図書委員に所属する男女が入れ替わってしまったー。
入れ替わった愛華が不安視したのは、
”自分を溺愛している兄のこと”
果たして、二人の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5時間目と6時間目も何とか終えて
帰路につく二人ー
”入れ替わったこと”で、
必然的に愛華と一緒にいる時間が増えた
愛華(紀明)は何だか少し楽しそうにもしているー
紀明(愛華)が、そんな反応に気付いて
「何か、いつもより張り切ってる気がするー」と、笑うと、
愛華(紀明)は顔を真っ赤にして「え…そ、そんなことないよ!」と、
すぐにそれを否定したー。
「ーーそ、そのーずっと気を張ってないといけないしー
テンションがおかしくなってるのかもー」
と、愛華(紀明)が言うと、
紀明(愛華)が「今日1日だけでも本当に大変だったもんねー」と、笑うー。
「ー僕のせいで、本当にごめんー」
愛華(紀明)が再び謝るとー、
「ー謝らなくていいってば~…お互い様だし、それに
こうなったのも、別に若林くんが仕組んだとかじゃないでしょ?」と、
紀明(愛華)が言い放つー。
「そ、それはそうだけどー」
愛華(紀明)はそう言いながらー
「西岡さんみたいないつもキラキラしてる子の身体をこんな風に
動かしてるなんてー その…申し訳なくてー」と、
オドオドした様子で言うー。
「ーーーキラキラ?そんな風に見えるの~?」
笑いながら紀明(愛華)が言うー。
「別にわたしも、若林くんと同じだよー
いつも周囲に気を遣ってー、
不安なこともいっぱいあるしー
上手く行かないことも色々あるしー」
紀明(愛華)の言葉に、
愛華(紀明)は「西岡さんでも、不安を感じたりすることあるんだー」と、
意外そうに呟くー
「あるに決まってるでしょー
同じ、人間なんだからー」
紀明(愛華)のそんな言葉に、
”僕は西岡さんのことを勝手に”雲の上の存在”のように感じて
自分から勝手に距離を作ってたのかもしれない”と、
心の中で思う愛華(紀明)ー
「ー今日もー…戻れなかったけど、明日は必ずー」
紀明(愛華)の言葉に、
愛華(紀明)は頷くと、”お互いの家”に再び帰っていく二人ー
「ーーあ、そういえばー…」
別れてから愛華(紀明)は不安そうに呟くー
”僕の趣味ー…何も言ってなかったけどー
やっぱり引かれたりしたのかなー”
そしてーーー
”もう一つのアレ”は見つかってしまったのかどうかーーーー。
そんなことを思いながらも
今日も”お兄ちゃん”にバレないようにしないとー、
と、愛華(紀明)は緊張した様子で家の方に向かったー。
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帰宅した紀明(愛華)は
紀明の母親に「ただいま~!」と声を掛けると、
「あら、紀明ーおかえりなさい」と、穏やかな表情で
紀明(愛華)のほうを見つめ返したー
紀明には兄弟がいないー。
両親も穏やかなタイプで、
”紀明として振る舞う”上での”難易度”は
比較的低いと言えたー。
”やっぱりーわたしのお兄ちゃんが一番まずいよねー”
「ーま、ま、愛華をこんな目に遭わせるなんてー
絶対に許せない!!!!!!!!!!!!!」
この前ー
美術の授業で指を切ってしまった時にも
そんな反応だったのだー。
もし、”入れ替わり”を知られたら
どんな反応をするか分からないー
兄の良樹は悪人ではないー
愛華が嫌がるような束縛は絶対にしないし、
話せば理解はしてくれるー
けれどー
”入れ替わり”なんて話はー
流石に刺激が強すぎるー
「ーあっ…」
部屋に戻った紀明(愛華)は、鞄から取り出した筆箱の
チャックが開きっぱなしになっていたため
飛び出してしまったボールペンが
机の下に転がって行ってしまったのを見て
「あ~~~…」と、残念そうな表情を浮かべるー。
結構奥まで入ってしまったボールペンを取り出すため、
机の引き出しをずらしたりして、悪戦苦闘しながら
ようやくボールペンの回収に成功するー。
「ふ~~」
安堵の表情を浮かべたその時だったー
”西岡さんへー”
と書かれた手紙のようなものが引き出しの中に
眠っているのを紀明(愛華)は発見してしまったー
「え…?わたしー?」
紀明(愛華)が表情を歪めるー
偶然ー
愛華が発見してしまった”それ”はー、
以前から”愛華”のことが好きだった紀明が
一度、真剣に告白しようと思って
書いていた手紙ー
結局ー
手紙を書き終えたあとに
”恥ずかしい”という気持ちが自分の中で
強く膨らんだこと、
そして、”僕なんかが雲の上の存在の西岡さんに告白するなんて
失礼すぎる”と、考えてしまいー、
最後には”告白”を思いとどまり、そのまま封印していた手紙だー。
紀明が入れ替わったあとに”もしも見られちゃったらー”と、
不安を感じた中でも”一番不安に感じた”のが、
これの存在だったー。
「ーーー”西岡さん”ってー…たぶんー
わたしだよね?」
そう思いながら、紀明(愛華)はその手紙を今一度見つめたー。
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「ーーーー愛華、少し話があるー」
帰宅すると同時に、兄の良樹から呼び止められた
愛華(紀明)は表情を歪めたー
「えっ!?えっ… あ、はいー じゃないー…
え、えと、な、何かな?お兄ちゃんー」
愛華(紀明)が言うと、
良樹は「ーいいから、俺の部屋に来てくれ」と、
少しトーンの低い声で言い放ったー。
先に自分の部屋に向かっていく良樹の
後ろ姿を見つめながら
心臓をバクバクさせる愛華(紀明)ー
”ま、まさかー僕…バレたー!?”
そんなことを思いながら
愛華の手が、極度の緊張からか汗ばんでいるのを感じるー
”お、落ち着けー僕ーー
ぼ、僕ーそんなにバレるような行動はしてないはずー”
そう思いながら、兄の良樹の部屋に向かうー。
単純に、”他の話”かもしれないしー
ここで突然逃げた方が”明らかにおかしい”と思われてしまうー。
”うぉおおおおおおおおおおおお!!!!
愛華の身体を返せ!絶対許せねぇ!コロス!!!
ーーみたいなーー…”
そんな愛華の言葉を思い出しー
”ひぃぃぃぃぃ…”と心の中で呟く愛華(紀明)ー
恐る恐る、愛華(紀明)が、
良樹の部屋に足を踏み入れると、
良樹は腕組みをしながら「単刀直入に言おう」と、呟いたー。
その目つきは鋭いー。
愛華(紀明)は今すぐ逃げ出したい気持ちになったー。
しかし、その間すらなくー
良樹は鋭い口調で言葉を吐き出したー
「ーお前は、誰だ?」
とー。
「ー!」
青ざめる愛華(紀明)ー
「ー俺の妹をー愛華をどこにやったぁああああああ?!!?」
良樹がバン!と机を叩いて叫ぶー
「ひいいいいいいいいいい!?!?!?
ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
隠すこともせずに、あっけなく白状して
土下座をする愛華(紀明)ー
「こ、殺さないで!殺さないで!助けて下さい!」
そう言い放つ愛華(紀明)を見つめながら、
良樹は険しい表情で口を開いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
学校で合流した二人は昨日の状況を話し合うー。
「ー若林君ー…
ごめんねー」
まず、紀明(愛華)が言葉を口にするー。
「え…?」
愛華(紀明)が表情を曇らせるとー
「”西岡さん”って書かれてる手紙ー
見つけちゃってー」
その言葉に、愛華(紀明)が青ざめるー
だがー
その言葉の続きは、紀明が危惧していたものとは違ったー。
「ーー封筒だけしか見てないから、中身は見てないけど
なんか…ごめん」
紀明(愛華)の言葉に、愛華(紀明)は、
少しホッとするー。
愛華は、自分宛と思われる手紙入りの封筒を見つめてもー
”勝手に見ちゃうのはいけない”と、中身を一切見なかったのだー
「あ、あと、部屋のかっこいいキャラクターたち
わたし、全然名前分からないからー、今度教えてくれる?」
紀明(愛華)のそんな言葉に、
愛華(紀明)は「えぇっ!?僕、絶対嫌われると思ってたー」と意外そうに
呟くと、
「えぇっ!?なんで嫌うの!?」と、紀明(愛華)は苦笑いしたー
そしてーーー
愛華(紀明)も”昨日”のことを口にするー。
「ーー実は…お兄さんにバレちゃって…」
愛華(紀明)が困惑した表情で言葉を絞り出すー。
「えっ…!?えぇっ!?」
戸惑いの表情を浮かべる紀明(愛華)
「ーう、うん…それがー…」
愛華(紀明)は昨日のことを思い出しながら
実際にあった出来事を口にしていくー。
・・・・・・
「こ、殺さないで!殺さないで!助けて下さい!」
必死に土下座する愛華(紀明)ー。
「ーーー実は…実は、図書室でに、に、西岡さんと
ぶつかった際に入れ替わってしまってー
う、嘘みたいな話ですけど、本当なんです!」
そう言いながらー
泣きながら愛華(紀明)は、全ての細かい事情を説明したー
”殺されるー”
そう思いながら、命乞いをしているとー
兄の良樹は、少し考えてからー
「そっかー…愛華のために色々迷惑かけて、すまないなー」
と、言葉を口にしたー
「え…」
愛華(紀明)が意外そうな表情で顔を上げると、
兄の良樹は「ーいや、急に驚かせて悪い」と、少し笑いながら
言い放ったー
「ーーそんな怖がらなくていいってー。
愛華ー…いや…君って言えばいいか?
ーーの、行動を見てれば愛華を傷つけるつもりがないことぐらいは
分かるさー。」
良樹が言うと、
愛華(紀明)は「ーーい、いつ気付いたんですか?」と、
困惑しながら呟くー
「ははー愛華から敬語を使われると不思議な気分だなー
確信したのは昨日かなー。
でもー…妹と毎日一緒にいればどんなに愛華のフリしたって
分かるさ」
良樹のそこまで言うと笑いながら
「ーー俺、そんなに怖そうだったか?」と呟くー
愛華(紀明)は素直に”西岡さんからこんな風に聞いてて”と、言うと
良樹は笑いながら「はははー愛華を傷つけられたら許さないけど、
そんな怖くないってー」と、愛華(紀明)のほうを見つめたー
”俺も、愛華と君が元に戻るため、力を貸すよー”
…それがー、昨日の出来事ー
「お兄ちゃんが、そんなー 少し意外ー」
驚きながら、紀明(愛華)が言うと、
愛華(紀明)は「だから、お兄さんのことは心配しなくてもいいと思うー」と
安堵の表情を浮かべながら、そのことを紀明(愛華)に伝えたー。
と、なると、
後は元に戻る方法ー。
そう思いながら二人は今日も学校を終えるー
帰宅した紀明(愛華)ー
紀明の身体で自分の部屋に向かいながらー
”ーーそういえば、脚立からわたしが落ちた時に持ってたあの本ー”
不思議な本だったー。
入れ替わりの原因に思い当たりそうになったその時ー
「ーーーあなた、誰なの?」
「ーー!?」
自分の部屋に入ると、紀明の母親が、
いつもの穏やかな表情とはまるで別人のような
表情を浮かべて、紀明(愛華)を待ち構えていたー
「えっ…?」
紀明(愛華)が戸惑うー。
「ーあんた、紀明じゃないでしょ!
うちの可愛い息子を、どこにやったの!?」
紀明の母親が叫ぶー
「え…わた、、ぼ、僕は紀あーー」
必死に自分は紀明だと伝えようとするー。
しかし、罵声を浴びせられて慌てて本当のことを口にするー
だがーーー
「嘘をつかないで!紀明はどこ!?
あんたは誰!?」
鬼のような形相の母親ー。
「ーー本当のことを言うまで、この部屋から絶対に出さないから!」
血走った目に涙を浮かべながら、
紀明の母親は、紀明(愛華)を部屋の中に突き飛ばしてー
怒りの形相で紀明(愛華)を見つめるー
「ま、待ってーわたしの話をー」
必死に状況を伝えようとするー。
けれど、母親は持っていた棒で容赦なく”攻撃”を仕掛けて来たー
”ーーわ、若林くんー…お母さんとお父さんは穏やかだって
言ってたはずなのにー?!”
戸惑う愛華ー。
紀明の母はー、紀明も知らないぐらいにー
紀明を溺愛していたー。
そうー
本当に”バレちゃだめ”な相手は、
愛華の兄・良樹ではなく、
紀明の母親のほうだったのだー
おわり
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コメント
元に戻るまでは描かれないタイプのお話でした~!
(※打ち切りエンドではなく最初からここまでの予定デス~)
なんとかお母さんを説得することができれば、
元に戻る方法に心あたりも出て来たみたいですし、
何とかなる…かもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
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