<憑依>映画館デート①~異変~

彼女との初デートは映画館…!

しかし、待ち合わせ場所の映画館に到着すると、
そこには誰の姿もなくー…?

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高校生の菅沼 久雄(すがぬま ひさお)は、
ドキドキしながら、町外れの映画館にやって来たー。

今日はー
”人生で初めてのデート”の日ー。

久雄はこれまで、同性と一緒にいる方が気を遣わなくて楽、という
考えの持ち主で、異性とは積極的に関わろうとせず、
同性とばかり遊んでいる、そんなタイプの学生だったー。

もちろん、今もそれに変わりはないのだがー
数か月ほど前に”転機”が訪れたー。

そのきっかけが”文化祭の実行委員”になったことー。

真面目でも不真面目でもなくー
異性と積極的に関わろうとしないだけで、
特に好きでも嫌いでもないー…
そんなクラスの中心でも端っこでもないような、
久雄にー、

初めて”親しい女子”が出来たのだー。

きっかけは、間違いなく文化祭の実行委員だったー。

その相手ー
牧村 美咲(まきむら みさき)とは、
最初はただ単に一緒になっただけでー
クラスメイトではあったものの、
お互いに事務的な会話以外はしたことがない、というような
そんな間柄だったー。

久雄の側は、単純に”何となく”文化祭実行委員に立候補しただけだったし、
美咲の方も、別に久雄を意識して立候補したわけではなかったー。

だがー
文化祭の準備を色々していくうちに、
久雄は、美咲のしっかりとした一面に惹かれていきー、
美咲の方も、久雄のちゃんと気配りできる一面や、
何だかんだ言って優しい部分に惹かれー、
さらにはお互いに”映画”が好きな趣味もあったことで、
次第に話が弾むようになって、
意気投合したー。

文化祭本番を迎えた頃には、二人はすっかり仲良くなっていてー
高校2年生になって、久雄は”初めて”女子と一緒に
文化祭を回るー…なんてことも経験したー。

そして、文化祭終了後に、
久雄は美咲に告白したー

「ー俺、人生で自分から告白することなんて絶対にないと思ってたけどー」
と、恥ずかしそうにしながら、久雄が告白すると、
美咲も笑いながら
「わたし、人生で告白されることなんて一度もないと思ってたー」と
微笑みながら、久雄の告白に”OK”を出したのだったー。

「まさか、久雄に彼女ができるなんてなぁ~」
親友の倉田 一成(くらた かずなり)に、彼女が出来たことを報告すると、
一成は笑いながら”牧村さんのこと、俺も好きだったのに、先を越されちゃったか~”などと
冗談を言いながらも、祝福してくれたー。

そして、今日が初めてのデート。

文化祭終了後には、期末試験も控えていたために
”それが終わるまでは”と、こうして外に出かけるデートは
控えていたため、
試験が終わり、ひと段落ついた時期の初デートとなったー。

待ち合わせ場所の映画館の前にやって来る久雄ー

”デートってみんな、こんな緊張してるものなのかー?”
ソワソワした様子で周囲を見つめるー

元々、町外れに存在するこの映画館は、
場所があまり良くないことからー
あまり人が多くは訪れない。

だが、逆に
そんな”静かな環境”だからこそ、
映画を見るのには、ある意味最適と言えたー。

映画好きの二人にとってすれば、まさに持ってこいの場所と言えるー。

「ーーーーー」

待ち合わせ時間が5分後に迫るー。

”ーー牧村さん、意外とギリギリなんだなー”
苦笑いする久雄ー。

もちろん、遅刻している訳ではないし、
ギリギリでも全然何も思わないー。

だが、普段のしっかり者で、学校にも絶対に遅刻せずに、
15分前ぐらいにはもう到着している美咲の様子からすると、
5分前にも到着していない、というのは少し意外だったー。

のんびりと映画館の前で待つ久雄ー。

だが、ついに”待ち合わせ時間になっても”
美咲は姿を現さなかったー。

「ーーー」
久雄は”まぁ、電車が遅れるとかあるかもしれないしな”と、
思いながらそのまま考え事をして美咲を待つー。

しかしー
5分経っても、10分経っても
美咲は姿を現さずー、
やがて、映画館の前にやってきた家族連れが
首を傾げながら帰っていく姿を見て、
久雄は少し違和感を感じたー。

映画館の入口の前までやってくると
入口の自動ドアの前に
”本日、 臨時休館”と書かれているのが
目に入ったー

「臨時休館ー?」
久雄は表情を歪めるー。

”美咲が来ないのは、これを知ってたから?”

そう思いながらスマホを手にすると、
ちょうど、美咲から連絡が入っていたー

”あ、菅沼くん!
 わたし、先に映画館の中で待ってるから!
 
 連絡遅くなっちゃって、ごめんね”

そんな、連絡ー

「ー映画館の、中ー?」

久雄は、今一度映画館の入口に掲げられた
”臨時休館”の文字を見つめるー。

そして、すぐに”デートの約束”を再確認した時の
メッセージを再度確認するー

一瞬”映画館の場所を間違えたのか”と
不安になったのだー。

しかし、確かに待ち合わせをした映画館はこの場所で、
日時に関しても間違いはなかったー。

「ーーーー…え」
久雄は困惑するー。

と、いうことは、
美咲は”臨時休館”となっている映画館の中で
待っていることになるー

”え…でも臨時休館ってー?”
すぐにそう返事を送る久雄ー

すると、少し間を置いてから美咲の
メッセージが返って来たー

”扉は開いているはずだから、中に入ってきて”

とー。

「な、なんだって?」
困惑する久雄ー。

美咲は何を考えているのかー
そもそもこの映画館は何故、臨時休館になっているのかー

嫌な予感をしながら
自動ドアに手を掛けるとー
自動で扉は開かなかったものの、手動では開くことが出来ー、
久雄は困惑しながら扉の奥へと入って行ったー。

「ーーーー」
映画館の中に入ると、恐ろしいほどまでに
静まり返っていたー

チケット売り場には誰も人がいないー。
パンフレットやグッズ売り場にも人の姿はなくー
当然、美咲の姿もないー

静まり返った入口付近のホールのような場所でー
一人、困惑する久雄ー

やっぱり、映画館は臨時休館で、
ホントは入っちゃいけなかったのではないだろうかー

そんな、不安に苛まれるー。

だがー
その時だったー

映画の宣伝を流しているモニターから、
突然音がし始めて、
”映画泥棒”の防止を呼び掛ける映像が
流れ始めるー。

「ーーー牧村さんー…いるのか?」
久雄が不安になって、そう声を振り絞るー。

声を出さずにはいられなかったー。

するとー
美咲からLINEが届くー

”ーわたし、先に劇場の方に行ってるね”
とー。

「ーー!?」
久雄はさらに困惑するー

”ちょ、ちょっと待ってくれー
 か、貸し切りってことかー?
 どういうことなんだー?”

久雄が美咲に確認するメッセージを送るー

もしかしたら映画館を貸し切りにしていて
ここでプロポーズ…?

なんておかしなことを考えてしまったものの、
そもそもまだ自分たちは高校生だー

プロポーズがどうこう何て年齢ではないし、
そもそも美咲は普通の家庭の子だー

間違いなく、映画館を貸し切りにできるような財力を
持っているはずはないー

するとー
”既読”はついたものの、
美咲からの返事はないままー
流れている”映画泥棒防止”の映像が突然切り替わったー

”NO MORE 彼女泥棒”

そんな風に表示された宣伝が流れ始めるー

「ーーなんだこれー…」
美咲と久雄を模した人形のようなものが映像に現れー、
久雄の人形が無理やり美咲を連れて行きー、
その反対側で泣き叫ぶ男の人形が映っているー。

意味が分からないー

そう思っていると、
突然、館内放送が流れたー

ビクッとする久雄ー

”ーー5分後に、5番シアターで映画の上映を開始いたしますー
 まだご着席ではないお客様はお早めに5番シアターまで
 お越しくださいー”

穏やかな口調の女の声ー。

久雄はまるで自分がお化け屋敷にいるかのような
感覚になりながら
流れ続けている”NO MORE 彼女泥棒”と、表示された映像を見つめるー

「ーー牧村さんの身に、何かあったのかー!」

そう思いながら5番シアターの方に向かって走るー

しかしー
やはり映画館の中には誰もおらずー
不気味なぐらいに静まり返った状態ー

ようやく5番シアターに入るもー
やはりそこにも、
誰の姿もなかったー。

「ーーー……牧村さん…?」
恐る恐るそう声を掛ける久雄ー。

”誰もいない静まり返った映画館”は、
まるでお化け屋敷のように、不気味だー。

人がいるからこそ、映画館は特有の穏やかな空気に包まれるー。

逆に、あの独特な空間に”誰もいない”
今、この状況は何とも言えない恐ろしさに包まれているー。

「ーーーー…牧村さん…いないのか?」

人の気配はないー。
だが、5番シアターの中に美咲がいるのではないかと
微かな希望を込めて、そう声を出さずに
いられなかったー

”ー本日はご来場いただき、ありがとうございますー”

突然、女性の声で放送が流れ始めてドキッとする久雄ー。

困惑する久雄を他所に、
地震発生時の注意点や、火災発生時の注意点、
上映中のスマホの操作を控えるようにとの注意点、
そういった各種注意がアナウンスされるー。

久雄はたまらず、
「こ、これは一体… え?何の映画が始まるんですか!?」
と、聞き返すー

だが、アナウンスの声は答えずー
そのまま5番シアターの照明が消えて、映画の上映が始まるー。

”映画泥棒”を許さないー、という
宣伝映像が流れ始めるー。

いつも、映画の前に流れるやつだー。

”おかしいー”
”なんだこれはー?”
”臨時休館の映画館の中で、何が起きているー?”

久雄は冷や汗をかきながら
”っていうか、美咲はどこだー?”
と、困惑の表情を浮かべるー。

するとー
再び、美咲を模した人形を、
久雄を模した人形が無理やり連れ去ろうとする
”NO MORE 彼女泥棒”と題した映像が流れ始めるー

「ーくそっ…何なんだこれはー!」
久雄がそう呟いていると、
やがて、映画本編が始まるような映像が流れたー。

正直、何の映画が始まるのかも分からないー。
久雄が”俺はこんなところで映画を見てる場合じゃないんだー”と、
美咲の身を案じるとー

やがて、映画本編が始まったー。

”いつものように賑わう映画館”

だが、突然、聞いたこともないような
不気味な音が流れ始めるー。

賑わっていた映画館の利用客たちが虚ろな目になりー
ゆっくりと歩き出すとー、
全員が、映画館の外へと出ていくー。

ふらふらと、意思のない人形のように歩きながらー。

そしてー
映画館の外に出た人たちが、
不思議そうな表情をしながらも、
”臨時休館”と書かれた入口を見て、そのまま
困惑の表情で立ち去っていくー。

映画館の客に対して”何か一斉に暗示が掛けられたー”
そんな風に見える映像だったー

”なんだ、これはー…?”
久雄はその映像を見ながら困惑するー

「まさか、牧村さんももう外にー?」
そんな風に思い、立ち上がろうとするとー
続けて映像が切り替わったー

”え…?みんなどうしちゃったのー?”
困惑する表情の美咲ー

美咲が一人、映画館の中を歩いているー。

映画館の係員も、他の客も、みんな一斉に
映画館の外に出てしまったー。

「ーー!」
その映像を見て、立ち上がるのをやめて、
スクリーンのほうを見つめる久雄ー

”菅沼くんー…?どこにいるの?”
そんな風に呟きながら美咲が映画館内を歩いているとー
突然、目の前から全身をタイツで身に包んだ怪しい男が姿を現したー

”え…? あ、あのー…ーー”
美咲がそう声を掛けると同時に、タイツ男は無言で美咲の方に
向かって走り出したー。

明らかな敵意ー

美咲は、誰もいなくなった映画館の中で、一人そのタイツ男から
逃げ始めるー

「ーー……」
久雄は、そんな映像を見せ付けられながら、
呆然とした表情を浮かべていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”クククククー”

5番シアターで”彼女”の映像を見ている久雄の様子を
少し離れた場所から見つめながらー

久雄の彼女ー美咲はー

いいや、”憑依されてしまった美咲”は
不気味な笑みを浮かべたー

②へ続く

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楽しい映画館デートのはずが、
何が起こったのか分からない恐怖の映画館デートに…!?

続きはまた明日デス~!

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憑依<映画館デート>

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