戦国時代ー。
”誰もが笑って暮らせる世”を夢見てー、
小さい頃に、活躍を約束した2人ー。
しかし、そのうちの一人が”憑依”に溺れて、
乱を起こしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日前ー。
「ーーー恭二郎かー」
この地方を統治する大名・佐伯 勝之進が、
やってきた恭二郎を見て、少しだけ表情を緩めるー。
恭二郎と辰丸ー。
二人のことは、この佐伯 勝之進も”将来を担う者”として
これまで目にかけてきたー。
恭二郎は、その強すぎる真っすぐな心から、
危ういところもあったものの、
それでも、勝之進は辰丸と恭二郎は二人で、
佐伯家を、この地を守ってくれる存在になると、
そう信じていたー。
「ーー殿ー。
やはり、殿は間違っています」
恭二郎がそう言葉を口にすると、近くにいた古参の武士・源三が、
「恭二郎!殿に向かって無礼であるぞ!」と、そう叫ぶー。
が、恭二郎はそれを無視して、
以前の戦で、”村”からの避難を拒んだ者たちを
”諦めた”勝之進の姿勢を批判するー。
「ー恭二郎よー。
儂とて、全ての人を救いたいー。
だが、それはできぬのだー
全ての人を救おうとすれば、志果たすことできぬままー
屍をこの地に晒すのみー。
さすればどうなる?
より多くの民が苦しみ、命を落とすことになるであろうー?」
勝之進は、恭二郎に言い聞かせるように言葉を口にするー。
「ーそれでもー…全てを救える道はあるはずですー
犠牲の上に成り立つ平和なんてー、そんなものー」
恭二郎は拳を握りしめるー。
がー、勝之進は言うー。
「恭二郎よー。理想を追い求めるだけでは、
民を救うことはできぬぞー」
とー。
「ーーーー殿ーー
”最後のチャンス”ですー」
恭二郎はそう言葉を口にすると、
「ー自分が間違っていたと、そう認めて下さいー」と、
そう言い放つー。
「ーーー恭二郎!貴様!いい加減にーー」
古参の武士・源三が怒りを露わにするー。
が、前に手を差し出してそれを制すると、
勝之進は言ったー。
「ー恭二郎ー。間違っているのは、お前だー。
理想を振りかざし、それを口にするのは簡単だー。
だがー、現実を見据えることができねば、
何も救うことはできぬぞー」
勝之進がそう言い放つと、
恭二郎は「やっぱりー…この世は腐っているー」と、
そう声を上げてから、その場に倒れ込むー。
「ーー!?
ーーどうしたのだ?」
恭二郎が急に倒れたのを見て、勝之進は戸惑いの声を上げるー。
がー
「ーーーーこの世は腐っているー
で、あれば、私がこの力で天下を取るのだー」
背後にいた、古参の武士・源三が突然そう言葉を口にしたー。
「ーー!?」
勝之進が振り返ると、源三は持っていた刀を突然自分に突き立てて、
血を流していたー。
「ーーーーい、いったい何をしているのだ!?」
勝之進がそう叫ぶと、源三は苦しみながら笑うー。
「ー殿ー私が天下を作りますー
全ての人が笑って暮らせる世をー」
源三はそのまま目を見開いて倒れ込むー。
やがて、源三から煙のようなものが飛び出すと、
勝之進は、後ろに引き下がりながら、
「ーー誰かおるか!?」と、声を上げるー。
すぐに近くにいた家臣たちが、駆け付けるー。
がー、恭二郎は次から次へと家臣に憑依して、
近くの家臣を斬りつけたり、自ら命を絶ったりして、
次々とその家臣たちを片付けていくー。
やがてー、勝之進一人だけになり、
恭二郎は勝之進に憑依しようと、霊体の状態で近付いていくー。
「ーーーーくっー」
勝之進は刀を手にしながら、表情を歪めると、
口を開いたー。
「ーー恭二郎よー。
ーーー力に魅入られたかー」
とー。
勝之進は、”恭二郎の霊体”と思われる煙に向かって
刀を振るうも、実体がないためにどうすることもできないー。
「ー!」
すぐに勝之進は、倒れたままの恭二郎の身体を狙おうと思いつき、
「ーーお前を止めることができなかったのは、儂の責任よー」と、
申し訳なさそうにしながらも、
「せめてー鷲の手で葬ってくれるー」と、恭二郎の身体に対して、
そのまま刀を振るうー
恭二郎の肉体は、死んだー。
がー、恭二郎の霊体は、健在だったー
”殿ー無駄ですよー”
恭二郎は霊体の状態でそう囁くー。
勝之進は、その言葉に表情を歪めると、
刀を握る手に力を籠めるー。
「ーーー恭二郎よー
ーーお前を止めてやれなかったのは、
儂の力不足だー」
それだけ言葉を口にすると、佐伯 勝之進は
”自分の身体”を奪われてその権力を悪用されることを恐れたのか、
憑依される前に、自らに刀を突きたてるー。
「ーーーーー!」
恭二郎の霊体はその行動に驚きながらも、
”殿ー。私は必ずこの腐った世を正しますー”と、そう言葉を口にして、
そのままその場から立ち去って行くー。
勝之進は血を流しながらその場に倒れ込むと、
しばらくしてー、
城の外にいったん出ていた恭二郎の幼馴染・辰丸が、
異変を察して、その場に駆け付けたー。
「ー殿!?!?」
勝之進が倒れて血を流しているのを見て、驚く辰丸ー。
勝之進は、起きたことを苦しそうに説明すると、
辰丸の手を握りながら言うー。
「ーあやつを止めるのだー。
このままでは、天下は闇に染まるー」
とー。
「ーー…殿!しっかりして下さい!」
辰丸はそう言葉をかけたものの、
やがて、勝之進の身体から力が抜けていき、
そのまま息を引き取るのだったー。
辰丸は、恭二郎が”憑依”の力を手に入れ、
凶行に走ったことを知るー。
すぐに故郷である街に戻り、そのことを知らせ、
幼馴染の雪とも再会するー。
「ーー雪ー。
これからこの地は乱れるー
佐伯様が亡くなられた以上ー、
どうなるか分からないー。
安全な場所に避難するんだー」
辰丸は、雪に対してそう言い放つー。
「ーーーーこの先、いったいどうなるんですかー…?」
雪が不安そうに辰丸を見つめるー。
「ーーー」
辰丸は険しい表情を浮かべると、
「ーー分からねぇ…」と、そう言葉を口にするー。
「ーーしかし、どうして恭二郎はそのようなことをー」
雪の父親であり、食事処の店主である賀助(がすけ)が、
そう言葉を口にするとー、
そこにーー、”男”が入って来たー。
「ーーーいらっしゃいー」
賀助は、店主としてそう声をかけるー。
がー、
その男は、笑みを浮かべたー。
「ーー辰丸ー。雪ー。
私だー
恭二郎だよー」
とー。
「ーー!」
辰丸と雪が驚くー。
「ーーお前…恭二郎なのかー?」
辰丸がそう言葉を口にすると、
自分の身体を失ったため、別の男の身体を乗っ取っていた
恭二郎は笑いながら、「あぁ」と、頷くー。
「ー辰丸ー私はついに手に入れたぞー
誰もが笑って暮らせる世を実現するための力をー。
それが、”この力”だー。
誰の身体であろうと、意のままに操ることができるー」
男の身体で、恭二郎は得意気にそう語ると、
辰丸は「その力で、城のみんなをー」と、そう言葉を口にするー。
「あぁー。殿も、周囲のやつらも、
愚物だったからなー。
私の目指す世には程遠いー」
男に憑依した恭二郎はそう言うと、
雪が叫ぶー
「ーー恭二郎ー……!
……ーーーあなたは間違ってる!」
とー。
「ーー雪ー」
恭二郎は、雪のほうを見つめると、
「なぜわからない。雪ー。
誰もが幸せになるためには、私が天下を取るしかないのだー。
これは、そのための力なんだー」と、そう言い放つー。
しかし、雪はそれでも納得しなかったー。
「ー恭二郎ー。昔のあなたはどこに行ってしまったのー?」
とー。
「ーーーー」
男に憑依している恭二郎は残念そうに首を横に振ると、
「ー雪ー。わたしと共に来いー」と、そう言い放つー。
が、雪は、それを拒否したー。
「ーわたしはー、辰丸と一緒に、あなたを止めますー」
とー。
「ーーーー~~~~」
その言葉に、恭二郎の表情から笑顔が消えたー。
そしてーー
「なら、力づくでも、雪ー、お前をわたしのものにしてやるー」
と、そう言葉を口にすると、男の身体に憑依している恭二郎は
そのままその場に倒れ込むー。
「ーなっーなんだー?おい…恭二郎ー」
辰丸は、何が起きたのか分からずに倒れ込んだ男の方に近付くー。
がー、すぐにハッとすると、
「雪!逃げろ!!」と、そう叫んだー。
けれどーー
振り返った時には、既に雪は邪悪な笑みを浮かべていたー。
「ーーククククククー」
「ゆ…雪ー…?」
辰丸は、震えながら雪のほうを見つめるー。
「ーははははははっ!
これで雪も私のものだ!」
嬉しそうに自分の顔に手を触れながら、
そう叫ぶ雪ー。
何が起きたのか分からずにー…
いや、”分かってはいるけれど”それを認めたくない、と、
そう思いながら辰丸は雪のほうを見つめるー。
「ークククー辰丸ー
お前と雪で、いつもいつも私をのけ者にしやがってー!」
雪に憑依した恭二郎は、そう叫ぶと、
「でも、残念だったなー!
これで雪も私のものだ!」と、嬉しそうに宣言するー。
「ーき、恭二郎ー貴様…!雪から離れろ!」
辰丸はそう叫ぶも、憑依された雪に言葉は届かないー。
「ーーゆ、雪ー…い、いったいどうしたんだー?」
父親の賀助が戸惑いながら、”憑依された雪”に近付くー。
「ーーち、近付いちゃだめだ!」
辰丸が賀助に向かってそう叫ぶも、雪は賀助を乱暴に突き飛ばしてから
笑みを浮かべるー。
「ークククー雪はもう私のものだ!」
雪に憑依した恭二郎はそう宣言すると、
倒れ込んで、困惑の表情を浮かべる賀助から視線を逸らして、
辰丸のほうを今一度見つめるー。
辰丸は、そんな”雪”を前に叫んだー
「ー”雪”を解放しろー
今ならまだ間に合うー
ーー恭二郎!」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
憑依された雪が立ち去ったあと、
これまでのことを思い出していた辰丸は、
悔しそうに拳を握りしめるー。
「ー誰もが笑って暮らせる世を一緒に
作るんじゃなかったのかー…恭二郎ー」
そう言葉を口にすると、
ショックを受けて倒れ込んだままの雪の父・賀助に
手を差し伸べて、
「ー俺はこれから、奴を止めに行きますー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーーーひ、一人で行くつもりなのかいー?」
賀助がそう言うと、
辰丸は静かに頷いたー。
「ー大勢で行っても、恭二郎の力の前ではーーー」
辰丸は、殿である佐伯 勝之進らの無残な姿を思い出すー。
佐伯家の重鎮もまとめて始末されたー。
他人の身体を乗っ取る、”憑依”の力を前には
大勢の人間を集めても無力ー
それどころか、次々に憑依されて同士討ちが始まり、
余計に混乱してしまうー。
「ーーここは頼みますー」
辰丸はそれだけ言うと、そのまま雪と父親の店を飛び出して、
走り出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー雪…」
雪に憑依した恭二郎は、
雪の身体を自分で抱きしめて、嬉しそうに笑みを浮かべていたー。
「雪… あぁ…雪ー
お前は私のものだー」
雪の身体でそう言葉を口にしながら、雪の手で自分自身を抱きしめるー。
「ーーふふ…♡」
嬉しそうに微笑む雪ー。
がーー、
ふとした拍子に、壁に反射した”雪”の顔を見て、
恭二郎は戸惑うー。
笑っているけどー、笑っていないー。
そんな、気がしたからだー。
「ー雪ー笑えよ」
雪の身体でそう呟く恭二郎ー
しかし、雪の顔を”笑わせる”ことはできても、
本当の笑顔を見ることはできないー。
「雪ー…笑えよー…なんだその顔はー
笑え…笑えよー」
雪はひとり、そう呟くと、
怒り狂った様子で叫び声をあげるー。
「ー私をー私を蔑んだ目で見るなー…!くそっ!」
雪は狂ったようにそう呟くと、
「ーーーこの世は全部間違っているー」と、そう呟くー
そしてーー
「ーーそうだー天下を取るんだー
私がこの力で天下を取ってー、狂ったこの世界を変えるんだー」
雪に憑依している恭二郎は、改めてそんな言葉を口にすると、
そのままゆっくりと歩き出したー。
佐伯 勝之進らと敵対していた
”奥寺家”の領地を目指してー。
③へ続く
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コメント
②は、①の終盤の展開に至るまでが
中心のお話でした~!★
次が最終回デス~!
今日もお読み下さり、ありがとうございました★★!

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