ある日、突然”原始人”の亡霊に
憑依されてしまった女子高生ー
突然奇行を取り始める彼女を前に、
周囲の友人たちは…!?
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社会科見学で、
歴史博物館を訪れていた女子高生たちー。
4人組の女子高生が、
原始人の展示が行われているブースを歩きながら、
雑談をしているー。
「ーーーあ!これ!」
原始人の写真を前に、一人の女子高生が立ち止まるー。
「ーーーなになに~?」
他の女子高生が笑いながら、立ち止まった女子高生の方に向かうと、
その少女は、笑いながら、原始人が描かれたイラストを指さしたー。
「ーーこの人、背骨曲がりすぎじゃない?」
とー。
お調子者の女子高生・野枝(のえ)が言うと、
「ー仕方ないでしょ~!そうやって、人類は進化してきたんだから~!」と、
他の3人の女子高生のうちの一人が笑うー。
「ーーそうだけど~でも…」
野枝は、再び原始人のイラストの方に視線を戻すと、
「ぷっ!」と噴き出すー。
野枝はよく笑うタイプで、
少しでも本人が面白い、と思ったことは
周囲が白けていても、笑い続けるタイプー。
何が笑いのツボにはまったのか、
原始人のイラストを見ながら、ひとり笑う野枝を見て、
「ま~た始まった」と、他の女子生徒たちは、半分あきれ顔で呟いたー。
「ほら、まだこの先も展示場長いんだし、そろそろ行こうよ!」
眼鏡の女子生徒が言うと、
野枝は「もう少し~!」と笑いながら、原始人のイラストの方を見つめたー。
その時だったー
”ーーーお前……笑う……ひどい…”
と、いう声が聞こえたー
気がしたー。
「ーーーえ…」
野枝が、周囲を見渡すー。
だがー
周囲には誰もいないー
「ちょっと~!?野枝~!そろそろ行くよ~!」
他の女子生徒に再度声を掛けられた野枝は
「ちょっと待って~!今、なんか原始人の声が聞こえたんだけど!」
と、真顔で返事をしたー。
”不思議なお調子者”で通っている野枝の言葉に、
他の3人の女子生徒は「ちょっと何言ってるの?」とあきれ顔ー。
「ーーえ、でも、ホントに聞こえたんだってば!」
野枝の言葉に、「もう行くよ~!」と、他の女子3人は
そのまま先の展示場に進んでいくー
「え~!待ってよ~!」
野枝がそう言うとー
再び”声”が聞こえたー
”お前…俺…笑う…ひどい…許さない”
とー。
「ーーーえ?」
野枝が表情を歪めて、
再び原始人のイラストが展示されている方を向くとー
いつの間にか、原始人のイラストが、赤く光っていたー
そしてー
黒い霧のようなものが、そこから飛び出すと、野枝の身体がビクンと震えてー
野枝の表情から、笑顔が消えたー。
真顔になった野枝は、突然猫背のような姿勢になってー
そのままゆっくりと歩き始めたー。
まるでー
展示物に描かれている原始人と同じような態勢になった野枝はー、
ゆっくりと、友達たちが歩いて行った方向に向かって、歩き始めたー。
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「ーー野枝、まだ原始人のところ見てるのかな~?」
眼鏡の女子生徒が言うと、
「ーー野枝の笑いのツボ、よくわからないよね!」と
活発そうな女子生徒が笑うー。
「ーー!あ、野枝~!こっち~!」
もう一人の女子生徒が、ようやくやってきた野枝に気づいて手を振るー。
がー
野枝は、背骨を折り曲げて、
まるで原始人のような猫背で、
こっちに歩いてきていたー
「ちょっと~?今度は何をやってるの?」
活発そうな女子生徒が言うと、
野枝は、顔をあげてからー
青ざめた表情のまま呟いたー
「た、、、たすけて…身体が…勝手にー…」
とー。
「ーー…」
一緒のグループの三人の女子が唖然としているー
原始人の展示を見て笑い出したと思ったら
「声が聞こえる」と言い出し、
挙句の果ては原始人の物まねー、
だろうか。
さすがに、他の3人の女子はあきれ顔になり、
「ーーもう原始人ネタはいいよ…」と苦笑いしたー。
だがー
野枝は”本当に”乗っ取られていたー
原始人の残留思念にー。
猫背の状態で、
「えへ……俺……生身の身体ー」と呟く野枝ー。
野枝の意識と、原始人の意識が、出たり戻ったりを
繰り返しているのか、
助けを求めたり、ニヤニヤしたり、奇妙な振る舞いを
繰り返す野枝ー
同じグループの女子たちは気味悪そうに野枝を見つめるー
「ーーあ、、、…わたしの身体の中に… あぅ…う…」
再び苦しそうにうめき声を上げ始める野枝ー。
しかし、同じグループの女子三人は、
やはり、野枝の言葉を真剣には受け止めておらず、
野枝の方を見て、あきれ顔だったー。
「ーーーなんだ……ここ…は?」
野枝が片言で周囲を不思議そうに見まわすー
猫背で周囲をキョロキョロする女子高生ー。
周囲から見れば”異様”な光景と言えたー。
「ーーーへへ… へへへへ…」
野枝が博物館の中を徘徊し始めるー。
他の三人の女子生徒は
「もういい加減にしてよね!」とうんざりした様子で、
さらに別の生徒が「もう放っておいていこ」と、提案したため、
野枝はそのまま置き去りにされてしまったー。
”さすがに悪ふざけが過ぎる”
野枝は普段からお調子者で、悪戯をしたりするのも好きだが、
ここまでふざけた態度を取られると、
”まさか本当に憑依された”とは夢にも思っていない
他の三人の女子からすれば、うんざりしてしまうのも
仕方のないことであると言えたー。
「ーーーあ…ぁ…待って…」
よたよたと歩く野枝ー。
しかし、そんな野枝の声は無視されー
他の3人の女子は立ち去ってしまったー。
「ーーあぁぁぁ…うぅぅぅぅぅぅ」
頭を押さえて苦しそうにうめく野枝ー。
自分以外の誰かの意識が、入り込んできているのを
野枝は身をもって”実感”したー。
今まで経験したこともないような奇妙な感覚ー。
言葉では言い表すことのできないー
”乗っ取られていく”感覚ー。
「ーーやめて…やめて…」
近くの展示物の前で、うめき声のようにそう呟きながら
蹲ってしまう野枝ー
少しでもー
わずかでも気を抜けば、
このまま一気に自分が自分で無くなってしまいそうなー
そんな恐怖すら感じるー。
「ーー大丈夫ですか?」
野枝の異変に気付いた博物館の他の利用客が、野枝に
声を掛けるー。
しかしー
「ーうがああああっ!」
野枝は鬼のような形相で、その利用客の手を振り払ったー
「ひっ…!」
野枝を心配した女性客が悲鳴を上げるー。
「ぐるるるるるるるる…」
獣のように女性客を見つめる野枝ー。
”知らない人間”に、近づかれることはー
野枝に憑依した原始人にとってはー
”死”を意味するー。
仲間以外の人間、そして獣は、
みんな敵なのだー。
「ーーぐがあああああっ!」
野枝は鬼のような形相でそう叫ぶと、
そのまま奇妙な姿勢で走り始めたー
「な…何なの…?」
野枝に救いの手を差し伸べた女性は
困惑した表情で、立ち去って行った野枝を見つめたー。
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博物館を走り回る野枝ー。
野枝に憑依した原始人からすればー
周囲はみんな”おかしな恰好をした敵”でしか
なかったー
「ーーはぅ…ぁ…ぁ」
野枝の意識がさらに浸食されていき、
やがて野枝は、他の哺乳類のように、
4足で走り始めるー。
周囲の利用客が、
四足で走る制服姿の女子高生を見つめて戸惑うー。
「なにあれ~!?」
子連れの子供が、獣のように走る野枝を見て
声を上げるー。
「しっ!見ちゃダメ!」
野枝を見せないようにする親ー。
面白がって四つん這いで博物館を歩き回る
野枝を撮影する若い男性ー。
スカートの中も後ろからは丸見えの状態ー。
時々立ち上がっては猫背で周囲を見渡す野枝ー。
野枝は”獲物”を探していたー。
野枝に憑依した原始人は
”狩り”で主に生きていたー。
まだ、彼は、
”原始時代”を生きていたのだー。
「ーー…はぁ…はぁ… ここ…何なんだ…」
片言のような喋り方をする野枝ー。
野枝の意識はもはや、ほぼ完全に乗っ取られてー
身体は野枝であっても、その振る舞いは完全に野枝でなくなっていたー。
やがてー
野枝は、不愉快そうに、結んでいた髪を触り始めるとー
髪をおろして、ボサボサにするー。
原始人である彼からしてみれば、
髪にも違和感があったー。
そしてー
スカートや制服にも違和感を感じた野枝はー
その場で制服を引きちぎりー
ボロボロになった服を引きずりながら、
博物館の中を徘徊し始めたー
唖然とする周囲ー。
ビクッと、野枝から離れる他の利用客ー。
原始人に完全に乗っ取られてしまった野枝は、
”現代人”からは理解しがたい奇行に走り始めたー。
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「ーー野枝、遅くない?」
集合時間を迎えて、集合場所に到着していた
野枝と同じグループで博物館を見学していた
女子三人ー。
先生が野枝はどうしたのかと聞いてくるー。
「それがー
急に変なこと言い始めて、
一人でその場から動こうとしなかったので、
わたしたちだけ先に来ちゃったんです」
眼鏡をかけた女子生徒が言うと、
先生は「じゃあ、まだ展示場のほうにいるのかしら」と
心配そうに呟いたー。
「ー……」
野枝と同じグループの女子の一人が、
「ちょっとわたし見てきます」と言い放った直後ー
展示場の方から
ざわめく声が聞こえたー。
そしてー
展示スペースから、博物館の入り口付近のスペースに、
野枝が姿を現したー。
だがー
野枝は、展示されていた”原始人が使っていたという槍”を手に、
他の利用客を追い回していたー。
しかも、その姿は、半裸状態ー。
「ーえ……」
「の、、野枝…」
「な、なにしてるの…?」
同じグループだった三人の女子が野枝の方を見て唖然としているー
いやー、他のクラスメイトたちも、
先生すらも、野枝の異様な振る舞いに唖然としていたー。
「た、、、たすけて…身体が…勝手にー…」
女子生徒の一人が、野枝がさっき言っていた言葉を思い出すー。
「そういえばさっき、野枝、様子おかしくなかったー?」
一人が言うと、
眼鏡をかけた女子生徒も「そういえば、確かになんだか…」と、
とても不安そうな表情を浮かべるー。
野枝が奇声を上げながら、
彼女たちの方に向かってくるー
「ひっ…!?」
騒ぎだす生徒たちー
先生も唖然としているー。
「ーーうがああああああああああっ!」
野枝は鬼のような形相で、
「俺…村のみんなに…美味しいごはん…食べさせる!」と、
片言で発言したー
「ちょ…の、、野枝…!ちょっと…!
め、、目を覚まして…!」
野枝と同じグループだった女子の一人が、
必死に野枝を説得しようとしたー
だが、野枝はもう、完全に乗っ取られていてー
どうすることもできなかったー。
やがてー
警備員が駆け付けて、野枝を取り押さえるー。
意味不明な言葉を口走る野枝を、
生徒たちは、激しく動揺しながら見つめることしかできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくしてー
駆け付けた野枝は警察に連行されたものの、
意味不明な言動を繰り返していて、
”精神錯乱状態”と判断されたー。
野枝は、あれから1か月経過した今でも、
学校に復帰できていないー。
「ーーねぇ…野枝って本当にー」
「ーー……うん」
一緒のグループだった3人の女子たちはー
”あの時、もしもちゃんと野枝の話を聞いていればー”と、
今でも後悔し続けているのだったー。
おわり
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コメント
”原始人に憑依されるお話”というアイデアが
ずっと私の中にあったのですが、
「書くほどではないかな…?」ということで
1年以上ずっと、頭の中にあっただけの作品デス~!
そのネタを、せっかくなので1話完結という形で書いてみました!
お読みくださりありがとうございました~!
※旧サイトのときから、毎週土曜日のみ予約投稿で投稿しています!
(当日執筆する時間がないため…!)
今週まで新サイト(ここ)の予約投稿機能チェックのため、0時に投稿していますが、
来週からは旧サイト時代と同じ「12時」投稿でテストしようと思います!
(万が一予約投稿に失敗した場合は夕方までに手動で更新します)
そのため、来週の土曜日は12時(予約投稿失敗時は夕方までに)更新になります~!
明日以降(日曜日から金曜日)はいつも通り、その日に書いてお昼前後までをめどに
投稿します!
コメント
せっかくの女子高生の身体も憑依したのが原始人ではその価値が理解出来ないというか、有効利用できなさそうなので、宝の持ち腐れみたいものですね。
最後のあたりに誤字です。
「一緒にグループだった3人の女子たちはー」
正しくは 一緒のグループだった、ですね。
コメントありがとうございます~!☆
原始人ならでは(?)のあまり有効活用できていない
感じのお話にしてみました~!
誤字の報告もありがとうございます!
修正しておきました!!