<入れ替わり>ストーカーはお姉ちゃん~姉妹の未来編~前編

ストーカー男とお姉ちゃんが入れ替わってしまった…!

そして、妹は”選択”をしたー。

どんな選択をするのが正解だったのかー、
それはもう、分からないー。
それでも、時は過ぎていくー。

姉妹と、ストーカー男のその後の物語…!

※ストーカーはお姉ちゃんの後日談を描いた作品デス~!
 先に本編を読んでくださいネ~!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

杉本 萌美(すぎもと もえみ)は、
姉である絵梨香(えりか)と、遊園地に遊びに行った時の
写真を見つめていたー。

二人とも、とても楽しそうな笑顔ー。

二人は、とても仲良しだったー。

それはー”今”も同じー。

「ーー萌美!
 萌美が欲しがってた新発売のお菓子、帰りに見かけたから
 買ってきてあげたよ!」

姉の絵梨香が帰宅すると同時に、
萌美の部屋にやってきて、そんな言葉を口にするー。

「え…?ホントに!?ありがと~!」
萌美は嬉しそうに、絵梨香のほうを見つめるー。

ちょうど昨日、新発売のお菓子のCMをたまたま見て
”あ、これ美味しそう~!”と、萌美が言ったのを
覚えてくれていたのだろうー。

「ーーーはい、これ」
コンビニの袋からお菓子を取り出して、手渡す絵梨香ー。
それを受け取る萌美ー。

”お姉ちゃん”は優しいー。
前も優しかったけれどー、今は”もっと”優しいー。

「ーーー」
”あぁー…萌美ー今日もホントに可愛いー ふふー”

絵梨香は、お菓子に喜ぶ萌美を見つめながら、
興奮しながらそう心の中で呟くと、
「ーわたしも一緒に食べていい?」と、静かに笑みを浮かべたー

「あ、う、うん!いいよ!」
萌美がそう返事をすると、
絵梨香は萌美に身体を密着させながら、嬉しそうに
お菓子を一緒に食べ始めたー。

「ーーーー」
”お姉ちゃん”のことは今でも大好きー。

けれどー、萌美は知っているー。

”「---も、、萌美…!わたしが、、わたしが絵梨香なの!」”

1日たりとも忘れたことはないー。
半年前のあの日ー、

”ストーカー男”に言われた言葉をー。

あの雨の日ー、
萌美は”選択”をしたー。
分かっていながらも、その”選択”をしたー。

何度も、何度も何度も何度も
”もしも、別の道を選んでいたらー?”
そう、考えたこともあったー。

いや、今でもそう考えることはあるー。

けれどー、
それでもー
今、”横にいるお姉ちゃんの中身”が、
ストーカー男であると分かっていてもー…

萌美には耐えられなかったー。

ストーカー男・小田切 和馬(おだぎり かずま)ー。

今から約半年前…萌美は、
小田切 和馬という43歳の男に付きまとわれていたー。

その2か月前に
偶然、男が落としたハンカチを拾ってあげたことをきっかけに、
その男に付きまとわれることになってしまったのだー。

そんな萌美の状況に気付き、
姉の絵梨香は、萌美のことを助けようと、
小田切 和馬と直接話をつけに行ったー。

が、その際にストーカー男である和馬と、絵梨香の身体が入れ替わってしまい、
和馬は”お姉ちゃん”として、萌美と共に暮らし、
欲望のままに、萌美を可愛がったー。

一方、和馬になってしまった絵梨香は、自分自身が元に戻るため、
そして、妹の萌美を小田切和馬に傷つけさせないために
何とか元に戻る方法を探そうと奔走したー。

しかし、入れ替わった原因は”雷”ー。
もう、元に戻れる可能性が低いことを悟った彼女は、
入れ替わりの決定的な証拠を手に、なんとか姉妹の絆だけでも取り戻そうと、
入れ替わったことだけでも信じてもらおうと、行動を起こしたー。

けれどー…
萌美は、”選んだ”ー。

”今のお姉ちゃん”と生きる道をー。

萌美も、中身がストーカー男になったお姉ちゃんに対し、
だんだんと違和感を抱き始め、その日には、もう”ほぼ”気づいていたー。

けれどー、萌美は”ストーカー男になった絵梨香”の言葉を跳ね除けー、
絵梨香(和馬)と生きる決意をしてしまったー。

入れ替わったのだとしてもー
お姉ちゃんの記憶を持っていて、
今まで以上にやさしくしてくれるー
だったら、それは、もう、お姉ちゃんだよね…?

それが、萌美の決断ー。

中身がお姉ちゃんだと分かっていてもー、
あんな気持ち悪い男と一緒に過ごすことはできないー

だって、あの男を見るだけで、ストーカーされていた時のことを思い出して、
身体が震えてしまうからー。

「ーはい、あ~ん」
チョコの一部を、萌美の方に近付ける絵梨香(和馬)ー

そんな声に、ハッとすると、
萌美はそのチョコを食べて「おいしいー」と言葉を口にするー。

「ーーえへへ♡ よかったー」
絵梨香(和馬)は嬉しそうに”萌美が半分食べた”チョコを口に放り込むと、
口の中で嬉しそうにそれを舐め回すー

”んふふふふふ…もえみちゃんと同じチョコー…”
絵梨香(和馬)は激しく興奮しながらも、
萌美のほうを見つめると、
「ーーそういえば、なんかぼーっとしてたけど、大丈夫?」と、
心配そうに言葉を口にするー。

「ーーえ、あ、うんー。大丈夫ー」
萌美が少し寂しそうにそう言葉を口にすると、
”お姉ちゃんが守ってあげなくちゃ”という感情が、
絵梨香(和馬)の中に溢れていくー。

”ー不思議だよな… 時間が経てば経つほど、
 僕は、本当のお姉ちゃんになっていくー”

絵梨香(和馬)はそんな風に思うー

今でも、”萌美ちゃん”として、萌美のことは大好きだし、
萌美のことを妄想しながら、絵梨香の身体で一人、イクぐらいには、
萌美のことが大好きだー。

しかしー…

自分が和馬であった頃のように、萌美が怖がるようなことを
することはー、”今のわたし”にはできないー。

この身体でいると、萌美のことを大切にしようという気持ちが
溢れて来るー。

それは、この身体のせいなのかー、
あるいは自分が”杉本 絵梨香”という女子高生になって、
気持ちに余裕が出来たのかー
それは、分からないー。

いずれにせよ、今は、萌美のことを”お姉ちゃん”として
心底愛しているー。

そんな、”自分がお姉ちゃんになっていく”ことを自覚しながらも、
その変化にも、絵梨香になった和馬は興奮していたー

”どんどん僕がお姉ちゃんになっていくこの気持ちの変化ー…
 たまらないー…えへへへー”

絵梨香(和馬)が、そんな風に思いながら、
一人笑みを浮かべると、萌美は「あ、そうだー…お姉ちゃんー」と、
勉強の相談を持ち掛けられるー。

絵梨香(和馬)は、”姉”として親身になって萌美の相談に乗りながら、
勉強を教えていくー。

”お姉ちゃん”になった直後は、こういう場面で、萌美の髪のニオイを嗅いだり、
不自然に身体を密着させたり、
褒める時はどさくさに紛れて絵梨香の身体でキスをしたりもしたがー、
萌美に「お姉ちゃんー…そういうのはちょっとー」と、言われたことは
全てやめたー。

萌美に困った顔をされると、
強い罪悪感…”可哀想”という気持ちが身体の底から
噴き上がって来るー

これもまた、”お姉ちゃんの身体”だからなのかもしれないー。

「ーーうん!それで大丈夫!」
勉強を教え終えると、絵梨香(和馬)は少し得意気に
そう言い放つー

「ありがとうーお姉ちゃん」
萌美はお礼の言葉を口にすると、絵梨香(和馬)は
「また何かあったら聞いて!わたし、萌美のためなら
 いつでも駆け付けるから!」と、笑いながらそのまま
部屋の外へと出て行ったー。

「ーー僕が、勉強するなんてなー」
絵梨香(和馬)は笑うー。

入れ替わったばかりの頃、萌美から勉強のことを相談されて、
答えられなかったことがあるー。

その時の、萌美の悲しそうな顔が忘れられずー、
”萌美ちゃんのためにー”と、絵梨香(和馬)は必死に
色々勉強したー。

元々、和馬は学生時代、成績も悪かったが、
信じられないことに、絵梨香の身体では
”嘘のように、すぐに勉強したことが身についたー”

「ーうへへへー僕と違って、脳も立派なんだろなぁ」
そんなことを、当時、呟いたのを覚えているー。

半年も経過した絵梨香(和馬)は、
今や、当時よりもさらに”お姉ちゃん”になっていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーう~ん…別にー…」
苦笑いする絵梨香(和馬)ー。

絵梨香は妹の萌美と同じく、高校生ー。
和馬は、絵梨香の身体で女子高生ライフも楽しんでいたー。

「別に…って、絵梨香、雄太郎(ゆうたろう)くんのこと好きだったじゃんー?」
絵梨香の友達・雅恵(まさえ)がそんな言葉を口にするもー、
「ーーう~ん……え~、でも、今はそんな気分じゃないしー」
絵梨香(和馬)はそう言葉を口にすると、
友達の雅美は戸惑いの表情を浮かべながらも笑うー。

「ーーーーーー…~~」
雅恵は、絵梨香(和馬)から少しイヤらしい視線を向けられているような感じが
して、心地の悪さを感じながら、「なんかー…その、最近、少し変わったよねー」と、
そう言葉を口にするー。

”絵梨香としての記憶”も持つ和馬は、高校では
絵梨香として”女子高生のわたし”を楽しんでいるー。

下心を持って、友達を見たりしたことも、数えきれないほどだー。

がー、和馬は”絵梨香としての人生を壊さないように”と、
いうことは気を付けていたー。

それは全て”萌美ちゃん”と一緒にいるためー。

絵梨香の様子が明らかにおかしいと気付けばー、
いいやー、もう気付いているのだとは思うー。
いずれにせよ、”ちゃんとしたお姉ちゃん”として振る舞うのをやめたとき、
萌美は、自分のことを”お姉ちゃん”としては見てくれなくなるー…
そんな気がしていたー。

だから、絵梨香(和馬)は、絵梨香として、高校では振る舞い続けていたー。

とは言え、無理なものは無理だー。

どうにも、男子と恋愛する気にはなれないー。
自分はやっぱり、男ー…しかも、周囲から気持ち悪がられるようなー
そんなタイプの男だったのだからー。

「ー人は、変わるものでしょー」
絵梨香(和馬)はそう呟くー。

そう、人は変わるー。
自分も、絵梨香の身体になって半年を過ごし、
大分変わった気がするー。

そう思いつつ、雅恵のほうを見ると、
「ま、まぁ、それはそうだよねー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーあ!」
絵梨香(和馬)がスマホの音に気付いて、スマホを確認すると、
嬉しそうに笑みを浮かべるー。

「ーーーーも~…また萌美ちゃんでしょ?」
雅恵が呆れ顔で言うと、
絵梨香(和馬)は、嬉しさを隠しきれない、という様子で
ニコニコしながら「うふふふ♡ わかる?萌美からLINEがきた! うふー…ふふ」と、
とても嬉しそうに、萌美からのLINEを見つめ始めたー。

「ーーーも~~~~…萌美ちゃん、好きすぎでしょ」
雅恵は苦笑いしながらそう言うと、
絵梨香(和馬)は、顔を赤くしながら、萌美からのLINEを
一文字一文字、嬉しそうに読み始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日ー。

絵梨香(和馬)と、萌美は一緒に買い物に出かけていたー。

「ーーあ、萌美~!こんな服、似合うんじゃない?」
絵梨香(和馬)が、売られていた可愛らしいメイド服を
指差しながら、萌美のほうを見つめるー

「ちょ!?無理無理無理ー!そんな服は無理だってば!」
萌美が、恥ずかしそうにそう言葉を口にするー。

萌美のメイド服姿を妄想して
鼻血を出しそうになりながらも、絵梨香(和馬)は、
それ以上は勧めずに、「冗談冗談~」と笑うー。

”和馬としての下心”は当然残っているー。

けれど、今は”萌美”の嫌がることは、もうできなくなってしまったー。
それ以上に、”萌美を守りたい”というそんな想いが強くなったー。

自分が”お姉ちゃん”に浸食されているようなそんな感覚ー。

けれど、自分がどんどんどんどん
”ストーカー”から”お姉ちゃん”に、染まっていくようなこの感覚も、
和馬は嫌いじゃなかったー。

むしろーー

「”わたし”がどんどん”絵梨香”になっていくこの感じー…
 たまんないー」

絵梨香(和馬)は、ペロリと唇を舐めながら笑うー。

この前も、こっそり絵梨香の部屋に入って、
絵梨香の私物のニオイを嗅いだり、ペロペロしたりしようとしていたものの、
部屋に入った途端に、

「あ!萌美ったらこんなに部屋を散らかしてー!」
と、急にお姉ちゃんスイッチが入ってしまいー、
結局、萌美のために部屋を整理して、掃除までしてしまったー。

だんだん、お姉ちゃんになっていくー
入れ替わって半年ー。
この感覚は、とても最高でー…
この先、”もっともっとお姉ちゃん”になっていきたいー、という
そんな想いが日に日に強まっていたー。

そんなことを思いながら、
萌美と楽しく買い物を続ける、絵梨香(和馬)

だがーーー

「ーーーーーーー萌美ーーー…」

その物陰から
和馬(絵梨香)が、二人を見つめていたー。

妹のストーカー男と入れ替わってしまい、
妹に”捨てる”選択をされてー、
身体だけではなく、立場まで奪われてしまった姉・絵梨香は
半年前のあの日、決意したー。

”いつまでも、萌美を影ながら見守るー”

とー。

そしてー、
その想いは歪み、
”お姉ちゃん自身がストーカー”に、
そうなってしまっていたー。

「ーーーー……」
和馬(絵梨香)は、二人のほうを羨ましそうに物陰から見つめると、
ギリッと歯ぎしりをしながら「萌美ー…」と、今一度静かに
愛しの妹の名前を呟いたー。

<中編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「ストーカーはお姉ちゃん」の後日談デス~!

今になって、後日談を書くことになるなんて、
私自身も少しびっくりでした~笑

でも、こうして一度は閉じた物語の世界を
また広げていくことができるのは、
楽しいですし、嬉しいことデス…!

今は火曜日が毎週予約投稿の都合上、
続きはまた来週の火曜日になりますが、
楽しみにしていて下さいネ~!

コメント