<憑依>過保護なパパ②~娘のため~(完)

娘のためにー

娘の好き嫌いを克服させてあげるためにー
勉強嫌いの娘のためにー
いじめを受けた娘のためにー

娘への憑依を繰り返し、娘を助けてきた父。

しかし…

---------------—

崎野家では穏やかな時が流れていたー

娘・多恵のために、と
娘に憑依していた俊三は、
あれからも、多恵に何らかのトラブルが
起きるたびに、多恵に憑依して
その問題を解決してきたー。

”すべては、多恵のために”

好き嫌いが多かった多恵に憑依して
好き嫌いを克服させたー

勉強嫌いの多恵に憑依して、
勉強嫌いを克服させたー。

クラスメイトにいじめられた時には
それを解決させ、

それからも
友達と喧嘩して、素直になれない多恵の代わりに
多恵に憑依して謝りに行ったりー

色々なことをしたー。
やがて多恵は中学に入学して、
元気に成長を続けていたー

父・俊三は、今でも多恵に憑依を続けているー

もちろん、思いは最初と同じ。
”全ては、多恵のために”

多恵の身体で悪さをすることはしないし、
多恵の身体でエッチなこともしない。

多恵が本当に困っているとき、
多恵を助けるために、俊三は憑依するのだ。

娘を性的な目で見たりすることは、ない。

「---♪~~」
今日も、多恵の身体で、受験勉強をしていたー

中3になった多恵の身体は、
以前よりも女らしくなってきていたー。

「---」
俊三も、全く意識をしていなかったのが
流石に身体つきが女っぽくなってくると
つい意識をしてしまうこともある。

「--だめだだめだだめだ」
可愛い声で呟く多恵。

憑依している間は髪を束ねて
邪魔にならないようにしているー

自分の煩悩に負けるわけにはいかない。

今後、多恵はもっと女性らしい身体つきになるだろう。
それでも、エッチなことはしてはいけないし、
エッチな目つきで娘を見ることは許されないー

勉強を必死にする多恵。

「--ふ~~~」
少し一息ついた時に、
口から出た声が、とても可愛らしかったー
俊三も思わずドキッとしてしまうー

「--多恵、お疲れ様」
母の邑子が、多恵に飲み物の差し入れを持ってくるー

「--ありがとう」
多恵はそう言うと、勉強を再開するー

「------……」
邑子は、そんな多恵の方を見ながら
複雑な表情を浮かべたー

母・邑子は、”最初は”気づいていなかった。

だが、少し前に悟ったー。

多恵に何かトラブルが起きた時、
父・俊三は決まって部屋に閉じこもる。

そして、
多恵が別人のようにトラブルを解決するのだー

勉強中もそう。
あれだけ勉強嫌いだった多恵が
勉強するようになった。

それからも”大変な勉強”を多恵がするときは
俊三は決まって部屋に閉じこもるー

疑問に思った邑子は、多恵が勉強しているときに
俊三の部屋の鍵を無理やり開けて
覗いたことがあるー

すると、俊三が、抜け殻のように眠っていて
近くに”憑依薬”と書かれた謎の容器が
あったのだったー。

「----」
邑子は意を決する。

そして、娘の多恵に言う。

「--多恵。ちょっと来て」
邑子の言葉に、勉強していた多恵は「ん?あ、うん」と答えた。

多恵を父・俊三の部屋に連れていくー

俊三の部屋が近づくにつれて
多恵の表情が曇っていくー

”邑子、まさかー…”

多恵に憑依している俊三は焦っていたー

いやー
でも、大丈夫だ。
仮に憑依に気づかれたとしても
多恵のためだ。
妻の邑子もきっと理解してくれる、とー。

それに、部屋の鍵は閉めてあるー

「--多恵。わたしに何か言うことはない?」
邑子が言う。

「--え…、、ど、どういう、、ことかな~?」
多恵はとぼけるー。

”憑依に感づかれているー”

そう思ったー。

邑子はため息をつくとー
針金のようなもので、俊三の部屋の鍵を開けたー

「---!」
多恵が表情を歪めるー。

多恵の身体から出てー

そう、思った。
だがーー
多恵の身体から抜けると、
多恵は数秒、意識を失うー。

今はヤバいー。

「---これは、何?」
邑子が、抜け殻状態の俊三の身体と
憑依薬の容器を手にするー

「--え、、え??
 な、、なんだろ~~?
 わ、、わたし、わかんない~!」
多恵はとぼけながら黒髪をかきむしるー。

「ーーーお父さん見てどう思う?」
邑子が言う。

多恵は抜け殻状態の俊三を見て、
「あ、、う、、うん~寝てるんだね~」と呟いた。

”なんとか、誤魔化したいー”

でもー

「…ねぇ、どうして?」
邑子が言う。

「--いつから?
 いつから多恵に憑依してたの?」
邑子の言葉に、
多恵は「え、、、え、、、?わ、、わたしはわたしだよ~!」と
拳を開いたり握ったりしながら呟くー

「ほらー…
 もう、その癖ー」

邑子が言う。
拳を握ったり開いたりするのは、
俊三が言い訳をするときのクセだと。

髪を掻きむしるのは俊三が苦しい嘘をつくときのクセだと。

そしてー
抜け殻状態の父・俊三を見ても
あっさりした反応しかしないのはおかしい、とー。
普通だったら、もっと慌てるはずだー、とー

「----…すまん」
多恵は観念して、そのまま土下座をして頭を下げたー。

・・・・・・・・・・・

多恵に憑依した理由を全て説明する多恵…に憑依している俊三。

多恵は、椅子に座って
複雑な表情を浮かべるー

「……」
邑子は表情を曇らせているー。

全ては多恵のためー
エッチなことはしていないー
用が済んだらすぐに憑依から抜け出しているー

それを、邑子に伝える。

だがーー
邑子は理解してくれなかった。

多恵のためと言ってもー
”それは多恵のためじゃない”とバッサリ切り捨てられた。

挙句の果て、
離婚を切り出されてしまうー

「--む、、邑子!考え直してくれ!
 ぜんぶ、、ぜんぶ多恵のためなんだ!」
俊三が叫ぶ。

「--もう、決めたことよ」
邑子は離婚届けにサインを迫って来るー

”心底失望した”のだと言うー

夫婦仲はこれまで良好だったが
”娘に憑依していた父”という衝撃の事実を知って
一気に冷めたのだと言う。

「---多恵は、わたしが引き取ります。
 あなたはもう、二度と多恵には会わないで」
邑子が言う。

「--そんな…」
絶望する俊三ー。

多恵と、もう会えなくなるー

部屋に戻った俊三は
うなだれたー

ーーなぜー?
邑子に何ができる?
邑子に多恵が守れるのか?

俺は今までずっと、多恵のために頑張ってきた。
邑子は何をしていたー?

何も、多恵のためになること
してないじゃないかー。

俊三は、手を震わせるー

そして…

「-多恵…多恵を守らないと…!」

半分パニックになっていた俊三は、
多恵を守る方法ー
多恵を奪われない方法をフル回転で考える。

「--はぁはぁ…多恵…!」
俊三は憑依薬を飲むー。

すぐに幽体離脱した俊三はー
キッチンにいた妻・邑子に憑依したー。

「邑子…!多恵を守るためだ」
憑依された邑子はそう呟くと、
玄関から外に飛び出した。

交差点まで走っていくと
邑子は震えながら呟く。

「邑子…許してくれ…
 多恵を守るために…

 し、、、し、、、」

震える邑子。

「--死んでくれーーー!!!」
目を瞑りながら邑子の身体のまま、
交差点に走っていくー

邑子の身体は車に跳ね飛ばされてー
そのまま息を引き取ったー

「---……」
邑子の葬儀を終えるー。

多恵のためだ…
俊三は、それからも多恵に憑依を続けた。

多恵のために。
多恵のために。
多恵のために。

ある日ー
多恵が、彼氏ができたと報告してきたー。

高校2年生のときのことだ。

「かれ・・・し?」
俊三は凍り付いた。

”娘は渡さん!”

多恵を奪おうとするー
多恵を妊娠させて、多恵の身体を傷つけようとするやつは許さないー

俊三の頭の中で、おかしな考えが膨らんでいくー

即日、多恵に憑依して、
俊三は、多恵の身体で彼氏を振ったー。

多恵の記憶を無理やり捻じ曲げて
彼氏への好意を消すー

「--多恵のはじめては、俺が奪うべきか…?」
多恵はそう呟きながら、ニヤリと笑みを浮かべたー

しかしー

もう、限界だったー。

多恵は、気付くー。
父が、自分に何かをしていることに。

ちょうど思春期にもなっていた多恵は
父・俊三を避けるようになった。

「--うるさい!部屋に入ってこないで!」
多恵が声を荒げる。

「--…ご、、ごめん」
俊三は戸惑うー

娘のために、
何かしてあげられることはないだろうか。

俊三の思いは、今も変わっていないー。

しかし、その想いはエスカレートしていた。

”多恵は世界で最高の娘だ”
その娘のためにー
多恵のためにー
何をなすべきか。

俺は、多恵を守ってあげなくてはいけない。

「--多恵…!多恵…」
俊三は、部屋で多恵のことを想う気持ちを
溢れさせていたー

でもー
今の多恵は、自分を拒絶している。
父である自分をー。

多恵のことを見に行こうとすると
多恵は声を荒げて俊三を避けるのだ。

小さいころは、憑依をうまくごまかすことができた。
でも、多恵も、もう、女子高生だ。
誤魔化しきることができない。

ある日ー
多恵は、泣きながら帰宅した。

心配そうに「どうかしたのか…?」と聞いても
多恵は「うるさい!」と、相手にしてくれないー

どうすればいいんだー?
どうすれば…

多恵の泣いている顔なんて…

「----!」
俊三は、ついに
”たどり着いてはいけない境地”にたどり着いてしまったー

「そうか…
 多恵…俺は今までなんて馬鹿なことをしてたんだー」

そう呟くと、俊三は、憑依薬を購入したときに
ついていた説明書を見つめるー

”規定量以上を飲むと、自分の身体が消滅する”

そう書かれていたー

俊三は、それを見て、笑みを浮かべるー

”娘のためならー
 多恵のためならー
 自分の身体すら、必要ない!”

そしてー
倒れる。

「---」
多恵は、部屋で涙をこぼしていたー。

俊三に”元彼氏への好意”を消された多恵ー

だが、その反動か、多恵は別の男子を好きになっていた。
その男子から振られたため、泣いていたのだー。

「---……はぁ」
多恵はため息をついて、勉強し始めようとするー

そのときー

多恵は内面からドクン、という不気味な感覚を感じてー
そのまま「ひぅっ!?!?」と声をあげたー

多恵の意識はそこで途切れるー

「---たえ…」
多恵は笑みを浮かべながら顔を上げるー

「ふふ…多恵…
 やっと、、やっとひとつになれたね…
 これからは…
 これからは、お父さんがずっとずっとずっと
 多恵のことを守ってあげるからな…」

多恵の身体を乗っ取った俊三は
そう呟いたー

多恵の身体にずっといれば、
多恵のことをいつでも守ってあげることができるー。

「多恵……」
俊三は、すっかり女らしくなった多恵の身体を見て
ドキドキしたー

けど、何もしなかった。

エッチなことをするために多恵に憑依しているのでは
ないのだからー。

「--わたしから出て行って!」
多恵は、毎日のようにそう言い続けた。

でもー
”これは、多恵のためなんだ”と、
俊三はだんだんと多恵の身体を乗っ取る時間を
増やしていったー

そして…ついにーーー

「多恵を守るためには、
 俺が多恵になるのが一番なんだ…ごめんな」

多恵はそう呟いて、笑みを浮かべたー

俊三は、多恵を完全に乗っ取ってしまったー

多恵になった俊三は
”クラスで一番かわいいのは…”と男子たちが
別の女子の名前を挙げていたことを思い出す。

「--だめだ…多恵が一番じゃなきゃだめだ」

多恵はそう呟くと、
”身体を開発するか”と呟いて、
ひとり、エッチなことをし始めたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

2話構成より3話構成のほうが
良かったような…?と思いつつ
(ちょっと、私の中で駆け足になっちゃった感じがします)、
スケジュールを既に載せちゃってるので、
そのまま2話で完結させました~!

善意の憑依が暴走すると怖いですネ!
お読み下さりありがとうございました☆

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憑依<過保護なパパ>

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