<入れ替わり>子供たちには内緒にしよう ~家族の未来編~(後編)

とあることがきっかけで入れ替わってしまった夫婦ー。

やがて、子供たちも巻き込んだ
”入れ替わり一家”の、
行きつく先はー…?

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正彦になった母・月江は
すっかり”イケメン”になっていたー。

性格も、中身もイケメンー。
そんな感じの正彦(月江)は
学生時代も、現在の研究機関に就職してからも、
多くのアプローチを受けていたものの、
”誰かと付き合うことは考えていないので…”と、
全てを断り続けていたー。

そして、仕事にも非常に熱心に取り組み、
入社から数年で、この研究機関での仕事の
”エース級”の活躍を見せるまでになっていたー。

「ーーーーーーー…」
そんな正彦(月江)は、”あるウイルス”の研究をしていたー。

通常の業務を終わらせた後の”独自の研究”で、
仕事上で圧倒的な成果を挙げている正彦(月江)に対しては
会社側も何も言うことなく、その研究を許可してくれたー。

正彦(月江)が研究していたのは”インフルエンザ”のウイルスー。

かつて、自分と夫がー、
そして子供たちが入れ替わった理由の一つには
”インフルエンザ”が絡んでいたー。
それと、”月江自身”の特殊な変異が原因で、
家族が入れ替わってしまったのだー。

その”謎”を解明すればー

「ーーふぅ…」
ため息をつく正彦(月江)ー

元々、自分たちが入れ替わったのは”未知の現象”ー。
そう簡単に”原因を突き止めた!”だとか、
”元に戻る方法を見つけた!”だとか、
そんな簡単に済む話ではないー。

既にこの会社で何年も、”元に戻るヒント”を探しているが
未だにほとんど進んではいないー。

「ーお疲れ様ですー」
同僚の女性研究員が、お茶を手にやってくるとー、
正彦(月江)は「あ、ありがとうございますー」と、微笑むー。

「ーー”入れ替わりの研究”でしたっけー…?
 誰か、入れ替わりたい相手でもいたりするんですかー?」

同僚の女性研究員がそう言うと、
「ーははー…どうだろうね~」と、誤魔化す正彦(月江)ー。

しかし、その同僚の女性研究員は
笑いながら”ある冗談”を口にしたー。

「ー実は、”藤岡さん”、既に中身が違ったりしちゃってー?」
とー。

「ーーー!」
その言葉に、少し驚いたような表情を浮かべる正彦(月江)ー

が、すぐに何事もなかったかのように
「あははー、そんなそんなー」と、誤魔化すような言葉を
正彦(月江)は戸惑いながら口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから数か月後ー、
今日は久しぶりに”家族4人”が揃う時間が取れたー。

偶然、4人の休みや都合が合い、
元々家族4人で暮らしていた実家に、
4人が揃ったー。

「ーー久しぶり~」
娘・麗奈の身体になった父・英二がやってくると、
「父さん、完全に身も心も女になっちゃってるじゃんー」
と、母・月江の身体になっている息子の正彦が笑ったー。

「ーーま、まぁ…う、うんー」
麗奈(英二)がそう言うと、
英二(麗奈)は「お父さんは、好きな人できた頃から、
急に女の子っぽくなったよねー」と、笑うー。

「ーー…た、確かにそうかもー」
麗奈(英二)も、最初に入れ替わったあとは”男としての振る舞いの方が
目立っていたー。
が、好きな人が出来た頃から急に女っぽくなっていき、
今ではもう、”意識しないと”男の頃の振る舞いはできないし、
そもそも意識しても”何だか違和感が凄い”状態で、
完全に身も心も女になってしまっているー。

「いいなぁ~父さんはー
 俺もどうせなら、姉さんの身体になりたかったなぁ
 そうすれば、まだまだ若いし、色々楽しめたし」

月江(正彦)がそう言うと、
英二(麗奈)は「正彦がわたしの身体になってたら、絶対、
”わたしの身体”変なことに使われてそうー」と、少し
嫌そうな表情を浮かべながら言葉を口にしたー。

「ーーーーそ、そ、そこまで変なことはしないよー。たぶん」
月江(正彦)はそう言うと、
”でも、姉さんの身体なら色々コスプレとかもできたと思うしー”
と、頭の中で考えるー。

「ーーみんなごめんね~!お待たせ~!」
そんな声がして、息子・正彦の身体になっている母・月江が
ようやくやってきたー

「ーーー」
元々、家族が4人で暮らしていたこの家では現在は”月江になった正彦”と、
”正彦になった月江”が二人で暮らしているー。

麗奈になった英二は結婚前から家を出ており、
英二になった麗奈も、現在は家を出て、表向きは”妻と別居”ということに
なっているー。

麗奈自身、”中身”は若いのだし、一人暮らししたい気持ちがあったことや、
”妻”…つまり、中身は弟の正彦が、自分の経営している会社関係のことに
巻き込まれないようにするため、意図的に距離を取っている状態だったー。

「ーーーー…あ、月江ー…ひ、久しぶりー 元気だった?」
”夫”としての振る舞いをしようとするも、
やはり”女”みたいな振る舞いになってしまう麗奈(英二)ー。

「ーうんー元気元気ー。
 …あ、…無理しなくていいよ。麗奈からよく話は聞いてるしー」
正彦(月江)が苦笑いしながら言うー。

「ーそ…そうー?じ、じゃあー…うんー…ありがとうー」
”麗奈になった英二”は、既に”英二”として振る舞うことが
難しい状態にまで”女”に染まっているー。

そのことを正彦(月江)も既に”英二になった麗奈”から
聞いていたため、”無理はしなくていいよ”と、そう言葉を口にしたのだー。

4人は、それぞれ近況報告を行うー。

「ーーーじゃあ、上手くやれてるんだねー。よかったー」
正彦(月江)は、少し複雑そうな表情を浮かべるー。

”英二”は”月江”の夫だー。
その夫が、娘の身体になって、別の男と結婚したー。

浮気ではないけれど、何となく複雑な気持ちが”0パーセント”かと言われれば
決してそうではなかったー。

「ーーー……ごめんね」
それを察してか、麗奈(英二)がそう言うと、
正彦(月江)は「ううんー…わたしたちの状況は”特別”だから、仕方ないよー」と、
微笑むー。

女になって、年頃の女子を何年もやってー、
身も心も女になった夫に”前のように夫として振る舞え”というのは酷だー。

それにー、
麗奈(英二)からは、今もちゃんと”家族”としての愛情は感じるー。

形は変わってしまったけれどー、それでいいー。

どうして、夫・英二が”強く”身体の影響を受けたのかは分からないがー、
個人差もあるのだろうー。
身体の影響を受けたのではないかもしれないし、
個々の気持ちの問題かもしれないー。

そう思いつつ、英二(麗奈)の話も聞くー。

「ーわたしも会社は順調ー。
 大好きなペットに囲まれて仕事してるから、
 全然苦じゃないし!」

英二(麗奈)がそう言うと、
月江(正彦)は「姉さんの会社ー…いや、父さんって言うべきかなー
すごいもんなぁ…結構テレビとかでも見るしー」と、笑うー。

「ーーーーはぁ…」
ふいに、月江(正彦)はため息をつくー。

「父さんは、姉さんの身体で幸せそうにしてるしー、
 母さんは、俺の身体で、仕事を楽しそうにしてるしー、
 姉さんも、父さんの身体で社長だしー。
 
 あ~あ…なんか、俺だけ損してるよなぁ」

入れ替わった当時は子供だった正彦も、
今は、精神的にも大人になり、大きくため息をつくー。

「ー本当だったら、俺もまだ”20代”だったのに」
残念そうに呟く月江(正彦)の言葉に、
英二(麗奈)は「ほら、正彦ー。みんなを困らせないの」と、
”お姉ちゃん”として言葉を口にするー。

がー…その言葉を聞いた正彦(月江)は、
「それなんだけどー…」と、静かに言葉を口にし、
鞄から何かを取り出したー…。

「ーそれは…?」
英二(麗奈)がそう言葉を口にすると、
正彦(月江)は「ーー”お互いの身体を入れ替える”薬ー」と、
そう言葉を発したー

「ーーーーー」
正彦(月江)以外の三人がしばらくきょとんとしたような表情を
浮かべながら、やがて「えぇっ!?」と、声を上げたー。

「ーーわたし、就職して、研究にずっと没頭してたのは
 このためだったのー。
 ”わたしの身体”の血液と、インフルエンザのサンプルを利用して
 当時、入れ替わった原因を何とか突き止めて、
 また入れ替わりを引き起こすことができないかどうかを
 仕事の傍らでずっと研究し続けてー、ついにーー…できたの」

正彦(月江)のその言葉に、
「え…じゃあ、それを飲めば元に戻れるってこと?」と、
麗奈(英二)が驚いた様子で呟くー。

”息子”の身体を奪うことになってしまった”月江”はずっとずっと、
罪悪感を感じ続けて来たー。

そしてー、何とか元に戻るチャンスをあげようと、
ずっとこうして研究を仕事の傍らでこっそり続けて来たのだー。

研究施設に就職したのは
”施設や機材”を利用するためー。

月江によれば
”入れ替わった状態の者同士”が飲めば元に戻るのだと言うー。

ただしー、入れ替わりを人為的に引き起こすところまでは無理で、
あくまでも”入れ替わった人間を元に戻すこと”限定で、
一度戻れば、もう”もう一度入れ替わりたい”と、言うことはできないようだー

「ーーー…」
麗奈(英二)は、青ざめるー。

”今、元に戻ったら”夫”との生活が失われてしまうー”
そんなの嫌だと、心の底から思うー。

がー…

「ーーあ、ごめんー…
 あなたと、麗奈は……」

正彦(月江)が、麗奈(英二)と英二(麗奈)のほうを見て言うー。

「ーー別に、強制するんじゃなくて、
 二人は、二人で決めてもらって大丈夫だから、ねー」

正彦(月江)は、あくまでも”いいなぁ~”と、いつも口走っていた
息子の”正彦”のためにこれを開発したー。
月江自身も、正彦に申し訳ない、とずっと思っていたからこその行動だー。

だがー、娘・麗奈と、夫・英二は入れ替わった状態で
それなりに上手くやっているー。
特に”麗奈になった英二”は元に戻りたくないのは、理解しているー。

「ーーー」
麗奈(英二)が、不安そうに英二(麗奈)のほうを見つめると、
「ーわたしも、もうお父さんの身体がいいかなー
 今、会社を投げだすわけにはいかないしー」と、
”英二”として、そのまま生きていくことを口にしたー。

「ーありがとう」
麗奈(英二)は、安堵からか、そう言葉を口にすると、
正彦(月江)はにっこりと微笑んだー。

2人ともー、もう”今”が大事になっているー。
改めて、そう実感したー。

そしてーー

「ーーごめんね正彦ー。
 今まで辛い思いをさせてー…。」

入れ替わり薬を手に、そう言葉を口にする正彦(月江)ー

月江(正彦)は驚いた様子を浮かべながら
少しだけ笑うと、
静かに言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーそういえば、結局、あのあとはどうなったの?」
麗奈(英二)がそう言葉を口にすると、
仕事帰りの英二(麗奈)が笑ったー

「正彦はーーー
 結局、元に戻ってないみたいー。
 ずっと、不満を漏らしてたけどー、
 何年もお母さんの身体で暮らしてきて、
 急に自分の身体に戻れるってなったらー、
 なんだか、今の人生を捨てることがイヤになったみたいー。

 ほら、正彦も何だかんだで
 お母さんの身体でパート先に友達が出来たり、
 近所付き合いも楽しんでたからー」

英二(麗奈)の言葉に、
麗奈(英二)は「そっかー」と笑ったー。

結局、”月江”が正彦の身体で作った入れ替わり薬を使う家族は
誰もいなかったー。

何年もこの入れ替わった身体で生活してきた今ー、
みんな”元に戻る”ことで、失うものができたのだー。

だから、戻らなかったー。

正彦はあの日返事を保留にしたものの、
結局、元に戻らない道を選んだようだったー

「ーでもねー。あれから正彦、
 不満は言わなくなったみたいー。

 お母さんが”元に戻れる方法”を、自分のために必死に
 探してくれていたことが、すっごく嬉しかったんだってー」

英二(麗奈)はそう言うと、
麗奈(英二)は安堵の表情で頷くー。

「あ、ごめんー会社から。そろそろ行かないとー」
英二(麗奈)がそう言うと、
麗奈(英二)も「あ、わたしもそろそろ帰らなくちゃ」と、笑うー。

「ーーじゃあ、また今度ー。
 お父さんもー…頑張って」
英二(麗奈)の言葉に、
麗奈(英二)は照れくさそうに「そのうち、子供も生まれてお母さんになるかもー」と笑うー。

「その時は、お祝いさせてねー」

そんな言葉と共に、別れる二人ー。

家族全員が入れ替わってしまい、途方に暮れたこともあったけれど、
4人はそれぞれ、前に進み始めたー。

罪悪感や、不満もー、
月江が入れ替わり薬を作ったおかげで、みんな、払拭されたー。

”元に戻れる方法はある”
けれどー、
みんな”今”を希望したー。

だから、4人ともうしろめたさも、後悔も払拭して、
前に進み始めることができたー。

4人は今ー、改めて
新しい人生の扉を、完全に開き切ったのかもしれないー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

後日談の後編でした~!☆

入れ替わってしまった4人も、
なんとかうまく、そのまま前向きに歩んでいけそうな
結末でした~!☆

入れ替わった後の人生が充実していればしているほど、
何年も経過してから”元に戻れるよ!”と言われても、
なかなか「う~ん」になっちゃいそうな気がしたので
こういう結末にしました~!☆

お読み下さりありがとうございました!!

コメント

  1. 匿名 より:

    時代は入れ活の後日談もお願いします

    • 無名 より:

      先日、他の方(お名前がないので、同じ方でしたらごめんなさい~!)からも
      ご希望を頂いたので、
      私のメモの方に、記録しておきました~!☆

      他にもご希望を頂いている作品もあったりするので、
      まだ少し先になってしまいますが、
      いずれ登場する予定なので、楽しみにしていて下さいネ~!!

  2. 匿名 より:

    元月江は若い身体で新しい人生をエンジョイしてたのかと思えば、元に戻る方法を見つけるために頑張ってた訳ですね。

    今の幸せを手放したくないとか、自分勝手なことを考えてる麗奈(英二)と違って、親として立派です。

    ところで、もし英二(麗奈)が元に戻りたいと言っていたら、どうなったんでしょうね?

    それでも英二が戻りたくないとか言ったら、正彦が言っていたように、人生を奪ったとしか言いようがない感じになっちゃう訳ですが。

    それにしても、英二(麗奈)がこのままでいいと言ったのは本心なんですかね?

    麗奈は物分りが良すぎるとこがあるので、明らかに元に戻りたくないという英二に気遣って、元に戻らないことにした可能性もありそうな気がしますよね?

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!☆

      英二(麗奈)が元に戻りたがっていたら、
      また色々、ドタバタとしそうな感じデス~!

      たしかに、麗奈は入れ替わり前から、気配りの塊のような子だったので、
      もしかしたら…元に戻りたい気持ちも抑えている可能性もありますネ…☆!