娘のためにー
娘の好き嫌いを克服させてあげるためにー
勉強嫌いの娘のためにー
いじめを受けた娘のためにー
娘への憑依を繰り返し、娘を助けてきた父。
しかし…
---------------—
崎野家では穏やかな時が流れていたー
娘・多恵のために、と
娘に憑依していた俊三は、
あれからも、多恵に何らかのトラブルが
起きるたびに、多恵に憑依して
その問題を解決してきたー。
”すべては、多恵のために”
好き嫌いが多かった多恵に憑依して
好き嫌いを克服させたー
勉強嫌いの多恵に憑依して、
勉強嫌いを克服させたー。
クラスメイトにいじめられた時には
それを解決させ、
それからも
友達と喧嘩して、素直になれない多恵の代わりに
多恵に憑依して謝りに行ったりー
色々なことをしたー。
やがて多恵は中学に入学して、
元気に成長を続けていたー
父・俊三は、今でも多恵に憑依を続けているー
もちろん、思いは最初と同じ。
”全ては、多恵のために”
多恵の身体で悪さをすることはしないし、
多恵の身体でエッチなこともしない。
多恵が本当に困っているとき、
多恵を助けるために、俊三は憑依するのだ。
娘を性的な目で見たりすることは、ない。
「---♪~~」
今日も、多恵の身体で、受験勉強をしていたー
中3になった多恵の身体は、
以前よりも女らしくなってきていたー。
「---」
俊三も、全く意識をしていなかったのが
流石に身体つきが女っぽくなってくると
つい意識をしてしまうこともある。
「--だめだだめだだめだ」
可愛い声で呟く多恵。
憑依している間は髪を束ねて
邪魔にならないようにしているー
自分の煩悩に負けるわけにはいかない。
今後、多恵はもっと女性らしい身体つきになるだろう。
それでも、エッチなことはしてはいけないし、
エッチな目つきで娘を見ることは許されないー
勉強を必死にする多恵。
「--ふ~~~」
少し一息ついた時に、
口から出た声が、とても可愛らしかったー
俊三も思わずドキッとしてしまうー
「--多恵、お疲れ様」
母の邑子が、多恵に飲み物の差し入れを持ってくるー
「--ありがとう」
多恵はそう言うと、勉強を再開するー
「------……」
邑子は、そんな多恵の方を見ながら
複雑な表情を浮かべたー
母・邑子は、”最初は”気づいていなかった。
だが、少し前に悟ったー。
多恵に何かトラブルが起きた時、
父・俊三は決まって部屋に閉じこもる。
そして、
多恵が別人のようにトラブルを解決するのだー
勉強中もそう。
あれだけ勉強嫌いだった多恵が
勉強するようになった。
それからも”大変な勉強”を多恵がするときは
俊三は決まって部屋に閉じこもるー
疑問に思った邑子は、多恵が勉強しているときに
俊三の部屋の鍵を無理やり開けて
覗いたことがあるー
すると、俊三が、抜け殻のように眠っていて
近くに”憑依薬”と書かれた謎の容器が
あったのだったー。
「----」
邑子は意を決する。
そして、娘の多恵に言う。
「--多恵。ちょっと来て」
邑子の言葉に、勉強していた多恵は「ん?あ、うん」と答えた。
多恵を父・俊三の部屋に連れていくー
俊三の部屋が近づくにつれて
多恵の表情が曇っていくー
”邑子、まさかー…”
多恵に憑依している俊三は焦っていたー
いやー
でも、大丈夫だ。
仮に憑依に気づかれたとしても
多恵のためだ。
妻の邑子もきっと理解してくれる、とー。
それに、部屋の鍵は閉めてあるー
「--多恵。わたしに何か言うことはない?」
邑子が言う。
「--え…、、ど、どういう、、ことかな~?」
多恵はとぼけるー。
”憑依に感づかれているー”
そう思ったー。
邑子はため息をつくとー
針金のようなもので、俊三の部屋の鍵を開けたー
「---!」
多恵が表情を歪めるー。
多恵の身体から出てー
そう、思った。
だがーー
多恵の身体から抜けると、
多恵は数秒、意識を失うー。
今はヤバいー。
「---これは、何?」
邑子が、抜け殻状態の俊三の身体と
憑依薬の容器を手にするー
「--え、、え??
な、、なんだろ~~?
わ、、わたし、わかんない~!」
多恵はとぼけながら黒髪をかきむしるー。
「ーーーお父さん見てどう思う?」
邑子が言う。
多恵は抜け殻状態の俊三を見て、
「あ、、う、、うん~寝てるんだね~」と呟いた。
”なんとか、誤魔化したいー”
でもー
「…ねぇ、どうして?」
邑子が言う。
「--いつから?
いつから多恵に憑依してたの?」
邑子の言葉に、
多恵は「え、、、え、、、?わ、、わたしはわたしだよ~!」と
拳を開いたり握ったりしながら呟くー
「ほらー…
もう、その癖ー」
邑子が言う。
拳を握ったり開いたりするのは、
俊三が言い訳をするときのクセだと。
髪を掻きむしるのは俊三が苦しい嘘をつくときのクセだと。
そしてー
抜け殻状態の父・俊三を見ても
あっさりした反応しかしないのはおかしい、とー。
普通だったら、もっと慌てるはずだー、とー
「----…すまん」
多恵は観念して、そのまま土下座をして頭を下げたー。
・・・・・・・・・・・
多恵に憑依した理由を全て説明する多恵…に憑依している俊三。
多恵は、椅子に座って
複雑な表情を浮かべるー
「……」
邑子は表情を曇らせているー。
全ては多恵のためー
エッチなことはしていないー
用が済んだらすぐに憑依から抜け出しているー
それを、邑子に伝える。
だがーー
邑子は理解してくれなかった。
多恵のためと言ってもー
”それは多恵のためじゃない”とバッサリ切り捨てられた。
挙句の果て、
離婚を切り出されてしまうー
「--む、、邑子!考え直してくれ!
ぜんぶ、、ぜんぶ多恵のためなんだ!」
俊三が叫ぶ。
「--もう、決めたことよ」
邑子は離婚届けにサインを迫って来るー
”心底失望した”のだと言うー
夫婦仲はこれまで良好だったが
”娘に憑依していた父”という衝撃の事実を知って
一気に冷めたのだと言う。
「---多恵は、わたしが引き取ります。
あなたはもう、二度と多恵には会わないで」
邑子が言う。
「--そんな…」
絶望する俊三ー。
多恵と、もう会えなくなるー
部屋に戻った俊三は
うなだれたー
ーーなぜー?
邑子に何ができる?
邑子に多恵が守れるのか?
俺は今までずっと、多恵のために頑張ってきた。
邑子は何をしていたー?
何も、多恵のためになること
してないじゃないかー。
俊三は、手を震わせるー
そして…
「-多恵…多恵を守らないと…!」
半分パニックになっていた俊三は、
多恵を守る方法ー
多恵を奪われない方法をフル回転で考える。
「--はぁはぁ…多恵…!」
俊三は憑依薬を飲むー。
すぐに幽体離脱した俊三はー
キッチンにいた妻・邑子に憑依したー。
「邑子…!多恵を守るためだ」
憑依された邑子はそう呟くと、
玄関から外に飛び出した。
交差点まで走っていくと
邑子は震えながら呟く。
「邑子…許してくれ…
多恵を守るために…
し、、、し、、、」
震える邑子。
「--死んでくれーーー!!!」
目を瞑りながら邑子の身体のまま、
交差点に走っていくー
邑子の身体は車に跳ね飛ばされてー
そのまま息を引き取ったー
「---……」
邑子の葬儀を終えるー。
多恵のためだ…
俊三は、それからも多恵に憑依を続けた。
多恵のために。
多恵のために。
多恵のために。
ある日ー
多恵が、彼氏ができたと報告してきたー。
高校2年生のときのことだ。
「かれ・・・し?」
俊三は凍り付いた。
”娘は渡さん!”
多恵を奪おうとするー
多恵を妊娠させて、多恵の身体を傷つけようとするやつは許さないー
俊三の頭の中で、おかしな考えが膨らんでいくー
即日、多恵に憑依して、
俊三は、多恵の身体で彼氏を振ったー。
多恵の記憶を無理やり捻じ曲げて
彼氏への好意を消すー
「--多恵のはじめては、俺が奪うべきか…?」
多恵はそう呟きながら、ニヤリと笑みを浮かべたー
しかしー
もう、限界だったー。
多恵は、気付くー。
父が、自分に何かをしていることに。
ちょうど思春期にもなっていた多恵は
父・俊三を避けるようになった。
「--うるさい!部屋に入ってこないで!」
多恵が声を荒げる。
「--…ご、、ごめん」
俊三は戸惑うー
娘のために、
何かしてあげられることはないだろうか。
俊三の思いは、今も変わっていないー。
しかし、その想いはエスカレートしていた。
”多恵は世界で最高の娘だ”
その娘のためにー
多恵のためにー
何をなすべきか。
俺は、多恵を守ってあげなくてはいけない。
「--多恵…!多恵…」
俊三は、部屋で多恵のことを想う気持ちを
溢れさせていたー
でもー
今の多恵は、自分を拒絶している。
父である自分をー。
多恵のことを見に行こうとすると
多恵は声を荒げて俊三を避けるのだ。
小さいころは、憑依をうまくごまかすことができた。
でも、多恵も、もう、女子高生だ。
誤魔化しきることができない。
ある日ー
多恵は、泣きながら帰宅した。
心配そうに「どうかしたのか…?」と聞いても
多恵は「うるさい!」と、相手にしてくれないー
どうすればいいんだー?
どうすれば…
多恵の泣いている顔なんて…
「----!」
俊三は、ついに
”たどり着いてはいけない境地”にたどり着いてしまったー
「そうか…
多恵…俺は今までなんて馬鹿なことをしてたんだー」
そう呟くと、俊三は、憑依薬を購入したときに
ついていた説明書を見つめるー
”規定量以上を飲むと、自分の身体が消滅する”
そう書かれていたー
俊三は、それを見て、笑みを浮かべるー
”娘のためならー
多恵のためならー
自分の身体すら、必要ない!”
そしてー
倒れる。
「---」
多恵は、部屋で涙をこぼしていたー。
俊三に”元彼氏への好意”を消された多恵ー
だが、その反動か、多恵は別の男子を好きになっていた。
その男子から振られたため、泣いていたのだー。
「---……はぁ」
多恵はため息をついて、勉強し始めようとするー
そのときー
多恵は内面からドクン、という不気味な感覚を感じてー
そのまま「ひぅっ!?!?」と声をあげたー
多恵の意識はそこで途切れるー
「---たえ…」
多恵は笑みを浮かべながら顔を上げるー
「ふふ…多恵…
やっと、、やっとひとつになれたね…
これからは…
これからは、お父さんがずっとずっとずっと
多恵のことを守ってあげるからな…」
多恵の身体を乗っ取った俊三は
そう呟いたー
多恵の身体にずっといれば、
多恵のことをいつでも守ってあげることができるー。
「多恵……」
俊三は、すっかり女らしくなった多恵の身体を見て
ドキドキしたー
けど、何もしなかった。
エッチなことをするために多恵に憑依しているのでは
ないのだからー。
「--わたしから出て行って!」
多恵は、毎日のようにそう言い続けた。
でもー
”これは、多恵のためなんだ”と、
俊三はだんだんと多恵の身体を乗っ取る時間を
増やしていったー
そして…ついにーーー
「多恵を守るためには、
俺が多恵になるのが一番なんだ…ごめんな」
多恵はそう呟いて、笑みを浮かべたー
俊三は、多恵を完全に乗っ取ってしまったー
多恵になった俊三は
”クラスで一番かわいいのは…”と男子たちが
別の女子の名前を挙げていたことを思い出す。
「--だめだ…多恵が一番じゃなきゃだめだ」
多恵はそう呟くと、
”身体を開発するか”と呟いて、
ひとり、エッチなことをし始めたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
2話構成より3話構成のほうが
良かったような…?と思いつつ
(ちょっと、私の中で駆け足になっちゃった感じがします)、
スケジュールを既に載せちゃってるので、
そのまま2話で完結させました~!
善意の憑依が暴走すると怖いですネ!
お読み下さりありがとうございました☆
コメント