常軌を逸した完璧主義の父親に
歪められてしまった娘の彩菜ー。
やがて、自分自身が母親の立場になった彩菜は、
”同じ過ち”を繰り返そうとしていたー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
娘の愛梨の反抗的な態度に苛立っていた
”母親”になった彩菜は、
かつての父・東吾のように、娘の教育について
ネットで調べていたー。
そんな中ー、彩菜は見つけてしまったー。
既にこの世にはいない父・東吾が見つけ、
彩菜自身に使用した”洗脳レンズ”をー。
「ーーーーー」
彩菜は思わず笑みを浮かべるー。
自分自身がその”洗脳レンズ”で洗脳されていることも知らずにー
そのせいで自分が”狂った教育ママ”のようになっていることも知らずに、
その説明を読んでいくー。
がー
「ーーーーっー」
彩菜は一瞬、脳に何か刺激が走ったような錯覚を覚えて
頭を抑えるー。
「ーーーー……ーー今のはー?」
”洗脳レンズ”で洗脳されている自分自身が
それを目にしたことで、無意識のうちに、
何か反応を起こしたのかもしれないー。
がー、
そこまでは気づかずに、彩菜は
「これさえあれば、愛梨も完璧な子に育てられるー」と、
嬉しそうに笑うと、
かつての東吾のように、”それ”を注文して、笑みを浮かべるー
迷わずに自分の娘にそれを使うつもりだー
「ーー愛梨ー全部、あなたのためなのよー」
彩菜はそれだけ言葉を口にすると、
静かに笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーお母さんが、勉強しろしろってうるさくてー」
彩菜の娘・愛梨が心底困惑した様子で言うと、
その親友である、莉々(りり)が戸惑った様子で、
「え?でも、愛梨ちゃんー、テストの成績、良かったよねー?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーお母さんからすると、あれでもダメみたいー」
愛梨が言うと、莉々は「そっかぁ…」と、そんな言葉を口にしながら、
戸惑いの表情を浮かべたー。
愛梨から、母親のことで悩んでいると聞かされた莉々は、
その日ー、帰宅すると母親と雑談しながら
”そのこと”を口にしたー。
「ーーそうなんだー…大変だね~…
”愛梨ちゃん”だったっけー?」
莉々の母親がそう言葉を口にすると、
「うんー。なんだか可哀想でー」と、そんな風に言葉を口にするー。
「ーう~ん…でも、何かしてあげられることも
なかなかないしねー…」
母親は、それだけ言葉を口にすると、
娘の莉々と共に、戸惑いの表情を浮かべるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
洗脳レンズを手に入れた彩菜は、
嬉しそうに微笑むー。
「ーこれで、愛梨も完璧な子に育つわー」
洗脳レンズを見つめながら笑う彩菜ー。
がー、なぜだろうー。
洗脳レンズを見ていると、
少しだけ身体の底から、”得体の知れないゾワゾワ”を感じるのはー。
「ーーーーーー」
彩菜は、洗脳レンズを見つめながら、
父・東吾に対して
”「ーーそんな風に毎日毎日完璧を求められたら
頭おかしくなっちゃうよ!!」”
と、叫んだ記憶が一瞬フラッシュバックするー。
「ーーーー…!」
彩菜は、頭を押さえながら
”今のわたし”は、その時と同じことを娘にしていることに
動揺を覚えるー。
がー、すぐに
「これは教育のためよー。お父様は正しいのー」と、
そう言い聞かせるように言葉を口にすると、
洗脳レンズを手にするー。
しかしー”自分自身を洗脳したその道具”と、
予期せぬ出会いを果たしてしまったことで、
10年以上も前に彩菜にかけられた洗脳に異常が生じていたー。
「ーーーわたしはーわたしは間違ってないー
お父様はーお父様は正しいのー」
ぶつぶつと呟きながら、その場に蹲る彩菜ー。
「ーーー…~~~」
物音がしたことで、様子を見に来ていた娘の愛梨が、
その様子を部屋の外から見つめていたー。
「ーーお、お母さんー…?」
小声でそう呟く愛梨ー。
昔から、母親の彩菜に時々”違和感”を抱くことがあるー。
何だか、ロボットのようなー
不自然な感じがすることがあるのだー。
なぜ、そんな風に思うのかは分からないー。
けれどーーー
何だかー、その違和感が小さい頃から、拭えないー。
「ーーー…この洗脳レンズを使って、愛梨をー」
彩菜がボソボソと呟くー
「ーー!!」
それを聞いた愛梨は、表情を歪めるー。
そしてー、
母・彩菜がトイレに行った隙を見て、
彩菜の部屋に忍び込むと、
部屋に置かれていた”洗脳レンズ”と、その説明書を手に、
”お母さんはわたしにこれを使うつもり”だと、身の危険を覚えて、
洗脳レンズを持ち出したまま、
そのまま外へと飛び出したー。
「ーーーー」
トイレから戻って来た母・彩菜は、
洗脳レンズが自分の部屋から消えていることに気付くと、
鬼のような形相で浮かべて、愛梨の部屋に向かうー。
「愛梨!わたしの部屋に勝手に入ったわね!?」
怒りの形相でそう叫ぶ彩菜ー。
がー、そこには愛梨の姿はないー。
彩菜は神経質そうな顔をさらに歪めると、
「ー愛梨ー…どこまでわたしを困らせるのー!?」と、
不満そうに呟くと、
そのまま家から外へと飛び出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーこ、こんな夜遅くに、どうしたのー?」
戸惑いの表情を浮かべながら
家から出てきたのは、彩菜の娘・愛梨の親友である
莉々だったー。
「ーーた、助けてー、お、お母さんがこれをー」
愛梨は家から持ち出した”洗脳レンズ”を手に、
そう叫ぶー
家の奥から出てきた莉々の母親は、
戸惑いの表情を浮かべながらも、
「ーいったん、家の中に入って貰ったら?」と、
莉々にそう提案するー。
莉々も頷くと、そのまま愛梨は、
親友である莉々の家の中に入って行ったー。
親友の家に駆けこんだ愛梨は、全てを話し、
”洗脳レンズ”を莉々と莉々の母親に見せながら
「助けて」と涙ながらに叫ぶー。
「ーーお母さんの名前はー…?」
莉々の母親は、親身になって、愛梨の話を聞いていたー。
そして、そう言葉を口にすると、
愛梨は「彩菜ー…彩菜ですー」と、自身の母親の名前を口にするー。
「ーーー彩菜ー?」
莉々の母親が少し表情を歪めるー。
「ー知ってるの?」
莉々がそう言葉を口にすると、
莉々の母親は、愛梨のほうを見つめるー。
愛梨の名前は、
”西岡 愛梨”だー。
そして、莉々の母親は、あることを思い出すー。
高校時代、親友がいたー。
”西岡 彩菜”という親友がー。
その彩菜は急に勉強に執着するようになって、
結果的に疎遠になったー。
そうー、愛梨の親友・莉々の母親は、
愛梨の母親・彩菜の高校時代の親友だった梨絵(りえ)だったー。
当時、彩菜の異変に気付いて、
彩菜が父親の東吾に”何かされた”と考えて
彩菜を助けようとしていた親友の梨絵ー。
彼女は”偶然”、彩菜と同じ年に出産し、
そして、娘同士が偶然、同じ学校に通っていたのだー。
がーーー
「ーーごめんなさいー。わたしには助けられないー」
梨絵は突然そう言葉を口にしたー。
「ーお、お母さんー!?」
戸惑いの表情を浮かべる莉々ー。
「ーーど、どうしてですかー?」
愛梨が涙目でそう言葉を口にすると、
愛梨の親友・莉々の母親である梨絵は
「ーごめんなさいー。わたしは、彩菜とは関わらないのー」と、
そう言葉を口にして、愛梨を部屋から追い出そうとするー。
そうー…
彩菜の親友・梨絵は、
高校生の当時ー、彩菜の異変を調べていくうちに、
父・東吾の元に誘い込まれて
”洗脳レンズ”を使われているー。
彩菜とは違い、性格や人生に影響を与えるような洗脳は
されなかったものの、
当時、彩菜の父親の東吾から
”ー彩菜とはもう二度と関わらない”ーように、
そう命令されているー。
彩菜が、今でも”完璧”を追求する歪んだ母親になってしまったのと同じで、
梨絵に対するその洗脳も未だに有効だったー。
梨絵は、彩菜とは2度と関わらないー。
「ーとにかく、出てって!」
梨絵がそう叫ぶと、愛梨は泣きながら、親友・莉々の家を後にするー。
娘の莉々は「お母さん!?どうして!」と、
そう叫ぶと、梨絵は頭を抱えながら
「分からないー…ごめんなさいー」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親友・莉々の母親から追い出されてしまった愛梨は
涙ながらに行く場所もなく、
街を歩いていたー。
「ーーやっと見つけたー」
母・彩菜がそんな言葉を口にしながら、
愛梨の元にやってくるー。
愛梨は震えながら
「ーーお母さんー…わたしに何をするつもりなのー?」と、
洗脳レンズのことを口にするー。
「ーーーーーーーー」
彩菜は表情を歪めながら、
「ー愛梨ーあなたを”完璧”に育てるためだから、心配しないでー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーー…そんなの…おかしいよー」
愛梨は言葉を振り絞るようにして、母・彩菜のほうを見つめるー。
「ーーもし、もしもお母さんがー、
自分の親から、そういうことされそうになったらー…
どう思うのー?」
愛梨が涙目のままそう言葉を口にすると、
母・彩菜は「わたしは、元々完璧な子だったからー」と、
そこまで言いかけて表情を歪めるー。
”もしもー、わたしがそういうことを、されそうになったらー…?”
母・彩菜は、父・東吾に”洗脳レンズ”による光を浴びせられた時の
光景を一瞬思い出すー。
「ーーわたしはーー…わたしはーーー…?」
彩菜は震えながら言葉を吐き出すー
そんな母・彩菜の様子に、愛梨は「お母さんー…?」と、
心配そうに言葉を口にするー
「ーーーーとにかくーーー……
家に…家に帰って来なさいー」
母・彩菜はそれだけ言葉を口にすると、
他に行く場所のない愛梨は、怯えた表情を浮かべながら、
そのまま家に連れ戻されてしまうのだったー。
「ーーー愛梨ー
全部、あなたのためー
あなたに、”完璧”でいてほしいからー」
母・彩菜はそう言葉を口にすると、
自分の中で違和感を感じながらも、
娘の愛梨に対して”洗脳レンズ”を使ってしまったー。
その日を境に、愛梨は豹変しー、
母・彩菜と同じように”勉強”に打ち込み始めてー、
母と同じような道筋を辿ったー。
やがて、高校を卒業、大学に進みー、社会人になって結婚ー、
子供に対して”完璧でいなさい”と、
母・彩菜と、そして愛梨から見れば既に亡き祖父の東吾と同じように
自分の子供に対して”完璧”を強いる人間になってしまったのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何十年も昔ー
まだ、彩菜が生まれていない時代ー…
彩菜の父親・東吾が子供だったころー。
彼は、”小さい頃から”常軌を逸するほどの完璧主義だったー。
がーーーー
”最初から”そうだったわけではないー。
「ーえ~…なんで!?おとうさん!僕だって遊びたいよ!
どうして友達と遊んじゃいけないの!?」
小さかった頃の東吾がそう叫ぶー。
すると、東吾の父親は言うー。
「ー俺はお前を”完璧な子”に育てたいんだー
勉強しなきゃ、将来困るのはお前だー。
85点で満足するような子供になっちゃいけないー。
常に、100点を目指すんだー」
東吾の父親のその言葉に、
小さい頃の東吾は反論したー。
けれどー…
「なら、仕方ないー
東吾、許せー。これは、お前のためなんだー」
東吾の父親がそう呟くと、
目を赤く光らせるー。
”洗脳レンズ”ー
その光を見た小さい頃の東吾はビクッと震えるー。
東吾はー、その日以降、
”常軌を逸するほどの完璧主義”になったー。
彩菜の父、東吾もまたーー…
小さい頃に”洗脳レンズ”で洗脳されたことによって、
異様なまでの完璧を娘に求めていた”洗脳レンズの被害者”だったー。
妻の真理子を失ってからはさらにそれがエスカレートし、
結果的に東吾は、娘の彩菜に洗脳レンズを使ってしまいー、
そして、彩菜も”完璧主義”となり、
娘の愛梨に対して、異様なまでの教育ママぶりを発揮して、
最後には、洗脳レンズを使ってしまったー。
「ーーー…洗脳、レンズー…」
そして今、自身も母親になっていた彩菜の娘の愛梨は、
ネット上でそれを見つけると、
笑みを浮かべていたー。
「これで、あの子も”完璧”に育つかもー」
そう言葉を口にすると、愛梨は”それ”を注文するー。
また、悲劇は連鎖しようとしていたー。
おわり
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コメント
最終回でした~!★
最初の父親も、その親から
洗脳レンズを使われていた被害者…!
もしかしたら、その親も……
みんな、正気のままだったら
素敵な親になれたのかも…しれないですネ~!
お読み下さりありがとうございました~~~!!
★作品一覧★

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