飼い猫が、ある日突然、
”彼女の姿”に変身したー。
結果ー。
”ふたり”になってしまった彼女ー。
二人の彼女との共同生活の行方はー…!?
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社会人2年目の浅山 博人(あさやま ひろと)は、
高校生の頃から付き合っている彼女、葉桐 裕香(はぎり ゆうか)と、
同居生活を送っていたー。
社会人になったことを機に、互いの両親に同意を得た上で
同居生活を開始し、
社会人3年目ぐらいになって、二人とも落ち着いたら
正式に結婚しよう、ということで二人の間では話がついているー。
同棲2年目の今も、
二人は大きな喧嘩もなく、仲良く暮らしていて、
既に、事実上の夫婦のような状態でもあったー。
そんな、ある日ー
雨の中、博人が裕香に頼まれた買い物を済ませて
家に向かって歩いているとー
ふと、雨に濡れながら弱弱しい声を上げている猫を見つけたー
「ーーーーーあれ…こんなところに猫がー」
”そういえば、小さい頃、実家でも猫を飼ってたなぁ…”などと、
既にこの世にいない猫を懐かしみながら
その猫に近付くと、どうやら怪我をしている様子だったー
「ーーーー…大丈夫か?」
猫に優しく語り掛ける博人ー。
一見すると、あまり愛想がなさそうに見える博人だが、
性格はとても優しくー、
そんな部分も、裕香が博人のことを好きになった要素の一つだったー。
弱弱しく鳴き声を上げる猫ー。
「ーーー…う~ん…うちのアパート、確かペットもOKだったからー…」
博人はそう呟くと、猫の頭を優しく撫でてー
「こんなところにいたら、身体壊すぞ」と、呟くと、
そのままその猫を一時的に保護することに決めてー
家へと持ち帰ったー
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あれから2週間ー。
博人が保護した猫は、動物病院の診察を受けた末に
無事に回復ー、
同棲している彼女の裕香が
”せっかくだから飼っちゃおうよ!この子も心配だしー”と
言い出したことで、博人もその気になり、
拾われた猫・みーちゃんは、博人と裕香の飼い猫となったー
「ーはい、みーちゃん、ご飯はできたよ~」
今日は仕事が休みな裕香が、
微笑みながら、猫のみーちゃんに、エサを持ってくるー
嬉しそうに裕香の用意したエサを食べるみーちゃん。
そんなタイミングでー
博人が帰宅したー。
「あ、おかえり~!」
裕香が博人のほうを見て、そう声をかけるとー
その瞬間ー、エサを食べていたみーちゃんが、玄関の方に
嬉しそうに走って行って、帰宅したばかりの博人に飛びついたー。
「ーーーはははっ…ただいま」
駆け寄ってきたみーちゃんを抱きかかえると、
裕香のほうを見つめながら、博人がそう言葉を発すると、
裕香は苦笑いしながら、
「みーちゃんってば、助けてくれた博人のこと、
ホントに大好きだよね~」と、呟くー。
「ーーそうかなぁ?裕香にも懐いていると思うけど?」
博人が穏やかな口調でそう言いながら、
猫のみーちゃんに「いい子にしてたか~?」と、優しい口調で呟くー
「ー裕香を困らせちゃだめだからな~?」
そう言うと、猫のみーちゃんを床に置いて、エサの続きを
食べるように促すー。
「ーあ、裕香が食べたがってた新発売のチョコ、
スーパーに売ってたから買ってきたよ」
博人がそう言いながら、仕事帰りに立ち寄った
スーパーの袋から、裕香が食べたがっていた
新発売のチョコを取り出すー
「ーわっ!売ってたんだ~!ありがと~!!」
裕香が嬉しそうに微笑むのを見て、
博人は満足そうに笑うー。
そんなー
仲良しな二人の様子を、
猫のみーちゃんは、エサを食べながら
静かに見つめていたー。
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翌日ー。
今日は博人が休みで、裕香が仕事ー。
二人とも、仕事が土日休みとは限らない
仕事をしているため、
休みはなかなか一致せず、
こうしてバラバラになることが多いー。
だが、それはそれで、
休日の方が家事を担当してー、という
役割分担も出来るし、
悪いことばかりではなかったー。
「ーふ~…買い忘れは…なしっと」
博人は、ホームセンターで買い物を終えると、
そのまま袋を手に、家へと帰宅するー。
玄関の鍵を開けて、
家の中にいつものように入る博人ー
「裕香が帰ってくる前にー
まずは、晩御飯の準備をしておいてー」
そんなことを呟いていると、
博人は、部屋の中に”いるはずのない”人物の姿を見て
「うわっ!?!?!?!?」と、声を上げたー。
部屋の中にー
今日、仕事中のはずの裕香の姿があったのだー。
「ーゆ、ゆ、ゆ、ゆ、裕香!?」
博人が、混乱して叫ぶー。
混乱していたのはー
”仕事のはずの裕香が突然家の中にいたから”だけではないー。
家の中にいた裕香が、
何故か裸だったためー
余計に驚いてしまったー
「ーーど…どうしたんだー…?し、仕事はー?」
混乱しながらようやく言葉を振り絞る博人ー。
何故、裕香が裸で家の中にいるのかは知らないが、
まずはそこに突っ込むのではなく、
”仕事はどうしたのか”という疑問を口にしたー。
しかしー
裸の裕香は突然四つん這いになると、
ゆっくりと近くに歩いてきて、
「にゃ~~」と、声を上げたー
「ーに…に…にゃあ?」
戸惑う博人ー。
そうこうしているうちに、
裕香が博人に抱き着いてくるー
「お、おぃっ!?」
さらに混乱する博人ー
胸が当たるのも、髪が当たるのもお構いなしで、
裕香は嬉しそうに博人の手をペロペロと舐め始めたー
「ーちょ!?き、急にどうしたんだ!?」
博人がそう叫びながらー、
ふと、あることに気付いて、周囲をキョロキョロするー。
するとー
飼い猫のみーちゃんの姿が部屋の中に
ないことに気付いたー
「ーーえ…え…???
ゆ、裕香…みーちゃんは?」
戸惑いを隠しきれない博人が、
裕香にそう確認するとー
ちょうど、スマホが鳴り響いたー。
「ーーえ」
スマホを確認した博人は表情をさらに歪めるー
何故ながら、スマホに表示された
”相手の名前”が
同棲している彼女・裕香だったからだー。
しかし、仕事中のはずの裕香は目の前に裸でほほ笑んでいるー
「え…???」
混乱したまま電話に出ると、
電話相手は、表示されていた通り、裕香だったー
”あ、もしもし~?博人ー?
今日、少しだけ残業をお願いされちゃって、
30分から1時間ぐらい遅くなっちゃうからー
もし、あれだったら先に晩御飯食べーー”
そこまで言いかけた裕香に
「ーーあ、あのさー…裕香、今、職場?」
と、博人は言葉を遮って質問したー
”え?う、うんー。職場だけど、どうしたの?”
裕香がそう返事をするー。
”裕香が職場にいるー”
と、なると、今、目の前にいる
この裸の裕香は誰なんだー?
電話先の裕香の方は”いつもの喋り方”で、
言動にもおかしな感じはないー。
と、なればこの裕香が”いつもの裕香ではない”
ということになるー
「ーー裕香って、双子のお姉さんか妹いたり
しないよな?」
博人が思わずそう確認すると、
裕香は笑いながら”なぁにそれ?いないけど…”と、答えたー
「そ、そっかー
じゃあ、残業の件は分かったからー
頑張って」
博人がそう言うと、裕香は”うん!またね”と、返事をして
そのまま電話を切ったー
「ーーーーーー」
博人は、部屋の中にいる裸の裕香のほうを見つめるー。
「ーーー君は…誰だ…?」
そう、首を傾げながら、博人は
すぐに「と、いうか、まずは…その、服を着てくれ!」と
困惑した表情を浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーただいま~~!」
裕香が帰宅したー。
裕香を出迎えた博人は、
「ー裕香ー、あのさー」と、混乱しながら言葉を口にしたー。
「ーーえ?」
裕香は、ふと”家の中に人の気配”を感じるー
そして、そのタイミングで部屋の方から
「ひろと~!」と、女の声が聞こえて来たー
「ーーー…え????」
裕香はさらに混乱するー
一瞬ー、浮気の文字が頭によぎるー。
だが、博人はすぐに困ったような表情を
浮かべながら、裕香を部屋の中に通したー
すると、そこにはーー
「ーーえ…!?!?!?
な、なんで…
え??わたしが…も、もう一人ー?」
帰宅した裕香が、困惑しながら呟くとー、
既に家にいた裕香が「おつかれさま」と、にっこり微笑んだー
”帰宅したら自分がもう一人いたー”
そんな状況に、本物の裕香は思わず驚いて
「えっ…!?えええええええええええええっ!?!?!?」と
改めて声を上げてしまうー。
「ーーお…俺も何が何だか…分からないんだけどさ…」
博人がそわそわした様子で、もう一人の裕香のほうを見つめると、
本物の裕香のほうをもう一度見つめ直したー
「ーーか…彼女は…その、みーちゃんみたいで…」
この前拾ってきて飼い猫になったみーちゃん…
それが、もう一人の裕香の正体なのだというー。
「ーーえ…えぇ…??」
戸惑いを隠せない裕香は、周囲を見渡すー。
確かに、家にいるはずのみーちゃんの姿はないし、
こんなことが起きていたのであれば、
さっき昼間に電話した際、
博人が”裕香、職場にいるよな?”だとか、
変なことを聞いてきた理由も頷けるー。
「ーーーこれからも、よろしくお願いします」
もう一人の裕香がペコリと頭を下げるー。
「ーあ、…さ、最初は四つ足で歩いたりとか、
にゃーにゃー言ってたんだけど…
裕香が帰ってくるまでの間に色々教えてー」
博人がそう補足するー。
裕香は何度も瞬きをしながら、
もう一人の裕香になった猫のみーちゃんのほうを見つめると、
「え…あ…、あ…よ、よろしくー?」
と、首を傾げながら呟いたー。
「ーーーあ、そうだーご飯の準備できてるからー」
博人がそう言うと、裕香は「あ、う、うん!」と、戸惑いながら
そのまま「ちょっと待っててね」と、手を洗ったり、着替えたりを
し始めたー。
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雑談しながら、いつものように晩御飯を食べる二人ー。
だが、博人も裕香も、チラチラと時々横を見つめているー。
もう一人の裕香が、にこにこしながら
「あ、みーちゃんにはお構いなくー」
と、自分のことをみーちゃんと呼びながら、
そのまま正座しているー。
「ー…ねぇ」
小声で裕香が博人に向かって呟くー
「ん?」
博人が裕香に近付くと、裕香は
「みーちゃんは何も食べないの?」と、
小声で確認するー。
「ーーあ…あぁ…さっき一応キャットフードを…」
博人が困惑しながら言うと、
「に、人間になってもキャットフードなの?」と、
裕香は戸惑いながら笑うー。
「ーー…」
博人から少し離れて、もう一人の裕香のほうを見つめると、
裕香は困惑した様子で、
「ーわたしの姿でキャットフードを食べるって…なんかー…奇妙な感じ」と、
静かにそう呟いたー。
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”みーちゃんが可愛いのは、今まで通りだけど、
何となく”自分”が目の前にいるみたいで違和感がすごいー”
そう思いながらも、裕香は、もう一人の裕香と一緒にお風呂に入るー
「ねぇ…どうして急に人間になったの?」
裕香が言うと、みーちゃんは答えるー。
「ーーいつも博人さんや、裕香さんにお世話になっていてー
恩返ししたいって願い続けてたらこうなったんですー」
その言葉に、裕香は「そ、そうなんだー…」と言いながらも
「ー恩返しだなんて、そんなー」と、照れくさそうにするー。
急にもう一人の裕香が「くすぐったいですー」と、身体を動かすのを見て
「あ、ごめんね…!人間の身体の洗い方にまだ慣れてないのかな?」
と、”自分で第3者視点で自分の身体を洗う”という
奇妙な経験に、裕香は、「なんかー…奇妙な気分ー」と、不思議そうに呟いたー
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”恩返し”
その言葉通り、みーちゃんが変身したもう一人の裕香は、
家の中でいろいろなお手伝いをしてくれたー。
ある日、裕香が”メイドさんみたい”と、メイド服を
みーちゃんにプレゼントしたことで、
みーちゃんが変身した”もう一人の裕香”は、
それを気に入って、いつもメイド服でお手伝いを
するようになっていたー
「ーかわいいけど、やっぱり奇妙な気分ー」
裕香が、メイド服姿のもう一人の裕香を見つめながら呟くー。
「ーでも、不思議なこともあるもんだなー…」
博人が笑いながら、そんなもう一人の裕香のほうを見つめるー。
”奇妙な”三人の共同生活は、順調にー
この時までは進んでいたー。
②へ続く
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コメント
飼い猫が突然、彼女の姿に…!★
今のところ、トラブルは起きずに順調な感じですネ~(笑)
不穏な気配を振りまきつつ、続きはまた明日デス!
今日もありがとうございました~!
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