元カノ・由愛菜の暴走ー。
元カノの怨念からー
逃げ切ることは出来るのかー。
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智恵は、一命を取り留めたー。
意識は戻らないままだが、
ひとまず、命の危機は乗り越えた、と
病院の先生は言っていたー。
だがー
下着姿で街中を走り回ってしまった智恵は、
当然警察からも事情を聴かれるだろうし、
心の傷は、非常に大きなものになってしまうだろうー。
「くそっ…」
竜輝には、まだ不安もあったー。
”由愛菜”はどうしたのかー、
という不安だー。
由愛菜は智恵を乗っ取っていたー。
だがー
今、その由愛菜はどうなっているのかー。
智恵の身体の中に潜んだまま、
智恵と共に意識不明の状態になっているのだろうかー。
そんな風に思いながら、竜輝が帰宅するー。
「--!」
竜輝は表情を歪めたー。
電気が、ついているー。
「---え…」
竜輝の視線の先には、ふわふわとしたお姫様のような服装の女がいるー
「---え…、、、あ、、、丸宮さん…?」
”丸宮さん”とは、同じアパートに住んでいる一人暮らしの若いOLだー。
挨拶を交わす程度だがー
その丸宮さんが、何故ーー
「---うふふふふ…由愛菜だよ♡ うふっ」
お姫様の服装を身に着けた、丸宮 寧々(まるみや ねね)が、
笑みを浮かべるー
「---!!!!…おま、、、い、、いい加減にしろ!」
竜輝が叫ぶー
寧々は笑うー
「由愛菜、竜輝くんのためならなんだってするよ!
ふふふ、この身体、独身だから
竜輝くんのこども、作れるね!」
笑いながら寧々が、竜輝を押し倒すー。
竜輝は「やめろ!!やめろ!!」と大声で叫ぶー
寧々が笑いながら、狂ったように服を脱ぎ捨てるー。
そしてーー
ふいをつかれた竜輝はそのまま、必死に抵抗しようとしたものの、
結果的にー
近所のOL・寧々に無理やり犯されてしまったーー
「はぁ…はぁ…♡ はぁ…
由愛菜と竜輝くんの…こども…できちゃうかも…」
寧々が嬉しそうに微笑むー。
「--ふ、、ふ、、ふざけんなよお前…!
どうするんだよ…!おい!」
竜輝が叫ぶー。
「---ふふふふふふっ♡♡
由愛菜と竜輝くんの子供ー
名前は何にしよっか?」
寧々が裸のまま笑うー。
「---ふざけんな!」
竜輝が大声で叫んだー
「お前!他の人の人生をなんだとーーー!!」
竜輝が怒りの形相で、
寧々に向かって怒鳴り声をあげたその時だったー
玄関の扉が開いたー
「寧々…」
怒りの形相の男ー
「え…?」
竜輝が唖然として振り返るー。
「---ひゃ?」
寧々が裸のまま、その男の方を見るー
その男はーー
OL・寧々の彼氏だったー。
寧々の家に遊びに来る約束をしていた彼氏が、
寧々が不在であることに首をかしげていた最中ー
すぐ近くの別の部屋から寧々の喘ぎ声が
聞こえてきたためー
竜輝の部屋に押し入って来たのだったー。
「--テメェ…俺の彼女に何してやがるー」
男が怒りの形相で言うー。
「--え、、あ、、、いや、、ちが」
竜輝が戸惑っているとー
男は竜輝をグーで殴りつけたー。
「--り、竜輝くん!」
寧々が叫ぶー
「--竜輝くんだぁ????
テメェ!浮気してやがったのか!」
大声で叫ぶ男ー
竜輝は、寧々の方を見るー
「くそっ…!どうすんだよ!この状況!」
竜輝の悲痛な叫び声ー
男が怒りの形相で裸の寧々の腕をつかむー。
だがーーー
その直後ーー
「きゃああああああああああああああああああああ!!!」
寧々が悲鳴を上げたー
男も竜輝も驚くー。
由愛菜が、寧々から抜けたのだー
正気を取り戻した寧々がー
”裸の自分”
”知らない男の部屋”
”彼氏に腕を掴まれている状況”に
困惑して、パニックを起こしたー
寧々の彼氏も戸惑うー
「お、、おい…?なんだ??おい!」
竜輝はーー
たまらず、部屋を飛び出したー
逃げるようにしてーー
「--くそっ…!くそっ!くそっ!」
”由愛菜”をなんとかしないとー。
竜輝はそう思いながら
街中を走るー。
「---竜輝く~ん!♡」
近くの公園で友達と雑談していた女子高生が突然竜輝に抱き着くー
「--うわっ!?」
竜輝が驚くー
「由愛菜だよ♡ ふふふ♡
どこに逃げてもむ~だ!」
女子高生が笑うー
一緒に公園で雑談していた友達らしき少女が
「どうしたの?その人知り合い?」と呟いているー
「ーーーうん!由愛菜の王子様!」
由愛菜に乗っ取られた女子高生が笑いながら言うー
相手はきょとんとしているー。
当然だ。
意味など、理解できないだろうー。
「-----」
竜輝は、あまりの怒りに拳を震わせるとーー
叫んだー
「--迷惑なんだよ!クソ女!」
とー。
怒りが爆発したー。
「-智恵を巻き込んで!他の人を巻き込んで!
何なんだよ!
そんなんだから、振られるんだろ!?
お前は女としてもー
いいや、人間としても最低だよ!
最低だ!
大嫌いだ!」
竜輝が叫ぶー。
「--死んでもお前となんか付き合うものか!
二度と俺の前に姿を現すな!」
竜輝は、怒りの感情を全てぶちまけるとーーー
由愛菜に乗っ取られた女子高生は、口をぽかんと開けたままーー
その場に座り込んだー。
「--俺は二度とお前みたいな悪魔とは付き合わない!
次、姿を現したら、お前は俺の敵だ。
容赦しない」
竜輝はそれだけ言うと、
放心状態の女子高生を無視して、そのまま歩き出したー
由愛菜に対しても多少の情はあったし、
憑依などという力を手にしている以上、刺激しないようにと、
出来る限り穏便に、と思っていたが
もうそれも限界だったー。
「ーーーだいじょうぶ…?」
由愛菜に乗っ取られた女子高生の友人が呟くー。
「----…………くそ女・・・・?」
女子高生が唖然とした表情で呟くー
「ふふ、、、ひひひひ、、ふふふふふ…
ふふふふ、うふふふふふふふふふふふふ♡」
少女は不気味に笑いだすと、
そのまま意識を失ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
竜輝は、自宅に戻るー。
既にOLの寧々と彼氏はいなかったー。
「---…はぁ」
竜輝は頭を抱えるー
どうして、こんなことになってしまったのだろうかー。
由愛菜を振ったことが悪かったのかー?
いやーーー
浮気して別れたわけでもないし、
別れた原因は、そもそも由愛菜だー。
それに、別れるときも気を使ったし、
智恵と付き合い始めたのは、その後だー。
決して浮気をしていたわけでもないー
完全に、由愛菜の逆恨みだー。
「くそっ…」
竜輝がそう呟いているとー
LINEが届いたー
妹の奈央子からだー。
「---」
竜輝が届いた写真を確認するとー
「----------!!!!!!!!!!」
竜輝は唖然としたー。
父親と、母親の、遺体ー
「---え?」
竜輝は思わずスマホを手から落としたー
”由愛菜、決めたの♡
竜輝くんが振り向いてくれるまで、
竜輝くんの雑念、取り除いちゃうって♡”
妹の奈央子からのLINE-
さらにはー
”妹も、いらないよね?”
とLINEが届くー
「おい!!!!ふざ、、ふざけんな!」
竜輝が、慌てて奈央子に電話をかけるー
だがー
奈央子は電話に出なかったー
そしてー
”ばいばい”というLINEが届いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
家族が全員死んだー。
由愛菜の仕業だー。
さらにLINEが届くー。
今度は、彼女の智恵からー。
”彼女も、いらないよね?”
「---!」
竜輝は震えるー
入院中の智恵が、由愛菜に憑依されたー
そしてーー
妹の奈央子と同じようにーーー
あっという間に、智恵の命まで奪われてしまったー
「うあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」
怒りの形相で叫ぶ竜輝ー。
”由愛菜、さみしい”
”由愛菜、さみしい”
”由愛菜、さみしい”
”さみしいから、壊しちゃう”
”さみしいから、暴れちゃう”
「---!!!」
竜輝は、恐怖に表情を歪めたー
知り合いー
親族ー
行きつけのお店ー
次々とLINEが送られてくるー
電話がかかって来るー。
これはーーー
由愛菜の仕業ーー
由愛菜が、竜輝の関係者に次々と憑依してー
その命を奪っているー
”--由愛菜以外の人がいっぱいいるから、
竜輝くんは、由愛菜のことを見てくれないんだよね?
由愛菜、竜輝くん以外に友達も誰もいないの。
由愛菜と竜輝くんの邪魔をするやつは
みんなみんな、いらない”
「おい!ふざけるな!おい!」
竜輝は頭を抱えながら泣き叫ぶー。
どうすることもできないー
相手は”霊体”
狂った元カノが”人間”ならー
戦うこともできたかもしれないー
けれどー
”竜輝くんの世界には由愛菜だけいればいいの!”
”竜輝くんの人生は、由愛菜なんだよ♡”
”竜輝くん 竜輝くん 竜輝くん♡♡”
街行く女性たちが、由愛菜の言葉を次々と口にしていくー
「も、、もうやめてくれ…!」
竜輝は膝を折って頭を抱えたー
「もうやめてくれぇええええええええええええ!!!」
竜輝が悲鳴を上げるー
「----ふふふふふ 泣かないで?」
「--!?」
竜輝が顔を上げるとー
そこには、智恵の姿があったー。
「--ち、智恵!?」
戸惑う竜輝ー。
智恵は、由愛菜に憑依された挙句、
街中で車に跳ねられて、
入院中にさらに憑依されて死んだはずー
「---まわりをよく見て?」
智恵が笑うー。
智恵がお姫様のような服を着ているー
竜輝がハッとして周囲を見ると、
そこは大学の一室だったー。
由愛菜に憑依された智恵に呼び出されて
智恵と1:1で会った部屋ー。
このあと、竜輝がこの部屋から飛び出してー
智恵が下着姿のまま後を追ってきてー
智恵は車に轢かれるー。
「--え…どういう…」
竜輝が戸惑っていると、智恵はほほ笑んだー。
「--この女が轢かれたのも、
近所のOLに襲われたのもー
家族が死んだのもー
ぜ~んぶ、”幻”」
智恵が笑うー。
智恵が由愛菜に憑依されているのは間違いないー。
「--……え」
竜輝が戸惑っていると、
智恵はほほ笑んだー。
「--由愛菜ね~
竜輝くんに憑依して、竜輝くんに幻を見せたの。
おもしろかったでしょ?」
智恵が笑いながら、そう呟くー。
智恵が下着姿のまま、この部屋から飛び出してくるー
以降は、幻だったというのかー。
「--でもね?」
智恵が微笑むー
「--今、ここで由愛菜を受け入れてくれないと~
由愛菜が見せたものが”現実”になっちゃうかも?」
智恵が笑いながら言うー。
「---!」
竜輝は震えだすー。
あの地獄のような状況がーー
現実にー?
それにー
今、由愛菜は”竜輝くんに憑依した”と言ったー
「--お、、お、、俺に憑依することも…できるのか?」
竜輝が震えながら言うと、
智恵は「あたりまえでしょ?」と嬉しそうに微笑んだー
「---竜輝くん
”もう一度だけ”言うよ?
由愛菜と付き合って?
由愛菜と竜輝くんのこども、作ろ?
由愛菜と結婚しよ?
ずーっとずっと、一緒にいよ?」
智恵が笑うー。
笑っているー
が、その笑みは、まるで悪魔のようー。
「----返事を、き・か・せ・て?」
智恵が脅すような口調で言ったー
竜輝はがたがたと震えたー
ここで断ればー
”地獄”が現実になるー
俺は…由愛菜から逃れることはできないー
家族をー
智恵の身体を守るためーー
「----あ、、、あ…」
竜輝は膝を折ったー
「---わ、、わかった…よ…」
竜輝が涙を流しながら言うと、
智恵はほほ笑んだー。
「--由愛菜、結婚しよう」
智恵が言う。
「--え?」
竜輝が戸惑うと、
智恵はほほ笑んだー
「--この場で、由愛菜にプロポーズして?」
智恵の脅すような口調に、
心を折られてしまった竜輝はーーー
その場で震えながら由愛菜にプロポーズをしたーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数年後ー
その大学の近所では、
とても仲良さそうな新婚カップルが幸せそうに暮らしていたー
竜輝と智恵ー。
ただ、近所の住人は、少しだけ首をかしげていたー
妻は智恵という名前のはずだが
夫が”由愛菜”と呼んでいるのを何度も目撃しているからだー。
そしてー
夫は、一人になると、青ざめた表情でずっと震えているー。
いったい、その夫婦に何が起きているのかー。
竜輝と由愛菜以外にー
”真実”を理解することはできなかったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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元カノに屈してしまいました~…!
お読み下さりありがとうございました!
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