ある日、憑依好きの男の前に突然姿を
現した謎の少女ー。
彼女から「わたしに憑依してみませんか?」と言われた彼は
不審に思いながらも、話を聞いて憑依することを決断したー
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ゴクリー。
唾を飲み込む紗耶香ー
「ま、まさか…ほ、本当に憑依できるなんてー」
さっきまで、目の前で喋っていた紗耶香の身体が、
誠太郎の思うがままに動くー
握りこぶしを作ったり、手を開いたりー
瞬きをしたり、
ジャンプしてみたりー
足を動かしてみたりー
何でもー
自分の思い通りに動くー
そう思った瞬間に、途端に恥ずかしさと
ドキドキがこみ上げてくるー
「ーし、しかも…お、俺の口なのにー
こんなに可愛い声が…」
紗耶香はドキドキしながら、
”自分の口から紗耶香の声が出る”ということに
とても感動したー
そしてー
バッ、とカラオケのマイクのほうを見つめるー
「え…も、もしかして今ならー」
ニヤニヤしながら紗耶香はガッツポーズをするー
「女の子として歌い放題…!」
とー。
それに気づいた紗耶香に憑依した誠太郎は、
早速紗耶香の身体で、
歌い始めたー
好きなアニメの歌ー
好きなバンドの歌ー
とても女の子が歌いそうにない歌ー
そしてー
アイドルの歌を歌いながら
紗耶香の身体であざとく踊ったりもしてみるー
「ーーふぁぁぁ…最高すぎるー…」
1時間近く色々歌っていただろうかー。
”効果は24時間って言ってたなー”
そう思いながら、紗耶香は、教えてもらった自宅の住所なども
確認して、静かに立ち上がるー。
「ーーー……女の子として、やりたいこと
いっぱいやっておかないとなー…
まずはーーそうだ…カラオケから出る前に
女子トイレいってみよっと」
別にー
覗きをする趣味はなかったがー
憑依好きな彼にとっては
”女の子の身体で、普通にトイレを済ませる”ということ自体が
もはや、”立派な興奮材料”と、言えたー。
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カラオケから出た紗耶香ー
ふと、時計を見つめるー。
時間は既に18時ー。
紗耶香に声を掛けられたのが大学帰りでー
それからファミレスに入り、カラオケに移動したから、
もうこのぐらいの時間になっているのは当然だー。
「24時間っていうからには…
明日の16時後半までかー…
最後の方は…、部屋にいた方がいいなー」
紗耶香に身体を返すことを計算する誠太郎ー。
誠太郎はー
”ちゃんと紗耶香の身体を約束通り、ルールを守って使うこと”でー、
”次”のチャンスもあるのではないかと期待していたー。
紗耶香の信頼を勝ち取ることができればー
”憑依されたい”と思っている紗耶香はきっと、
また身体を貸してくれるはずー。
だから、紗耶香の身体で、”紗耶香からダメだと言われたこと”は
絶対にしないつもりだったー
「ーーエッチなことは家に帰ってから楽しむとしてー…」
ニヤニヤする紗耶香ー。
”Hなこと”は別にいい、と本人の許可も得ているー。
許可を得ている以上、ヤッてもいいということなのだろうー。
「ーー紗耶香ちゃんは高校生だし、そろそろ家に帰らないとな」
そう思いながらも、
近くのスイーツ店を偶然見つけて、紗耶香は
「そうだ…ケーキを買う女子、とかやってみたかったんだよなぁ~」と、
ニヤニヤしながらそう呟いたー
ピクッー
「ーー!?」
一瞬だったー
左腕が勝手に動いたのを感じた紗耶香は
表情を歪めるー
「ーーー…」
すぐに、自分の左手を自由に動かせることを再度確認すると、
”今のは何だったんだー?”と、不安そうに表情を歪めたー。
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帰宅した紗耶香は、紗耶香に言われた通り、
紗耶香の母親と適当に会話を交わすー。
父親は、2週間ほど出張で地方に行っており、
今は居ないのだというー。
「ーー紗耶香、大丈夫?あんまり無理しちゃだめよ?」
母親のそんな言葉に、”母親は心配性”と事前に
説明されていた誠太郎は、紗耶香のフリをして
「うん!大丈夫だよ!」と、笑みを浮かべたー。
「へへへへ…」
母親から離れた紗耶香は、
まず”お風呂”に入るつもりだったー
「えへへへへ…せっかく憑依できたんだからー
まずは…お風呂にー」
紗耶香は、まるでおじさんかのように
下品な笑みを浮かべながら
お風呂場の方に向かって行くー。
まさかー
自分がこんなに可愛い子になって
お風呂に入ることができるなんて、
夢にも思わなかったー
お風呂に入ったあとは、
紗耶香の部屋をチェックしてー
お着替えをしたり、
鏡にキスをしたり、
夜になったらエッチなこともしてみたいー。
そして、明日は土曜日であるため、
学校に行くことはできないが
制服を着て、どこかに出かけてみたいー
「うへへへ…夢が広がるぅ…!」
紗耶香は下品な笑みを浮かべながらー
服を脱いでいくー
「う…うぅぅ…」
服を脱ぐ途中に、紗耶香は顔を真っ赤にしながら
笑みを浮かべるー
”これ以上、脱いじゃってもいいのか”と、
そんな風に思ったのだー。
”脱ぐ”ことを躊躇する紗耶香ー
だがー
「ーーい…いや、いいんだよなー?
いいんだよなー!」
紗耶香は一人、そう叫ぶと、
「うん!いいよ!」と、
自分で自分に勝手に返事をすると、
満足そうな笑みを浮かべて、そのまま服を脱ぎ捨てたー
「ーー入浴タイムだ!!!」
嬉しそうにお風呂の扉を開けたその直後ー
「ーーーえっ!?!?!?!?」
気付いたら、自分の部屋らしき場所にいたー
「ーーーえ… えっ!?!? えっ!?」
紗耶香はキョロキョロと周囲を見回すー。
「今、俺、お風呂に入ったはずじゃー…?」
表情を歪めながら、可愛らしい雰囲気の部屋を
見回すと「これ…紗耶香ちゃんの部屋だよなー」と、
困惑したー。
一瞬、自分が紗耶香の身体から追い出されたのかと思ったもののー、
鏡で”自分が紗耶香の身体”であることを確認すると、
ふと時計を見たー
「え…9時…?」
窓の外を見つめる紗耶香ー。
外は暗いー
少なくとも、まだ夜だー。
しかし、さっきお風呂に入ろうとした際には、
まだ7時ぐらいだったはずー
いったいー
何がー
そう思いながら、「と、とにかく…ーー」と、
いつの間にか自分で着替えていることにも驚きながら、
胸を揉み始めるー
「えへへへへ…♡ あぁぁぁぁ…思ったより柔らかいぞこれ…!」
人の胸なんて触ったことのない誠太郎は、
紗耶香の胸を揉み始めながら、
ニヤニヤと笑みを浮かべるー
誠太郎が頭の中で想像しているよりも、
胸は柔らかかったー。
そんな、誠太郎にとっては
”新しい発見”に、感動を覚えながらも、
ニヤニヤと胸を揉み続ける紗耶香ー。
「ーーへへへ……女の身体でイクってどんな感じなのかなぁ」
ニヤァ、と笑みを浮かべて涎を垂らしてしまう紗耶香ー
しかしー
「ーー!?!?!?」
突然、手の感覚が抜けて、胸を揉む仕草が止まるー
「ーーな…なんだ…?」
表情を歪める紗耶香ー。
しかしー
その直後、紗耶香は勝手に歩き出して、
ベッドの方に向かったー。
「ーーお…おい…な、なんだよこれ…!勝手に動くな!」
表情を歪める紗耶香ー。
だが、誠太郎がどんなに、身体を動かそうとしても
自分でコントロールすることができないまま、
紗耶香はそのままベッドにもぐりこんでー
眠ろうとし始めてしまうー
「お!おい!ふざけんな!俺はエッチなことをーーー
ーーーーーーもう寝ましょう?」
ーー!?!?!?!?
突然、途中から”別の言葉”を口にしてしまう紗耶香ー
「もう、わたし、寝る時間なのでー」
クスッと笑う紗耶香ー
「ーお…おい、いったい、どういうー?」
紗耶香の口で、誠太郎がすぐにそう呟くとー
返事がないまま、紗耶香はそのまま眠りについてしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
「く…くっそ…」
目を覚ましてもー
”ほとんど”身体の自由が利かないー
”なんなんだこれはー…?”
紗耶香は”普通”の日常を過ごしー、
誠太郎は紗耶香の身体をコントロールするどころか、
次第に自由が利かなくなっていくー
”な…何が起きてるんだ…”
そんな風に思いながら、
必死に紗耶香の身体をコントロールしようとするー
まさか、別の誰かも憑依しているのかー
そう思いながら、部屋に戻った紗耶香の身体を再び
支配すると、
「はぁ…はぁ…はぁ…」と荒い息をしながら
表情を曇らせるー
油断すると、自分が消えてしまいそうなー
そんな、不安に襲われるー。
そして、すぐにー
「ーー…っっ……わたしは…負けないー」と、
紗耶香が謎の言葉を呟くー。
”…ま、また、身体が勝手にー?”
この子に”憑依してみませんか?”と言われて憑依したのにー
どうして、こんなことにー?
紗耶香に憑依した誠太郎は混乱するー。
意味が分からないー
「ーー…だ…だ…誰なんだ!?」
再び紗耶香の身体を支配した誠太郎が紗耶香の身体で叫ぶとー
紗耶香の口が勝手に動いたー
「ーーー誰ってー…?わたしが、わたしの身体を動かしちゃ、いけませんか?」
とー。
「ーー!!…き、君はー…ど、どうしてー?」
誠太郎が、紗耶香の口でそう呟くー。
「ーーーーー……」
紗耶香を乗っ取っている誠太郎の主導権が再び奪われて、
紗耶香が、自分で自分の身体を動かし始めるー
「ーーー……ごめんなさいー。」
とー。
”ど、どういうー?”
紗耶香の口で喋ることが出来なくなった誠太郎は、
心の中でそう呟くー
「ーーあなたは、消えますー
わたしに吸収されて、わたしの力になるんですー」
紗耶香がそう語るー
意味が分からないー
いったい、何を言っているー?
誠太郎がそう思っていると、
紗耶香は、言葉を続けたー
「別にわたしは、身体を乗っ取られたくて
”わたしに憑依してみませんか?”って言ったんじゃないんですー。
わたしー
”生きるために”わたしに憑依してくれる人を探してたー」
紗耶香は、そう言いながら、さらに説明を付け加えたー
紗耶香は、世界でも珍しい難病に冒されていて
このままでは余命あと1、2年という状態だったのだというー。
だが、親戚の医師が、紗耶香を助けるために必死に
治療方法を探しー、その結果ー、
紗耶香に可能性をもたらしたー
それがー
”他人の生命力を吸収することで、病気を治すことができる”
という、禁忌の治療方法だったー。
他の人間の”生命力”を吸収することで、
常人の2倍の生命力を以って、
紗耶香に救う病原体を駆逐するー、そんな治療方法ー。
その方法がー
”憑依薬”を使った他人を、自らの身体の中に憑依させ、
強い精神力で、”自分の身体に入ってきた憑依者の魂”を逆に吸収、
取り込み、己の生命力とするー
そんな、方法だったー。
あまりにおかしな治療方法の提案ー。
だが、紗耶香は、その医師の言う通り、
憑依薬を受け取りー、
”自分に憑依してくれる人”を探していたー。
そんな中、偶然、大学の学園祭を訪れた際に、
誠太郎と友人が”憑依”の会話をしているのを聞き、
そこで、”誠太郎に狙いを定めたー”
「ーわたしは、あなたを吸収してー
この病気を治してー
もっと、もっと、長生きしたいんですー
だから、ごめんなさいー
わたしの身体の中でー消えて下さいー」
紗耶香の言葉ー。
誠太郎は、”だ…だましたのか!?”と叫ぶー。
そういえばー
紗耶香は、”顔色が悪く”見えたー。
それは病気だったからだと納得する誠太郎ー。
紗耶香は首を横に振ったー
「わたしは、嘘はついてませんー。」
医師の先生から貰ったことも嘘ではないー
憑依能力の効力も嘘ではないー
好きにしていい、というのも嘘ではないー
「ーー好きにしていいですけどー
ずっと好きにさせるとは言ってませんしー…」
紗耶香は申し訳なさそうにそう呟いたー。
そしてー
「ー24時間で効果が切れるというのも本当ですー。
でもーそれはー、
あなたが”わたしに吸収されてなければ”の話ー」
そんな言葉に
誠太郎は”ふ、ふざけるな!”と叫ぶー
”よくも俺を騙したな!こうなったらー
君の身体を俺が完全に支配してやる!”
心の中で、そう叫ぶー
だがー
”ーーーごめんなさい!でも、わたし、死にたくないー”
誠太郎の精神力と、
紗耶香の精神力ー
”娯楽”で憑依した男と、
”病気”を治したくて、生きたいと強く願う少女ー。
その精神力の差は歴然だったー
”や…やめ…ろ!”
誠太郎の意識が薄れていくー
「ーーごめんなさいーわたしは、死にたくないー!」
紗耶香が強い口調で叫ぶー
やがてーーー
誠太郎は、紗耶香の中に”吸収”されてしまったー
「はぁ…はぁ…」
紗耶香は、放心状態で座り込むと、静かにため息をついたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー。
「ー治ってるよー紗耶香ちゃんー」
親戚の医師が、レントゲンを見つめながら呟いたその言葉に、
紗耶香は嬉しそうに笑みを浮かべるとー
「ーーわたしに憑依してくれて、ありがとうございましたー
あなたは、命の恩人ですー」
と、”もういない”誠太郎のことを思い浮かべながら
安心した様子で、静かに呟いたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
急な憑依の提案には裏があるー…!
そんなお話でした~!☆
知らない人から”憑依しませんか?”と言われたら
気を付けて下さいネ~笑
コメント
ああ、怪しさ120%だと思ってたらやっぱり、こういうオチでしたか。
前の余命僅かな女の子が生きるために男と身体を入れ換えるの話と同じタイプの話ですね。
うーん、読んでて思ったけど、憑依した男側の精神力次第では、女の子側の目論見通りにいかず、本当に女の子が身体を乗っ取られた可能性もあり得たように思えますね。
個人的にはそんな憑依した男側が勝つ展開が見たかったかも。
それにしても、いくら助けたくても、他人を犠牲にするような方法を女の子に提案してる医師って、人として道に外れてませんかね?
コメントありがとうございます~!
そのお話の憑依版みたいな感じですネ~!
紗耶香は、このままだとどのみち助けらないので、
生きるか死ぬかの賭けに出た感じデス~!☆
医師は、紗耶香の親戚の医師なので、
紗耶香を助けるために、人としての道を
踏み外した…という設定でした!
勝つ側の展開も…、確かにいつか書いてみたいですネ!
この話みたいに女の子側が自分に憑依しませんか、みたいに男の欲望にやたらに都合がいい提案してくるような話は裏があっても、むしろ、当たり前、という感じが強いので、こういう男側が騙された、みたいな展開になっても、全然、意外性はないですよね。
むしろ、予定調和というか。
逆に本当に女の子側が本気で言葉通り、男に憑依されたがってました、みたいな展開の方がずっと予想を裏切る展開で面白い気がします。
例えば、男に憑依されて、身体好き勝手にされて、自分の人生めちゃくちゃにされるようなことを期待してるようなマジキチの女の子だったりとかというオチでもいいと思いますし。
現実にそうなっても、絶望以上に快感覚えてしまったりするマジキチ女の子とか、面白い通り越して怖い気もしますけどね。
ありがとうございます~!☆
そんな感じのお話も以前書いたような記憶もありますネ~!
(どれだかは忘れてしまいました…笑)
こういうお話は、ほとんどの場合、裏があるタイプですが、
いつかまた、そうじゃないタイプも混ぜて見たいと思います~!
(次回が必ずそうとは限りません~笑)