彼は、娘を溺愛していたー
父は、娘を溺愛するあまり、
娘の勉強嫌いを、
娘の好き嫌いの多さを
”憑依”で解決させようとしていた…
--------------------—
「も~!少しは野菜も食べないと」
母親の邑子(むらこ)が
苦笑いしながら言う。
「--やだ!ピーマンもにんじんも嫌い!」
まだ2年生の娘・多恵(たえ)は、
頬を膨らませながらそう言った。
「はははは…」
父親の俊三(としぞう)も苦笑いしているー
崎野家では、今日も穏やかな日常が流れていたー
夫婦仲も良好で、
娘の多恵も元気に育っているー
どこにでもありそうな、ごく普通の家庭ー。
だがー
父親である俊三は
”異様なまでに”
娘の多恵を溺愛していたー。
小さいころから、両親が不仲で
辛い思いをしながら育った過去を持つ
俊三は、人一倍、
”子供にそんな想いをさせてはならない”と
強く思っていたー。
娘である多恵が生まれた時に
自分は一生、多恵のために尽くす、と
そう決めたのだ。
多恵が、幸せになってくれれば、
それで、いいー、と。
そんな想いからー
彼は”良き父親”として
ここまでやってきた。
育児にも積極的に参加し、
多恵が悩んだ時には積極的に
相談に乗り、
多恵も、そんな父親になついていたー
しかしー
「--勉強きら~い!」
多恵は0点の漢字テストを前に、
母の邑子から説教を受けているー
娘の多恵は
致命的な勉強嫌いー
食べ物の好き嫌いも多いし
我儘で言っても聞かないー。
甘やかしすぎたのかもしれない
そんな風に思いながら
過保護に育ててきた自分の責任だ、と
俊三は頭を抱えていたー
なんとか、
なんとかしてあげなくてはならないー
俊三が必死に考えた結果、
彼は、たどり着いてしまったー
娘 好き嫌い と、
ネットで検索していたときにー
”それ”は、”そこ”にあったのだー
”憑依薬”
しつけの方法として、そのサイトでは
憑依薬なるものが紹介されていた。
子供の好き嫌いがどうしても治らない場合の
最終手段ー。
親が子供に憑依して、子供が嫌いな食べ物を
代わりに食べてあげたり、
代わりに勉強したりしてあげたりー
憑依薬ならば、それができる、と
そう書かれていたー
「--そんな薬が」
俊三には”下心”は一切なかった。
俊三は別にロリコンではない。
ただ、純粋に娘の好き嫌いを
どうにかしてあげたいー
そんな思いから、彼は
ついに、”憑依薬”を手に入れたのだった。
「-----ピーマン嫌い!野菜はいや!」
多恵が今日も好き嫌いでわめいているー
邑子も困り果てているー
「--多恵…」
父・俊三は、そんな多恵の姿を見ると
”ごちそうさま”と、自分は早めにご飯を
終わらせて自分の部屋に戻ったー
多恵に長生きしてほしい
多恵に元気でいてほしいー
父・俊三は
”娘に憑依するなんて”と一瞬思ったが
娘の身体を好き放題するわけじゃないし、
好き嫌いを治すためだ、と
憑依薬を飲み干した。
「ピーマンいやだぁ~!」
多恵が、わめいているー
そこにー
自室で憑依薬を飲んで霊体となった
俊三がやってきてーー
「---うっ!」
多恵がビクンと震えたー
「--多恵?」
母・邑子が、多恵がビクンと震えたことに気づいて
心配そうに多恵の方を見つめるー。
「---……」
多恵はキョロキョロと周囲を見渡すー
そして、自分の手を見つめるー
”こんなに小さくてきれいな手ー”
「---」
多恵に憑依した父・俊三は
新鮮な気持ちを味わっていたー
「多恵…?どうしたの?」
母・邑子が心配そうに再度尋ねてくるー。
「--あ…いや…」
そこまで言って、多恵の可愛い声が自分の口から
出ていることに気づいた俊三は、ハッとするー
”あ、今は多恵なんだった”
とー。
「---な、、な、、、なんでもないよ」
多恵のふりをしてぎこちない笑みを浮かべるー
そして…
「あ、、ぴ、、ピーマンがんばってみる!」
そう呟きながら多恵は
ピーマンとにんじんを口に含ませたー
「-!」
母の邑子が驚くー
あんなに言っても野菜を食べなかった
多恵が、突然野菜を口に入れたからだ。
「ーー!」
多恵は、にんじんを食べながら
表情を歪めるー
”まずい…!”
俊三は思うー
”味覚が違うのか”
とー。
俊三と多恵の味覚は違うー
人間の味覚は、ひとそれぞれ異なる。
多恵の口で食べるにんじんとピーマンは
俊三の口で食べるにんじんとピーマンより
遥かにまずかったー。
「--(こんなにも違うんだな)」
とは言え、娘のためー
野菜を食べ終えると、
俊三は、すぐに憑依から抜け出したー
「--えらいね~!」
何もしらない母・邑子が多恵をほめるー
意識を取り戻した多恵は
「あれ?」と首を傾げたー
「---…よし」
自分の身体に戻った俊三は、
自分しかいない部屋でそう呟いたー
これならー
これなら、行ける。
多恵のために
この力を役立てることができるー
エッチなことに使っているわけではないし、
多恵が嫌がる時間だけ肩代わりしてあげるんだー。
俊三は、そんな風に思いながら
憑依薬を握りしめたー
「--と、次は勉強か」
俊三が呟くー
多恵のために、多恵に憑依して
勉強もしてあげたいー。
憑依薬を紹介していたサイトには、
”憑依している最中は、乗っ取っている身体の脳を使う”
ということが書かれていた。
そのため、勉強嫌いの息子・娘に憑依して
勉強することで、
多恵の頭の中に、ちゃんと勉強の結果を
残すことができるのだ。
・・・・・・・・・・・
部屋に戻った多恵は首をかしげる。
ピーマンやにんじんを食べたはずがないのに、
いつの間にかピーマンとにんじんを食べていたー
「--…ま、いっか!」
多恵が嬉しそうに言う。
嫌いな野菜をいつの間にか
食べ終えていたんだし、
ラッキー!
そんな風にしか思わなかったー
「--あ、そうだ!」
多恵は自分の机の本を手に取って
にこにこするー
自分の好きなキャラクターのガイドブックだー。
「--今日は昨日のつづーーあぅ!?!?」
多恵がビクンと震えて
その本を落とすー
少しすると、多恵は苦笑いしながら
落とした本を拾った。
「ごめんな多恵…
ちょっと勉強しなくちゃ」
多恵はそう呟くと、
机に向かって真剣に勉強をし始めたー
俊三からすれば簡単にわかるレベルの
簡単な勉強ー
ただし、これが分かるのは俊三が憑依している間だけ。
憑依によって子供を教育するためには
身体を乗っ取った状態で勉強をして、
多恵の脳そのものに、学んだことを
刻み付けなくてはいけない。
「----」
必死に勉強を続ける多恵。
「--!」
ふと、多恵の身体がトイレに行きたくなってることに気づく。
「--待てよ…多恵の身体でトイレはちょっときついな」
多恵は呟くー
父・俊三は男だー
当然、女の子としてトイレに行ったことなどない。
正直、どんな感覚なのかもわからない。
最悪、失敗するかもしれないー
それにー
娘の身体でトイレに行く、ということには
罪悪感も感じるー
「いったんぬけるか」
そう呟くと、多恵がぴくっと震えて
正気を取り戻すー
「あ…??あれ?」
多恵が周囲を見渡す。
しかしー
すぐに、トイレに行きたい!!と思って
多恵はそのままトイレへと向かった。
”ふ~~”
そんな多恵を霊体の状態で見つめながら
苦笑いする俊三ー。
娘のためにー
と、いうのも大変だ。
でも、父として
娘にはできる限り幸せになってもらいたいー。
トイレを終えた多恵に再び憑依した俊三は
その身体で勉強を再開するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
勉強嫌いの娘のために、
好き嫌いの多い娘のためにー
父の俊三は、それからも娘・多恵への
憑依を続けたー
多恵の身体で悪さをしたり、
多恵の身体でエッチなことをしたりは一切、しない。
娘を愛する俊三は、あくまでも
娘のために
勉強や、好き嫌いを肩代わりしていたー。
娘の多恵は、時々意識が
飛んでいることに疑問に思っていたが
俊三が配慮し、その間の記憶を
疑問に思わないように、うまく憑依している間に
調整することで、やがて、多恵は
そのことを心配しなくなったー。
「---最近、すごいじゃない」
母の邑子が言う。
「うん!なんかテストのときになると
頭の中に答えが浮かんでくるんだよ!」
95点のテストを持ちながら多恵が
笑いながら言う。
成績が飛躍的に上がったー
「すごいじゃないか~!」
父の俊三も嬉しそうに言う。
勉強嫌いの多恵に憑依して
勉強を続けたことで、多恵の脳にも
影響が出て、俊三が多恵の身体で勉強したことが
多恵の中にちゃんと刻まれたのだった。
”褒められる喜び”を知った多恵は
勉強を自らするようになったー。
食べ物の好き・嫌いにしてもそうだった。
多恵の身体で俊三が、にんじんやピーマンなどなど、
多恵の嫌いなものを食べ続けた結果、
多恵は自然と野菜に耐性を身に着けていたー。
「すご~い!」
母の邑子が拍手しながら言う。
”立派になったな…!多恵”
父の俊三は、満足そうに多恵の様子を見つめていたー。
これで、”役目”はおわったー。
俊三は、多恵に憑依するのをやめたー。
それでも多恵は、勉強をちゃんとほどほどにして、
好き嫌いも克服して、
楽しい日々を送っていたー。
だがーー
ある日、多恵が泣きながら帰ってきたー。
「どうしたんだ!?」
俊三が心配そうに多恵に駆け寄る。
「--源田くんに、いじめられたの…」
悲しそうに言う多恵。
クラスメイトの男子・源田にいじめられたのだと言う。
その言葉を聞いて、俊三は怒りの形相で、
部屋に戻ったー。
源田ー。
誰だか知らないが、許さんー
とー。
翌日、学校に登校した多恵に憑依した俊三は
源田を呼び出したー
「何か用かよ~?」
源田がニヤニヤしながら言う。
そんな源田を、憑依された多恵は睨んだ。
「--もう、お、、じゃない、わたしをいじめるの、やめて」
多恵が怒りの形相で言う。
「はぁ~?お前が悪いんだろ~?
俺たちのこと、言いつけるから!」
源田の言葉に、
多恵に憑依している父・俊三は理解するー
”多恵が、この源田とかいう男子の悪さを
先生か何かに報告したから、逆恨み
されたのだろう”
とー。
「---お前が悪いからいけないんだろ!」
多恵は口調を荒げたー
多恵に憑依している俊三が、
多恵のふりをするのも忘れて叫ぶ。
「---は~~!?生意気だぞ!」
源田が、多恵をぶとうとして、手をあげるー
しかしー
「---はっ!」
「-!?」
多恵の父・俊三は、柔道の心得があったー
多恵の身体で源田を掴むと、
源田をあっという間に床に倒し、
そして、源田を動けないようにしたー
「--あいたたたたたたたた!」
源田が悲鳴を上げるー
「俺の娘を、、いじめるな!」
多恵は低い声で叫んだ。
「-ーーひっ!?」
多恵の変なセリフにも気づかず、
源田は怯えた様子で頷いたー
「---これで、よし、とー」
多恵から抜け出す俊三ー。
それ以降、源田によるいじめはなくなったー
父・俊三は、憑依することをやめてー
多恵は、平穏な生活を取り戻したー
ここまではーーー
”ちょっと過保護”ぐらいで済んだのかもしれないー
けれどーーー
父の愛は、
”それ”では終わらなかったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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今日は平穏な憑依でしたネ~!
明日は……

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