シルクハットの男たちとの戦いは続くー。
無事にこの戦いを突破し、
男に戻ることはできるのか…。
※果実夢想様(@fruitsfantasia)との
リレー形式合作デス。
内容は一切打ち合わせなしで、
数百文字程度ずつで交代交代で書いた作品になります!
(※誰が書いているか、担当箇所ごとに表記しています (例 ②無名 など)
※本日の通常の小説は、既に更新済みデス
(この1個前にあります)
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㊶【果実】
「……あんたは下がってて」
俺と水色シルクハットの男の間に立ち塞がり、こちらを振り向くことすらしないまま相生さんがそう言った。
せっかく、桃色のシルクハットの男を倒せたというのに、結局俺は足手まといになってしまうのか……。
「で、でも、俺も――」
「いいから。邪魔なの」
俺の言葉を途中で遮り、素っ気なく相生さんはそう答えた。
邪魔――確かに、そうかもしれない。
さっきは偶然上手くいったものの、また同じ手法は通用しないだろうし。
何より、今のこの体は万全の状態ではない。
……俺は。
一体、どうすればいいんだ――。
§
「はぁ、はぁ、はぁ……」
荒い吐息が漏れる。
言わずもがな、実無果名である。
その背後では、優姫と旭の父親が心配そうに目の前の光景を眺めている。
黄緑色のシルクハット、そして灰色のシルクハット。
二人の男を一人で相手にしており、果名は既に疲労困憊だった。
それも、後ろの二人を守りながらだったため余計に。
「おいおい、どうしたんだよ~。もっと楽しませてくれって~」
「……おい。あまり遊ぶな」
「へいへい。それじゃ、悪いけど三人ともここでお別れだねぇ」
黄緑のシルクハットの男がそう言うと、銃口を果名に向ける。
「か、果名さん……!」
「大丈夫。あたしも、君たちも死なせない」
優姫が名を呼ぶも、果名は前を見据えたままそう答えるのみ。
そして、不敵に口角を上げながら、黄緑シルクハットの男は引き金を引き――。
その銃弾は、誰にも当たることはなかった。
いや、違う。
そもそも、弾が発射されなかったのである。
「な……どうなってんだ?」
自分の銃を様々な角度から見ながら、困惑に声を震わせる黄緑シルクハットの男。
それを見て、果名はニヤッと笑い――。
「――残念。あんたが今持ってるソレは、レプリカだから」
そう言って、懐からひとつの銃を取り出した。
そう。それは、黄緑シルクハットの男が持っていたはずの、本物の銃だったのである。
㊷【無名】
「---あたしをーー
舐めないことね!」
果名が、そう叫ぶと、
困惑すると黄緑のシルクハットの男と、灰色のシルクハットの男に
向けて、銃を放つー。
しかしー
「---!!!おいテメェ!!なんだよ!おい!離せ!」
黄緑色のシルクハットの男が、悲鳴を上げるー。
仲間であるはずの灰色のシルクハットの男が
黄緑の男を盾にしたのだー
銃弾が、黄緑のシルクハットの男にあたり、
うめき声をあげて、動かなくなるー
灰色のシルクハットの男は、
そのまま黄緑のシルクハットを盾にして、
果名のほうに向かってタックルを仕掛けて来るー
「--そうやってー
仲間を簡単に切り捨ててー
あんたたちは、あの時と同じ!
だから、命(みこと)に除名されたの!」
黄緑を盾に突進してくる灰色のシルクハットの男ー
しかしー
パァン!!
謎の音がしてー
灰色のシルクハットの男が、うめき声をあげて倒れたー
「---!」
果名が驚くと、
そこには旭の妹の優姫がいたー
「なんかよくわかんないけど、
わたしたちの家の前で暴れられると、迷惑」
優姫が手に持っていたのはフライパンー。
果名たちが戦っている間に
台所から持ってきたフライパンで
灰色の男の頭を叩いたのだったー
「---…ありがとう」
助けてくれたことを微笑みながら感謝する果名ー。
「う…」
うめき声をあげる灰色のシルクハットの男に近づくと
容赦なく銃弾を加えてとどめを刺した果名は、呟いたー
「---ここはひとまず安心ね。」
そう呟くと、果名は、優姫と父親に、
事情を説明し始めたー。
㊸【果実】
「そんなことが……」
シルクハットの男たちの目的、自分がここに来た理由などなど。
果名の説明を聞き、優姫が神妙な面持ちでそう呟く。
「そ、それじゃ、今お兄ちゃんは……」
「十中八九、奴らの本拠地に忍び込んでるはずね。きっと見つかってしまうだろうけど……でも、命はそんなにすぐにやられるようなやつじゃないわ」
「でも、お兄ちゃんが……!」
「大丈夫。命が一緒なんだから、あなたのお兄さんも絶対に死なせない」
「……」
それでもなお、優姫は心配そうに俯くのみ。
それを見て、果名は溜め息を漏らしながら後頭部を掻く。
「……まったく。あたしは、命たちが本拠地に行ってる間に、この家を守るだけのつもりだったんだけど」
そう漏らした果名に、優姫も父親も訝しみつつ果名のほうを見た。
そして――。
「しょうがない。そこまで心配なら、一緒に行く? 命と、お兄さんを助けに」
――ウインクをしながら、果名がそう言った。
当然、唖然とする二人だったが。
「行きます。お兄ちゃんが頑張ってるのに、家で待ってるだけってのも嫌だし!」
決意を込めた瞳で果名を見据え、迷いのない口ぶりでそう答えてみせた。
「……ほんと、お兄さんのことが大好きなのね。いいわ、優姫ちゃん。あんたのことは、あたしが絶対に守り抜くから安心して」
「はい……ありがとうございます!」
優姫は、深く深く頭を下げた。
㊹【無名】
”うぉぉぉぉぉぉぉぉ…このような悲劇繰り返してはならぬッ!”
数年前ー
黒神凱亜と、相生命は同じ研究組織に所属していたー。
相生命はそこの、研究所長ー。
”性転換薬”
医療用ー
性に悩む人間を、救うべく開発していた薬ー。
国の認可などなど、様々な課題はあったものの
完成に向けて順調に研究は進んでいたー
黒神凱亜は
優秀な研究者だった。
第2研究室長を務め、多くの部下を持ち、
共に研究を進めていたー
しかしー
同時に”歪んで”いたー。
ある日ー
黒神凱亜は、命に告白したー
”貴方こそー我が女神にふさわしいッ”
だがーーー
「--あんたと?笑わせないで」
命は、凱亜の申し出を断ったー。
歪んだ愛をさらに強めていく凱亜は、
何度も何度も、命に告白しー
そして、”研究に支障をきたす”という理由で
除名処分となったー
”うぉぉぉぉぉぉぉぉ…このような悲劇繰り返してはならぬッ!”
黒神凱亜の狂気が、その時、生まれたー。
除名処分となったその日、凱亜は
第2研究室の部下たちを引き連れ、研究所から
性転換薬を盗み出し、
そして、”全人類女体化計画”を企てたのだー。
”--私のように、振られてつらい思いをする人間を
これ以上作りだしてはならぬッ!
私は、これより全人類女体化計画を実行に移す!
男が振られるー…
そんな悲劇を繰り返してはならないー
これは、世の男を救うための救済である!
正義(ジャスティス)であるッ”
黒神凱亜は、その日からー
今日まで、計画を進め続けてきたー
”女神に振り向いてもらえないのなら、
自分自身が女神になればいいじゃないかッ”
凱亜に心酔する、第2研究室の部下たちと共にー
・・・・・・・・・・・・・・・
水色のシルクハットの男が横たわっているー
「じゃあ…そのシルクハットの男たちはー?」
相生さんから話を聞いた俺が言うと、
相生さんは頷いたー
「あいつの…黒神凱亜の率いていた第2研究室のメンバー…。」
相生さんはそれだけ言うと、
格納庫内で叫んだー
「--凱亜!!いい加減に出てきなさい!」
とー。
けれどー
返事はないー
「---行くわよ」
相生さんも、凱亜との対話を諦めたのか、
格納庫の奥に向かってさらに歩み始めたー。
㊺【果実】
「あ、あの、ほんとに大丈夫なんですか……?」
「しっ!」
思わず声を震わせながら訊ねる優姫に、果名は唇に人差し指を当てることで黙らせた。
現在、優姫と果名は敵の本拠地に忍び込んでいる。
父親も来ようとしていたが、さすがに連れて来ることは危険だったため留守番中だ。
絶対に守り抜くと誓った果名ではあるものの、敵が一気に襲ってきたりしたら守れる自信はなかった。
だから、二人はできるだけ慎重に先に進む。
見つからないよう、細心の注意を払いながら。
しかし、どれだけ気をつけていようと。
ここが敵の本拠地である以上、一度も見つからないまま奥に辿り着けるわけがないのだった。
――パン!
不意に、耳を劈く銃声が聞こえる。
果名と優姫の間を、一発の銃弾が掠めていった。
「……ッ!?」
喫驚し、背後を振り向く。
そこには、橙色のシルクハットを被った男が銃を構えて立っていた。
そのシルクハットには、008の番号。
「くっ……思ったより早いじゃない……」
想定より早く見つかってしまったことに驚きながらも、橙シルクハットの男に向き直る果名。
しかし、それだけではなかった。
「か、果名さん……前」
「え……?」
優姫に言われるがまま再び前を向くと――天井から吊された紐に捕まってぶら下がり、そのままの勢いで男が床に着地。
その登場のしかたは、まるでターザンのようだった。
被っているシルクハットの色は、黄色。書かれた数字は、010。
「ひゃっほーう! 見っけ見っけー! ねえねえ、どっちが強いの? 僕ちん、強いほうとやりたいなぁ!」
まるで子供のように無邪気に、黄色シルクハットの男がはしゃぐ。
そして、それを諫めるかのように、橙色シルクハットの男は嘆息しながら呟いた。
「……馬鹿。片方は実無果名だ。そっちのほうが強いに決まっているだろ」
「へぇー! で、で、どっち? どっち?」
「……ったく、こいつは」
そんな男たちのやり取りを尻目に、果名は静かに銃を構える。
二人が相手なのは厄介だが、退くわけにもいかない。
「……気をつけて」
「はい」
そんな短い対話の末、果名と優姫は背中合わせにそれぞれの男と向かい合った。
㊻【無名】
背後から足音が聞こえるー
「--状況は…?
No/000 黒神凱亜が背後を振り返らずに呟くと、
青色のシルクハットの男が呟いたー
「先ほど、”赤”が向かいました」
頭を下げる青色のシルクハットの男ー
「そうか」
黒神凱亜は格納庫の中心部にあるコントロールルームで、
相生命と旭がいる現在地を見つめるー。
「---”白”の準備は?」
凱亜が笑みを浮かべるー。
「--完了しております」
”001”と刻まれた青色のシルクハットの男が頭を下げると、
凱亜はほほ笑んだー。
「No 777は我らの切り札だー」
そう呟くと、凱亜の見ているモニターに、
旭の母親が表示されたー
その母親の表示されているモニターには
No 777 ”白”洗脳済 と表示されておたー。
「--全人類女体化計画ー
誰にも邪魔はさせぬッ」
凱亜はそう呟くと、
背後に控える青色のシルクハットの男に向かって
笑みを浮かべたー
「--”赤”が敗北したら、”白”の出撃準備もしておけー
変わり果てた実の母親を前にー
あの餓鬼が、どう反応するか楽しみだ…」
㊼【果実】
最奥は、もう近い――。
それを短く教えてくれた相生命は、更に足を加速させる。
あまり、のんびりしていられないから、と。
「……」
それを半歩後ろから追いかける俺は、言い知れない嫌な予感に苛まれていた。
自分は、ここから先には行かないほうがいいような。
この先で、見てはいけないものがあるかのような。
そんな、自分でも説明のできない奇妙な感覚に。
「――止まってッ」
しかし、急に相生さんは足を止めて叫ぶ。
俺は思わず条件反射に足を止め、どうしたんですか……と訊ねる前に。
眼前に、とあるひとつの人影が迫ってきているのが見えた。
赤のシルクハットを被った男。
書かれた数字は――002。
「ちっ……」
彼の姿を視界に捉えるや否や、相生さんは忌忌しげに舌打ちを鳴らす。
訝しむ俺をよそに、赤シルクハットの男は立ち止まり、口を開く。
「もう、こんなところまで来たのか。しょうがない、では早急に――リタイアしてもらおう」
そう言って、銃を構える。
両手に、二丁も。
今までの男たちは、みんな使う銃はひとつずつだったのに。
こいつは二丁拳銃なのか……。
「ぼさっとしないで。死にたくないなら、ね」
そんな、冷たいとも言える相生さんの一言に。
ごくり、と唾を飲み込み。
俺は、銃を構えた。
あとは、こいつを倒せば。
俺たちは、もうすぐで奥に到達できる。
両手で、自分の頬を力の限り引っぱたく。
これでもう大丈夫。
俺たちは――絶対にここも切り抜けてみせる。
㊽【無名】
赤シルクハットの男が、
銃を放つー。
「ぼさっとしない!」
相生さんが俺に向かって叫ぶー
俺は咄嗟に物影に隠れるー
「--あ、、相生さん、あいつら、黒神とかいう男の
部下…研究者って言ってたよな…!?
相生さんもそうだけど、なんであんな、プロみたいな…」
俺がそう言いかけると、
相生さんは、赤いシルクハットの男のシルクハットを指さしたー
「--あいつらは、あれで力を増強してるー」
「---!」
俺は赤いシルクハットの男を見つめるー
銃弾を受け止めたのもー
プロの殺し屋みたいな動きをするのもー
”シルクハット”の力ー
「-ーた、ただのファッションじゃなかったのか…」
俺は可愛い声でそう呟くー。
ふと、自分が女になっていることを思い出すー
そうだー
早く元に戻らないといけないしー
このままじゃいられないー
「--ファッションなわけないでしょ!
あんな変な格好!
あのシルクハットで、それぞれ、力を増強しているの!」
相生さんが、銃を撃つと、赤いシルクハットの男が
それを「はっ!!!!!!!!!!!!」という大声で
はじいたー。
「--チッ」
赤いシルクハットの男が舌打ちするー
”--気に入らねぇ”
ここに来る前にー
”青”から言われたー
No/777の用意も進めているとー
つまりそれはー
”赤”であるこの俺”が負ける想定もされているということだー。
赤いシルクハットの男が数度舌打ちをするー
俺には、その心中は分からないー
けれどー
こいつを倒さないと先には進めないー
俺は意を決してー
”闘い”に挑むことを決意するのだったー。
㊾【果実】
「はぁ、はぁ、はぁ……」
乱れた呼吸の音だけが、辺りに響き渡る。
壁の後ろに隠れているのは、果名と優姫。
その壁に向かって、シルクハットの男が二人、銃口を向けていた。
優姫を庇いながら、二人を相手にするのはやはりかなり骨が折れる。
ただでさえ相手の銃の腕はプロ並みなのだ。
そう簡単に倒せる相手ではない。どうにかして、奴らの不意を突いたりしない限り。
「……あの、果名さん」
と、必死に思案を巡らす果名に、おずおずと優姫が声をかけた。
訝しみつつそちらへ視線を向けると、優姫はただ一言。
「私に――ちょっと考えがあります」
そう、言った。
とりあえずその考えを聞き、果名は絶句して眉を顰める。
「……あんた、それ本気?」
「はい。もちろんです。私に、やらせてください」
そう告げる優姫の目が、決意に彩られた真剣なもので。
しばしの逡巡ののち、果名は銃を渡す。
本物の、ではない。
弾丸の入っていない、レプリカを。
それを受け取るや否や、優姫はゆっくり立ち上がり――シルクハットの男たちの前に出た。
そして、レプリカの銃を向ける。
優姫が提案した考えは――囮作戦。
そう。シルクハットの男たちが優姫に気を取られ、彼女に銃口を向け――。
――その瞬間。
「かぁ……ッ!?」
隠れながら密かに移動していた果名が、黄色シルクハットの男のこめかみを撃ち抜いた。
鮮血を迸らせながら倒れる男に、橙色シルクハットの男は喫驚する。
しかし、次の一手を取らせるほど甘い果名ではなかった。
間髪入れず。
凄まじい早撃ちで、橙色シルクハットの男の鳩尾を狙撃した――。
㊿【無名】
”果名”がこちらに向かっているようですー。
その報告を”青”から聞いた
黒神凱亜は表情を歪めたー
「あの女か…」
「---どう致しますか?」
青が、謎の球体のようなものを手に、黒神凱亜の方を見るー
「ーーこの私が」
”青”がそう呟くと、
黒神凱亜は手を挙げたー
「--案ずるには及ばぬッ」
黒神凱亜が笑うー。
「”銀”を向かわせたー。
あの女たちが、自由を手にしたまま、
ここにたどりつくことなどーーー」
黒神凱亜は、そう呟くと、
壁に貼ってある命と果名の写真に向かって、
ダーツのようなものを投げ付けてほほ笑んだー
「ないッーーー」
・・・・・・・・・・・・・・・
「ぶるあああああああっ!」
声と音が響き渡るー
モーターのような爆音を響かせながら
”014”と書かれた
肌色のシルクハットの音が、相生さんと戦っているー
”赤”との戦いの最中にー
突然”肌色”も現れて、相生さんが防戦一方になっているー
「おらぁ!うらぁ!!おらぁあああああ!」
手につけた手甲のようなもので、相生さんに猛攻仕掛ける
肌色のシルクハットの男ー。
赤いシルクハットの男が銃弾を放つー。
相生さんは”赤”の攻撃も避けながら
手甲の男と激闘を続けているー。
「---俺だって!」
”「--ファッションなわけないでしょ!
あんな変な格好!
あのシルクハットで、それぞれ、力を増強しているの!」”
その言葉を思い出しながら俺はー
震える身体を押さえながらーーー
赤いシルクハットの男の方に向かうー
”あのシルクハットさえなければー”
「---雑魚が。俺の後ろを取ったつもりかー?」
赤いシルクハットの男が、俺の方を振り返るー。
俺はーー
ただの雑魚な、銀髪美少女じゃねぇ!!!!
そう心の中で叫びながらー
俺はふわっと飛び跳ねると、
蹴りで赤色のシルクハットの男のシルクハットを弾き飛ばしたー
⑥へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
あと2日で最終回デス~!
最後までぜひお楽しみくださいネ~!
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