<入れ替わり>そんなこと言ってません①~困惑~

年末ー。

一人、仕事帰りに居酒屋で飲んでいると
酔っ払った女性から
”身体を交換してほしい”と持ち掛けられたー。

あまりにもしつこいため、”一晩だけ”と入れ替わりを
承諾したものの、
翌日、彼女はそのことを覚えておらず、”変態扱い”されてしまう…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ねぇねぇー…一晩だけでいいからぁ~…」

若いOLに、そんな風に迫られている
サラリーマンの男ー。

年齢は同じぐらいだろうかー。
恐らく、お互いにまだ20代だろうー。

絡まれているサラリーマンの男ー、
長嶋 俊介(ながしま しゅんすけ)は、
ため息をつきながら、
「す、すみませんが他を当たって下さいー」と、
そのOLに対して申し訳なさそうに言葉を口にしたー。

「え~~!いやだ~~!一晩!一晩だけでいいから!」

かなり酔っているOLは、そんな言葉を口にするー。

俊介は、表情を歪めるー。
かなり馴れ馴れしく話しかけてきているOLを、
俊介は、正直”知らない”ー。

同じ会社の同僚でもなければ、
プライベートで付き合いのある相手でもないー。

偶然、このお店に居合わせただけの”他人”だー。

そんな彼女に今、俊介は大変なことを迫られていたー。

それはー

”一晩だけ、身体を入れ替えて過ごしてほしい”
と、いうとんでもない言葉ー。

聞けば”入れ替わりドリンク”なるものを
手に入れたらしく、
どうしてもこれを使って”男と入れ替わりたい”と、
そう言うのだー。

「ーはぁ…」
俊介はまた、ため息をついたー。

入れ替わりなんて現実にできるわけがないー。
あれは、ドラマとか映画とかアニメの世界の出来事であり、
現実で入れ替わりなど起きたら大変なことだー。

大方、酔っ払っておかしなことを口走っているだけだろうー。
そう思いながらさっきから適当にあしらっているのだが、
とにかく、”しつこい”ー

「だ~か~らぁ、本当にこれを二人で飲むだけで
 入れ替わることができるんですぅ!」

そのOLが、うんざりした様子で呟くー。

うんざりしたいのはこっちだよ、と呆れ顔で思いつつも、
だんだん面倒になってきた俊介は
「はいはい、分かりましたー。飲めばいいんですよね」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーえへへ…最初からそう言えばいいのにぃ」
嬉しそうなOLー。

年末年始もあまりまとまった休みが取れず、
明日は”今年最後の休日”ー。
せっかく、今日はのんびりと一人飲みを楽しもうと思ったのに、
この酔っ払いのOLのせいで台無しだー。

そう思いながら、もうそろそろいい加減に
”とっとと帰って欲しい”と、そう思った俊介は
”入れ替わりドリンク”だと、このOLが主張する
オレンジジュースにしか見えない色の液体を手にするー。

「ー仮にこれが本物だったとして、
 ”一晩”だけですからね?」

俊介が念を押すようにして確認すると、
OLは「もちろんですぅ~大丈夫だから~」と、そう言葉を口にするー。

「それと、仮に本当に入れ替わったとして
 元に戻る方法はちゃんとあるんですよね?」
さらに念のため、俊介が確認すると
「あるに決まってんでしょ!ごちゃごちゃうるさいよ~!」と、
OLが半ギレで言葉を口にしたー。

”こんな酒癖の悪い女、初めてみた”と、
うんざりしながら、そのOLに言われるがままに
入れ替わりドリンクを飲むとー、
突然、めまいに似たふわふわとした不思議な感触を感じたー

”ーーまさか、毒ー?”
一瞬、そんな風にも思い、警戒したものの
幸い、毒ではなかったようで、
すぐにその感覚は抜けたー。

そしてー……

「ーーーー……なんだ…何も起きないじゃないですか」
俊介が呆れ顔で言うと、
OLは「これでいいんですよぉ~これでぇ」と、
クスクス笑いながら、
何やら呂律が回らない様子で
訳の分からないことを口にしているー。

”ダメだこりゃー…完全に酔ってるー”

どうして、こんな一見すると可愛らしい雰囲気のOLが
一人でこんなに酔っ払うまで飲んでいるのだろうかー。

いやー、酒癖の良い・悪いに
男も女も関係ないか、と俊介は思いつつも
「満足して貰えたなら良かったです」と、その場を立つー。

何だか分からないが、とにかくこの酔っ払いOLは
満足してくれたようだー。

気付けば、店内も時間が遅くなってきたせいか、
入店した時よりも人が減っていて、
それなりに広い店内には、おじさんグループと、
深刻な表情で話をしている男二人の座席、
それとおばさんとおじさんの団体ぐらいしかもういないー。

「ーーあはは~ありがと~ございましたぁ」
酔っ払いのOLが、笑いながら手を振って来るー。

普段、どんな人なのかは知らないし、
興味もないが、正直もう関わりたくない。

そう思いつつ、店主に会計をお願いして、会計を終わらせると
俊介はそのまま外へ出て、帰路につくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分のアパートに帰宅した俊介は
ため息をつきながら、
いつもと同じように過ごすー。

幸い、明日は休日だー。
今日はもう遅いし、自分もある程度は酔っているから、
このまま寝よう、と、
就寝する準備を整え始めるー。

「ーーそれにしても、災難だったなぁ…」
せっかくの安らぎの時間を
訳の分からない酔っ払いのOLに邪魔されてしまったー。

まぁー…でも、
生きていれば不運なこともたまには
あるだろうし、それはそれで仕方がないー。

そんな風に思いながら、俊介は今日1日を終えて、
眠りについたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!?!?!?!?!?」
翌朝ー

目を覚ました俊介は、自分が玄関前で倒れるようにして
眠っていたことに気付き、
慌てて起き上がるー。

”えー?昨日、俺、ちゃんとベッドで寝なかったかー?”
そんな風に思いながら、起き上がる俊介ー。

飲んでいたとは言え、
昨日は酔いつぶれるほど飲んではいなかったし、
家に帰ったあとの記憶もちゃんとあるー。

間違いなく、ちゃんとベッドで寝たはずー

なのにー…

「ーーって…どこだここー?」

俊介は表情を歪めながら、
周囲を見渡すー。

周囲の景色が”どう見ても自分の家ではない”のだー。
似たような雰囲気のアパートだが、
自分の家ではない、別の誰かの家であることに気付くー

しかもー…

「は……?な、なんだよこの声ー…?」
俊介は戸惑いながら、自分の喉のあたりに触れるー。

そして、改めて
「あ…~ あ~~~ あ…」と、何度か声を出すと、
俊介は震えながら言葉を口にしたー

「ーいや…ま、マジかー
 え…?女みたいな声にー」

そこまで言葉を吐きかけて、俊介はハッとするー。

昨日の酔っ払い女のことを思い出したのだー。
確か、身体を入れ替えるとか、なんとか、
頭のおかしなことを言っていた気がするー。

そう思いながら、慌てて鏡の方に向かうとー
そこにはーーーー

「ーーーえ…… う、嘘だろー?」

鏡にはー
昨日の酔っ払ったOLが、ボサボサになった髪のまま、
呆然と立ち尽くす姿が映し出されていたー

「ーー…え… え… えー」
自分の手ー、髪ー、そして身体を見つめるOLになってしまった俊介ー。

服の上からは、胸の存在をイヤでも認識しなくてはいけない
膨らみも見えるー

「ーーは…… ちょ、ちょっと待てよー
 い、入れ替わりって本当だったのかー?」

OLになってしまった俊介は
戸惑いながら、すぐにハッとして寝ていた場所の
すぐ横に落ちていた鞄を漁るー

「あぁ、くそー…なんだか盗みを働こうとしているみたいで
 嫌な気分だな」

そんな愚痴を呟きながら、OL(俊介)はようやく目当てのものを見つけるー。

OLのスマホだー。
これを使って”自分”の電話番号に電話して、
”恐らくは俊介の身体になっているはずのOL”に連絡を取ろうと試みたのだー。

「ーー…あの人、俺の家に行ったりしてるのかなー…」
OL(俊介)は不安そうに呟くー。
別にみられて困るようなものは置いていないが、
色々と家の中をいじられたりしたら困るし、
昨日は自分自身もある程度は酔っていて考えが及ばなかったが
この酔っ払いのOLの目的が何なのか分からないー。

単純に男と入れ替わりたかっただけかもしれないが、
正直、俊介は自分で自分をイケメンとは思わない。

悪い容姿ではないと思うが、少なくとも
誰もが喜ぶようなイケメンではないことは
自分でよく分かっている。
見た目で選ぶなら、別の男ももっと見つかったはずだし、
それも解せないー。

まぁ、単に酔っ払っていて近くにいる手近な男に
声をかけただけかもしれないけれど、
もしかしたら”盗み目的”の可能性も否定できないー。

幸い、OLのスマホは指紋認証だったようで、
連絡を取ること自体は可能のようだー。

自分のスマホの電話番号に向かって、電話をかけ始めるOL(俊介)ー

「ーーーぁ」
ふと、スマホを持ちながら、鞄の中に
身分証明書が入っているのが見えて、
”念のため”名前を確認すると、
そこには”日野 紗友里(ひの さゆり)”という名前が
刻まれていたー。

やはり、ほぼ同年代のようで、
社員証に刻まれた会社名から、やはり見た目通りOLで
あることには間違いなさそうだー。

”早く電話に出てくれないかなー…
 髪とか…声とか…色々落ち着かないぞ…”

そう思いつつ、紗友里(俊介)が、俊介になっているであろうはずの
紗友里が電話に出るのを待つー。

するとー…

”もしもしー”
ようやく、俊介(紗友里)が電話に出たー。

”電話の向こう”から聞こえる自分の声に
激しい違和感を感じながらも、
紗友里(俊介)は「あ、あの…すみませんー…えっと、日野さんでよろしいですか?」と、
丁寧に言葉を口にするー。

”え……わ、わたしー…?”
俊介(紗友里)は、戸惑いの声を上げるー。

声的に、どうやら電話が掛かって来るまでは寝ていたようだー。
向こうにとっても、寝ている間に身体が入れ替わってしまった、
ということなのだろうかー。

電話の向こうから聞こえる”自分”の声に、
俊介(紗友里)は戸惑ったような反応を見せながら
言葉を口にするー

”これは…どういうことですか?どうなってるんですかー?
 どうして、わたしが男の人にー?
 あなたは、誰ですかー?”

質問攻めをしてくる俊介(紗友里)ー

「ーい、いやいやちょっと落ち着いて下さいー
 昨日、入れ替わり薬をあなたに飲まされた客ですよー」

紗友里(俊介)が苦笑いすると、
”い、入れ替わり薬?”と、俊介(紗友里)は戸惑いの言葉を口にするー。

「ーーはいー。俺が一人で飲んでたら急にあなたがやってきて、
 俺と入れ替わりたいとか、そんなこと言い始めたんですよー

 で、俺は正直、乗り気じゃなかったんですけどあなたが
 あまりにもしつこいので、まぁ…仕方がなくー…

 ただ、その場では入れ替わらずに、
 昨日、家に帰って寝て、今朝起きたらこんな状況になっていたー
 …そんな感じです」

紗友里(俊介)は、状況を手短に説明すると、
俊介(紗友里)は”わ、わたしの身体を返してください!”と、
そう声を上げるー。

「ーーは…はぁ…昨日もそう約束したじゃないですかー。
 っていうか、それはこっちのセリフですよー」

紗友里(俊介)がそう言葉を口にすると、

”一体、どういうつもりなんですか?
 人の身体を勝手に奪って!”

と、俊介(紗友里)が怒りの言葉を投げかけて来たー

「ーーは…?いやいやいや、あなたが入れ替わりたいって
 言って来たんですよ?
 なんで俺が奪ったことになってるんですか?」

紗友里(俊介)は戸惑いの言葉を口にする。

しかし、俊介(紗友里)は電話の向こうから、
感情的な口調で言葉を返して来たー

”そんなこと言ってません!”
とー。

「ーーはい?」
信じられない言葉に、紗友里(俊介)は困惑するー

”わたしの身体を勝手に奪って、どういうつもりなんですか?
 早く身体を返してください!”

まるで、俊介が入れ替わりを仕組んだような口ぶりで、
俊介を変態扱いするような物言いに、
紗友里(俊介)は腹を立てるー。

「ーーいや、そっちから言って来たんですよー。
 そういう言い方は、失礼じゃないですか?」

紗友里(俊介)がムッとした口調で言うー。

しかし、俊介(紗友里)は引かなかったー。

”わたしはそんなこと言いません!
 そうやって、酔った女の人を騙そうとするなんてー、
 最低ですね”

俊介(紗友里)がそう言い放つー

カチンとする紗友里(俊介)ー

”元に戻ったら、警察にも相談しますからー”

俊介(紗友里)のその言葉に、
紗友里(俊介)は
「(いやいや…なんだこの女ー…最悪すぎるだろー…)」と、
スマホを手にしたまま表情を歪めることしかできなかったー。

②へ続く

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コメント

相手から言われて仕方なく入れ替わったのに
相手がそのことを酔っていて覚えておらず
大変なことに…★!を描く入れ替わりモノデス~!

いきなり災難に直面してしまった彼の運命を
ぜひ見届けて下さいネ~!

コメント

  1. 匿名 より:

    酔っ払い状態とはいえ、自分から入れ替わり持ちかけといて、後からそんな事言ってませんとか、理不尽すぎてイラッときますね。

    続きがどうなるか楽しみです。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      イラッとしそうなキャラづくりをしてみたので、
      そう思っていただけて何よりデス~!

      続きもぜひ楽しんでくださいネ~!