楽しいクリスマスになるはずだったその日…
謎の寄生虫によって、
友達が寄生されていく状況に見舞われた彼女…
彼女と、友達たちの運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最初にパーティが行われていた部屋に逃げ込んだ尚美は、
「愛華ちゃん…」と心配そうな表情を浮かべるー。
梓は助かったのだろうかー。
梓を救出しに行くために、尚美たちと別れた愛華ー。
が、”その後”のことは見ていないため、
愛華は”梓を助けたあと”にヒトアヤツリムシの餌食に
なってしまったのか、
それとも梓を助けることが出来たのかも分からないー。
「ーー…ーーー」
まだ、愛華のことを100パーセント信じたわけではないー。
学校ではいつも優しいけれど、
ケーキの中に”ヒトアヤツリムシ”が仕込まれていたのは事実だし、
この部屋から最初に逃げ出す際に、尚美を突き飛ばしたのも事実だー。
突き飛ばした理由は、さっき愛華の口から直接聞かされてはいるけれど、
それも本当かどうかは分からない
けれどー…
「ーーーー恩返しは、ちゃんとしなくちゃー」
尚美は、部屋にあった飾りつけのために使ったと思われる棒を手に、
寄生された愛華が追ってくるのを待つー。
さっき、愛華は寄生されたお調子者の円花に襲撃された際に
助けてくれたー。
友達から受けたその恩返しは、友達として、ちゃんとしたいー。
そう思いながら尚美は逃げずに愛華を迎え撃つ準備をするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーえへへー ごめんね」
尚美と別行動をとっている
お調子者の円花は、一人屋敷の出口を探していたー。
がー…
円花は”ひとりで”逃げるつもりだったー。
尚美には”先に出口を見つけておく”と伝えたものの、
実際には出口を見つけ次第、すぐに屋敷を飛び出すつもりだったー。
「ー怖いモノは怖いんだし、仕方ないじゃんー」
円花はそう呟くー。
さっき、一度寄生された円花は、
”そのときのこと”を思い出しながら表情を歪めるー。
全て覚えているわけではないー
だが、ずっと幸せな夢を見ているような、
ずっと興奮と快感に包まれているようなー
”とっても不気味な”感覚だったー
もう、あんな思いは二度としたくないー。
「ーーあった!」
走りながら、そんなことを考えていた円花は、
最初に屋敷に足を踏み入れた部屋を見つけて
嬉しそうに叫ぶー。
すぐに出口の扉のところに向かって走っていく円花ー
「ーーー」
扉の目の前にたどり着くと、円花は
背後を振り返るー。
愛華、尚美、梓ー。
三人とも、円花の大事な友達だー。
こんなそそっかしてくて、いつも騒がしい円花とも
仲良くしてくれたー。
けどー
「ーーわたしには、友達を助けるために危険なところに
引き返すなんて無理!
ぜ~ったいに無理!
だからー、ごめんね!許して!」
軽い口調でそれだけ言うと、扉を開けようと
取っ手に手をかける円花ー。
がー…
円花の足元には”ヒトアヤツリムシ”が、一匹、蠢いていたー。
それに気づかない円花ー。
扉を開けると同時に、ヒトアヤツリムシが飛び跳ねて
円花のスカートの中に入り込みーーー
”アソコ”から円花の中に侵入したー
「ーーうっ…」
ビクッと震える円花ー
円花は邪悪な笑みを浮かべると、扉を閉じて、
笑みを浮かべながら屋敷の中へと引き返して行ったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーねぇねぇ、尚美ちゃんもこの子たちに
身を委ねようよ…
ふふ…
本当に、気持ちイイんだからっ」
興奮した様子で声を発する愛華ー。
尚美は、こっちの部屋に向かってくる愛華を
息を潜めながら待ち伏せしていたー。
そしてーー
扉が開くと同時に、尚美は愛華に襲い掛かったー
「ーー愛華ちゃん!今、元に戻してあげるから!」
尚美が棒を手にそう叫ぶー。
「ーーー元に戻る必要なんてない!
わたしは、この子と一緒に生きるの!」
嬉しそうに、耳から顔を出した寄生虫を自慢する愛華ー。
「ーーダメ!そう”言わされてる”だけでしょ!」
尚美がそう言いながら、「ごめん!」と叫びながら
愛華に棒を叩きつけるー。
すると、愛華の耳から寄生虫が飛び出しー、
尚美は慌てて床に落下したその寄生虫に棒を叩きつけたー
「ぁ…」
ふらふらとよろめいて、冷めてしまった料理の置かれている
テーブルに激突する愛華ー。
が、愛華はすぐに意識を取り戻して
「な…尚美ちゃんー」と、表情を歪めるー。
「ーー愛華ちゃん…大丈夫?」
心配そうに呟く尚美に対して
愛華はお礼の言葉を口にするー。
しかしー、その直後ー…
大人しい性格の梓が部屋に姿を現したー。
「ーーー…しぶといねー…二人とも」
クスッと笑う梓ー。
「ーー…あ、梓ちゃんー」
尚美は、そんな梓のほうを見て、
梓はまだ寄生されたままだと理解するー。
そしてー、
愛華を正気に戻した棒を手にしたまま、
今度は梓に向かって行くー。
しかしー
「尚美ちゃん!ダメ!」
正気に戻ったばかりの愛華が必死に叫んだー
がー、その言葉が届くと同時に、
尚美は、棒を梓に叩きつけたー。
「ーーーえ?」
尚美が、不安そうに愛華のほうを振り返るー。
「ーーーふふーー…永森さんと同じー…
バカばっかりー」
梓はクスクスと笑うと、
笑みを浮かべながら、尚美の持つ棒を奪い取ると、
それを部屋の端に放り投げたー
「ー!」
尚美が驚くー
「な、なんでー?」
愛華の説明が事実なら、衝撃を与えれば梓も正気を取り戻すはずだー。
しかし、梓は笑みを浮かべながら、尚美を見つめていて、
正気に戻っているとは思えないー。
「ーー梓ちゃんは…”もう”定着されてるー」
愛華がそう叫ぶー。
”定着”ー
確か、愛華が言っていたー。
寄生されてから時間が経って、定着されている人間でなければ救えるー、とー。
だがーー…
「え、でも、梓ちゃんはさっき寄生されたばかりじゃー」
尚美がそう言うと、梓は笑ったー。
「ーーー…わたしは、11月には”寄生”されてたよ?」
梓はそう言いながら、自分の頭をつんつんとつつくー。
「ーーえ…」
愛華が表情を歪めるー。
そうー
梓は”先月”から既に寄生されていたのだー。
だから、愛華がバットで攻撃しても、今、尚美が棒で攻撃しても
梓の身体から”ヒトアヤツリムシ”は外に出なかったのだー
既に、”梓”に定着しているからー。
「ーーでもね、わたしはみんなと違って”乗っ取られて”はいないのー。
わたしのお父さんは、微生物とか寄生虫とかそういうのを研究する
仕事をしててー…
寄生された昆虫が、寄生虫に乗っ取られないようにするーっていう
なんかよく分かんないけど、そんな研究もしてたのー」
梓はそこまで言うと笑ったー
「それを応用してー”寄生”されても、共存できる方法を見つけたー」
梓はそこまで言うと、
耳から、ミミズのような不気味な寄生虫ー”ヒトアヤツリムシ”を
少しだけ出して、笑みを浮かべるー
「ーー愚かな、人間ー」
梓がクスッと笑うー。
梓は自分の意識と寄生虫の意識が混在している状態ー。
しかし、あくまでも自分の身体の主導権は、梓本人が握っているー。
「ーーーーヒトアヤツリムシは、お父さんの仕事の伝手を使って
手に入れたのー
それで、わたしが自分で自分に寄生させたー」
梓がニヤニヤしながらそう言い放つー。
いつもの大人しく、天然な梓とは思えないー。
いいやー、梓のことだからこれも”ドッキリ”なのかもー…
そんな風に尚美が思っていると、
梓は言ったー。
「みんなはいつも”わたし”を”一番下”に見てたよねー?
口では言わなくても、わたしには分かるのー
みんなみんなみんな、”4人の一番下”としてわたしを見てたー
ずっとずっとずっとムカついてたー
だからー…この子たちをあんたたちに寄生させてー、
わたしが一番”上”に立つの!女王になるの!」
梓のそんな言葉に、
愛華は「わ、わたしー、梓ちゃんを下に見たことなんて…!」と、
反論するー。
しかし、梓は言うー。
「お金持ちのあんたに、わたしの気持ちなんてわからない!」
とー。
「ーーー…あ、梓ちゃんー…!」
尚美が困惑しながら、梓のほうを見ると、
梓は笑みを浮かべたー。
「ーケーキ食べて、”最初の被害者”になったフリをした
わたしー、演技、上手だったでしょ?
ケーキの中に寄生虫なんていなかったのにー」
梓はそう言いながら不敵に笑うー。
最初から、ケーキの中に寄生虫などいなかったー。
梓が、”愛華”に疑いを向けようとそんな演技をして、
みんなを惑わせていただけー
「ーーーーーー!」
尚美は、梓が演劇部所属であることを思い出すー。
けれど、そんなことを今、思い出してももう遅いー。
梓は不気味な笑みを浮かべると、
口から”ヒトアヤツリムシ”を2匹吐き出して笑みを浮かべたー。
「ーーーーー…ごめん!」
愛華がそう呟くと、”また”尚美を突き飛ばして一人だけ
逃げようとするーー。
「ーーあ、愛華ちゃん!そんな!」
尚美が泣きそうになりながらそう叫ぶも、
愛華は既に部屋の外へと飛び出していたー。
「ーーふふ…永森さんはそういう子だもんー」
梓は失笑しながら、尚美を見つめると、
「ーーわたしの仲間に、なぁれ」と、笑いながら
尚美に無理矢理キスをしてー、尚美の体内に”寄生虫”を送り込んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーはぁ…はぁ…いやだー…やだー…あんな風になりたくないー」
愛華は必死に逃げていたー。
普段は優しいお嬢様な愛華ー。
しかし、彼女は”パニックになると、自分だけが助かろうとする”
そんな一面も持っていたー。
最初に尚美を突き飛ばした時も、
”自分だけが助かること”で必死だったー。
一度逃げることに成功したあとに、冷静さを取り戻して
尚美を助けに戻り、”最もらしい理由”をつけて誤魔化しただけー。
けれど、今度はもうー…。
目に涙を浮かべながら逃げようとする愛華ー
がーーー
「ーーえへへ!愛華み~つけた!」
先に一人で逃げ出そうとしていたお調子者の女子・円花が
目の前に姿を現しー、
驚く愛華をその場に押し倒すと、
円花は嬉しそうにもがく愛華にキスをしたー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーさぁ、改めてクリスマスパーティを再開しよっ!」
梓が嬉しそうに言うー。
”寄生された”
愛華と尚美と円花がそれぞれ着席しながら、梓のほうを見つめるー。
「ーーふふふふー
みんな、生まれ変わった気分はどう?」
梓が”みんなの頂点”に立ったかのように
場を仕切りながらそう言うと、
愛華は笑うー
「ーふふふふー ホント、幸せー
もっと早く寄生されちゃえばよかったー」
嬉しそうに言い放つ愛華ー。
「ーーうん!わたしも…!
ねぇねぇ、食事が終わったらHなこといっぱいしていいんだよね!?」
尚美が嬉しそうにそう言い放つー。
「ーーはぁ♡ 人間のメス… んふふふふふっ」
お調子者の円花は自分の胸を揉みながら
嬉しそうに言葉を口にしているー
寄生された人間は、寄生虫に脳から記憶も引き出されて、
記憶も全て読み取られてしまうー。
そのため、元の本人の記憶や性格も受け継いだ状態で、
支配されるー。
「ーーふふ…いくらでも楽しんでいいよー」
梓はそう言うと、
「ーーじゃあ、改めて」と、ケーキのほうを見つめながら笑うー。
「ーー今日は、みんながわたしの”しもべ”になったお祝いも兼ねてー
メリークリスマス!」
梓は嬉しそうにそう言うと、邪悪な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1か月前ー…
11月ー。
「ーーー…」
父親を利用して”ヒトアヤツリムシ”を手に入れた梓は
ヒトアヤツリムシを見つめていたー。
「ーーーこの子を使えばー、わたしもー」
梓は、小さいころから気弱で、
友達の前でも遠慮してしまう自分に嫌気が差していたー。
愛華や、円花、尚美たちもそうー。
きっと、わたしのことを見下しているー。
梓は、高校に入ってから自分を変えたいと思って
演劇部に入ったり、色々試してみたけれど
やっぱり、自分の根本的な性格は変わらなかったー。
そんな梓がたどり着いたのが
”自分に寄生虫を寄生させる”ことだったー。
父の研究成果の一つを応用すれば
”乗っ取られることなく”寄生虫の力を手に入れることが出来るー。
”ヒトアヤツリムシ”は、
人間の脳の回転を速め、さらには気持ちを強くする作用もある、と
そう聞いているー。
”弱いわたしが、変わるチャンスー
永森さんたちとも、もっともっと、本音で話せるようにならなくちゃー”
梓はその日ー、
自らに”ヒトアヤツリムシ”を寄生させたー。
目論み通り、梓は自我を保ったまま、
ヒトアヤツリムシとの共生に成功したー。
だがーーー
「ーーーアイツらー…わたしを馬鹿にしてー
許せないー
そうだー…
アイツらに思い知らせてやらなくちゃー
わたしの方が”上だって”ことをー」
自我は残したままー、寄生虫をその身に宿した梓ー。
しかしー
寄生虫の影響を受け、梓は自分の意識は残してはいたものの、
その性格は狂暴化ー、邪悪な思考に染まってしまったー。
「ーーふふー
クリスマスの日とか、ちょうどいいかなー…」
梓はそんな風に呟くと、嬉しそうに笑みを浮かべたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
改めてメリークリスマスデス~!☆
今年のクリスマスはあえて”寄生”モノにしてみました~!☆!
来年もまたきっとクリスマスモノを書くと思うので、
楽しみに(?)していて下さいネ~!
ありがとうございました~!
コメント