魔法を覚えた童貞男の
初めての憑依ー。
けれど、運悪く
知り合いや妹に囲まれてしまって…?
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「--で、恭平はどこにいるんですか?」
親友の拓真が聞いてくる。
当然と言えば当然の疑問だ。
ここは恭平の家。
だからー恭平がいないとおかしいし、
そこに、見ず知らずの女がいるなんておかしい。
咄嗟に”彼女”という設定を作ってしまったが
優子は、彼女なんかじゃないし
そもそも恭平が憑依するまで、面識も
何もなかったー。
「--い、、いい質問だな」
優子は変な口調でそう答えると、
妹の鈴美が「ねぇ、この人なんかさっきから変じゃない?」と
拓真に聞いている。
「--確かに…」
拓真が優子の方を見た。
「--恭平は今、どこにいるんです?」
拓真の目には警戒心が浮かんでいる。
「--え、、え~っと、さっき薬貰いに病院に出かけて
わたしは留守番してるんです」
優子が言うと、
拓真は「な~んか、さっきから話が
コロコロ変わってる気がするんですケド」と呟いた。
「---あれ?これ何~?」
優子の友人が、部屋の中である写真を拾ったー
「--あ」
優子は青ざめたー
昨日の夜、優子の身体を乗っ取ったあと、
いくつか自撮りした写真の1枚を床に
置いたままにしていたー
優子が蛇を太ももにまきつけて、
ピースしている写真。
「--な、なにやってるのこれ?」
優子の友人が引いたような感じで言う。
「そ…それは、、蛇ちゃん、わたしの足が好きで」
優子が苦し紛れの言い訳をするー
拓真も、
妹の鈴美も、
優子の友人も、
優子の様子がおかしいと感じているのか、
優子の方を不審なものを見る目で見ていた。
「ちょ…ちょ、、み、みんなそんなに見ないでよ…
うふふふふふ」
優子は引きつった笑みを浮かべるー
くそっ、どうする…?
今、ここでこの女から抜ければ
”憑依してたこと”がばれるかもしれないし
最悪、正気を取り戻した優子に通報されるかもしれないー
だったら、やはりこの3人をどうにか追い払って
人目のつかないところに行って
この女の身体から抜け出したほうがいい。
「ってかさ、よくそんなに堂々と浮気できるよね~?」
優子の友人が呆れた様子で言う。
「--え…あ、、いや」
優子は目を逸らすー
この子には悪いことをした。
目が覚めたら、勝手に浮気扱い
されているなんて辛いだろうー
まぁ…それはいいとして…
早くこの状況をなんとかしたい
「--恥ずかしくないの?」
優子の友人が優子を睨む。
「--う、、うるさいなぁ…
放っておいてよ!」
だんだんイライラしてきた恭平は
優子の姿のまま声を荒げた。
「わ~!?逆ギレするの?最低!」
優子の友人は、そう言うと
「あんた、ホント見損なったわ」と言って
そのまま、怒り心頭で立ち去ってしまった。
「ふ~」
優子は溜息をつく。
とりあえず、これで一人追い払えた。
あとは拓真と鈴美をどうにか
しなくてはならない。
「---あ、、え、えっと、、
恭平に御用ですよね?」
優子が笑うと、
拓真と鈴美が頷く。
「--病院から帰ってきたら
連絡するように言っておきますので」
優子は早口でそう言うと、
拓真は、首をかしげて、少し考えたあとに
「あぁ、はい、わかりました」と呟いた。
そして、鈴美と共に立ち去って行くー
「ふ~…」
玄関の扉を閉めた優子は
ようやく一息をついた。
あとはこの女の身体から抜け出すだけだが
ここで抜け出すのはまずいー。
恭平の部屋で優子が意識を取り戻したら
パニックになるだろうし、
最悪の場合、独身男が女子大生を無理矢理
連れ込んだ扱いにされる可能性がある。
「くそっ…冤罪はごめんだぜ」
優子は呟くー。
実際、無理やり連れ込んだわけではないものの
憑依能力で本人の意思とは関係なく
部屋に連れ込んでいるのだから
同じようなものかもしれないー
だが、恭平は自分を正当化した。
「--あぁぁ…イライラするぜ」
優子は、そう言うと、自分の胸を
激しく揉み始めた。
「んふ…♡ んふふ♡ ふふふ♡ んふぅ♡」
優子が甘い声を出す。
「そうだ…俺を面倒な目に遭わせやがって」
優子ははぁはぁ言いながら
優子自身への憎しみの言葉を口にする。
「--ほら!もっと気持ちよくなれよ!
声を出せよ!罰ゲームだ♡」
恭平は、さっきまでの面倒ごとは
全部お前のせいだ!と叫びながら
優子の身体のあちらこちらを触っていき、
さらには角オナを始めてしまう。
童貞の恭平は、どんな風に角オナをすれば
良いのかも良く分かっていなかったから
適当にアソコらへんを机の角に押し付けて
適当に身体を動かしてみたが
なんとなくゾクゾクした。
「んへぇ…♡」
ショートパンツにやがてシミのようなものが
出来てくる。
「あぁ…興奮してるのかぁ…♡」
優子はうっとりしながら言う。
このまま服を脱いで
やりたい放題やってしまいたいところだったが
あまり面倒ごとになっても面倒だし、
今度は、自分の家に連れ込むなんてことは
やめよう、と恭平は決心するー
外で憑依すれば、少なくとも
自分との関わりは誰にも気づかれない。
だが、こうして乗っ取った身体を家に
連れ込んでしまうと
さっきまでのようなことになってしまう。
これは、今後、憑依の魔法を使う際の
教訓にしようー
「--俺は恭平…」
鏡の前で優子にそう呟かせてみた。
可愛らしい女が、自分のことを
恭平だと言っているー
いや、言わせている。
恭平は、そのことに興奮した。
「へへへっ、今の私は、恭平だぜ!
えっへへへへへ!」
そう言うと、優子は、近くにあったフィギュアを手に取り、
それにキスをした。
そして、自分が飼育している蛇の頭を優しく撫でると
そのまま玄関から外に出るー。
どこか、人目のつかないところに移動して
この女から抜け出そう。
憑依から抜け出すとき、
自分がどんな風に出てくるのか分からないが、
誰かに見られたらまずいー
優子の身体の中から男が出てくる、
なんて場面を見られかねないからだ。
優子として街中を歩きながら
人目のつかないところを見つけた
恭平は、そこに向かうー
そしてー
「満足にあそべなかったけど…
ま、楽しかったぞ」
そう呟くと、優子は笑みを浮かべたまま
その場に倒れたー…。
そしてー
恭平が優子の中から出てくる
「おっと…この場にいたら流石にヤバい絵になる!」
恭平はそう呟くと、
倒れたままの優子を放置して
そのまま立ち去ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
”お前、彼女さんが出来たなんてなぁ~”
”お兄ちゃんの彼女さん、すっごく綺麗だったね!”
妹や拓真がLINEで茶化してくる。
正直、こうなることは予想がついていたが
これからは対応が面倒になりそうだ。
「--…」
恭平は、どう返事をするか、と迷った挙句
”いやぁ、付き纏われていただけだよ”と返事をしたー
家の中に優子が入っていたのだから
無理がある言い訳だったが、
恭平はそれに気づかずに返信してしまった。
♪~
部屋のインターホンが鳴る。
「はい」
恭平はスマホを置いて、
玄関の扉を開けたー。
すると、そこにはー
警察官が立っていた。
「へ?」
恭平は”俺、何かしたか?”と
頭をフル回転させる。
いいや、何もしていない。
昨日の憑依に関しても
特に問題はなかったはずだ
誰にも…
「--ちょっと、お伺いしたいのですが」
警察官が言う。
「--え、あ、はい」
恭平は挙動不審になりながら答える。
落ち着け―
俺は何も悪いことはしていないー
落ち着くんだ、俺。
恭平は内心でそう叫びながら
警察官の話の続きを待つ。
「一昨日から昨日の午後ぐらいまで、
何をしていたか…お話できますか?」
警官が言う。
恭平は青ざめた。
”優子に憑依していた時間帯”だー。
「あ、え、えっと、家にいました」
恭平が言うと、
「それを証明できる相手は?」と聞いてきた。
「---え~、っと、家では一人なので、それは」
恭平の言葉に
警察官はニヤリと笑う。
「-おかしいですねぇ…あなたの友人と妹さんから
昨日の午前中はここに女性しかいなかったと
聞いていますが?」
警官の言葉に
恭平は「あ、、あぁ、、そうだったかもしれませんねぇ」と
目を逸らした。
どうするー?
どうすればいい?
恭平は口を開く。
「散歩してる時間帯でした」
とー。
「--そうですか。
では、その女性とはどういう関係で?」
警官が言うー
優子が昨日、この家にいたことを言っているのだろう。
「え?あ、、し、知りませんねぇ?
空き巣か何かじゃないですか?
ほら、俺、女とか興味ないですし」
恭平がすっとぼけた顔で言う。
優子に罪をなすりつけるしかないー
どうせ、憑依されていた間のことは
覚えていないだろうー
…いやーー
もしーー
もしも…
”憑依されている最中の記憶があったらー?”
「--そうですか」
警官が笑いながら頷く。
そしてー
「ではー
本人に直接聞きましょう」
警官がそう言うと、死角になっていて見えなかったところから、
優子が出てきた。
優子は目に涙を浮かべながら恭平を見ている。
「--わたし…この人に…
この人に…何かされて…
身体の自由が何も利かなくて…」
優子が泣きだしてしまうー
「そ、、、そ、、、そ、、そんなことあるわけないでしょう!」
恭平が叫ぶー
憑依されたなんて言葉を信じて
逮捕する方がおかしいー
そうだー
この優子という女を頭のおかしい女に
仕立て上げれば、逃げ切ることもできるはずだ。
「--そ、その人の妄想です!」
恭平は、優子を指さしながら叫んだ。
「--ち、違います!わ、、わたし、
あなたに憑依されました!」
優子が泣き叫ぶー
「へへへっ、今の私は、恭平だぜ!
えっへへへへへ!」
「--って、自分で名乗ってたじゃないですか!!」
優子が泣きながら言う。
「--ぐぐ」
恭平は青ざめる。
まずい。
このままでは本当に逮捕されてしまう。
「--童貞の魔法がどうこう言ってましたよね…?」
優子が悲しそうに呟く。
「---ば、ばかな話はやめてください!
童貞だからって魔法が使えるわけないでしょうが!」
恭平が叫ぶー。
そうだー。
しらばっくれればいい。
証拠なんて何もない。
拓真と鈴美もなんとか誤魔化せるはずだ。
「----いや」
警察官が言った。
「-え」
恭平が警察官の方を見ると
警察官は微笑んだ。
「本官も童貞だ。
去年、魔法が使えるようになった」
にっこりと笑う警察官。
「----な」
恭平は真っ青になった。
もう、言い逃れはできなかったー
「---…署までご同行願えるかな?」
警官の言葉に
恭平は「はい…」としょんぼりしながら
連行されたー。
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連行される最中―
恭平の目の前に突然英語が表示された。
”LV UP”
レベルアップと書かれていた。
「!?」
恭平が驚くー
さらに、ウインドウのようなものが
表示されるー
これは、憑依の魔法を覚えたときと同じ―。
そこにはー
”炎の魔法をおぼえた!”と
表示されていたー
おわり
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コメント
憑依の魔法を覚えても
使い方を間違えちゃうと、
大変ですネ~
ご利用は慎重に~?
お読み下さりありがとうございました!
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