<憑依>過保護なパパ①~溺愛~

彼は、娘を溺愛していたー

父は、娘を溺愛するあまり、
娘の勉強嫌いを、
娘の好き嫌いの多さを
”憑依”で解決させようとしていた…

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「も~!少しは野菜も食べないと」

母親の邑子(むらこ)が
苦笑いしながら言う。

「--やだ!ピーマンもにんじんも嫌い!」
まだ2年生の娘・多恵(たえ)は、
頬を膨らませながらそう言った。

「はははは…」
父親の俊三(としぞう)も苦笑いしているー

崎野家では、今日も穏やかな日常が流れていたー

夫婦仲も良好で、
娘の多恵も元気に育っているー

どこにでもありそうな、ごく普通の家庭ー。

だがー
父親である俊三は
”異様なまでに”
娘の多恵を溺愛していたー。

小さいころから、両親が不仲で
辛い思いをしながら育った過去を持つ
俊三は、人一倍、
”子供にそんな想いをさせてはならない”と
強く思っていたー。

娘である多恵が生まれた時に
自分は一生、多恵のために尽くす、と
そう決めたのだ。

多恵が、幸せになってくれれば、
それで、いいー、と。

そんな想いからー
彼は”良き父親”として
ここまでやってきた。

育児にも積極的に参加し、
多恵が悩んだ時には積極的に
相談に乗り、
多恵も、そんな父親になついていたー

しかしー

「--勉強きら~い!」
多恵は0点の漢字テストを前に、
母の邑子から説教を受けているー

娘の多恵は
致命的な勉強嫌いー
食べ物の好き嫌いも多いし
我儘で言っても聞かないー。

甘やかしすぎたのかもしれない
そんな風に思いながら
過保護に育ててきた自分の責任だ、と
俊三は頭を抱えていたー

なんとか、
なんとかしてあげなくてはならないー

俊三が必死に考えた結果、
彼は、たどり着いてしまったー

娘 好き嫌い と、
ネットで検索していたときにー
”それ”は、”そこ”にあったのだー

”憑依薬”

しつけの方法として、そのサイトでは
憑依薬なるものが紹介されていた。

子供の好き嫌いがどうしても治らない場合の
最終手段ー。
親が子供に憑依して、子供が嫌いな食べ物を
代わりに食べてあげたり、
代わりに勉強したりしてあげたりー

憑依薬ならば、それができる、と
そう書かれていたー

「--そんな薬が」
俊三には”下心”は一切なかった。
俊三は別にロリコンではない。

ただ、純粋に娘の好き嫌いを
どうにかしてあげたいー

そんな思いから、彼は
ついに、”憑依薬”を手に入れたのだった。

「-----ピーマン嫌い!野菜はいや!」
多恵が今日も好き嫌いでわめいているー

邑子も困り果てているー

「--多恵…」
父・俊三は、そんな多恵の姿を見ると
”ごちそうさま”と、自分は早めにご飯を
終わらせて自分の部屋に戻ったー

多恵に長生きしてほしい
多恵に元気でいてほしいー

父・俊三は
”娘に憑依するなんて”と一瞬思ったが
娘の身体を好き放題するわけじゃないし、
好き嫌いを治すためだ、と
憑依薬を飲み干した。

「ピーマンいやだぁ~!」
多恵が、わめいているー

そこにー
自室で憑依薬を飲んで霊体となった
俊三がやってきてーー

「---うっ!」
多恵がビクンと震えたー

「--多恵?」
母・邑子が、多恵がビクンと震えたことに気づいて
心配そうに多恵の方を見つめるー。

「---……」
多恵はキョロキョロと周囲を見渡すー

そして、自分の手を見つめるー

”こんなに小さくてきれいな手ー”

「---」
多恵に憑依した父・俊三は
新鮮な気持ちを味わっていたー

「多恵…?どうしたの?」
母・邑子が心配そうに再度尋ねてくるー。

「--あ…いや…」
そこまで言って、多恵の可愛い声が自分の口から
出ていることに気づいた俊三は、ハッとするー

”あ、今は多恵なんだった”
とー。

「---な、、な、、、なんでもないよ」
多恵のふりをしてぎこちない笑みを浮かべるー

そして…

「あ、、ぴ、、ピーマンがんばってみる!」
そう呟きながら多恵は
ピーマンとにんじんを口に含ませたー

「-!」
母の邑子が驚くー

あんなに言っても野菜を食べなかった
多恵が、突然野菜を口に入れたからだ。

「ーー!」
多恵は、にんじんを食べながら
表情を歪めるー

”まずい…!”

俊三は思うー
”味覚が違うのか”
とー。

俊三と多恵の味覚は違うー
人間の味覚は、ひとそれぞれ異なる。

多恵の口で食べるにんじんとピーマンは
俊三の口で食べるにんじんとピーマンより
遥かにまずかったー。

「--(こんなにも違うんだな)」

とは言え、娘のためー
野菜を食べ終えると、
俊三は、すぐに憑依から抜け出したー

「--えらいね~!」
何もしらない母・邑子が多恵をほめるー

意識を取り戻した多恵は
「あれ?」と首を傾げたー

「---…よし」
自分の身体に戻った俊三は、
自分しかいない部屋でそう呟いたー

これならー
これなら、行ける。

多恵のために
この力を役立てることができるー

エッチなことに使っているわけではないし、
多恵が嫌がる時間だけ肩代わりしてあげるんだー。

俊三は、そんな風に思いながら
憑依薬を握りしめたー

「--と、次は勉強か」
俊三が呟くー

多恵のために、多恵に憑依して
勉強もしてあげたいー。

憑依薬を紹介していたサイトには、
”憑依している最中は、乗っ取っている身体の脳を使う”
ということが書かれていた。
そのため、勉強嫌いの息子・娘に憑依して
勉強することで、
多恵の頭の中に、ちゃんと勉強の結果を
残すことができるのだ。

・・・・・・・・・・・

部屋に戻った多恵は首をかしげる。

ピーマンやにんじんを食べたはずがないのに、
いつの間にかピーマンとにんじんを食べていたー

「--…ま、いっか!」
多恵が嬉しそうに言う。

嫌いな野菜をいつの間にか
食べ終えていたんだし、
ラッキー!

そんな風にしか思わなかったー

「--あ、そうだ!」
多恵は自分の机の本を手に取って
にこにこするー
自分の好きなキャラクターのガイドブックだー。

「--今日は昨日のつづーーあぅ!?!?」
多恵がビクンと震えて
その本を落とすー

少しすると、多恵は苦笑いしながら
落とした本を拾った。

「ごめんな多恵…
 ちょっと勉強しなくちゃ」
多恵はそう呟くと、
机に向かって真剣に勉強をし始めたー

俊三からすれば簡単にわかるレベルの
簡単な勉強ー
ただし、これが分かるのは俊三が憑依している間だけ。
憑依によって子供を教育するためには
身体を乗っ取った状態で勉強をして、
多恵の脳そのものに、学んだことを
刻み付けなくてはいけない。

「----」
必死に勉強を続ける多恵。

「--!」
ふと、多恵の身体がトイレに行きたくなってることに気づく。

「--待てよ…多恵の身体でトイレはちょっときついな」
多恵は呟くー

父・俊三は男だー
当然、女の子としてトイレに行ったことなどない。
正直、どんな感覚なのかもわからない。
最悪、失敗するかもしれないー

それにー
娘の身体でトイレに行く、ということには
罪悪感も感じるー

「いったんぬけるか」
そう呟くと、多恵がぴくっと震えて
正気を取り戻すー

「あ…??あれ?」
多恵が周囲を見渡す。

しかしー
すぐに、トイレに行きたい!!と思って
多恵はそのままトイレへと向かった。

”ふ~~”
そんな多恵を霊体の状態で見つめながら
苦笑いする俊三ー。

娘のためにー
と、いうのも大変だ。

でも、父として
娘にはできる限り幸せになってもらいたいー。

トイレを終えた多恵に再び憑依した俊三は
その身体で勉強を再開するのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

勉強嫌いの娘のために、
好き嫌いの多い娘のためにー
父の俊三は、それからも娘・多恵への
憑依を続けたー

多恵の身体で悪さをしたり、
多恵の身体でエッチなことをしたりは一切、しない。

娘を愛する俊三は、あくまでも
娘のために
勉強や、好き嫌いを肩代わりしていたー。

娘の多恵は、時々意識が
飛んでいることに疑問に思っていたが
俊三が配慮し、その間の記憶を
疑問に思わないように、うまく憑依している間に
調整することで、やがて、多恵は
そのことを心配しなくなったー。

「---最近、すごいじゃない」
母の邑子が言う。

「うん!なんかテストのときになると
 頭の中に答えが浮かんでくるんだよ!」
95点のテストを持ちながら多恵が
笑いながら言う。

成績が飛躍的に上がったー

「すごいじゃないか~!」
父の俊三も嬉しそうに言う。

勉強嫌いの多恵に憑依して
勉強を続けたことで、多恵の脳にも
影響が出て、俊三が多恵の身体で勉強したことが
多恵の中にちゃんと刻まれたのだった。

”褒められる喜び”を知った多恵は
勉強を自らするようになったー。

食べ物の好き・嫌いにしてもそうだった。

多恵の身体で俊三が、にんじんやピーマンなどなど、
多恵の嫌いなものを食べ続けた結果、
多恵は自然と野菜に耐性を身に着けていたー。

「すご~い!」
母の邑子が拍手しながら言う。

”立派になったな…!多恵”
父の俊三は、満足そうに多恵の様子を見つめていたー。

これで、”役目”はおわったー。
俊三は、多恵に憑依するのをやめたー。

それでも多恵は、勉強をちゃんとほどほどにして、
好き嫌いも克服して、
楽しい日々を送っていたー。

だがーー

ある日、多恵が泣きながら帰ってきたー。

「どうしたんだ!?」
俊三が心配そうに多恵に駆け寄る。

「--源田くんに、いじめられたの…」
悲しそうに言う多恵。

クラスメイトの男子・源田にいじめられたのだと言う。

その言葉を聞いて、俊三は怒りの形相で、
部屋に戻ったー。

源田ー。
誰だか知らないが、許さんー

とー。

翌日、学校に登校した多恵に憑依した俊三は
源田を呼び出したー

「何か用かよ~?」
源田がニヤニヤしながら言う。

そんな源田を、憑依された多恵は睨んだ。

「--もう、お、、じゃない、わたしをいじめるの、やめて」
多恵が怒りの形相で言う。

「はぁ~?お前が悪いんだろ~?
 俺たちのこと、言いつけるから!」

源田の言葉に、
多恵に憑依している父・俊三は理解するー

”多恵が、この源田とかいう男子の悪さを
 先生か何かに報告したから、逆恨み
 されたのだろう”

とー。

「---お前が悪いからいけないんだろ!」
多恵は口調を荒げたー

多恵に憑依している俊三が、
多恵のふりをするのも忘れて叫ぶ。

「---は~~!?生意気だぞ!」
源田が、多恵をぶとうとして、手をあげるー

しかしー

「---はっ!」

「-!?」

多恵の父・俊三は、柔道の心得があったー

多恵の身体で源田を掴むと、
源田をあっという間に床に倒し、
そして、源田を動けないようにしたー

「--あいたたたたたたたた!」
源田が悲鳴を上げるー

「俺の娘を、、いじめるな!」
多恵は低い声で叫んだ。

「-ーーひっ!?」
多恵の変なセリフにも気づかず、
源田は怯えた様子で頷いたー

「---これで、よし、とー」

多恵から抜け出す俊三ー。

それ以降、源田によるいじめはなくなったー
父・俊三は、憑依することをやめてー
多恵は、平穏な生活を取り戻したー

ここまではーーー
”ちょっと過保護”ぐらいで済んだのかもしれないー

けれどーーー

父の愛は、
”それ”では終わらなかったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

今日は平穏な憑依でしたネ~!
明日は……

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