は冷たい表情を浮かべながらそれを否定したー。

「ーーーバカじゃないのー?
 香菜、あんたのことマジで怖がってるから」

紗智の言葉に、
香菜(恭太)は呆然としながら
「え…????」と、それだけ言葉を口にしたー。

②へ続く

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コメント

憧れの子と入れ替わってしまった男子生徒…!

でも、何だか不穏な気配が漂ってますネ~!

続きはまた明日デス~!☆

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