入れ替わったことを、混乱を避けるために
子供たちには内緒にしながら生活を続ける夫婦…。
元に戻ることは出来ずとも、
何とか、その状態での生活を受け入れ、
整えていく二人ー。
しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーやっぱり熱、上がって来たみたいー」
息子である正彦の熱が、夜になって上がって来たー。
いつもは元気でやんちゃな正彦も、
流石に高熱が出て、ぐったりしているー。
「ーとりあえず、午前中に貰った薬を飲んで、
明日、どうなるか、だなー」
月江(英二)が、そう言葉を口にすると、
英二(月江)は「明日の朝には下がっていればいいけどー」と、
そんな言葉を口にするー。
先月、二人は自分たちがインフルエンザになった時のことを思い出すー。
現在もまだそれなりに流行していて、
先日、正彦の学校にもインフルエンザでの欠席者が出たー、と
そんな話を聞いたばかりだったー。
「ーー…まぁ、熱が下がってないようだったら、
また診察を受けた方がいいかもなー」
月江(英二)が、そんな言葉を口にすると、
英二(月江)は「うんー…そうねー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーーー」
そんな中、偶然、娘の麗奈が目を覚まして
トイレにやってきてー、
”二人”の話を聞いてしまったー。
普段は、夫婦二人きりで話をするときも、
”子供たちが起きて来ないかどうか”警戒しながら
話をしているー。
だが、今日に限っては、警戒心が薄れてしまっていたー。
それだけ、二人とも息子の正彦が高熱を出していることを
心配しているのだー。
父として、母としてー。
しかしー…
”ーーー何でお父さんが、お母さんみたいな喋り方をしてー、
お母さんが男の人みたいな喋り方をー…?”
偶然、二人がいる部屋の扉の前を通りがかった麗奈は、
母・月江が”俺”、そして父・英二が”わたし”と言っているのを
聞いてしまったー。
「ーーーー…」
”やっぱり二人とも何だかヘンー”
そんなことを思いながら、麗奈は二人のいる部屋に顔を出すことなく、
そのままトイレへと向かったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
月江(英二)が、息子の正彦を、
病院へと連れて行くー。
「ー奥さんのほうは、症状はありませんか?」
医師にそんな言葉を言われて、
月江(英二)は一瞬、返事が遅れるー
”あぁ、そっかー…俺のことかー”
入れ替わって1か月以上ー
最近は大分慣れたけれどー、
”お母さん”とか”奥さん”とか、そんな風に呼ばれると
未だに”自分が呼ばれている”と認識できるのが
遅くなってしまうことがあるー。
少し慌てて返事をすると、
心の中で苦笑いしながら
”まぁ、今まで30年以上も男だったんだから、そんなにすぐには
慣れないよなー”
と、そんな風に頭の中で呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇ…お父さんー」
娘の麗奈が、帰宅した英二(月江)に声を掛けて来るー。
「ん?」
不慣れな様子でネクタイを外しながら、
英二(月江)が麗奈のほうを見つめると、
麗奈は静かに言葉を口にしたー。
「ー今度の誕生日ー、
何か欲しいものあるかなって思ってー」
麗奈がそんな言葉を口にすると、
英二(月江)は「ん~…」と、考え始めるー。
娘の麗奈は、ここ数年はいつも、
両親の誕生日に、お小遣いから、”ちょっとした誕生日プレゼント”を
買って、プレゼントしているー。
誕生日のちょっと前になると、”欲しいモノ”を聞いてくるのも、
いつものパターンだー。
英二(月江)は「ーー美味しい果物とか?」と、
そう言葉を口にすると、
麗奈は、じっと英二(月江)のほうを見つめたー。
「ーーーーー…ねぇ お父さんー」
その言葉に、英二(月江)は「ん?果物じゃダメだったか?」と、
そう言葉を口にすると、
麗奈は首を横に振ってから、困惑したような表情で言葉を続けたー。
「ー”お父さんの誕生日”は、まだずっと先だよねー?」
とー。
「ーーーー…!!!!」
英二(月江)は表情を歪めるー。
”誕生日”が近いのは、”月江”のほうー。
つい、自然と誕生日について聞かれてー、
”月江”として、欲しい誕生日プレゼントを答えてしまったー。
「ーー……あ、はははー
い、いや、それはそうだけど、
聞かれたからーー
随分早く聞くんだなぁって思ったけどー」
英二(月江)が、咄嗟にそんな言い訳をすると、
麗奈は不安そうに、
「お父さんと、お母さんー何かあったの?」と、
問い詰めるような口調で聞いて来たー。
「ーな、何もないよ!
あ~まだまだ先だけど、誕生日、楽しみだなぁ~ ははは」
英二(月江)は、かなり動揺した様子でそう言いながら、
麗奈の前から逃げるようにして立ち去っていくー。
そんな振る舞いが、麗奈の中での疑念をさらに強めてしまうー。
「ーーーーーーーーー…」
麗奈は、英二(月江)が立ち去っていく姿を
見つめながら、表情を曇らせることしかできなかったー。
がーーー…
そんな、麗奈の”疑念”は、思わぬ形で、”先送り”となったー。
その日の夜からー、
麗奈も体調を崩したのだー。
理由は、両親にとっても、弟の正彦にとっても
すぐに想像できるぐらいに明白だったー。
正彦のインフルエンザが、麗奈にも感染したのだー。
「ーーうぅ…」
ぐったりとした様子の麗奈ー。
そんな麗奈を、心配そうに看病する
月江(英二)ー。
「ーーー…お母さんー」
寝ていた麗奈が、目を覚まして、月江(英二)を見て
言葉を口にするー。
”お母さんとお父さんは、最近何だかヘンだー。
でもー…”
心配そうに、自分のことを見守ってくれている
月江(英二)のほうを見て
「だいじょうぶー…さっきより、少しだけ調子いいからー」と、
弱弱しくそう言葉を口にすると、
心の中で、一人呟くー
”ーー何か変だけどー…
でもーーーそれでもー…”
それでも、お父さんもお母さんもわたしと、正彦のことを
とっても大事にしてくれているのは、よく分かるしー…
何か理由があるのかもしれないー”
麗奈は、高熱でモヤモヤした状態の中、
そんな風に考えると、
少しだけ、穏やかな表情を浮かべながら、
これ以上、二人の様子がおかしいことを聞かないことを
一人、自分の中で決めて、
穏やかな表情で再び寝息を立て始めたー
「ーーー…とりあえず、平気そうかなー…」
月江(英二)は、そんな麗奈の様子を見て、
安堵のため息をつくー。
先に発熱した正彦は峠を越えたようだー。
まだ多少熱はあるが、昨日ほどではないー。
麗奈の方も、油断はできないけれど
きっと、回復してくれると信じているー。
「ーーー…!」
そんなことを思いながら、キッチンの方に移動した
月江(英二)は思わず苦笑するー。
喉が痛くなってきたー。
どうやら、また、先月に続きインフルエンザに
なってしまったのだろうかー。
とっても、ついていないー。
そう思いながら、月江(英二)は、
「ー月江には、移さないようにしないとな」と、
そんな言葉を口にしたー。
翌日ー…
月江(英二)は発熱したー。
英二(月江)も軽く発熱していてー、
結局今度は、家族全員が全滅してしまったー。
4人とも安静にして、それぞれ回復を目指すー。
そして数日後ー。
全員、ある程度熱も落ち着いてきて、
だんだんと安心感が戻って来た、
その日ー
”それ”は起きたー。
夜ー。
寝ていた家族がそれぞれ、うめき声を上げるー。
”突然変異”が起きる理由は分からないー。
しかし”また”それが起きたー。
インフルエンザが”変異”したことにより、ウイルスが、精神を他人の身体に
運び込むような、そんな作用を身に着けてしまい、
その結果、前回の入れ替わりが生じたー。
そして、今回もー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーえっ!?!?なんで僕がお母さんにー!?」
翌朝ー
月江が、そう叫びながら自分の胸を触っているー。
「ーーこ、こら!な、何をしてるの!?」
父・英二がそんな声を上げるー。
「~~~~~~~~…!?!?」
娘の麗奈になってしまった英二は、顔を赤らめながら
周囲の様子を見渡すー。
そして、息子の正彦になってしまった母・月江は
「ど、ど、どうなってるの!?」と、そう声を上げるー。
今度は、家族4人全員が入れ替わってしまったー。
月江の身体には、息子の正彦ー。
やんちゃな正彦は”お母さん”の身体で胸を触ったり、
「うわぁ…なくなってる!」と、興味深そうに騒いだりしながら、
笑みを浮かべているー。
英二の身体には、娘の麗奈ー。
しっかり者の麗奈は”父親の身体になったこと”や、
自分のことよりもまず、
”お母さん”の身体で変なことをしている正彦を止めようと
必死になっているー。
娘の麗奈の身体になってしまった父・英二は、
戸惑いながら周囲を見渡すー。
娘の身体にドキドキしてはいけない、と思いつつも
どうしても少しドキドキしてしまいながら、
必死にこの状況を把握しようとしているー。
息子の正彦になってしまった母・月江も
混乱中ー。
そして、”これじゃ…もう隠すことはできないー”と、
子供たちも巻き込まれてしまった以上、
入れ替わりのことをもう隠すことはできない、と
心の中で観念するー。
「ーーみ、みんな聞いてくれー」
麗奈(英二)が、そう言うと、
月江(正彦)が「姉ちゃん、変な喋り方~!」と
ゲラゲラと笑うー。
”母親”が”娘”のことを”姉ちゃん”と呼んでいるー。
入れ替わっているからこそ起きる、
奇妙な呼び方ー。
そんな状況に、正彦(月江)は、戸惑いながら
「ーーふ、二人とも落ち着いて聞いてー」と、
麗奈(英二)と共に、状況を説明しようとするー。
”家族の身体が入れ替わってしまったー”
そんな、恐ろしい状況をー。
「ーーー…そっかー…そういうことだったんだー
お父さんと、お母さんー…
入れ替わってたんだねー」
勘の鋭い”麗奈”は、英二の身体でそう呟いたー。
ここ最近、両親に感じていた”違和感”ー。
その正体が、ようやく分かったー。
入れ替わりの話を聞いてー、
こうして、自分たちが実際に入れ替わってー、
確信したー。
”お父さんとお母さんは、既に入れ替わっていた”のだとー。
「ーー…隠していてごめんなさいー。
でも、麗奈と正彦が混乱すると思ってー」
正彦(月江)が、そう言うと、
英二(麗奈)は「ううんー…仕方ないよー」と、
そんな言葉を口にしたー。
家族4人の入れ替わり生活が
この日、始まったー。
”仕事はどうするのか”
”学校はどうするのか”
色々な、問題が生じたー。
けれど、こうなってしまった以上、乗り越えていくしかないー。
やがて、4人は色々な困難を乗り越えて
”入れ替わったまま”の状態で、何とか新しい家族の形を
作り上げたー。
何とか、手にした幸せー。
ただー…
子供たちには、10代から30代の身体にしてしまって、
本当に申し訳ないと思っているし、
今でも身体を返せるなら、返したいと月江も、英二も思っているー。
しかし、それはついに叶わずー…
両親は、娘・麗奈と息子・正彦の身体のまま、成人を
迎えてしまったー。
入れ替わりの原因は”母・月江”の体内で起きた特殊な反応ー。
母・月江の体内にある、特殊な抗体が、
インフルエンザを変異させてしまい、毎回、それに感染した家族と
入れ替わりが起きていたー…
それが、入れ替わりの真相ー…
月江は小さい頃にインフルエンザで死にかけたことがあり、
その際に、通常の人間には生まれない抗体が生まれー
結果、その時は助かったものの、
こうしてインフルエンザを変異させるきっかけを作ってしまったー
がー…
そんなことに家族はたどり着かずー、
”どうして入れ替わりが起こったのかー”
それは、分からないまま、時は流れたー。
そしてー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーしかし、麗奈の中身が
お父さんだなんてー、不思議だよなー」
20代後半になった娘・麗奈…
中身は父親の英二である麗奈は、
大学時代に出会った男と結婚していたー。
彼には”全て”を、プロポーズされた際に打ち明けているー。
しかしー、
それでも彼は”俺が出会ったのは、今の麗奈だから、大丈夫ー”
と、そんなことを口にして、そのまま結婚に至ったー
英二自身も、既に中学時代から麗奈として生きてきたため
すっかり”心”は麗奈として振る舞うことに慣れ切ってしまっている状態で、
自分自身に違和感はないー。
「ーーーふふ、そうねー」
麗奈(英二)はそう言うと、結婚の翌年に生まれた
双子の子供を見つめながら微笑んだー
「ーーでも、このことは、子供たちには内緒にしようね?」
麗奈(英二)がそう言うと、
麗奈の夫は「あぁ、そうだなー」と、笑いながら、そう答えたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
夫婦の入れ替わり、そして家族全員を巻き込んでしまう
入れ替わりモノでした~!
他の3人も、今はそれぞれの道を歩んでいて、
それなりに上手くやっている設定デス~!
お読み下さりありがとうございました!★
コメント
最初から見てインフルになって発熱して入れ替わっていたので
どういう結末になるか予想どおりでしたが
英二が麗奈になって結婚するのは予想できませんでした笑
入れ替わりが家族だけじゃなく学校や職場にも広がりそうですネ!☆
コメントありがとうございます~!★★
入れ替わりは、母親の身体に原因があるので、
月江が近くにいない状態の、
麗奈の身体であれば、とりあえずは大丈夫…★だと思います~!笑
最終的に、集団入れ替わりになってしまいましたね。
両親が姉弟で、姉弟が両親というのは、なんともカオスですね。しかも性別が逆ですし。
ところで、英二が娘の身体で男と結婚してるということは、月江も息子の身体で女性と結婚したりとかしてるんですかね?
それにしても、姉弟が夫婦になって、性行為とかしたら、肉体はともかく、精神的な近親相姦みたいな物ですよね。
あと、入れ替わった後の姉弟とか、月江のその後も気になるので、後日談みたいな続編があったら、嬉しいとこですが、そういう予定はないのでしょうか?
コメントありがとうございます~!★
最後は大変なことになってしまいましたネ~!
その後のお話…!
予定はありませんでしたが、確かに言われてみると
色々描けそうな気もします…★!
描けそうな気がしてきたので、ネタバレしないためにも、
息子の身体になったお母さんの
現在は、今は秘密にしておきます~★笑
さすが無名さんですネ!☆
続き楽しみですネ♪♪
良い子にしてまってます笑
じゃなくて
自分は
良い娘に憑依して待ってます( *´艸`)笑
ありがとうございます~!★★
良い娘に憑依すれば、身体は良い子なのデス★!
よく考えてみると、英二が娘の身体とはいえ、男と結婚してるのって、
妻の月江からしたら、浮気っぽくないですかね?
月江がそこらへん、どう思っているのか、気になりますね。
元に戻れないから、もう入れ替わり前の関係のことは忘れて、それぞれ、新しい人生を送っていこう、みたいな感じの考えだったりとかするのでしょうか?
コメントありがとうございます~!★
それは、”こんな感じの設定”というものはありましたが、
続編を書くことにしたので、今は秘密デス…★!
まだ少し先ですが、楽しみにしていて下さいネ~!