<入れ替わり>潜入刑事①~潜入~

犯罪組織・アビスー。

謎に包まれた組織を壊滅させるために、
潜入捜査に長けた女性刑事が、
アビスの幹部の男と入れ替わり、
アビスの内情を調べていく…。

※冒頭に「憑依薬」の描写が出てきますが「入れ替わり」モノです

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「--ーーーあいつだ」

女性刑事二人と男性刑事一人が
その裏路地で何かを見張っているー。

”犯罪組織アビス”
裏社会で勢力を拡大している謎の組織だ。
”憑依薬”なる他人の身体を奪うことの出来る薬の開発に成功した、
という噂が、警察内部の間で広がっており、
既にそれを悪用している、という情報も入手した。

現にこの地域では最近、女子高生や女子大生が絡む
”奇妙な事件”が何件か起きているー。
”憑依されたのではないか”と、警察の上層部は考えていた。

”一刻も早くアビスを壊滅させなくてはならない”

そう危機感を抱いた警察上層部は
”アビス対策班”を秘密裏に設立。
特別に”射殺”の許可も与えらており、
法律に縛られない強引な捜査によって、
アビスを壊滅に追いやろうとしていた。

警察内部で”少数精鋭”のメンバーが集められ、
5人の精鋭が、アビス対策班として活動しているー

ここにやってきているのは、そのうちの3人だったー。

「--班長…あの男、ですか?」
潜入捜査を得意とする女性刑事・絵里が言う。

”アビス対策班”に所属する人間は全員仮名で、
元々警察のどの部署にいたのかも、お互いに知らないー
勿論、プライベートもだ。

絵里はまだ20代に見えるが、実年齢も不明だし、
こんなに若い子が、どうして潜入捜査のプロなのか、
という点も、他のメンバーは知らなかったー。

上層部によると”美貌を生かした潜入も得意”とのことだったー。

だが、今回はー
”違う”

「----心の準備はできたか?」
”班長”が言う。

”班長”とだけ呼ばれていて
他の4人の仲間も”名前”すら知らないー

「はい」
絵里がうなずくと、
犯罪組織アビスの幹部の潜伏拠点に突入したー。

犯罪組織アビスの幹部・目黒 龍治(めぐろ りゅうじ)-
その男の居場所を、アビス対策班は突き止めたのだったー。

そしてー
上層部から下された驚愕の指令ー。
それは、上層部が秘密裏に開発していた
”入れ替わり薬”を用いて、絵里が、目黒龍治となり、
 犯罪組織アビスの内情を調査すること”だったー。

班長は、危険すぎる、と当初否定したものの、
上層部からの圧力と、絵里本人が「やります」と
言い放ったことから、渋々それを承諾したー。

「動くな!」
班長が銃を構えるー

目黒龍治が驚いた表情を浮かべるー

いかにも威圧感を感じる、危険な風貌の男だー。

「-----絵里!」
班長が叫ぶと、
絵里は「はい」と、既に服用していた入れ替わり薬の効果で
目黒龍治と入れ替わるためー
龍治に近づいていくー

「あん?」
龍治が首を傾げるー

絵里は一瞬、躊躇ったあとに、龍治にキスをすると、
龍治が驚いた表情を浮かべてー
そのまま絵里と一緒にその場に倒れたー。

「------…」
班長と、同行しているもう一人のアビス対策班メンバーである
眼鏡の女性がその様子を見つめているー。

彼女は”リサ”と名乗っている女性で、
情報収集能力やオペレーター的な能力に長けていて、
作戦の管理なども行う後方支援担当ー

”警察上層部の娘で、
 父親である上層部の男が”娘に強くなってほしい”と
 いう思いから、アビス対策班に無理やりねじ込んだ”と
いう噂があるものの、
真相は定かではないー

「---う…」
龍治が起き上がるー

班長が龍治に銃を構えながら
「…絵里か?」
と、尋ねるー。

「---はい…合言葉は”プラネタリム”-」
龍治(絵里)が言うー。

入れ替わり成功を確認するため
事前に合言葉を決めておいたのだー。

班長が銃を下ろすー。

「--目覚める前に、そいつを拘束するー。」

班長が絵里の身体に手錠をはめて、拘束すると、
「おい!起きろ!」
と、叫ぶー。

絵里になった龍治が目を覚ますー

「--あ…???な、、あ?なんだこれ!?」
絵里(龍治)が可愛らしい声で叫ぶー。

「--事情は説明できない。とにかく来てもらおう」
班長が絵里(龍治)をパトカーに連行しようとするー

「な…!?俺がもう一人…だと!?」
絵里(龍治)が叫ぶー

龍治(絵里)は、自分の身体で、
汚い言葉を叫ばれていることに
少し不快感を覚えながらも、
取り乱したりすることはなく、じっと絵里(龍治)の方を見つめたー

「---なんだこれは!?おいお前!俺の身体を…!?」
絵里(龍治)が龍治(絵里)に向かって叫びー
そして、暴れようとし始めるー

「…クククク、そういうことか…」
絵里(龍治)は、悟るー

”身体を入れ替えて、俺の身体でアビスのことを調べるつもりか”
とー。

「---…くくくく…そんなことしていいのかな?
 お前の身体で、喘ぎ狂ってやってもいいんだぜ?」
絵里(龍治)が手錠で手を縛られたまま呟くー。

「--おい」
班長が絵里(龍治)を睨むー

「--男と寝まくったり、身体で金を稼いだりーー
 ククク、お前の身体を悪用しまくってやるぞ!!!」

絵里(龍治)が叫ぶー

だがー
龍治(絵里)は冷静だったー

「--わたしの身体で、そんなことはさせません
 潜入捜査が終わったら、身体は返してもらいますー」

龍治(絵里)の言葉に、絵里(龍治)は舌打ちするー。
捕まっている状態じゃ、確かに何もできないー

「---…」
睨み合う絵里(龍治)と龍治(絵里)-

「---フェラ!セックス!おしっこ!」

ー!?

龍治(絵里)が表情を歪めるー

「--ははははっ!どうだ、自分の口から卑猥な言葉を吐かれている気分は!!」
絵里(龍治)が笑うー

拘束されて抵抗できない絵里(龍治)の悪あがきー

絶対に絵里が口にしないような
卑猥な単語を次々と口にする絵里(龍治)

班長が「やめろ!」と大声で叫ぶー。

だがー
龍治(絵里)は動じなかったー

”けだもの”を見るような目で
絵里(龍治)を見つめるー

絵里(龍治)はカッとなって、絵里の身体で
唾を、龍治(絵里)に吐きつけたー

頬に唾がつき、龍治(絵里)は表情を歪めるー

けれどー
龍治になった絵里は、最後まで挑発に乗ることはなかったー。

連行されていく絵里(龍治)-

「---お前はここに残り、アビスへの潜入開始だ」
班長が言うと、
龍治(絵里)は、頷いたー。

「--潜入捜査は、なるべく真相を知る人間が少ない方がいい。
 とくに今回は入れ替わりを使った前代未聞の捜査だ。
 その身体でいるうちは、警察にも気をつけろ。」

班長の言葉ー。

事情を知っているのは入れ替わりを指示した上層部の男ひとりと、
班長、そして、後方支援担当のリサのみー。

「-わかりました」
龍治(絵里)がうなずくー

「--連絡は、わたしが受けますので、何か情報を得たり、
 連絡する際は、わたしとの専用ダイヤルにお願いしますね、先輩!」
リサが言う。

理知的な雰囲気で口数はそれほど多くないのだが
いざ、喋り出すと意外と明るいし、
絵里よりさらに年下で20代前半にすら見えるー。

「--うん。よろしくね」
龍治(絵里)がリサに対して言うと、
リサは「そのごつい姿で、その言葉遣いだと、なんか笑えちゃいますね~」と
冗談を口にしたー。

絵里の身体になった龍治を連行し
班長とリサが去っていくー

絵里の潜入捜査が、始まったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほどなくして、龍治になった絵里は、
アビスの本部に招集された。

”本部の場所は定期的に移動している”とのことで、
本部の場所が送られてくるー。

”本部に招集されました”
龍治(絵里)が、アビス対策班に連絡を入れると
”了解しました お気をつけて”とリサから
返事が戻って来たー。

車に乗って本部に向かうー。

”アビスの本部”は、都内の地下に用意されていたー。

「----」
龍治(絵里)が、緊張した表情で中に向かうー。

禍々しい雰囲気ー

「---あああああああっ…あぁぁっっ」
若い女性ー
女子大生だろうか。
拘束された状態で、まるで拷問を受けているような状態の子が
実験室のような場所で、叫んでいるー

「---憑依薬の治験ですよ」
背の低い爬虫類のような目をした男が声を掛けて来るー

「---あぁ」
龍治(絵里)は、そう答えたー。

「---目黒の旦那も、憑依したいって、思ってるんじゃないっすか?」
背の小さい男が笑うー

「--俺は…フン…そうだな…」
龍治(絵里)は返事を濁し、そのまま奥へと向かうー

潜入捜査に慣れている絵里にとっては
この程度は想定内だったー

奥の部屋に向かうと、
そこには黒いスーツを着た、冷徹な目をした男がいたー

「---目黒。久しぶりだなー」
笑みを浮かべる男ー。

「---アビス様」
背の低い男が、頭を下げるー。

”アビス”
犯罪組織の名前をそのまま名乗るこの男が、
犯罪組織アビスの首領ー

「-ーー間もなく”憑依薬”が正式に完成するー。
 そのために、全ての幹部に集まって貰ったー。

 ま、座れよ」

アビスはそう言うと、
座席を示したー。

”目黒”と書かれた席に座るー。

他に、5人の幹部ー

それぞれの名札を、龍治(絵里)は素早く確認するー

片目に傷のある男・神原(かんばら)ー
サングラスのスキンヘッド・盛岡(もりおか)-
妖艶なチャイナドレスの女・桜田(さくらだ)-
優しそうなイケメン・栗本(くりもと)-
音楽家のような髪型と服装の男・シェパンー。

「--」
確認を終えると龍治(絵里)は、それを暗記したー

”この目黒を含めて、幹部は6人なのね”

「---よぉし、全員集まったな」
アビスはそう呟くと、笑みを浮かべたー

潜入捜査は進んでいくー
やはり、憑依薬の開発は本当だったー

こんなものが悪用されるようになったら、
社会の秩序は崩壊してしまう。

なんとしても、阻止しなくてはいけないー。
何の罪もない人間が、犯罪者にさせられてしまうー
本人の意思とは関係なく、犯罪行為に手を染めてしまうー

「ひゃははははははははっ!」
実験体だった女子大生が憑依されて豹変した光景を
龍治(絵里)は見たー

これを、世に放つわけにはいかないー。

”憑依薬の開発が進んでいます”
龍治(絵里)が言うと、
班長は”噂は本当だったのか”と返事をくれたー。

本部の具体的な位置と、間取り図を対策班に送信するー。

”よし、一度お前と会って話がしたいー。
 自由に行動できる時間はあるか?”

班長の言葉に、龍治(絵里)は”はい 明日なら”と
返事を送ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

班長が、扉を開くー

龍治(絵里)との合流場所に向かおうとするー。

しかしーーー

「---!?」
絵里(龍治)が、拘束具から解放されているー

「--へへへへへ…おっぱい揉み放題だぜ」
絵里(龍治)が笑うー

そして、その手には、銃がー

「--お前!どうやっt

言葉を言い終える前にー
絵里(龍治)の放った銃弾が、班長の頭部を貫いたー

倒れる班長ー

「ひひひひひひっ…いい女だぜぇ」
絵里(龍治)が唇をペロリとしながら笑うー

アビス対策班の特別室で拘束されていた絵里(龍治)が
拘束から抜け出してしまったー

そしてーー

「---」
班長との合流を待つ龍治(絵里)に緊急の電話がかかって来たー

”わたしです!リサです!先輩!!あいつが、、あいつが、、”

”パァン!パァンパァンパァン!!パァン ガシャン”

リサからの電話ー
リサの悲痛な叫び越えの直後、
銃声が響き、何かが落ちる音がしたー

「リサ!?!?ちょっと!?リサ!?」
龍治(絵里)が叫ぶー

そしてー
数十分後ー
そこに、絵里の身体をした龍治がやってきたー

「--へへへ…俺たちの入れ替わりを知る人間は、もういねぇ。
 これからは、
 俺が絵里で、お前がーーーアビスの幹部・目黒だよー」

絵里(龍治)の勝利宣言ー

龍治(絵里)は絶望の表情で、絵里(龍治)を見つめたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

入れ替わりを駆使した潜入捜査ー。
早くも暗雲が…

続きはまた明日デス~!

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入れ替わり<潜入刑事>

コメント

  1. みのむー より:

    SECRET: 0
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    おおー、ダークだ。
    続きが気になりますよ。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~☆!
    第2話以降もぜひお楽しみくださいネ~!

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    1話にして急展開……!
    果たして絵里の逆襲はあるのか、次回が楽しみです~

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    このまま、絵里も負けているわけにはいきませんネ~!