”異常なまでの愛”から
逃げ出した彼氏ー。
だが、元カノから逃げることはできないー。
決してー。
※過去作品「元カノの報復」とは無関係デス!
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「---ごめん…本当に、ごめん」
夕暮れの大学ー
彼女の乃森 由愛菜(のもり ゆめな)を呼び出した
彼氏の真島 竜輝(ましま りゅうき)は、
彼女に対して、別れの言葉を告げたー。
「-----」
竜輝と由愛菜が見つめ合うー。
「----……うん、わかった」
由愛菜は、寂しそうにうなずくー。
「--由愛菜、竜輝くんのこと、ホントに、大好きだったー」
由愛菜が、竜輝のことを見つめながら呟くー。
「---でも……うん。わかった、ごめんね。
由愛菜じゃ、ダメだったんだね」
由愛菜はそれだけ言うと、
竜輝に手を差し出したー。
竜輝は、少し拍子抜け、という表情で
由愛菜の方を見つめたー。
「---ーーえ」
唖然とする竜輝を見て、微笑む由愛菜ー。
竜輝が唖然としているのには、理由があったー。
最初は大人しそうな感じだった由愛菜は、
付き合い始めてから、豹変したー。
いや、最初からそうだったのかもしれないー
常軌を逸した愛情ー
激しい束縛ー
少しでも気に入らないことがあると、露骨に不機嫌になり、
まるでストーカーのように、四六時中竜輝のことを見張っているー
竜輝が、妹と話をすることでさえ、由愛菜は
激怒するほどの嫉妬ぶりー
そうー
あまりの”異常さ”についに竜輝は、心が折れたのだったー。
そんな由愛菜に、別れを告げれば
当然、恐ろしい事態になると予想していた竜輝はー
由愛菜があっさりと”別れの言葉”を受け入れたことに
驚きながらも、安堵していたー。
握手を交わす竜輝と由愛菜ー。
「-今まで、ありがとうー」
由愛菜が優しく微笑んだー。
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あれから半年ー
同じ大学に通っている以上、
由愛菜と顔を合わせることは、時々あるものの、
あくまでも”同じ大学に通う人間”としてだけで、
由愛菜が再度迫って来るようなこともなければー
トラブルも起きてはいなかったー
”由愛菜はお姫様ー
竜輝くんは王子様♡”
由愛菜と付き合っていた時のことを思い出して
ゾっとする竜輝ー。
最初は好きだったー。
けれど、次第に由愛菜のことが恐ろしくなったー
”自分がお姫様”だと本気で思っているような言動の数々もそうー。
最初は”ネタ”だと思っていたのだが、
付き合っているうちに、由愛菜は本気であることに気づいたー
服装も、年齢に似合わないような、お姫様のような
服装が多いー。
「----」
竜輝は、深呼吸をするー。
「---あ、竜輝!」
明るそうなポニーテールの女子大生が近づいてくるー。
「---あ!」
竜輝が、その子に気づいて笑みを浮かべると、
「どうしたの?顔色悪いよ?」と、その子は苦笑いしたー。
由愛菜と別れてから4か月後ー
今からちょうど2カ月前に付き合い始めた
”今”の彼女ー
岸原 智恵(きしはら ちえ)-
由愛菜とは違い、ごく普通の感じで
裏表がないタイプー。
思ったことを口にしてしまう一面はあるものの、
由愛菜とは違い、とても付き合いやすく
フレンドリーなタイプの子だったー。
「----だ、大丈夫だよ…」
顔色のことを指摘された竜輝は、そう返事をしながら
苦笑いしたー
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ガチャー
一人暮らしのアパート…
自分の部屋に帰宅した由愛菜は、
部屋の電気をつけるー。
部屋にはーー
びっしりと、竜輝の写真が貼られているー。
「--竜輝…♡」
由愛菜はそう呟くと、
部屋にあるマネキンを見つめてほほ笑んだー
そしてー
由愛菜は服を脱ぎ始めると、
裸になって、マネキンに抱き着いて、キスをするー
よく見るとー
マネキンの顔の部分には
竜輝の顔写真が貼られているー
マネキンに抱き着いた由愛菜がうっとりとした表情を浮かべるー
「-竜輝……もうすぐ、、もうすぐだからね…」
由愛菜はほほ笑むー
マネキンに身体を押し付けながらー
由愛菜は気持ちよさそうに、声を出すー。
「--由愛菜ーー
竜輝のこと、諦めないからー」
そう呟く由愛菜ー
彼女の部屋の机の上に置かれたスマートフォンにはー
”注文履歴 憑依薬”と
表示されていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
♪~~~~
「---」
翌日。
大学で授業を終えて一休みしていた竜輝の元に
連絡が入ったー
”由愛菜”
「--!?」
竜輝は表情を歪めるー
由愛菜からLINEが届いたのだー
別れてからは、一度も、そんなことがなかったのにー。
だがー
竜輝が表情を歪めているのは
由愛菜からLINEが届いたからではなかったー
その、内容ー
”由愛菜、今から、夢の世界に行くね”
と、いうメッセージと共に
屋上から下を見つめるような写真が添付されていたのだー
「---っ」
竜輝は、”おいやめろ!”と、返事を送って
屋上に向かって走り出したー
屋上にたどり着くと、
由愛菜が微笑んでいたー。
ふわふわとした、お姫様のような服装の由愛菜が笑うー。
「--由愛菜、これから夢の世界に行くの!」
微笑む由愛菜ー
「--な、なに言ってんだ!?おい、やめろ!」
竜輝が叫ぶー
「忘れないでねー」
由愛菜が笑うー
「竜輝くんの側には、ずっとずっと、由愛菜がいるから!」
由愛菜の言葉に、竜輝は「おい!」と、今一度叫ぶー
「--竜輝くんは、由愛菜の王子様なのー!
誰にも、渡さないーー
絶対にー」
由愛菜は、それだけ呟くとー
躊躇することなくー
屋上からー
そのまま転落したー
「おい!!!!!!!!!!!」
竜輝が大声で叫ぶー
だが、その声は、もう由愛菜には届いていなかったー
由愛菜は即死だったー
到着した救急隊員が、すぐに由愛菜の死亡を確認ー
竜輝は、唖然とすることしかできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----竜輝のせいじゃないよ」
彼女の智恵が言う。
「---わかってる…でも…」
竜輝は考え込むー。
浮気して由愛菜と別れたわけでもなければ
竜輝が暴力を振るったりして由愛菜と別れたわけでもないー
由愛菜の常軌を逸した束縛ぶりは、
周囲の友人からも「別れたほうがいいよ」と
言われてしまうレベルだったし、
別れた際にも、ちゃんと由愛菜に伝えたー。
由愛菜が自殺してしまったことが、仮に
竜輝が原因だったとしても、
それは逆恨みー。
竜輝は、”こんな結末になることを回避する方法はなかったのか”
と、自問自答するー。
けれどー
その答えは見つからなかったー。
”お兄ちゃん、大丈夫?”
実家にいる高校生の妹・奈央子(なおこ)から連絡が入るー
”--大丈夫だよ”
竜輝はそう返事をするー
奈央子も”兄の元カノが死んだ”ことで、
竜輝が落ち込んでいないかどうか、
心配しているのだー。
”ならよかった。
お兄ちゃん、すぐに気負うところがあるから、
あまり気にしすぎないようにね”
奈央子の言葉に、
竜輝は”わかってるよ”と返事をすると、
ため息をついたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----」
智恵が、帰宅して、
一息ついていると、背後から声がしたー
”---泥棒猫”
とー。
「--!?」
智恵が振り返ると、
そこにはーーー
「---え…」
智恵の目が驚きで見開かれるー。
そこにはーー
由愛菜がいたーーー
「--由愛菜の王子様を奪うなんて、許せない!」
由愛菜の”亡霊”が呟くー
「--ひっ!?!?」
智恵が驚きのあまり尻餅をついてしまうー。
「-ーーー竜輝くんは、由愛菜のものだよ♪」
そう呟くと、
何が起きているのか分からないままーー
智恵は、由愛菜の霊体に”乗っ取られて”しまったー
「-------」
ビクンビクンと苦しそうにしている智恵ー
やがて、智恵は、
いつも智恵が出さないような甘い声で囁いたー
「竜輝くぅん…♡」
とー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
竜輝は、彼女の智恵に呼び出されたー。
「---竜輝くん…♡」
振り返った智恵を見て、竜輝は違和感を感じるー。
ふわふわとした、まるでお姫様のような服に
身を包んだ智恵ー。
智恵のいつもの雰囲気とは、まるで違うー。
「---智恵…?」
竜輝は戸惑うー
”由愛菜みたいな格好して、どうしたんだ?”
という言葉が思わず喉元まで
出かかったー。
だが”元カノ”の話を今の彼女の前ですることは
相手に聞かれでもしない限り、
あまりよくないことだと考えている竜輝は
その言葉を、喉元で抑えたー。
「---ふふふふ…竜輝くんは由愛菜のものだよ♡」
智恵が、笑いながら近寄って来ると、
竜輝の腕にしがみつくー
甘い表情ー
まるで、甘えん坊のような顔で、
竜輝を見つめる智恵ー。
いつもの、しっかり者な印象とは、まるで違うー。
「---え…由愛菜のもの…?いったい、、どういう…?」
竜輝が戸惑っていると、
智恵はほほ笑んだー
「ふふふふふ…この女は、由愛菜になったの♡」
智恵が笑うー。
「--!?!?」
竜輝は智恵の言っている言葉の意味が理解できなかったー。
「---だってぇ…竜輝くんってば
この女のほうが好きなんでしょ?
でもね、由愛菜、ホントは分かってる!
この女の見た目に騙されてるだけなんだもんね!」
智恵が両手を合わせながら微笑むー。
「だからね、竜輝くんが大好きなこの女になれるように
由愛菜、頑張ったの!
見て!すごいでしょ!?
由愛菜、憑依薬って薬で、こうしてこの女に
なっちゃった♡」
両手を広げながら
ぴょんぴょん飛び跳ねて笑う智恵ー
「--これで、竜輝くんが大好きな由愛菜と、
大好きな”見た目”
両方、竜輝くんのもの!」
智恵がにっこりとほほ笑んだー。
「-----」
竜輝は唖然として言葉を失っているー
「--お、、、お前…本当に…由愛菜…なのか?」
竜輝がやっと言葉を絞り出すと、
「うん!由愛菜だよ♡」
と、智恵が嬉しそうに微笑んだー
身体は確かに智恵だがー
完全に言動は由愛菜そのものだー。
智恵の性格を考えると、
智恵が、演技やドッキリでこんなことをするとは思えないー。
「---…」
由愛菜のような服装・髪型・言動になった智恵を見て
竜輝は呟くー
「--俺は…
見た目で智恵を好きになったんじゃないー
見た目で由愛菜を振ったわけじゃないー」
竜輝が言うー。
「---そういうところだよ…!」
竜輝が、智恵を指さすー
「そうやって…人のことを何も考えないで
束縛しようとしたり、
俺の周囲の人間に平気で迷惑かけようとしたり…!
そういう…”中身”だよ!
由愛菜のそういうところが、俺には耐えられなかったんだ!」
竜輝が言うと、
智恵は驚いた表情を浮かべているー。
「---智恵の身体を返せ!
人の身体を乗っ取るとか…信じられないけど、
本当にそういうことしてるなら…!
人殺しと同じだぞ!」
竜輝が叫ぶー。
智恵は唖然とした様子でしばらく口をぽかん…と明けていたが
やがて、笑みを浮かべたー。
「---怒ってる竜輝くん…かっこいい♡」
智恵がうっとりとした表情を浮かべるー。
「---お、、おい…聞いてるのか!」
竜輝が叫ぶー。
智恵を助けなくてはー
そんな風に思いながら、
竜輝は智恵の方を必死で見つめるー。
「--今日から、この女は、由愛菜の新しい身体だよ♡
竜輝くんのために、由愛菜、竜輝くんが大好きなこの身体を奪ったの!
竜輝くんが大好きな”智恵の身体”と
竜輝くんが大好きな”わたし”ー
2つが揃ってれば、最強でしょ♡
ほら、ここでキスしよっ!」
智恵が笑いながら近づいてくるー
「ふ、ふざけんな!」
竜輝が慌てて智恵を振り払うー。
いくら話をしても
”竜輝くんは、由愛菜のこと大好きだもんね”
という思いこみを由愛菜は直そうとしないー。
「---ふふ、照れちゃって~!
あ、もう次の授業の時間。行かなくちゃ!
また後でね!」
笑いながら、立ち去っていく智恵ー
お姫様のような服装の智恵の後ろ姿を見ながら、
竜輝は
「おい!」と、叫ぶことしかできなかったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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狂気的な元カノによる憑依…!
果たして、彼女から逃れることはできるのでしょうか…!
続きはまた明日デス!
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