<寄生>パラサイトクリスマス②~困惑~

クリスマスー…

友達の家で楽しいクリスマスになるはずだったー。

しかし、ケーキの中に潜んでいた寄生虫によって
悪夢のような1日へと変わっていくー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

廊下に飛び出して、乗っ取られた梓たちがいる部屋から
少し離れた尚美は身体を震わせていたー

「い…一体、何が起きているのー?」

クリスマスケーキとして用意されていた
フルーツケーキを食べた大人しい性格の梓が
ミミズのような謎の虫に”寄生”されたー。

そして、その梓に近付いたお調子者の友人・円花まで
その虫の餌食になり、支配されてしまったー。

しかも、今日、このクリスマスパーティを企画して、
自分の家に尚美を含む三人を呼んだ愛華は、
尚美を、乗っ取られた梓たちの方に向かって突き飛ばして
一人逃走するという、裏切り行為に出たー。

「ーーー……ケーキの中にあの変な虫が入っていたってことはー…
 もしかして…愛華ちゃんー…」

尚美は、そんな疑いさえ抱き始めるー。

ケーキの中に潜んでいた謎の寄生虫ー。
その寄生虫に、梓と円花は乗っ取られてしまったー。

もしー…
もしも、愛華がそれを仕組んだのだとしたらー…?

”自分以外の三人”のうち、まだ寄生されていなかった尚美を
突き飛ばして逃げたのも頷けるー。

「ーーーね~ね~!尚美~?いるんでしょ~?出て来なさいよ~!」
お調子者の円花の声が聞こえて来るー

「ーね~ね~仲間になろうよ~!
 気持ちイイよー?寄生されて乗っ取られちゃうのってー
 うふ…ふふふふ… ひひひひひひひひっ!」

円花のそんな言葉に、尚美はガクガクと震えながら、
距離を取るために、円花の声がした方向とは別の方向に
向かって走り始めるー。

本当に広い屋敷だー。
愛華はお金持ちだとは聞いているけれど、
ここまで広い屋敷に住んでいるとはー。

しかも、他の人間の姿は見当たらないー

両親はー?
それにこれだけの広さなら使用人みたいな人も
いるのではないだろうかー。

確か、さっきこの家にやってきたときには、
食事を運んでいる執事みたいな人たちの姿も見たはずー。

その人たちは、どこにー…?

「ーーー!」
尚美が曲がり角を曲がると同時に、目の前に円花が現れて悲鳴を上げるー。

「ーーえっへへへへ み~つけたー
 この子が身体の中に入るとね~
 ふふふふふ…すっごい気持ちいいから…
 尚美も試してみなってー」

円花がニヤニヤしながら、尚美のほうを見つめるー。

普段の円花に”似ている”振る舞いだが、
それでも、円花が正気じゃないことぐらいわかるー。

「ま、円花ちゃん!目を覚まして…!
 今度の大会で優勝するんだって息巻いていたの、忘れたの!?」
尚美が慌ててそう叫ぶと、
円花はニヤニヤしながら、尚美のほうを見つめたー。

「今のわたしはぁ…テニスじゃなくて、”ぺ”のほうがー」

そんな言葉を言いかけた円花は突然「ぐぇっ!?」と、声を上げて
その場に倒れ込んだー

「ーひっ!?」
尚美が驚くと、背後にはバットのようなものを持った
この屋敷のお嬢様・愛華の姿があったー

「あ、愛華ちゃんー…?」
涙目で尚美が愛華のほうを見つめると、
愛華は「どいて!」と、声を荒げながら、
円花が口から吐き出したミミズのようなものを踏みつぶしたー。

円花は意識を失って、その場に倒れ込んだままー

「ーー……あ、愛花ちゃんー…これはいったいー?」
尚美は戸惑うー。
愛華はさっき、尚美を見捨てるようにして一人で逃走したー。

しかも、寄生虫はクリスマスケーキの中に仕込まれていた。
正直、”一番怪しい”。

「ーー…話は後にしてー。
 まずは円花ちゃんを隣の部屋にー」

そう言いながら、愛華が円花を掴むと、
尚美に手伝うように促したー。

二人で何とか、円花の身体を廊下から隣の部屋に運び込むと、
愛華が表情を歪めながら言葉を口にしたー。

「ーヒトアヤツリムシ…」
その言葉に、尚美は「え…なに?」と、聞き返すー。

「ー数年前、南米の奥地で見つかった寄生虫よー。
 人間に入り込んで”人間を乗っ取ることができる”
 とっても危険な寄生虫ー。

 確か、日本では通称”ヒトアヤツリムシ”と
 呼ばれている虫…」

いつもは見せない険しい表情で、愛華はそう言うと、
「南米で見つかって、極秘に駆除されたと聞いていたけどー」と、
そんな言葉を口にしたー。

尚美からすると、愛華の言っていることが事実なのか
確かめるすべはない。

”ヒトアヤツリムシ”なんてそもそも聞いたことがないし、
仮に本当に実在するのだとしても、
”どうして”愛華がそれを知っているのかという疑問は残るー。

愛華の言っていることが全て事実だとしても
”極秘に処理された”ハズの危険な寄生虫を何故、愛華が知っているのか、
ということになるー。

「ーー…その、ヒトアヤツリ…とか言うのが、何でケーキの中にー?」
愛華を疑う尚美がそう言葉を口にすると、
愛華は「分からないー」と、そう言葉を口にするー

「けど 大丈夫ー ”定着”前なら乗っ取られた身体に
 刺激を与えれば、さっきみたいにー」

愛華はそう言うと、「ぅ…」と、うめき声を上げながら
意識を取り戻した円花のほうを見つめるー

「あ、あれ…わ、わたしはー…?
 え?なに?ケーキは?」
円花がそう言うと、尚美は「円花ちゃんー…よかったー」と、
そう言葉を口にするー。

まだ身体が痛い様子の円花は
「え…わたし、なんかしてたー?」と、不安そうに表情を歪めるー。

そんな円花を安心させる言葉をかけながら、
尚美は物陰に愛華を呼び寄せると、
「さっきのー…どういうこと?」と悲しそうに言葉を口にするー。

さっき、パーティが行われていた部屋で、
梓と円花が寄生された際に、愛華は尚美を梓たちの方に突き飛ばして
そのまま一人で逃げたー。

まるで、尚美を囮にして自分だけ助かろうとしたようなー、
そんな行動に、尚美は強い不信感を抱いていたー。

そのことを素直に告げて、”これじゃ、愛華ちゃんのことを疑うしかなくなるよ”
と、不満を漏らすー。

だが、愛華は「ごめん…でも」と、言葉を口にすると、
「ヒトアヤツリムシのことを知ってるのはこの中ではわたしだけー。
 円花ちゃんみたいに、後から助け出すことはできるけど、
 それを知ってるわたしがあそこで寄生されちゃったら、もうどうすることも
 できなかったー。だからー」と、理由を口にしたー。

あの場で尚美がもし寄生されていても、
愛華が健在であれば、あとから尚美を助け出すことができたー。

しかし、愛華があの場で寄生されていれば、
もう助け出すことはできない…
だから、愛華は尚美を突き飛ばして何とかあの場から逃げ出しー、
”梓”達に起きた異変が”ヒトアヤツリムシ”のものであるかどうかを、
資料で確認し、そしてこのバットを手に戻って来たのだと、
愛華はそう説明したー。

「ーーーー…信じて、いいんだよねー?」
尚美がそう呟くー。

愛華とは”仲良し”だと自分でも思うー。
その愛華が裏切るとは思えないー。

それに、今の話を聞く限りは、
”確かにその通りなのかもしれない”と、
合理的に感じる部分もなくはなかったー。

「ーーー…もちろんー。さっきはごめんねー
 説明してる暇もなかったから」

愛華はそれだけ言うと、
「ー!」と、表情を歪めたー。

スマホを手にする愛華ー

どうやら、愛華はちゃっかりあの部屋から
スマホも持ち出していたのだろうかー。

そう思いながら、尚美が「何をしてるの?」と確認すると、
愛華は「ー梓ちゃんが、こっちに向かってるー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーえ…なんでわかるのー?」
尚美がそう言うと、愛華は「ひみつ」とだけ呟いて、
そのまま部屋の外に向かおうとするー。

「え…どこにー?」
尚美と円花が不安そうに愛華を見つめるー。

その言葉に、愛華は振り返ると
「梓ちゃんを助けてあげないとー」と、そう言葉を口にするー。

「ーーま、待ってーならわたしもー」
尚美がそう言うと、
愛華は「大丈夫ー。それに、まとめて寄生されちゃったらおわりだからー」
と、そんな言葉を口にするー

「誰かが寄生されたら、残ってる誰かが寄生されてる子を助けるのー」
愛華はそう言うと、「そのために、ヒトアヤツリムシのこと、みんなに教えたんだから」と、
言葉を口にしてから、そのまま外に向かって行ったー。

「ーーな…何が起きてるのー?」
お調子者の円花が不安そうに呟くー。
尚美は愛華から聞いた話を手短に説明すると、
円花は「マジ…?」と、呆然とした表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

尚美たちと逃げ込んだ部屋の外に出て、
愛華は、乗っ取られたままの”梓”を探すー。

「ーーーー…」
”わたしの家には、色々なセキュリティが施されてるからー
 その気になれば、誰がどこにいるのかは分かるのー”

愛華は、心の中でそう呟くー。

ただ、家の防犯対策をペラペラしゃべるわけにはいかない。
だから、尚美たちにはこのことは言わなかったー。

「ーーー諦めて出て来なさい!」
梓のそんな声が聞こえるー。

普段大人しい梓の、強気な口調に愛華は困惑しながらも、
「ーあっち側に進んでるのねー…ならー」と、
梓を背後から襲撃できる位置に回り込むー。

「ーーーうんー…ここからならー」
木製のバットのようなものを手に、愛華がこの先の廊下にいる
梓の後ろ姿を見つめると、笑みを浮かべるー。

”ヒトアヤツリムシ”は完全に定着する前なら
衝撃を与えることで、その人間の身体から
追い出すことが出来るー。

「ーーーーーー」
意を決して、物陰から飛び出す愛華ー。
愛華は、梓めがけて、バットを叩きつけたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!」

二人で行動していた尚美と、お調子者の円花は
表情を歪めるー

屋敷の中に”ケーキの中に潜んでいた寄生虫”の姿があったからだー

「ーね…ねぇ…あの床にいるのってー…」
尚美がそう言うと、
円花は頷いて「こっちに行こう」と、別の方向を指差すー。

屋敷にいるはずの使用人らの姿を見当たらず、
愛華と梓の姿を探しながら、奔走する二人ー…

出口の場所も分からず、二人は戸惑うー

「ーねぇ…わたしは先に出口を見つけておこうと思うんだけどー」
円花がそんな言葉を口にすると、
尚美は少し考えてから「うんーわかったー」と頷くー。

「ー出口見つけたら、みんなを迎えに行くから!」
円花はそう言いながら、尚美とは別の方向に向かって行くー。

尚美は「気を付けてね!」と声を掛けると、
そのまま愛華と梓を探して、屋敷の中を走り回るー

「ーーーー!」

少し奥へ進むと、
廊下の一角に、この屋敷の執事や使用人と思われる人が
倒れていたー。

「ーーー…え… だ、大丈夫ですかー!?」
そう声をかける尚美ー。

がー、執事たちはどうやら”眠らされている”
様子だったー。

「ーーー…一体、何が起きてるのー?
 これも、ヒトアヤツリムシとかいう虫の仕業ー?」

不安そうにそう呟きながら立ち上がる尚美ー。

「ーー尚美ちゃん!」
すると、背後から尚美を呼ぶ声が聞こえたー。

振り返る尚美ー
そこには、この屋敷のお嬢様・愛華の姿ー。

「ーーあ、愛華ちゃんー…梓ちゃんはー?」
尚美がそう言うと、
「ー梓ちゃんなら大丈夫。さっき正気に戻したからー」と、笑うー。

「ーーそうーよかったー」
尚美が安堵の表情を浮かべてー
少し”油断”したその時だったー。

突然、愛華が尚美にキスをしようと襲い掛かって来るー

「ーえっ!?ちょ…な、なにをー!?」
尚美はそこまで言いかけて表情を歪めるー。

さっきのー、パーティ開始直後に
寄生された梓が、円花にキスをして寄生虫を移した時と同じだー

「ーや、やめて!」
尚美が咄嗟に振り払うと、愛華は壁に腰を打ち付けながら
笑みを浮かべるー

「ぁ~~~あ…人間って乱暴だなぁ…」
と、不気味な笑みを浮かべながら、よろよろ歩き出す愛華ー

「ーねぇ…尚美ちゃんー
 わたしも寄生されて分かったのー
 寄生されるとね…すっごく幸せで気持ちいい気分だってー」

ニヤニヤしながら、興奮した様子で近付いてくる愛華ー。

「ーーあ、愛華ちゃんー…そんな
 正気に戻って!」

尚美はそう叫ぶも、愛華が正気に戻る様子はないー。
愛華の耳からはミミズのような、例の虫が姿を見せているー

尚美は身体を震わせながら、愛華から逃げ出すと
そのまま、最初にパーティが行われていた部屋へと逃げ込むのだったー…

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

今日はクリスマスイブデス~!
皆様はどんなクリスマスになりそうですか~?

予定がある人も、仕事の人も、
虚無の皆様も、寒さに気を付けて過ごしてくださいネ~!☆!

ついでに、明日の最終回も楽しみにしていて下さいネ~笑☆

コメント