異様なまでに完璧主義の父親ー。
そんな彼は”完璧ではない娘”に次第に
不満を膨らませて行くー。
そしてついに”あるもの”と出会ってしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
西岡 東吾(にしおか とうご)は、
小さい頃から”完璧主義”だったー。
全てにおいて”完璧”でないと気が済まないタイプで、
学校での生活態度から、勉強、スポーツまで
全てが”完璧”で居られるように、
血のにじむような努力をしてきたー
”人間関係”においても完璧主義で、
勉強だけに没頭しているような人間ではなく、
友達も作り、人に親切にするように心がけ、
嫌われるような振る舞いはしないように、
とにかく、何においても”完璧”を追い求め、
そして行動してきたー。
そんな彼は、
大学時代に出会った真理子(まりこ)と結婚ー、
真理子との結婚生活もやはり”完璧”を意識し、
真理子を悲しませないように、
とにかく、自分自身が努力を欠かさなかったー。
やがて、真理子との間に娘が誕生ー、
娘の彩菜(あやな)と三人での幸せな生活が始まったー。
がーーー…
それから数年後ー
東吾の、そして娘の彩菜の人生を
狂わせる出来事が起きてしまったーー。
東吾の妻であり、彩菜の母親である真理子が
”病気”で死んでしまったのだー。
突然の出来事だったー。
「ーーーー真理子ー」
呆然としながら妻・真理子の亡骸の前に立ち尽くす東吾ー。
東吾は心底悲しそうにしながらも、
真理子の亡骸に対して、
言葉を口にするー。
「真理子ー…
彩菜のことは任せてくれー
俺がー、俺が必ず”完璧”に育ててみせるー」
そう呟く東吾ー。
東吾の完璧主義ー。
それは、最初は決して
”人に押し付ける”ものではなかったー。
けれどー
”妻の死”が原因だったのだろうかー
それとも”自分の子供”に対してだからそうなってしまったのだろうかー。
東吾は、娘の彩菜に対して
”常軌を逸した”「完璧」を求めるようになっていったー。
妻の真理子がもしも健在であれば、
”それは違う”と、東吾にブレーキをかけることができたかもしれないー。
東吾は、真理子から指摘されたことは素直に聞き、
よく受け入れていたー。
だから、娘の彩菜に対しての振る舞いも真理子が生きていれば
”それは間違ってるよ”と、指摘できたかもしれないし、
東吾の暴走を止めることができたかもしれないー。
けれどー…
真理子はもういないー。
東吾を止めることができる人間は、もう、この世界にはいなかったー。
「ーー彩菜!90点じゃダメなんだー。
どうして、この点数で満足するー?」
「ー彩菜、そんな言葉づかいではダメだー。
人前ではもっと正しい言葉遣いをしなさいー」
「ー彩菜、人には優しくするんだー
自分のことなんて後回しでいいー。
周囲から”完璧”と思われることが大事なんだ」
「ー副会長に立候補した?
ー何を考えているんだー。
生徒会は会長じゃなきゃ意味がないー。
どうして副会長なんかで妥協したんだー?」
東吾は、娘の彩菜に”あまりにも過剰な完璧”を
求め始めていたー。
それは次第にエスカレートしていき、
要求はますます増えていくー。
その結果ー、父・東吾と、娘・彩菜の間には
修復不可能なレベルで”亀裂”が走ってしまっていたー。
「ー9時には寝なさいー。
ーもう9時10分だぞ」
父・東吾がそう指摘すると、
彩菜は「うるさいなぁー。わたし、もう高校生だよ?」と、
不満そうに呟くー。
「ー彩菜!俺はお前のためを思って言ってるんだー。
いいから、早く寝なさい!」
東吾がそう言い放つと、彩菜は「うるさい!」と、
不満そうに言葉を発して、部屋の中に籠ってしまうー。
「ーーー俺は約束したんだー真理子とー
娘を”完璧”に育てるってー」
東吾の歪んだ思いはますます膨らんでいくー。
「ーー真理子に、今の彩菜を見せることなんてできないー
くそっー」
東吾のあまりにも厳しい”完璧主義”に、
娘の彩菜も今はすっかりと捻くれてしまい、
その溝はますます深まっていくー。
一般的に見て、彩菜は”真面目”な部類であるものの
東吾からすればそれでも不満だったしー、
彩菜自身も、父・東吾のことは”大嫌い”だったー。
そんな日々が続いたある日ー。
今日も、中間試験の結果がクラス4位だったと聞かされて、
東吾は「ーー彩菜は4位で満足しているのか!?」と、声を荒げたー。
その反応を前に、娘の彩菜も
「4位の何が悪いの!?わたしだって頑張ってるのに!」と、不満を露わにするー。
「ーーそんな風に毎日毎日完璧を求められたら
頭おかしくなっちゃうよ!!」
彩菜は目に涙を浮かべながら、プリントを父・東吾に放り投げて
部屋に逃げていくー。
「ーー彩菜!!彩菜!!出て来なさい!」
東吾は叫ぶー。
自分のしている”教育”が、どんなに歪んでいようと、
それを止める人間が周囲にいないー。
そして、妻・真理子が死んでしまったことで
無意識のうちに心に負った傷ー、
そして、真理子と死の間際に約束した
”娘を完璧に育てる”という言葉が呪いのように
東吾の中に残り、
狂気じみた教育を繰り返すようになってしまっていたー。
「ーーーー彩菜はどうしてあんな風になってしまったんだー」
東吾は一人、そう呟きながら
ネット上で、”完璧な子供の育て方”と検索して、
色々な情報を目に通していくー。
あくまでも、自分自身の間違った道に気付かず、
暴走を続ける東吾ー。
そしてー、東吾は”それ”と出会ってしまったー
「ーーー洗脳ー?」
東吾は、表情を歪めるー。
”完璧な子供の育て方”を検索していた東吾は、
その情報にたどり着いてしまったー。
”当サイトの”洗脳レンズ”を使うことで、
完璧にお子様を教育することができます”
そう書かれたサイトに、目を奪われる東吾ー。
「ーこれだー…これさえあればー
真理子との約束を果たすことができるー
彩菜を”間違った道”から引き戻すことができるー…!」
東吾は嬉しそうにそう叫ぶと、
迷うことなく、その”洗脳レンズ”とやらを注文したー。
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「ー彩菜はー…カラオケは、ダメそうー?」
彩菜の親友・谷本 梨絵(たにもと りえ)が、
戸惑いながらそう言葉を口にするー。
放課後ー、友達と一緒にカラオケに行く、という話が出て、
彩菜を誘おうとしたものの、
彩菜本人から”父”のことを聞かされている梨絵は、
少し残念そうにしながらも、彩菜のほうを見つめるー。
「ーーーーー」
彩菜は一瞬考えながらも
”お父さんの言う事ばっかり聞いてたらおかしくなっちゃうよー”と、
心の中でそう思いながら、
「ーー…ううんー少しだけなら大丈夫ー」と、
梨絵にそう返事をするー。
「ホントに?やった!よかった!!」
梨絵は心底嬉しそうに彩菜のほうを見て笑うと、
彩菜も「テストは終わったばかりだし、少しぐらい息抜きしなくちゃ」と、
そんなことを思いながら、梨絵と一緒にカラオケに向かうのだっいたー。
そして、その日の夜ー。
18時頃に帰宅した彩菜ー。
が、父の東吾は腕組みをして、彩菜を待ち構えていたー。
「ーどこに行ってたんだー?」
そう呟く東吾ー。
「ーー…友達と少し遊んで来たのー。
夜遅くなったわけじゃないし、いいでしょ」
彩菜が少し不満そうにそう言葉を口にすると、
東吾は「どうして連絡しなかったー?」と、
更なる不満を口にするー。
「ーーどうして?
だって、連絡したらお父さん、絶対にダメって言うでしょ?
ーー悪いことしてるわけじゃないのに、
お父さんはいつも何にも理解してくれないー
しようともしてくれないー」
彩菜は、悲しそうにそう訴えるー。
しかし、父・東吾にはそんな話は通じなかったー。
「ーーダメなものはダメだー。
彩菜ー俺はお前のためを思って言ってるんだー。
お前を完璧な娘に育てるためにー。」
東吾がそう言うと、彩菜は
「”完璧”ってなにー!?」と、不満そうに声を荒げるー。
「わたしはロボットじゃないんだよー!?
お父さんの言う通りに、完璧なんて目指してたら、
そんなのもう、人間じゃないよ!」
彩菜がそう反論すると、
東吾は心底残念そうに首を横に振ったー。
「ーーー俺は、真理子と約束したんだー
お前を完璧な子に育てるってー」
東吾がそう呟くと、
彩菜は母親の写真が飾られている方向を見つめるー。
母・真理子の記憶は、そんなに残っていないー。
と、言うのも、まだ彩菜が小さい頃に真理子は
死んでいるからだー。
けれどー
「ーお母さんだって、今のお父さんを見たら失望するー
絶対にー」
彩菜がそう言い放つと、
東吾が怒りの形相で彩菜のほうを見つめたー。
そしてー…
既に目にコンタクトレンズのように取り付けていた”洗脳レンズ”の力を
発動して、彩菜のほうを見つめたー。
「ー彩菜ー…俺はお前の育て方を間違ったようだー
だから、”この力”でお前を完璧な娘にするー」
東吾がそう言いながら、目を赤く輝かせると、
その光を見た彩菜がビクッと震えて、
「な……なに、それー」と、そう言葉を口にするー。
が、やがて目つきがとろんとした虚ろな雰囲気に変わっていき、
彩菜は何も言わなくなったー
「ー彩菜ー今のお前は悪い子だー。そうだろうー?」
東吾がそう言い放つと、
彩菜は感情の籠っていない声で「ーはいーわたしは、悪い子ですー」と
そう言葉を口にしたー。
自分を悪い子だと認めた彩菜を見て、
東吾は嬉しそうに笑みを浮かべるー。
「今日からお前は完璧な娘に生まれ変わるんだー。
いいなー?」
東吾がそう言い放つと、
彩菜は「はいー…おとうさまー…」と、虚ろな目のまま呟くー。
「ーーそうだー
お前は、完璧な娘になるんだー。完璧にー」
東吾は、洗脳レンズの効力が本物だと確信すると、
歪んだ笑みを浮かべながら
その視線を満足そうに彩菜の方に向けるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
学校にやってきた彩菜は、
学校に到着すると、早速着席して勉強を始めたー。
「ーーあれれー?なんだか珍しいねー?」
親友の梨絵が、いきなり勉強を始めた彩菜を見て
そう言葉を口にすると、
彩菜は「ーわたし、もっともっと頑張らないといけないからー
完璧になるために」と、
あまり表情を表さずに、淡々とそう言葉を口にするー。
「ーー大丈夫ー?また、お父さんに何か言われたのー?」
梨絵が心配そうに言うと、
「ーーお父様のこと、悪く言わないで」
と、彩菜は敵意をむき出しにして、梨絵のほうを睨みつけたー。
「ーお、お父様ー…!?」
梨絵が戸惑うも、彩菜は「勉強の邪魔だから、話しかけないで」と、
そう言い放つと、黙々と勉強をし始めたー。
昼食を食べながら、
食べている昼食の内容も昨日までとガラリと変わって
”健康”だけを異常なまでに追求した弁当を口にしているー。
”お前をカラオケに誘うような子とは関わるなー
腐ったその子の腐敗がお前にも移るー”
そんな風に父・東吾から命令された彩菜は、
親友の梨桜を”腐った果物”のように、そんな風に思っていたー。
勉強をひたすら続ける彩菜ー。
放課後も真っすぐと帰宅し、
帰宅すると勉強に打ち込む彩菜ー。
そんな彩菜を見て、
「よく頑張ってるなー。偉いぞー」と、
満足そうに東吾が言い放つと、
彩菜は嬉しそうに「お父様のように、完璧な人間を目指しますー」と、
そう言葉を返して来たー。
彩菜の様子に満足そうに頷きながら、
東吾は彩菜の勉強の邪魔をしないように、と、
そのまま部屋の外に出ると、
妻である真理子の写真を見つめながら、
「これで約束、果たせそうだー」と、満足そうに囁くー。
「ーーーー」
真理子が生きていれば、こんなことは絶対に望まないー
けれど、もう、真理子の返事を聞くことはできないー。
東吾を止める人間はいないー。
洗脳されてしまった彩菜は
東吾の言う”完璧な人間”を目指すことだけに没頭してー、
やがて、学校でも周囲の人々が離れて行ってしまうのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
狂気に手を染めてしまったお父さん…
大変なことになってしまいそうですネ~!
続きはまた明日デス~!

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