<皮>卒業式の夜①~告白~

卒業式ー。

憧れの先輩が卒業し、
彼女はその先輩に想いを伝えることを決意するー。

しかしー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日は卒業式ー…

と、言っても自分の卒業式ではないー。
”憧れの先輩”の卒業式だー。

高校2年生の笹山 美花(ささやま みか)は、
今日、卒業を迎える
3年生の男子・浜野 久志(はまの ひさし)のほうを
見つめながら、少しだけ寂しそうな表情を浮かべたー

浜野先輩にはとてもお世話になったー。

1年生の時ー、
半分押し付けられるような形で、生徒会の書記をやることに
なってしまった美花ー。

人見知りな性格で、人前に出るのも苦手な性格だった美花は、
”わたしに生徒会なんて無理だよ…”と、
当時、何度も友達に漏らしていたー。

生徒会室でも”知らない2年生や3年生の生徒ばかりー”で、
同級生のメンバーも、あまり話したことがないような人ばかり。

不安で押しつぶされそうになっていた美花に、
声を掛けて来てくれたのが、当時2年生だった
副会長の久志だったー。

「ーーーはははー…知らないやつばかりで、不安だよなー」
久志は、緊張した様子の美花を見つけると、
そんな風に声を掛けて来たー。

どう話していいのか分からず、緊張したまま無言でうなずく美花。

そんな美花を見て、
「ーーもしかして、押し付けられちゃった、ってやつかなー?」
と、笑う久志ー。

美花は「あ…は…はいー。友達が、勝手にわたしを立候補させちゃってー」と
顔を赤らめながら頷くと、久志は「はははは」と、笑いながらー
「実は俺もなんだー」と、自分を指さしたー。

「ーーえ…ほんとですか?」
美花が意外そうに言うと、久志は「うんうんー。俺、生徒会なんて柄じゃないし」と、
笑いながら、美花のほうを見て、
「ーーしかも俺なんか、副会長になっちゃったし」と、
戸惑ったような笑みを浮かべたー。

それが、美花と久志の初めての出会い…だったー。
もちろん、それまでにも、廊下ですれ違ったりはしていただろうし、
生徒会の立候補の時に顔を合わせてはいただろうけれど、
少なくとも、美花が久志の存在を認識したのは、
その時が初めてだったー。

そんな久志は、
美花の性格を理解した上で、色々とサポートしてくれたー。

人前に出るような仕事は、なるべく回ってこないように
配慮してくれたりー、
人見知りの美花が、他の生徒会メンバーとなるべく早く
顔見知りレベルぐらいには慣れるように配慮してくれたり、
とにかく、色々サポートしてくれたー。

そんな久志に、美花は惹かれていったー。
最初は、久志に対しても、まともに話すこともできなかった美花もー、
美花を理解し、親切にしてくれる久志に対して、いつしか
”憧れ”のような感情を抱くようになっていたー。

久志が3年生になり、生徒会の任期が終わると、
久志と会う機会も減ってはいたものの、久志はいつも
昼休みには図書室で本を読んでいて、
時々、そんな久志に”会うために”図書室に通っていたー。

結局ー
美花が心の内に抱いた思いは伝えることはできなかったけれどー、
美花は、そんな先輩に感謝していたー。

心の、底からー。

「ーーーーーー」
美花が、卒業証書を受け取る久志の姿を見つめながら
微笑むー。

”先輩のおかげで、わたしは変わることができたー”
と、そんな風にも思うー。

今でも、大人しい性格であることには変わりないし、
人見知りな部分も、当然まだ残ってはいるけれどー、
生徒会書記になってしまった1年生の時とはー、
大分、変わることができた気がするー。

前よりも明るくなったと思うし、
前よりも、人ともちゃんと話せるようになったー。

よく友達からは”可愛くなった”と、揶揄われるようになったー。

無意識のうちに、先輩に少しでもよく見られたいー、という
そんな想いからー、
美花は前よりも容姿にも気遣うようになっていたー。

「ーーねぇ…告白しちゃえばいいじゃん」
友達の里穂(りほ)の言葉に、美花は「えぇっ…!?」と、
顔を真っ赤にしながら里穂のほうを見つめるー。

「ほら、顔に先輩が好きって、ペンで書いてあるよ」

里穂がそう言うと、美花は「え…?」と、言いながら
自分の顔をスマホの反射で確認しようとするー

「ーちょ、ちょ、本気にしないで」
里穂が苦笑いしながら言うと、美花は
「か、書いてないよねー…よかった」と、呟きながら
ほっと、ため息をつくー。

「ーーでもさ…今日を逃したらたぶん、もう
 先輩と会えることなんて、そうそうないじゃん?」

里穂の言葉に、美花は「それはそうだけど…」と呟くー。

美花の友人・里穂は、美花が先輩のことを好きなことは
知っているー。
図書室に通っていたのも、先輩が好きだからだと知っているー。

だからこそ、告白するように、
促しているのだー。

「ーーーでも……」
美花が不安そうに呟くと、
「ーどうせ会えなくなるならー…想いを伝えてからの方がいいんじゃない?」
と、里穂が言う。

「告白しなきゃ、そのまま永遠に会えなくなるだけー。
 告白すれば、もしかしたら、この先もずっと、先輩と一緒にいられるかも
 しれないんだよ?」

里穂は
”告白しなければお別れ”
”告白すれば、失敗すれば同じようにお別れだけど、成功する可能性もある”
と、美花に熱弁したー。

「ーーそ、それはそうだけどー」
美花はそう言いながらも、顔を赤らめて恥ずかしそうにしていたー。

小声で会話していた二人ー。
卒業式の終盤まで進行し、
卒業生たちが体育館から退場していくー。

外に出た卒業生たちは、校舎周りで
それぞれ記念撮影をしたり、話をしたりしているー。

「ーーー」
美花は、楽しそうに同じ卒業生の男子と話をしている
久志のほうを見つめながら、
何度も何度も、緊張した表情を浮かべているー。

「ーーほら!失敗したらハンバーガーおごってあげるから!」
里穂が、美花の背中を後ろから押すと、
美花は「えぇっ!?わたし、ハンバーガー別に好きじゃないよ!?」と、
笑いながらも、「わ…わかった…!い、いく…!頑張る!」と、
半分強制されるような形で、先輩の久志の元に
歩き始めたー。

久志が、そんな美花に気付くー

「お!これからも頑張ってな!」
久志がそう言うと、美花は「あ、あの…先輩ー!」と、
顔を赤らめながら、やっとの思いで言葉を吐きだしたー。

「ーーー」
だが、美花は、久志の周囲にも、2、3人の男子生徒を見て、
そのまま言葉を詰まらせてしまったー

”お~?”などと、周囲の男子が
久志を茶化すような反応を見せていたからだー

「ーーはは、やめろよ」
周囲の男子にそう言い放って、男子たちを遠ざけた久志は、
美花のほうを見て「このあと、卒業生の集まりがあるからー」と、
事情を説明した上で
「それが終わったあとなら、笹山さんの話、聞くよ」と、
優しい笑顔で呟くー

「ーーあ…い、いえ…た、大した話じゃないのでー」
そんな風に呟いて、逃げ出してしまいそうになる美花ー。

けれど、久志は首を横に振ったー

「そんな風には見えなかったけどー…?
 都合があるなら、別の日でもいいけど、
 笹山さんの話は、俺、ちゃんと聞くからー」

久志の言葉に、美花は「あ…はい…じゃあ…よろしくお願いしますー、と、
夜に会う約束をして、そのまま立ち去っていったー

「ねぇねぇ、どうだった!?ハンバーガー!?」
里穂が言うと、
美花は「ーー18時に、学校の横の公園でお話聞いてくれるってー」と、
恥ずかしそうに答えたー

「ーわぉ!やったじゃん!おめでとう!」
里穂が笑いながら拍手をするのを見て、美花は
「ーあ…あの…まだ、お話聞いてくれるだけだけどー…」と、
戸惑ったような様子でほほ笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

美花が学校横の公園で待っていると、
少ししてから久志がやってきたー。

「遅れてごめんー
 なかなか集まりが終わらなくてさー」

卒業生たちの集まりが思いの外、盛り上がってしまって
遅れたことを久志が詫びるー。

「いえ…わたしこそすみませんー
 こんな時間にー」

美花が言うと、久志は「それで、話ってー?」と、
いつものように笑顔を浮かべたー。

「あ、はいー」
美花は心臓をバクバクさせながら久志のほうを見つめるー。

”告白しなければお別れ”
”告白すれば、失敗すれば同じようにお別れだけど、成功する可能性もある”

友人の里穂の言葉を思い出しながら
美花は、なんとか勇気を振り絞ったー

「あ、あの…わたし!せ、先輩のことがー!
 浜野先輩のことがー
 そ、その…す…好きです!」

とー。

言ったー。
全部、言ってしまったー。

最後まで、言い切ったー。

美花は頭を下げたまま、
久志の反応を持つー。

ダメでもいいー。
想いを伝えることができたのなら、きっと、後悔しないー。

「ーわたし…生徒会の書記になって、最初はすごく不安でしたー
 でも…先輩が声を掛けてくれてー
 そのおかげで…わたし…少しは変われた気がするんですー」

頭を下げたまま、美花は、何か言葉を口にしていないと
緊張に押しつぶされそうになってしまって、
ひたすら、そんな言葉を口にし続けたー

「ーーーははっ…はははははははっ!
 そっかー…そっかそっかー…」

久志は笑ったー。

美花が緊張した様子で顔を上げると
「いやぁ……やっぱ”顔がいい”っていいよなー」と、
久志が呟くー。

「ーーえ?」
美花が少しだけ不安そうにその言葉を聞き返すと、
久志はすぐに「あぁ、いや、こっちの話だよ」と、笑顔で答えたー

「ーーー笹山さんみたいな子に、告白されるなんて、
 嬉しいよー」

久志はそう言うと、
「ー俺さ、いつも卒業するたびに、1年生か2年生の子になって、
 また”高校生”やり直すんだよね」
と、笑みを浮かべたー

「”今回は”イケメンー
 前回はおしゃれな美少女ー…

 ”今の”この身体はさ、2年間だよー。
 前の女子として卒業した時、1年生だったこの男を
 卒業式の夜に呼び出して”皮”にして、
 それから2年間、過ごしてきたってわけ」

久志の言っていることが、
まるで意味が分からないー

「ー本当はなぁ…1年生の八木(やぎ)さんと
 今日、この後会う約束をしていてー

 ”次の身体”は八木さんにしようと思ってたんだけどー

 まさか、告白されるとはなぁ…
 ははは」

久志がブツブツと呟き続けるー

美花は、久志の言葉の意味がまるで理解できず、
困惑の表情を浮かべたままー
「あの…先輩…?」と、不安そうに呟くー

「ーーあぁ、いや、ごめんー
 まぁつまりーーー
 次は、笹山さん、君の身体を”着る”ことにするよー」

久志はそう呟くと
「2年間、”イケメンで優しい男子”をやるのは楽しかったなぁー」と、
言いながらー

突然ー
”パックリと”真っ二つに割れてー
ペロリと久志がめくれて、まるで脱ぎ捨てられた洋服のように、
公園の地面に横たわるー。

「ーー…ひ…!?」
美花は、”この世のものとは思えない”光景を見たー。

久志の中からー
”男”が出て来たのだー

「ー俺はさ、”男”と”女”、毎回交互に着てるんだー
 ちょうど次は”女”の番ー。
 まぁ、笹山さんは今、2年生だから、来月から3年生だよな?
 だからー1年間だけさー。

 なぁに…着られている間は”あっという間”らしいから
 心配すんなー

 へへー」

久志から出て来た男は、そう呟いたー。

美花はあまりの恐怖に声を出すこともできず、
そのまま男に”皮”にされてー
そしてー
”着られて”しまったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

卒業式のシーズンはもう終わっちゃった気がしますが、
春なので卒業式モノを…★笑

今日のお話は、乗っ取られる部分まででした~!
(先輩は最初から既に乗っ取られている状態でしたケド…)

続きはまた明日デス~!

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皮<卒業式の夜>

コメント

  1. 匿名 より:

    体越しみたいに女の子限定で繰り返し憑依(皮も含めて)してるようなタイプの話は多いけど、男女交互というのは珍しいですね。

    それにしても美花は最悪の相手に惹かれて、告白してしまいましたね。
    本来のターゲットにされていた八木さんはそのおかげで助かりましたが。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      八木さん本人は登場しませんでしたが、
      美花のおかげで八木さんは助かりましたネ~(笑)

      男女交互は確かに珍しいパターンでした!