<皮>卒業式の夜②~異変~

卒業式の夜ー

憧れの先輩に告白した女子高生・美花ー。

しかし、そんな彼女の身に起きた出来事は…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4月ー。

桜が舞う中、学校での新しい1年が
始まりを迎えたー

「ーーあ、美花、おはよ~!」
美花の友達の里穂が、美花の姿を見かけて声を掛けるー。

3年生になって、クラス替えも行われたー

だが、美花と里穂は今年も同じクラスで、
去年と同じようにまた1年、楽しく過ごすことができるー…

はずだったー。

「ーーーって、あれ?」
里穂は、美花の雰囲気が少し変わったことにすぐに気づいたー。

髪型が少し変わりー、
少しメイクが濃くなったような気がするー

それにー
髪の色も、少し明るくなっているー

「ーーー…美花、何か、ずいぶん雰囲気違くない?」
里穂が言うと、美花は「え~?そう~?」と笑いながら
里穂のほうを見たー。

「ーーほら、3年生になったし、せっかくだから少し
 イメージチェンジしようと思って!」
美花の言葉に、里穂は「そ、そうー」と呟きながらも
そんな美花に”強い違和感”を覚えたー

「ーー…あ、そうだー。春休みの間、
 全然連絡付かなかったけど、何してたの?」
里穂が言うと、美花は「忙しくてー…色々とね」と、笑みを浮かべるー。

「あ~…先輩とのデートとかでしょ~?」
笑う里穂ー。

卒業式の夜に、美花は憧れの先輩である久志と会う約束をしていたー。

春休みの間、美花と連絡がつかなかったために、
里穂はその”結果”がどうなったのかを知らなかったものの、
”告白に成功した”のだと、思い込んでいたー。

春休み中、連絡がほとんどつかなかったのは、
先輩とのやり取りに夢中なのだと思っていたし、
今日、美花の雰囲気が少し変わったように見えるのはー
”彼氏ができたから”だと、そう思っていたー。

「ーーーデート?あぁー」
美花はそう言うと、鼻で笑うようにして、
言葉を続けたー

「ーわたし、振られちゃったからー」
とー。

「ーーえ」
里穂は困惑したー。

美花はてっきり、あの卒業式の夜に先輩に告白して、
それが成功したと思い込んでいたからだー。

「ーご、ごめん…わたし、そんなつもりじゃー」
振られた美花に対して”先輩とのデートとかでしょ~?”という言葉は
よくなかったー

そう思いつつ、里穂が慌てて謝るー。

けれど、美花は全く気にする様子なく、
「いいよいいよ」と言いながら立ち上がると、
そのまま教室の外に向かおうとするー

「え…?どこに行くのー?」
里穂が言うと、美花は「お手洗い!」と、笑いながら
答えてそのまま立ち去って行ったー。

教室に残された里穂は、新しいクラスメイトたちと
話をしながらー
”今の美花”のことを思い出すー。

なんだか、変だったー。

”美花と話しているのに、
 別人と話しているかのようなー”

そんな錯覚を覚えてしまうー

どこか弱弱しくてー、
どこか控えめな美花ではなくてー
まるで”別人”のような、
そんな感じを受けてしまうー。

確かに、顔も、声も、間違いなく美花では
あるのだけれどー
”喋り方の雰囲気”や”表情”、
そういったものが、何か違う気がするー。

里穂は強い違和感を感じて、
心配そうに教室の出口のほうを見つめるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーふぅぅ…2年ぶりの女ってやっぱ興奮するなぁ…♡」
トイレに入った美花は、胸を触りながら
笑みを浮かべていたー。

「ーー俺に告白なんかしちゃうから、こうなるんだぜ?
 本当は”次”に着る予定だったのは、
 1年生の別の子だったのにー」

美花はそう呟くと、
「まぁ…好きな先輩に着られて、笹山さんも
 嬉しいかー?へへっ」
と、笑みを浮かべるー。

あの日ー、

「ーーーーーー」
夜の公園で、美花は目に涙を浮かべながら
震えていたー

憧れの先輩に告白をしたら、
憧れの先輩の”中”から別の男が出てきたのだから
無理もないー。

何度も何度も”たすけて…”と、小声で震えながら、
美花が言っていたことを、今でも覚えているー。

そんな美花を”皮”にして、
今、着ているー。

春休み中は”美花”の身体をたっぷり楽しんだし、
美花として最低限振る舞うことができるように、
美花自身のスマホのやり取りなどから、
色々と勉強もしたー。

周囲の奴らは、違和感を感じることはあっても、
それ以上に疑問を抱くことはないだろうー。

”前に”着ていた久志の時もそうだったー。

久志は元々”寡黙なイケメン”系の男子だったが、
”2つ前の身体”で卒業式を迎えた際に、
”皮”にして乗っ取りー、
2年生になってからは、久志は”明るく、優しいタイプのイケメン”に
豹変したー。

中身が変わったのだから当たり前だー。

だがー、
人間は案外、”急に性格や雰囲気”が変わっても
それを受け入れられるー。
特に、高校生であれば尚更だー。
ちょうど、思春期と呼ばれる年頃で、急に人が変わってしまうような子は
それほど大勢ではないものの、時々いるー。

「ーーふふふふふ…」
美花は”自分が乗っ取られた”時のことを思い出しながら
笑みを浮かべると
「早速、彼氏でも作っちゃおうかな」と、不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

美花の親友・里穂は、
美花が”先輩に振られた”と知り、
美花のことを心配していたー。

先輩の卒業式のあの日、
里穂自身が、美花に対して”先輩に告白すること”を
勧めたのだー

だからこそ、里穂は責任のようなものも感じていたー。

「美花のことだから、やっぱり傷ついてると思うしなぁ…」
そんな風に呟く里穂ー。

だが、里穂の不安とは裏腹に、
3年生になって、日数が経過していくにつれてー
美花に対して、里穂はさらに強い違和感を抱き始めるー。

最初は”先輩に振られたショック”で、
美花は無理やり明るく振る舞っているのだと、
そう思っていたー

しかし、落ち込んでいるどころかー
むしろ元気になったように見えるし、
積極的に他の男子や女子に絡んでいっているー。

里穂の他にも、そんな美花に違和感を抱いている人間は
何人かいるようだったー。

けれどー
そんな”違和感”も時間が経つにつれて、慣れていくー。
人間とは、そういう生き物だー。

里穂も”新しい美花”にすっかりと慣れて、
高3になってから2か月が経過した
今では違和感を感じなくなっていたー。

「ーそれにしても、美花に彼氏がこんなにすぐできるなんて~」
里穂が笑いながら言うと、美花は
「こんなに可愛い身体があれば、簡単よ」と、笑いながら答えたー。

「ーえ?」
里穂が不思議そうに美花のほうを見つめると、
美花は笑いながら「なんでもない」と、呟くー。

高3になってから2か月ー。
時々美花は、
まるで”自分のことを他人のように”言うことがあるー。

一度、疑問に思った里穂は
「なんで、自分のこと他人みたいに言うの?」と、
聞いてみたことがあるー。

しかし、美花は、恥ずかしそうに笑いながら
”去年までのわたしと、決別するためかなー”と
言っていたー。

”こんな私だから、先輩に振られちゃったのかもしれないから”
とー。

その言葉に、里穂は妙に納得してしまって、
”3年生になった美花の豹変”にも、納得してしまったー。

勇気を出して告白したのに振られてしまったー。
やはり、美花はそのことを気にしているのだとー。

「ーーあんまり、無理しちゃダメだからね?」
里穂が言うと、美花は「うん!里穂ちゃん!大好き!」と、
里穂に急に抱き着いて、キスをしてきたー

「ーちょっ!?ちょっと~!?」
里穂が笑いながら美花を離すと、
美花は「だって里穂ちゃん、わたしに優しいんだもん~!」と、微笑むー

「だ、だからっていきなりキスしなくてもー
 美花、4月から急に大胆になりすぎだよ~!」

里穂が顔を真っ赤にしながら言うー。

美花は「そんなに恥ずかしがることないでしょ~!」と、言いながら
「女の子同士なんだし!」と、微笑むー。

「そ…そうだけど…美花、やっぱり無理してないー?
 妙に明るすぎて、時折、不安になっちゃうー」
里穂がなおも心配そうに言うと、

「ううん…大丈夫!わたし、ほら、色々吹っ切れたから!
 前よりも楽しそうだし、元気そうでしょ?」と、笑うー。

「そ…それはまぁー」
戸惑う里穂を見ながら、美花は微笑むー。

美花を”皮”にした男は、美花の中で笑みを浮かべるー。

通常”高校生”としての生活は1回しか味わうことはできないー。

高校生活においてー
どんな人間でも”大体の立ち位置”は決まるー。

例えば、不真面目な生徒は最後まで不真面目なことも多いし、
優等生は最後まで優等生だー。

”優等生として高校生活を過ごした人間”は、
”不真面目な高校生として、高校生活を送ることなく”人生を終えるー。

それだけではないー

”男子高校生として高校生活を過ごした人間”は、女子高生としての高校生活を
体験することはできないし、
その逆も同じことだー。

だがー

「ーー俺は違うー」
美花を支配している男は笑みを浮かべるー

”ギャルな女子高生”
”真面目なイケメン男子高校生”
”明るく小悪魔的な女子高生”

男は、”あらゆる高校生活”を体験しているー。

既に”10回以上”は高校生活を楽しんだだろうかー。

色々な立場で楽しむ高校ー
”毎回”、同じ学校に通いー、
その都度、”自分の立場”を変えるー。

10回以上の高校生活には、みんな、それぞれの景色があったー。
男はー
高校時代、いじめを受け続けて、”悪い思い出しかない3年間”だったー。

”どうして、周囲は青春というものを味わっているのに、
 俺はーそう、まるで赤い冬かのようなー
 青春と真逆の高校生活を送る羽目になったのだろうかー”

そんなことをずっとずっと、思いながら
社会人になった男は、ある日、出会ったのだー。

”人を皮にする力”とー。

それから、男はずっと、高校生を”ループ”するかのように
何度も何度も”乗り換え”して、高校生活を体験しているー。

今回は、この美花で、だー。

「ーー里穂ちゃん、これからもずっと、わたしと仲良くしてね!」
甘えるような仕草をしながら、美花がそう言い放つと、
里穂は少しドキッとしながら「う、うん!わたしこそー」とほほ笑んだー。

立ち去っていく美花ー。

里穂は”美花…ほんとに別人みたいだなぁ…”と、
やはり、少し不安に思いながらも、
「まぁ、先輩に振られたショックから立ち直るために、
 美花は美花なりに頑張ってるー…ってことだよね」
と、静かに微笑んだー。

”甘え上手ー”
そんな感じに豹変した美花は、
男子からモテモテになっていたー。

彼氏もいるし、他の男子からも人気ー。

”まるで別人のよう”と、周囲からも言われつつも、
特に男子たちは「今の美花ちゃんのほうが、好きだなぁ」と、
喜んでいる様子だったー

「ーーーーーーーーーーー」
2学期になったころには、もはや”去年までの美花”の面影は
すっかりなくなっていてー、
”新しい美花”に生まれ変わったような、
そんな感覚を、里穂は覚えていたー。

今の美花のことも、もちろん友達として好きだー。

しかしー…

時折”前の美花はいなくなってしまった”と寂しさを感じることもあるー。

そんな、ある日ー。

里穂は”あること”を知ったー。
半年前の卒業式の日に、美花が告白した相手の先輩…久志が、
”入院”している、ということを、偶然、姉の友人を通して知ったのだー。

なんとなく、美花の豹変が引っ掛かっていた里穂は、
休日を利用して、その久志に会いに行くことにしたー

そしてーーーー

「ーーーー君はー?」
病室にいた久志は、”里穂が知る先輩”とは、まるで別人のようなー…
暗そうな雰囲気だったー

「ーーあ…あの…わたし、先輩の卒業した高校のーー」
自己紹介を済ませる里穂ー。
久志は、そんな里穂に対して頭を下げると、
いきなり、とんでもない言葉を口にしたー。

「ーー僕ー」

”僕ー?”
里穂は首を傾げるー。
先輩は確か”俺”と言ってたはずだー。

「ー僕さ、”記憶”がないんだー。2年間のー」

その言葉に、里穂は表情を歪めたー

③へ続く

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コメント

皆様は、高校生活を何度も繰り返せるとしたら、
繰り返してみたいですか~?笑

私は、あと何回かはやってみたい気がします~★

あ、明日が最終回デス!

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コメント

  1. 匿名 より:

    憑依物でも言えることですが、本物より偽物の方が評価されてるのって、本物が全否定されてるに等しいので、本物が哀れな気がしますよね。

    • 無名 より:

      乗っ取って滅茶苦茶に…!タイプで評判が落ちるのも、
      なりすましタイプで本人より評価されているのも、
      乗っ取られる側からしたら辛いですネ…☆