卒業式の夜を境に
”変わってしまった”友人ー
何度も高校生活を繰り返す男と、
支配された人々の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・
「ー僕さ、”記憶”がないんだー。2年間のー」
美花が憧れていた先輩・久志が病室でそう呟いたー。
「ーーえ…そ…それは、どういうことですかー?」
美花の親友・里穂は、”3年生”になってから
”豹変”した美花のことが、半年経過した今でも、
どこか引っかかっていたー。
別に、”犯罪”を犯すわけでも、
里穂のことを急に敵視し始めたわけでもなく、
今の美花も、2年生の時までの美花も、
”里穂と仲良く”してくれてはいるー。
けれど、里穂は未だに思うー。
”今、目の前にいる美花と、高2までの美花が、
同じ人間だとは、とても思えない”
とー。
”昨年度の卒業式で先輩に振られたから”だと、
そう思ってはいるものの、
やはり、どこかで心に引っかかるものがあるー、というのも
また事実だったー。
だからこそ、今日、昨年度の卒業式で美花が告白した先輩・久志が
”なぜか”入院しているらしいと聞き、
里穂はここにやってきたのだー。
「ーー信じてもらえないかもしれないけど、僕ー…
高1の3月からー、ついこの間、高校を卒業するまでの記憶が
ないんだよね…」
久志は恥ずかしそうに笑うー。
「ーーーー」
里穂は”わたしたちが見ていた先輩と同じ人物とは思えないー”と、
表情を歪めるー。
「ーーーまぁ…それで、こうして入院しているわけだけどー…」
”卒業式の日”の夜に目を覚ました久志は、
自分の記憶が2年間も飛んでいることに恐怖し、
治療を行っているー。
現在は精密検査のために入院と退院を繰り返している、と
久志は説明したー。
「ーーー…あ…あの、でもー
先輩…普通に生徒会の副会長とかやってましたしー…」
里穂が言うと、久志は「ーーーそっか」と、不安そうな表情を浮かべるー
いつも自信に満ち溢れていて、頼りがいのあるイケメンー…
そんな雰囲気だった久志の面影を、そこには
一切感じることができなかったー。
「ーーーーーあ…そうだ」
久志が言葉を口にするー。
「ー僕さ、記憶が無くなる直前ー
”卒業生の一人”に声を掛けられたところまでは覚えてるんだー」
久志は、素行不良のギャルだった卒業生に声を掛けられたところまでは
覚えていて、そのあと、2年間の記憶が飛んでいる、と語るー。
「ーーーそ、それはどういうー…」
里穂が言うと、久志は「ーー僕、思うんだー」と、困惑の表情で
里穂のほうを見たー
「ーー僕の記憶がない2年間も、僕が普通に生活していたっていうならー
僕は、そうー…
何かに乗り移られていたんじゃないかーって」
久志の言葉に、里穂は「そんなことー…あるんですか?」と、
表情を険しいものにするー。
久志は続けるー
「だってー…”2年間だけ記憶がない”なんて…
あんまり聞かないしー…」
不安そうな表情の久志はー、
里穂のほうを見て続けたー
「ーそれで、聞きたいんだー。
僕が目を覚ます直前ー。
僕、誰かと会ってたりしてなかったかどうかー。」
久志がそう言うと、
里穂は「み…美花!」と叫んだー。
「ーーえ?」
久志が里穂の反応に表情を歪めるー。
「ーーあ、いえ…わ、わたしの友達の美花が
先輩が卒業式を迎えた日の夜に、
先輩に告白していてー…」
里穂が、”今年度に入ってから美花の性格がまるで変わった”ことを
思い出しながら久志に言うと、
久志は「ーーえぇっ…!?僕なんかが告白されたってことー?」と
困惑すると、少し考えてから、
「ーーそ、その子ー…今はどうしてるの?」と、
里穂に確認したー。
里穂は「今でも普通に元気にはしてるんですけどー」と、
言葉を口にした上で、
「ーー本人は、先輩に振られたからって言ってはいるんですけどー…
最近、急に明るくなって、全然違う子みたくなっちゃってー」と、
不安を全て久志に伝えたー。
「ーーーー…」
久志は険しい表情を浮かべたあとに、静かに呟いたー。
「ーーーもしかしたらー
”僕”に乗り移っていた”何か”が、
今、君の友達に…乗り移ってるんじゃないかなー」
久志の推測は
”ある程度”は正しいー
まるで”洋服のように”着られているとまでは
理解できていないものの、
今の美花が”別の人間”に乗っ取られて
意のままに操られている状態であることは事実だったー
「ーーーなんて」
久志は苦笑いするー。
「ーこんなこと言ってたから、親に病院に入院させられてるんだけどね」
恥ずかしそうに呟く久志ー。
「僕が協力できるのは、これだけだよー」
久志の言葉に、里穂は「ありがとうございましたー…お大事にして下さい」と
頭を下げると、美花のことを考えながら、病院を後にしたー。
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翌日ー
「ーあのさ、美花、今日の放課後、時間あるー?」
里穂は、教室で他の女子と楽しそうに談笑していた美花に話しかけると、
美花は「え~?里穂ちゃんのお誘いなら何でも!」と、
呼び出しにすぐに応じてくれた。
美花と放課後に会う約束をした里穂は、
自分の机に戻りながら、
昨日の先輩との会話を思い出すー。
”乗り移られていたー”
そんな発言に、恐怖を覚える里穂ー。
”先輩の記憶が2年間ないー”
”病院であった先輩がまるで別人のように見えた”
”その先輩に告白した美花が、そのころから別人のようになっている”
全てのー
出来事が、
里穂の中の”嫌な予感”をさらに増幅させたー。
”美花の身に、何かが起こっているかもしれない”
とー。
その日は1日中、なんだか生きた心地がしなかったー。
放課後に、美花はどのようなことを語るのだろうかー。
そう思いながら、あっという間に時は流れていきー、
ついに、放課後がやってきたー。
放課後ー
”高校近くのファミレス”を指定して、
そこで美花と会ったー。
ファミレスであれば、周囲に人はたくさんいるー。
万が一、美花が急に態度を変えたとしてもー
里穂自身が身を守るための判断だったー。
「ーーあ、チーズハンバーグと、あとピザをお願いします~!」
美花が微笑みながら、ファミレスの店員に注文をお願いしているー。
里穂はパフェを注文すると、
そのまま美花のほうを見つめたー。
美花はニコニコしながら「それで、話って?」と、
里穂のほうを見つめるー。
里穂は息をすっと吸ってから、
美花のほうを見つめて、ようやく本題を切り出したー。
「ーーあのさ…美花ー。
今から変なこと聞くけど、怒らないで聞いてねー。」
里穂が言うと、美花は「うん、怒らない」と、約束してくれたー。
「ーーーー」
里穂は、昨日の出来事を全て口にしたー。
美花が半年前の、卒業式の際に告白した先輩・久志が現在入院中だったことー
その久志に会ってきたことー、
久志の記憶が2年間飛んでいることー、
久志が”まるで乗り移られているようだった”と言っていたことー、
美花の性格が変わったことが気になっていることー
「ーーー…バカみたいな話かもしれないけど、
わたし…その、美花が”乗り移られて”いるんじゃないかと…
心配になってー」
里穂は、言いたいことと聞きたいことを全て言い終えたー。
美花は「あ!ありがとうございます~!」と、運ばれてきた
チーズハンバーグをそのまま食べ始めるー。
そういえば最近、美花は”食べる量”も増えているー。
前の美花はどちらかと言うと、小食だったー。
そんなことを思いながら
美味しそうにチーズハンバーグを食べる美花を見つめると、
美花は「あ、ちょっと待ってね!まず少し食べてから」と、
チーズハンバーグを夢中になって口に運んだー。
しばらくチーズハンバーグを食べてから、美花は
ようやくため息をつくと、
「ーつまり、里穂ちゃんは、わたしが何かに乗っ取られてるって
いいたいのかなー?」
と、美花は言葉を口にしたー。
”睨むような目”で、一瞬、美花が里穂を見つめたのを
里穂は見逃さなかったー
それでもー
里穂は続けたー。
「ーーーーーうん…」
とー。
負けじと美花を見つめる里穂ー。
「ーーーーふふっ」
美花は少しだけ笑うと、
「ーーそんなこと、あるわけないでしょ」
と、言葉を続けたー。
「ーーーそ…そ、そうだよねー」
里穂は、そんな美花の返事に戸惑いながら、
緊張した様子で注文したパフェを口に運ぶー。
「ーーーー……」
里穂は、気まずくなって沈黙してしまったー。
「ーーーーそ、そんなに気まずくならないで!?」
美花が笑いながら里穂のほうを見つめると、そう呟くー
「ーわたしが反対の立場だったら、やっぱり
里穂ちゃんと同じことを思うかもしれないし、
わたし、全然気にしてないから!」
里穂のことを心配して、美花は里穂を元気づけようと
そう呟くと、里穂は「ーーう…うん…ありがとうー」と、
美花のほうを見て微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局ー
里穂は、それ以上何も聞けないままー、
何もできないまま、卒業式の当日を迎えていたー。
「ーーーーー」
美花を乗っ取った男は、卒業式までの間、
存分に美花としての女子高生ライフを堪能したー。
そしてー
”今度はーーあいつだー”
美花の次なるターゲットは、1年生の男子生徒ー。
大人しそうな男子生徒を乗っ取り、
”どこまで豹変できるか”を今度は試してみたいー。
既に、乗り換えの準備は出来ているー。
卒業式が終わった後に、”次の身体”にする予定の
男子生徒を呼び出してあるー。
「ーーー(結局ー、何があろうと、俺が認めさえしなければ、
人が着られているなんてこと、誰にも理解できやしねぇからな)」
美花は笑みを浮かべながら、少し離れた場所にいる里穂を見つめたー。
”楽しかったぜ、里穂ちゃんー”
美花とは思えないような不気味な笑みを浮かべながらー
美花を支配している男は”美花としての最後の1日”を存分に楽しんだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
「ーーあ、先輩!」
委員会活動を通じて親しくなっていた後輩の男子生徒が
美花を見て、嬉しそうに顔を赤らめるー。
「ーーふふ、来てくれてありがとうー」
美花は静かに笑みを浮かべるとー
「ーー今日は大事な話があるのー」
と、言葉を口にして、美花はー
いやー”美香を支配している男”は、
いつものように、言葉を続けたー。
「ー俺さ、いつも卒業するたびに、1年生か2年生の子になって、
また”高校生”やり直すんだよね」
「”今回は”あざとい小悪魔としてこの女をーー
前回は、イケメン生徒副会長だったかなー…
”今の”この身体はさ1年間だったけどさー
前の男子として卒業した時、俺に告白してきた
この女を”皮”にして、
それから1年間、過ごしてきたってわけ」
突然”俺”と言いだした美花に、
後輩の男子は困惑しているー。
「ーーあぁ、いや、ごめんー
ーーー何も心配しないでいいよー。
今から2年間、よろしくねー」
美花はそう呟くと、
美花がぱっくりと割れてー
その中からー
男が姿を現したー
悲鳴を上げる男子ー
「ーーーーーーーーーーー!!!!」
親友の里穂は、諦めていなかったー。
”美花が認めないならー
現場を押さえるしかないー”
そう思って、
ずっとずっと、卒業式の日を待っていたー
「ーーー美花!!!!!!!!!!!!!」
上半身だけ”半分にパックリと割れた”
中途半端に脱がれた状態の美花と、その中から
飛び出している男がニヤァ、と笑みを浮かべたー。
「ーー里穂ちゃんーー」
男と、半分脱がれている美花が
同じ笑みを浮かべて、里穂のほうを見つめるー
後輩の男子は、その隙をついて逃げ出すー。
「ーーーみ…み…み…美花………美花を…返して!」
里穂が叫ぶと、
美花と、美花を脱ごうとしている男が、同時に微笑んだー
「ーーはははははー
まさか、見られてたなんてー
じゃあーーー
たまには”大学生”やるのもいいかもなー」
男の邪悪な笑みがー
卒業式の夜を”恐怖の夜”へと変えたー。
おわり
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コメント
卒業式が舞台(?)の皮モノでした~!☆
次の数年間は、この男は女子大生として過ごすことに
なりそうですネ~
お読み下さりありがとうございました!
コメント
里穂の目的が美花を開放することなら、どうせ開放されるところだったんだから、現場を押さえる必要はなかったのでは?
そのせいで今度は自分が着られることになってしまいましたし。それにしても、後輩の男子に目撃されてしまってるんですが、大丈夫なんですかね?
皮にされた被害者は直前の記憶は残っていないみたいなので、美花は何が起こったのか理解できてなさそうですけどね。
友達が好き放題されていたことに、里穂は怒りも感じていたので、
美花と同じような子を作ってはいけないと考えて
中身の男も取り押さえようとしていました~!
後輩の男子は、その場で皮にされて”行方不明”になる可能性もありますネ~
ダークで面白いですなぁ。
気が向いたら続きをお願いします。
コメントありがとうございます~!☆
機会があれば考えてみますネ~!