<TSF>とっても大きな嘘

エイプリルフール…。

平凡な1日に見えるその日の中に潜む
”とっても大きな嘘”とは…?

※「TSF」のいずれかのジャンルが絡んでいるお話デス~!
 ジャンル自体がネタバレになるので、どのジャンルのお話かは
 ひみつデス~!

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「ーーおはよ~!」
妹の美里(みさと)が、今日も騒がしく、
兄の大樹(だいき)を起こしに来るー。

「ーーーーーーーーーー」
が、大樹は反応せずに、そのまま寝息を立てているー。

4月1日
エイプリルフールー。

高校生の美里と、大学生の兄・大樹は
春休みの真っ最中だったー。

「ーーーーー」
美里は少し表情を曇らせながら、
スマホを手にすると、目覚まし時計のアラームのような音を鳴らしながら
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!朝だよ~!起きて起きて起きて~!!」と、
声を上げるー

”ーーーーー!”
流石にこんなにうるさいと寝てられないー。
兄の大樹は目を覚ましたもののー
なんだかここで起きたら妹の美里に負けたような気がして、
半分意地で”寝たふり”を続けるー。

「ーーZzzzzzz…」
わざとらしく寝息を立て始める大樹ー

むすっとした美里は
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!
 起きて起きて起きて起きて起きて!」と、
耳元でそう声を発し始めるー

「あ~~~~~!くそっ!わかったよ!起きればいいんだろ!」
苦笑いしながら大樹が起き上がると、
美里は「あ、やっと起きた~!」と、無邪気に微笑んだー。

「ーーせっかくの春休みなのにー」
大樹が愚痴を口にすると、
美里は「ーーも~…お兄ちゃんってばもう忘れたの?」と、
少し呆れ顔で言葉を口にするー。

「今日は遊びに行くって言ってたじゃん
 だから起こしに来たんだよ~?」
とーー。

「ーーーえ…」
大樹はそう言葉を口にしながら
「あ!!あ!!そうだったー!」と、慌てた様子を見せ始めるー。

今日は、同じ大学に通う幼馴染の女子・香織(かおり)が
見たがっていた映画に付き合う約束をしていて、
大樹は、そのことをすっかり忘れていたのだったー。

「ーーそういえば、お兄ちゃんって香織さんと付き合ったりしてないの~?」
美里が興味深そうにそんな言葉を口にするー。

「ーーえ?あ~香織は、幼馴染だからー
 そういう感情じゃないかなぁー
 あっちもそうだし、本当に友達って感じー」

大樹はそう言いながら、
「俺には美里がいるし!」と、笑うー

「ーも~!お兄ちゃんってば妹のこと好きすぎるんだから~」
美里は照れくさそうにそう笑うと、
大樹は冗談めいた口調で「美里こそ、彼氏とかいないのか~?」と、
そう言葉を口にするー。

すると美里は「いないいない~!そもそもわたし、男に興味ないし~!」と、
笑いながら言葉を口にするー。

「えぇ~?
 あ!分かったぞ?エイプリルフールだろ!?
 美里、前はクラスの渡辺君が好きとかなんとか言ってたじゃん!」
と、指摘するー。

「あははー」
笑う美里ー。

「まぁ、”お兄ちゃん”として言うならー
 ずっと一緒にいてくれた方がうれしいけどー」
冗談を口にする大樹ー。

すると、
美里は笑いながら「ーうん!わたし、いつまでも一緒にいる~!」と、
そんな言葉を口にしながら、大樹の方を見つめたー。

照れ臭そうに笑う大樹ー。

「ーって、こんなこと言ってる場合じゃないー!
 早く準備しないと!」

そんな大輔を見て、妹の美里は
「も~!お兄ちゃんってば、いつもそうなんだから」と、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーあ!大樹~!」

待ち合せ場所にたどり着くと、
既に幼馴染の香織は到着していたー。

「ーーごめんごめんー少し予定より遅れてー」
大樹がそう言うと、
香織は笑いながら「別にまだ約束の時間の前だし、大丈夫大丈夫」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーで、今日はどんな映画を見るんだー?」
大樹がそう言いながら、映画館に向かって歩くと、
香織は少しだけ笑みを浮かべたー

「これー」
とー。

「ーーどれどれー」
香織から受け取ったスマホを手に、
素の画面を見つめると、
そこには”人が悪霊に憑依されて、暴走するー”
そんな感じの映画が表示されていたー。

「うわぁ…また怖そうなやつをー」
大樹がそう言うと、香織はクスクスと笑いながら
「優しそうな子がさー、こういう風に悪魔みたくなっちゃうの、
 なんだかゾクゾクしない?」と、スマホを手にしながら
面白そうに笑ったー

「香織って、普段は優しいのになんだか
 時々怖いよなぁ~
 敵に回しちゃいけないタイプって言うかー」

大樹が冗談めいた口調で、そう言葉を口にすると
香織は「あははははー だったら敵に回しちゃだめだよ?」と、
低い声で脅すような言葉を口にするー。

「ーーひぇっ」
大樹は怯えた仕草をしながら、
香織は「さ、映画館にー」と、指を指すー。

香織には、よく映画館に誘われるー。
しかし、大樹と香織は、大樹が妹の美里に説明した通り、
”付き合って”は、いないー。

あくまでも幼馴染の関係だー。

狙いはー

「ーーはい、それではこちら割引させていただきますのでー」
映画館のスタッフの言葉に、
香織は小さくガッツポーズをすると、
そのまま大樹と一緒に中へと入っていくー。

この映画館ではカップルで映画を見ると割引になる日が
存在していて、香織はそれを狙っているのだー。

「ーなんか、気が引けるなぁ…」
大樹が苦笑いすると、
香織は「今日はエイプリルフールだし、セーフ!」と、
そんな言葉を口にするー

「いや~…そうは言ってもなぁ」
苦笑いする大樹ー。

「こんなこと、大樹ぐらいにしか頼めなくて!」
香織が笑うと、
大樹は「ー彼氏作ればいいじゃんか~」と、揶揄うように
言葉を口にするー。

「ーも~!だって好きな人が、全然そういうの無頓着だからー」
香織がそう言うと、
大樹は笑いながら、
「香織に好かれているのに気付かないとか、そいつもアホだなぁ~ははは」と、
そう答えるー。

「ーーで、そいつ以外とは付き合う気はないってことか?」
大樹が映画館の通路を歩きながらそう言うと、
香織は「まぁ…だって、他の人と付き合ってもその人のこと考えちゃうし、
それじゃ、彼氏になった人にも失礼でしょ?」と、そう言葉を口にするー。

「ははー…まぁ、そんなに忘れらないほど好きな人なら
 仕方ないのかもなー
 
 っていうか、香織がそいつに告白すればいいんじゃないか?」

大樹がそう言うと、香織は「そいつ、してもぜんぜん気付かないし!」と、
不満そうに言葉を口にしたー

「ははは、そんな奴いるのかよ」

そんな会話をしていると、
憑依の映画が上映される8番シアターにたどり着き、
二人は座席に着席するー。

”悪霊に生徒会長が憑依されて、学校が恐怖に陥れられる話”が
始まり、香織はそんな映画を邪悪な笑みを見つめながら見ているー

”ーー映画の内容自体より、香織の顔の方が怖ぇよ”
大樹は、そんなことを心の中で思うー。

ただ、これは今に始まったことではなく
香織は昔から、そういう顔をすることが時々あるー。
普段の顔は優しそうなのに、
そんな彼女の”裏”を見ている気がして怖くなるー。

「ーーふふ」
映画内でヒロインが死んだタイミングで声を漏らす香織ー。

”いやいやいや、何喜んでるんだよー”
そう思いつつも、大樹も映画の方を見つめると、
そのままクライマックスの展開を見届けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

映画が終わり、香織は「今日もありがとうー」と、
そんな言葉を口にするー。

「はは、どういたしましてー
 相変わらず香織、ヤバい顔してたなぁー」

大樹が揶揄うー。

香織は「ーーえ…ほ、ホントに?つい無意識で」と、
少し恥ずかしそうに笑うと、
大樹は「あ、そうだー!」と、ふと言葉を口にするー。

「ーー香織さー…
 もし、俺が香織の彼氏になりたいって言ったらー
 どうするー?」

大樹のそんな言葉に、香織は「えっ!?」と、
少し驚いた様子を浮かべながら、
顔を赤らめるー。

「ーえっ…そ、それはーもーー

「ーーはははは!香織にしちゃ、面白い反応だな!
 今日は何月何日だったかなぁ?」

大樹が揶揄うようにして言うと、
香織は顔を赤らめたまま
「ば、バカッ!そういう嘘はダメ!!!!」
と、ぺしっ!と大樹の肩を叩いたー。

「ーーいてててっ!なんでそんなムキになるんだよ~!」
笑いながら、香織から逃げる大樹ー。

少し間を置いてから、大樹は笑うと、
「急にびっくりさせて悪かったよー」と、言いながら
「でも、香織にはその鈍感な好きな人がいるんだろ?
 俺が告白したりすることはないから、大丈夫!
 応援してるよ」と、そう言葉を口にしながら笑うー。

「ーーう、うんー。でもそいつ、本当に鈍感だからね~…」
香織はそんな言葉を口にしながら、少し暗い表情を浮かべると、
「ー鈍感でも、いつかは気づくかもしれないだろ?
 誰だか教えてくれれば、俺も手伝ってあげてもいいし」
と、大樹は笑いながら言い放つー。

香織は、大樹に気付かれないように軽く握りこぶしを作ると、
「ーー絶対、気付かせてあげるから」と、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

香織との映画鑑賞と、その帰りの
ついでの昼ご飯を終えて、
帰宅した大樹ー。

エイプリルフールは終わりを迎えたー。

夜ー。

「ーーそういや、美里ってエイプリルフールに嘘ついたりするのか?」
大樹が、部屋の前で妹の美里と鉢合わせした際に、
ふと、そんな言葉を口にしたー

「え~?わたし?」
美里は少しだけ考えると、
「ーー今年も、”嘘”ついたよー」と、微笑むー。

「ーはははーそっかー
 美里も嘘ついたりするんだなぁ~
 やっぱ友達相手に?」

大樹がそんな言葉を呟くー。

すると、美里は少しだけ微笑みながら言ったー。

「ーお兄ちゃんに”嘘”ついたー」
とー。

「ーーえ?俺に?」
大樹はそう言いながら
「あ、分かった!”男に興味ない”ってやつだな?」と、
閃いたかのように言葉を口にするー。

「ふふふーどうだろうね~?」
美里は答えは言わずに、そのまま部屋の扉を開けると、
「おやすみお兄ちゃん」とだけ言葉を口にして、
そのまま部屋の中へと入って行ったー。

「ーーあぁ、おやすみー」
大輔もそう返事をすると、自分の部屋の中へと入っていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」
部屋の扉を閉めて、”ふぅ”と、ため息をつくと
美里は「”男”に興味ないって言うのは、本当なんだよなー」と、
静かに呟いたー

だってー自分はーー

「ーーーーー」
美里は、その姿を”変異”させると、
気弱そうな雰囲気の30代ぐらいの男の姿へと変わったーー

「ーー僕は男だからー…男には興味ないんだよなー…」
美里から変化したその”男”は言ったー。

男はーー
数か月前に”変身薬”を手に入れた男ー。

そして、その変身薬で”他人の姿”に変身して
こっそりとお楽しみをしようとしたー。

別に、悪事をするつもりはなかったー。
ただ単に、見かけた可愛い女子高生にこっそり変身しー、
こっそりお楽しみをして、そして、元の姿に戻るつもりだったー。

だがーー…
偶然見かけて”可愛い”と思って変身した相手ー
”美里”に変身した場面を見られてしまったー。

咄嗟に近くの雑木林に逃げ込んだ男ー。

後を追いかけてきた美里に問い詰められて
パニックになった男はー、
美里を突き飛ばしてしまいー、
不運にも、美里は躓き、岩場に頭を打ち付けて”死亡”してしまったのだー。

男は、美里を隠しー、
それ以降、美里として過ごしているー。

幸い、変身能力は”記憶”までコピーできているー。
その記憶を使って、
必死に美里のフリをしながらーーーー。

今日まで過ごして来たー

今日ー、
男はとても大きな嘘をついたー。

”「ーうん!わたし、いつまでも一緒にいる~!」”

自分は”わたし”ではないのにー。
妹の美里ではないのにー。

そう、嘘をついたー。

とってもー大きな嘘ー。

「ーーもう、本当のわたしはいないんだよー…お兄ちゃんー」
美里の姿に戻った男は、寂しそうに呟くー。

”美里”として大事にされているのを実感すればするほど、
罪の意識は日に日に大きくなっていくー。

「ーーーー…」
美里の姿をした男は、悲しそうな表情を浮かべると、
そのまま、窓の外の夜空を見上げて「ごめんなさい」と、静かに言葉を口にしたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

今年のエイプリルフールに潜む嘘は”他者変身”でした~!☆

この先、
毎年、1話完結で「ジャンルひみつ」で書くのも、
面白そうですネ~!☆

今年も良い(?)エイプリルフールをお過ごしください~!☆

お読み下さりありがとうございました~!☆

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