常軌を逸したほどに完璧主義な父親ー。
彼は、娘の彩菜の振る舞いを我慢できず、
ついには、”洗脳レンズ”と呼ばれるものを
彩菜に対して使ってしまうー…。
そしてー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
娘である彩菜の成績はみるみるうちに上がったー。
元々、彩菜は成績上位で優秀な部類の生徒であったものの、
洗脳レンズにより、彩菜を支配ー、
全ての時間を勉強に費やさせたことで、
当然、”成績だけは”上がったー。
他のあらゆるものを犠牲にし、
本人の感情も無視すればー、誰でも成績は上がるー。
「ーー1位かー。偉いぞー」
父・東吾がそう言い放つと、
彩菜は「お父様がわたしを導いてくれたおかげですー」と、
嬉しそうに微笑むー。
彩菜は、褒められてもなお、勉強を続け、
食事は自分の好みを無視した栄養バランスを徹底的に考えたものを口にするー。
”決められた時間”になるとロボットのようにお風呂に入り始めてー、
夜の9時には必ず就寝するようにしていたー。
「ーーーー」
学校に行っても、彩菜は勉強ばかりで
周囲との関りを絶つようになったー。
父・東吾は”周囲の人間関係”も重視するタイプではあったものの、
一方で、”自分の利にならない人間”とは絶対に交流しようとしないタイプだったー。
今の彩菜は父・東吾の意思に従って
”カラオケに誘ってくるような友達はいらない”と、そう思っていたー
そんな彩菜からは自然と周囲の人間は離れて行ったー。
がー、彩菜の親友・梨絵だけは違ったー。
以前から、彩菜に”父親のこと”を聞かされていた梨絵ー。
彩菜の態度が急に変わったことー、
そして、彩菜が父親のことを”お父様”と呼んでいることに違和感を覚えた梨絵は、
彩菜が自分のことを無視するようになってからも、
彩菜のことを必死に調べ続けていたー。
”あの父親に何かされたに違いないー”
とー。
「ーねぇ、彩菜ー…」
梨絵は小声で彩菜に近付くと、
「ーお父さんに何か言われてるんでしょ?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーー返事はしなくていいから、聞いてー」
彩菜に無視されているのもお構いなしで梨絵は続けるー。
「ーわたしのお父さんの親戚に、親子のそういうー…ー
なんていうかなー、トラブルを解決するのが得意な
弁護士さんがいてー…
彩菜のことも説明したら、相談に乗ってくれるってー
ーーーだから、一度ここに電話してみてー」
梨絵はそう言うと、電話番号を書いた紙きれを彩菜に手渡すー。
梨絵は、彩菜が父親に何か脅すようなことを言われて、
本人の意思とは関係なく”わたしたちを無視している”と、
そう考えていたー。
そして、梨絵は自身の父親に”友達のこと”として相談、
父親が親戚の弁護士なら相談に乗ってくれると思うとして、
連絡を取ってくれて、
”本人が連絡をしてきてくれれば相談に乗ってあげられる”と、
そういう話を取り付けていたー。
しかしー…
”彩菜本人の意思とは関係なく”友達と縁を切らされそうに
なっているー
…この点は、確かに正しい。
ただー、それが”洗脳”という恐るべき手段によるものであるとまでは
梨絵も理解することができていなかったー。
「ーーーー」
電話番号が書かれたメモを無表情のまま受け取ると、
彩菜は「ー勉強の邪魔ー。わたしは完璧な人間になるの」と、
それだけ言葉を口にしたー。
「ーーー彩菜ー…負けないでー」
梨絵は、なおも、彩菜が父親に脅されるか何かしていると
そう考えて、そんな言葉をかけるー。
けれどー、
彩菜は帰宅すると、父・東吾に対して
「ークラスに邪魔者がいて、困ってますー」と、
電話番号の書かれた紙きれを手渡したー。
「ーー彩菜ーよく教えてくれたなー」
東吾は満足そうに頷くと、
「ー俺が対処しようー」と、そう言葉を口にしたー。
その翌日ー。
「ーーー」
彩菜の親友・梨絵がいつものように下校していると、
彩菜が梨絵に声をかけて来たー
「ー大事な話があるの。いいー?」
相変わらず無表情の彩菜ー。
梨絵は、昨日、電話番号を渡したことで
彩菜もようやく”父親の呪縛”から
逃げようと決めてくれたのだと、そう思いながら
「うんー」と、嬉しそうに頷くー。
がー、彩菜に連れていかれたその先にはー
彩菜の父親・東吾が待ち構えていたー
「ー君だなー。うちの娘に近付く
”寄生虫”みたいなやつはー」
東吾がそう言うと、梨絵は「ーえ…」と、戸惑いながら、
彩菜のほうを見つめるー。
「ーー…っ…」
梨絵は、”まだ”彩菜が父・東吾に従っているー
”従わされている”と思い、
「ーどうしてー、どうしてこんなことするんですか!?
彩菜を束縛して、何のつもりなんですか!?」と、そう叫ぶー。
がー、東吾は「束縛?」と、そう言葉を口にすると、
「彩菜はやっとわかってくれたんだー。完璧な娘になることこそが
最大の親孝行だとー。
そして、自分の将来のためにもなる、とー」
と、そんな言葉を口にするー。
「ーーーー彩菜!ダメだよ!こんな親の言う事聞いてたら、彩菜の人生はー」
梨絵が、彩菜のほうを見て彩菜を説得するような言葉を口にするー。
「ーーこんな親ー?」
梨絵の言葉に、ようやく彩菜が反応すると、
「お父様のことー、悪く言うのは許さないー」と、
敵意をむき出しにしてそう言葉を口にするー。
彩菜の睨むような表情を見て、梨絵は震えるー。
”言わされている”ようには見えないー。
「ーあ、彩菜ー…ね、ねぇー、どうしちゃったのー?」
戸惑う梨絵ー。
急に、こんな風に変わるはずがないー。
何か、何かあるはずー。
「ーー彩菜に何かしたんですかー?
ー彩菜を元に戻して!」
梨絵が彩菜の父親・東吾に向かってそう叫ぶー。
すると、東吾は笑いながら言ったー。
「ー”何をしたか”君自身で教えてあげようー」
とー。
そして、目を赤く光らせると、
”洗脳レンズ”の力を発動する東吾ー。
梨絵には興味がないー。
特に、人生を壊すつもりもないー。
”勝手にやっていてくれれば”それでいいー。
”ー彩菜とはもう二度と関わらない”ー
東吾は、彩菜の親友・梨絵にそれだけ命令するー。
梨絵は、震えながらもそれに抗うことが出来ずー…
その日以降、彩菜に一切話しかけて来なくなったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”邪魔者”はいなくなったー。
彩菜が理想としていた”完璧な娘”になっていくー。
勉強を重ね、一流大学に入学した彩菜は、
大学に入ってからも、ひたすらに勉強を続けるー。
さらには、大学で出会ったイケメンで、勉強もできて、
性格面も最高な男子を見つけると、
東吾は、彩菜に対して「ー完璧なお前にふさわしいやつだー
あいつの、彼女になるんだー」と、そう命じたー。
彩菜は、その男子・克哉(かつや)と親しくなるために
全てを賭けて行動してー、
ついに、克哉と付き合うことに成功したー。
”理想の娘”の成長を喜ぶ東吾ー。
だがー、
東吾にとっての”誤算”が起きたー
それはーー…
「ーーーぐーーーー…」
ある日のことだったー。
大学に彩菜が行っている最中に、
急激に体調不良に見舞われた東吾は
「くそっー…」と、声を発しながら
何とかスマホで救急車を呼ぼうとするー。
その急病はー、妻・真理子が命を落とした病気と
”同じ”ものだったー。
単なる偶然かもしれないー。
けれど、もしかしたら、妻・真理子が、
東吾の暴走を止めようとしたのかもしれないー。
「ーー完璧に健康にも気を遣ってきたはずなのにー」
そう言葉を口にしながら、スマホを手にしようとするー。
がー、スマホを手にすることができないまま
崩れ落ちー、
そのまま倒れ込む東吾ー。
娘の彩菜が帰宅した時には、
既に東吾は息を引き取っていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーお父様ー」
東吾が死んでもー、
”洗脳レンズ”の効力は消えなかったー。
一度、”塗り替えられた”脳の中は、そのままー。
最後、上書きでもしない限りは元には戻らないー。
「ーわたし、お父様に恥じない完璧な娘になりますからー」
彩菜は、父・東吾の亡骸を前にそう誓うー。
他に葬儀に参列していた参加者が、
彩菜の雰囲気に少し違和感を覚えるー。
中には、小さい頃の彩菜を知る親族もいて、
”あんな子だったかなー?”と、あまりの違いに
違和感を抱いていたものの、
まさか、彩菜が死んだ父親・東吾に洗脳されているとまでは
夢にも思わず、”このぐらいの歳頃の子は変わるから”ぐらいで、
頭の中で間違った解釈をしてしまったー。
その後ー、
彩菜は大学で出会った克哉と結婚ー
娘を授かり、
愛梨(あいり)と名付けられたその子と三人で
幸せに暮らしていくー…
はずだった。
しかしー、父・東吾によって
”何もかも完璧にするように”命令されたままの彩菜は、
普通の人間とはかけ離れた、まるで”ロボットのような”完璧を
追求する姿勢に、次第に夫となった克哉はついていけなくなり、
そのまま離婚してしまったー。
「ーーー…お父様ー…ごめんなさいー
完璧な人生に傷がついてしまったー」
悔しそうに彩菜はそう言い放つー。
既に、父・東吾の意のままになってから、何年も経過したー。
けれど、今の彩菜にはもう、”本当のわたし”の面影など、
ほとんど残されていなかったー。
まるで、かつての父・東吾のように
その意思を受け継ぐものになっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やがてー、彩菜の娘である愛梨は、
かつての彩菜と同じく、高校生になっていたー。
「ーーもっと勉強しなさい!
遊んでいる暇なんて、あなたにはないの!」
彩菜はー、常軌を逸した”教育ママ”になっていたー。
もちろん、もしも彩菜が父・東吾に洗脳レンズなど使われずに
そのまま大人になっていればー、
仮に娘を授かっても、こんなことはしなかったー。
本来の彩菜はそんな人間ではないー。
けれど、父・東吾に歪められて、
東吾と同じ”異様なまでの完璧主義”になってしまった彩菜は、
離婚後、自分が引き取った娘の愛梨に対して、
かつて自分がされたことと同じようなことをしていたー。
「ーーお母さんはおかしいよ!
少しぐらいー」
愛梨は、”少しぐらい遊びたいよ!”と、そう言おうとするも、
彩菜が怒りの形相で反論するー。
「ーーこの前の試験ー5教科で合計何点だったの?」
すっかり神経質そうな顔立ちになってしまった彩菜が、
そう言い放つと、娘の愛梨は戸惑いの表情を浮かべながら
「ーー458点も取ったんだから、十分でしょー?」と、
そう言い放つー。
「ーー458点ー?
ーー愛梨は、それで満足してるのー?
ーーそんな点数で、遊びたいとか言ってるのー?
信じられない」
彩菜はそれだけ言うと、
「ーー遊ぶ前に、やることがあるでしょ?」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーーー~~~」
娘の愛梨は目に涙を浮かべながら彩菜を見つめるー。
「泣いている暇があったら、勉強しなさい!
わたしは、あなたを完璧にするために言ってるの!いい?」
彩菜が厳しい口調でそう言い放つと、
愛梨は震えながら、そのまま自分の部屋へと向かって行くー。
「ーもうー。わたしはあなたを完璧に育てないといけないの」
彩菜は不満そうにそう言葉を口にすると、
父・東吾と同じように自分の子供を苦しめていることも
自覚できずに、大きくため息を吐き出したー。
部屋に逃げ込んだ娘の愛梨は、
母・彩菜が、”祖父”にあたる東吾から洗脳されてしまった過去を持つなどとは
夢にも思わずに、
部屋の中で一人「お母さん、おかしいよー」と、そう言葉を口にするー。
がー、母・彩菜を怒らせると、もっとひどい目に遭うー、と、
そんな風に思った愛梨は
そのまま勉強せざるを得なかったー。
そして、そんなある日ー。
娘の愛梨が言う事を聞かないことに
苛立ちを覚えていた母・彩菜は、
ネット上で”どうすれば分かってもらえるか”を
必死に調べていたー。
「ーーーー!」
そんな中ー、
見つけてしまったー
かつて、彩菜の父・東吾が彩菜に使ったー
”洗脳レンズ”
をー
それを見た彩菜は驚きの表情を浮かべながら
瞳を震わせるのだったー。
③へ続く
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今日もとっても暑いので、
皆様も気を付けて下さいネ~!!

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