<憑依>憑依の乱③~対決~(完)

②にもどる!

憑依の力を手にし、”乱心”した、かつての幼馴染ー。

仕えるべき主を失い、
大事な幼馴染を失った彼は、
せめて、自らの手でその暴走を止めようとするー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー佐伯の奴、勝手に滅び終わったわー」
佐伯 勝之進と敵対していた大名・奥寺 元春(おくでら もとはる)が、
ご機嫌そうに酒を手にしながら、そう言葉を口にするー。

「ーしかし殿ー、佐伯は”なぜ”全滅したのでしょうー?」
忠臣の与一(よいち)が、険しい表情でそう言葉を口にすると、
奥寺 元春は笑みを浮かべるー

「大方、謀反でも起きたのだろうー。
 
 そして、佐伯と謀反を起こした連中で争いー
 ーー共倒れーー

 そういうことであろうよー」

奥寺 元春は酒を口に運びながら、
なおも上機嫌そうにそう言葉を口にすると、
「ーー姫様!?どうしてこちらにー?」と、
廊下の方から声が聞こえたー。

「ーー?」
奥寺 元春が表情を歪めるー。

やがて、部屋の扉が開くと、
そこには、奥寺 元春の娘である千代(ちよ)の姿がそこにあったー。

「ーー千代ー?どうしてここにー?」
心底驚いた様子を浮かべる元春ー。
それもそのはず、千代は現在、妊娠している状態で
安静にしているはずなのだー。

笑みを浮かべながら近づいて来る千代ー。

「ーーーどうしたというのだー?」
奥寺 元春は戸惑いながら近づいて来た千代に
そう言葉を口にすると、
千代は笑みを浮かべながら言ったー。

「ーこの世は腐っているー」
とー。

「ーーなに?」
奥寺 元春が戸惑いの表情を浮かべると同時に、
千代は隠し持っていた小刀を、父親である元春の喉元に突き立てたー

「ーーーがっ…」
元春が血を噴き出して倒れ込むー

「ーーなっ!?姫様ー!?」
忠臣の与一は戸惑いながら声を上げるも、
千代は「ーー私は全てを滅ぼし、天下を手にするー」と、
そう言葉を口にしてから、もう1本の小刀で自分の喉元を切り裂いて
倒れ込むー

「ーーひ、姫様ー!?殿ー!?」
千代は既に死亡していて、奥寺 元康も返事が出来ないほどに
死にかけているー。

そしてー
千代から抜け出した”恭二郎”の霊体が、
与一にも迫り、与一に憑依するー。

「ーーな、何事ですかー!?」
外で待機していた部下がそう叫びながら入って来るー。

が、憑依されてしまった与一は、
「ーー何が起きているかなど気にする必要はないー」と、
そう言い放つとー、
「全員死ぬのだからー」と、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!」

幼馴染でもあり、
共に同じ夢を抱いた恭二郎を止めようと、
”次は奥寺を狙うに違いない”と、そう思っていた辰丸は、
奥寺の城から火の手が上がったことに気付くー

「くそっー…恭二郎ー…ー
 俺たちの目指した世は、そんな世じゃないだろー」
辰丸は悔しそうにそれだけ言葉を口にすると、
そのまま火の手の上がった城を目指すー。

そしてー、城の近くまでやって来ると、
拘束された”雪”の姿を見つけたー。

「ーー…ーー…た、辰丸ー」
雪は、辰丸に気付くと、そう言葉を口にするー。

「雪…雪なのかー…?」
辰丸が、”恭二郎に憑依されていないかどうか”を確認すると、
雪は「ーー恭二郎を止めて下さいー」と、涙目でそう言葉を口にするー。

城のほうを見つめる辰丸ー。

「これも、アイツがー…?」
辰丸がそう言うと、雪は静かに頷くー。

「ーわたしも、身体を支配されて、気付いたらここにー…」
雪はそう言葉を口にすると、
辰丸は「待ってろー。今、拘束を解いてやるー」と、
刀を手に、雪を拘束している縄を斬りー、そのまま雪を救出したー。

「ーーー……どうして、こんなことにー…」
雪が悲しそうに言うと、
辰丸は「ー恭二郎は、俺が止めるー」と、そう言葉を口にして、
城のほうを見つめるー。

するとー、城からボロボロになった着物姿で、
女が一人出て来たー。

「ークククー来たか辰丸ー。
 これでまた、天下へと一歩近づいたー」

女は笑いながらそう言葉を口にすると、
自分の首筋に小刀を当てるー。

「ーこの女で、最後だー」
そう言葉を口にしてから、そのまま自分の首を斬りつけると、
女は倒れ込みー、そこから煙のようなものが噴き出すー。

「ーー!」
辰丸は、「雪!逃げろ!」と、そう叫ぶもー、
霊体の速度の方が早くーー
霊体を直接、刀で斬ろうと刀を振るもー、
霧のような形状の霊体を”斬る”ことはできなかったー。

「ーーーーあっ…」
逃げようとしていた雪に恭二郎が再び”憑依”すると、
怯えた表情から、邪悪な笑みに表情が変わっていくー。

「ーーククー”雪”は離さぬー
 雪は私だけのものだー」

雪の身体を”メインの身体”としてでも、使っていくつもりなのだろうかー。
再び雪を乗っ取った恭二郎は満足そうにそう言葉を口にしたー。

「ーーーー恭二郎ー…お前ーーー」
辰丸がそう言うと、炎上した城のほうを見つめながら、
雪は笑うー。

「ー佐伯も奥寺も滅ぼしたー。
 この先は、武田に上杉ー、それに織田ー。
 全てを排除し、私が天下を手に入れるのだー

 ”雪”と共になー」

雪の胸を嬉しそうに触りながら
雪を支配した恭二郎は笑うー。

「ーそんなこと、できるはずがないー
 武田や上杉ー、それに織田は
 殿や、奥寺とはくらべものにならないほどの大勢力だー。
 
 いくらその力があったとしてもー」

辰丸がそう言うと、
雪は「できるかできないかじゃないー。やるんだー」と、
笑みを浮かべるー。

「ーーーー」
辰丸は表情を歪めるー。

佐伯家や奥寺家と違い、そう簡単に大勢力を滅ぼせるとは思えないー。
きっと、どこかで”失敗”するだろうー。

がー、万が一そうならなかったらー?
恭二郎が憑依の力で全てを滅してしまったらー?

そうなれば”誰もが笑って暮らせる世”の正反対の暗黒の世界が訪れてしまうー。

「ーーお前を、ここで止めるー」
辰丸が刀を構えると、
雪に憑依している恭二郎は笑いながら
「私を雪ごと斬るつもりかー?」と、そう叫ぶー。

「ーーいやー。だが、斬らずとも、恭二郎ー
 俺はお前になど負けないー。

 ーー子供のころからそうだったよなー?
 いつも、剣術では俺の方が上だったー」

辰丸は”わざと”挑発的な言葉を投げかけると、
雪は露骨に不愉快そうな表情を浮かべるー。

「ーー私をーー私を見下すな!!!」
そう言葉を口にして、近くに予め用意していたと思われる刀を手にすると、
「辰丸ー!お前など、雪の身体で十分ー」と、そう言葉を口にしながら
襲い掛かってきたー。

がー、辰丸は雪の攻撃をどんどん回避していくー

「ーーくそっー調子に乗るな!」
雪がムキになって刀を振るうも、それは辰丸には当たらないー。

刀を弾いて、吹き飛ばすと、
雪に刀を向ける辰丸ー。

「ーー何度やっても、無駄だー」
辰丸は、雪に攻撃はせずに、そのまま見逃すー。

雪に憑依している恭二郎は怒りの形相で
刀を拾うと、「ふざけるなあああああああああ!」と、
叫びながら攻撃を仕掛けて来るー。

また、刀を弾き飛ばされて、バランスを崩されるー。

「ーお前は”俺より”弱いー。
 そんなお前が雪の身体で俺に勝てるものかー」
辰丸がそう言い放つと、雪はギリギリと歯軋りをするー。

「ーーー…満足かー?」
辰丸がふとそう言葉を口にするー。

「ー刀で、自分の顔を見て見ろー。
 雪にそんな怖い顔をさせて、それで満足かー?

 俺たちは、”誰もが笑って暮らせる世”を作るんじゃなかったのかよー?」

辰丸がそう言うと、
雪に憑依している恭二郎は無理に笑顔を作るー

「ククー見ろよー笑ってるー!雪だって、笑ってるー!」
とー。

「ーーそれは、お前が笑わせてるだけだー
 
 暴君が、”笑えよ”って民に命令して
 笑わせてるのと同じようなもんだー」

辰丸が言うと、雪に憑依している恭二郎は「黙れ!」と叫びながら
再び襲い掛かって来るー。

それでも、辰丸は雪の攻撃を回避して、
刀を弾き飛ばしてー、
恭二郎を圧倒していくー

「ぐっ…」
雪に憑依している恭二郎は、怒りの形相を浮かべたまま
その場に手をついて、歯ぎしりを繰り返すー。

「ー私は、お前などに負けないー!
 お前などにー…!」
雪の喉が壊れてしまいそうなぐらいに大声で叫ぶ恭二郎ー。

「ーーーー」
辰丸は、そんな雪のほうを見つめながら
言葉を続けるー。

「ーーお前じゃ、俺には勝てないー」
とー。

そして、笑いながら言うー。

「ー小さい頃から、お前はいつも俺に負けてたよなー。
 しかも、今は雪の身体ー
 俺に勝ち目なんて絶対にないぜー?

 まぁ、自分の身体を失っちまってるお前には、
 もうどうすることもできないと思うけどよー」

辰丸はそれだけ言うと、
「ーお前は俺に勝てないー。永遠にー」と、
”わざと”恭二郎を挑発したー

「ー黙れっ!」
怒り狂った表情で辰丸を睨む、憑依された雪ー。

「ーーなんだ?だったら他の身体に憑依して
 俺に挑むかー?」

そう言いながら、辰丸は炎上している奥寺家の城を見つめるー。

「ーまぁ、この辺に雪以外の人間はいないから、無駄かー」
辰丸はそれだけ言うと、「もうあきらめろ。恭二郎」と、
そう言い放ったー。

がー、雪は邪悪な笑みを浮かべるー

”クククー辰丸ー何を勘違いしているー?
 私はお前にも憑依できるのだぞー?
 お前に憑依して、お前を切腹させるー
 そうすれば、お前は終わりだー”

雪は笑みを浮かべると、その場に倒れ込んで、
その身体から煙のようなものが飛び出すー

「ーーーー…」
辰丸は”来た”と、その様子を見つめるー

”わざと”恭二郎を挑発していたのは
これが狙いだったー。

”俺の身体に入って来いー
 恭二郎ー”

辰丸は、恭二郎の霊体を真っすぐ見つめるー。

そしてー、恭二郎はそのまま辰丸に憑依したー

「ーーく…クククー
 どうだ辰丸!?これが私の力だ!」
辰丸に憑依した恭二郎はそう言葉を口にすると
勝ち誇った表情で刀を握りしめるー。

「ーーさぁ、貴様もこれで終わりだー」
辰丸に憑依した恭二郎がそう宣言したその時だったー

「ーーーーっ………ーーーそうだーー…」

「ーー!?」

辰丸の口が”恭二郎の意思”ではなく、辰丸の意思で動いたー。

「ーーなっー」
恭二郎は驚くー。

辰丸はー
その強靭な精神力と、恭二郎を止めるというあまりにも強い想いー、
そして”これから憑依される”と事前に理解していたこともあってー、
”憑依”の支配に抗っていたー。

「ーーーー……へーーへへへー
 恭二郎ーーお前は、必ず俺に…憑依すると思ってたぞー」

辰丸は、そう言うと
”昔から、お前のことはよく知ってるー”
と、そう言葉を口にしたー。

「ーぐー…無駄なことをー抵抗しても
 すぐにお前の身体は私が支配するー!」
恭二郎は辰丸の身体でそう叫ぶー。

もちろん、辰丸にもそれは分かっているー。
抗えても、ごくわずかな時間ー。

がー、そのごくわずかな時間があれば、十分だー。

「ーーーぅ…」
憑依されていた雪が意識を取り戻すー。

「ーーこ、ここはー…?」
雪がそう呟くと、
辰丸がいることに気付いて、顔を上げるー。

「ーーー…雪ーーー…元気でなー」
辰丸は、そう言ったー。

そしてーー

「えっ…?」と、戸惑う雪に対して少しだけ笑うと、
辰丸は、炎上している奥寺家の城に向かって走り出したー。

「ーーた、辰丸!?な、なにをする!?」
恭二郎が辰丸の口で叫ぶー。

「ー友が道を踏み違えたらー
 止めるのは、友の役目だー」

辰丸がそう返すー。

「ーーま、まさか、お前ー…!や、やめろ!」
辰丸に憑依している恭二郎は、
辰丸が自らの命を引き換えに恭二郎を止めようとしていることを悟り、
そう叫ぶー。

「ーーやめねぇー」
辰丸がそう叫ぶー。

恭二郎は慌てて辰丸の身体から抜け出そうとしたー

がーー
辰丸の強い執念がー
それを防いだー

「逃がさねぇ!!!!」
辰丸のその言葉に、恭二郎は青ざめるー

そしてーーー
辰丸は、そのまま炎の中へと飛び込んだー

”誰もが笑って暮らせる世”

それを見ることはできなかったけれどー

きっとー、
いつかー。

そう思いながら、辰丸は恭二郎の霊体を決して逃すことなく、
恭二郎の霊体ごと、自らの身を焼き尽くしたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー恭二郎ー。辰丸ー…」

雪は、悲しそうに
二人の墓の前に手を添えるー。

戦国時代は終わらないー。
今も、大名たちが争いを続けているー。

結局、佐伯家と奥寺家の崩壊はー、
内乱によるものと、残党たちの争いによる共倒れだということになり、
恭二郎が企てた”憑依の乱”は歴史に残されていないー。

混乱を防ぐために、記録にも残されなかったために、
佐伯家と奥寺家の歴史は、闇に葬られたー。

「ーーーーーーーいつかーー
 二人が願った世が来ますようにー」

雪はそう呟くと、辰丸と恭二郎のことを想いながら
静かに手を合わせるのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

戦国時代が舞台の憑依モノでした~!

憑依による暴走は何とか止めることができましたネ~!!

お読み下さり、ありがとうございました★!

「憑依の乱」目次

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