<憑依>リストカット②~あなたの愛はわたしのガソリン~

憑依されてしまった彼女の冬香ー。

省吾を愛する冬香の
異常な束縛が始まった…。

省吾の運命は…!

-------------------------–

その日の夜ー。

省吾のLINEに何度も何度も
彼女の冬香から連絡が来たー

”ねぇ、これから会えない?”

”ねぇ、わたしの家に来てよ”

”ねぇ”

”ねぇ”

最初は微笑ましく返事をしていた省吾だったが、
次第に”どうしたんだ?”と心配になってきてしまった。

明らかに、いつもと様子が違う。

”どうかしたのか?”
省吾が、そう返事をすると、
冬香から、数秒もせずに返事が来た

”会いたいの”

とー。

”また、明日、大学で会えるじゃないか?”

省吾がそう返すと、
10秒もしないうちに返事が来た

”いま”

”明日じゃなくて、今”

そう、返事が返ってきた。

”でも、今日はもう遅いし”

省吾がそう返事をした。
もちろん、冬香のことは好きだ。
省吾も会いたい。

だが、タイミングというものがある。

夜食のレトルトカレーを口に運びながら
省吾は、スマホを見つめていた。

冬香からの返事が途切れる。

「---う~ん」
省吾はカレーを食べ終えると、
ため息をつきながら、
一人、部屋で考え事をしていた。

実家暮らしだから、あんまり夜に出かけてくる、
ということができるような雰囲気ではない。
冬香は一人暮らしだから寂しくなることもあるのかもしれない。

だが、しかしー

♪~

LINEの通知音が響き渡った。

「--ん」
省吾がスマホを見るとー

そこには、
”さみしい さみしい”と書かれていたー

そしてー
手首にカッターを押し付けて微笑む
冬香の写真も送られてきていたー

「--お、、おいっ!」
省吾は思わず叫んでしまう

「--ちょっと~どうしたの?」
部屋の外から声が聞こえる。

妹の佐奈枝(さなえ)だ。
現在高校3年生ー

省吾があまりにも大きな声を出したせいで、
驚いたのだろう。

「あ、いや、何でもない!」
省吾が叫ぶと

「驚かさないでよ~!
 こっちは勉強中なんだから~」という声が
部屋の外から聞こえた。

「わ、わりぃ!」
省吾が叫び返すと、
妹は満足したのか、そのまま自分の部屋へと
戻って行ったようだ。

”な、何してんだよ”

と、省吾が慌てて返事をすると、
冬香は
”わたしだけを見て”

”ねぇ”

”わたしをもっと見て”

と、続けてメッセージが送られてきた。

”会いたい”
”あいたいあいたいあいたいあいたい”

返事をする間もなく、
次々と送られてくるメッセージ。

ついには、イヤらしい下着の写真や、
胸を見せびらかす写真まで
送られてきた。

「あ~もう!どうしたんだよ!」
省吾はそう呟くと、慌てて家から
飛び出して、冬香の家へ向かった。

冬香の家に到着するとー
冬香は、一人、壁に頭を打ちつけていた。

ゴン、ゴンと不気味な音が
家の中に響き渡っているー

「---冬香!」
省吾が叫ぶと、
冬香は目に涙を溜めながら省吾の方を見た。

「……ねぇ、、わたしを抱いて…?」
冬香の言葉に、
省吾は「どうしたんだよ…?」と心配そうに尋ねる。

しかし、冬香は
「誤魔化さないで!」と叫んだ。

「わたし、省吾く、、、し、省吾のこと、、
 こんなに好きなのに、
 どうして?もっともっと、わたしを愛してよ!
 ねぇ、わたしを、わたしだけを見て!」

冬香が興奮した様子で泣き叫ぶ。

「--わ、、わかったよ」
省吾は冬香の方に近寄って行って、
冬香を抱きしめる。

「あぁ…しょうご…♡」
冬香は抱きしめられただけで興奮して、
その場で狂ってしまいそうなほどドキドキしたー

冬香を乗っ取った陽奈子は、
人生で一番の幸せを味わっていた。

「--これから、ずっと、わたしを見てー
 わたしだけを愛してー
 わたしだけのしょうごくんでいて…」

呪文のように呟く冬香ー。

「--わ、、わかった。わかったよ」
省吾は、冬香を安心させるためにやさしく呟いた。

少ししてー
冬香がようやく落ち着いたのを見計らって、
省吾は「じゃあ、また明日」と言って
帰ろうと、冬香から離れた。

するとー
冬香は、呟いた。

「もう、帰っちゃうの?」

とー

「--え。。」
省吾が振り返ると、冬香がカッターを手に持って
コツコツと音を立てながらテーブルをつついている。

「--いや、ほら、俺、実家暮らしだし、そろそろ…
 ごめんな冬香。 
 また、明日、ゆっくり話そう」

もう、時間も遅い。
省吾が足早に立ち去ろうとすると、
冬香は泣きだしたー

「---」
省吾は振り返って目を疑ったー

冬香が、カッターで自分の手首を切りつけていたー

リストカットー

「--ふ、冬香!何をしてるんだ!おい!」
冬香の手首から血が流れる。

「--おい!何バカなことしてんだよ!」
省吾が声を荒げながらも、持っていたハンカチで
冬香の手首を止血する。

するとー
冬香は突然、抱き着いてきた。

「いかないでー…
 いかないでー…」
泣きながらそう呟く冬香。

「--だいじょうぶ…。
 心配するなよ。

 でも、分かってくれ。
 俺は実家暮らしだから1回帰らないといけないんだよ」

省吾がそう言うと、
冬香は泣きじゃくりながら、やっとの思いで頷いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

1時間後ー
ようやく冬香を落ち着かせた省吾は
家へと帰宅した。

「--冬香」

付き合って1年。今までこんなことはなかった。
いったい、どうしてしまったのだろうか。

考えながら歩いていると、
妹の佐奈枝が「彼女さんの家にこんな時間に行って
何をしてたの~?」とニヤニヤしている。

「--う、、うるさいな!何でもいいだろ?」
省吾が言うと、
妹の佐奈枝は「ふ~ん」とニヤニヤしながら
自分の部屋へと入って行った。

絶対何か勘違いされている気がする…
省吾は、そう思いながら、自分の部屋へと入って行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あぁ…抱きしめられた…!」
心臓のドキドキが止まらない

「省吾…省吾…うへへ…省吾…♡」
冬香は、一人になったあとも、
ずっと顔を真っ赤にして
笑みを浮かべていたー

「はぁぁぁ~」
自分の手を舐める冬香。

「省吾くんの味がするよ~ふふ、あはは、ははは!」
冬香は大声で笑いながら、
嬉しそうに床を転がりまわったー

「省吾くんがいないと、わたし、死んじゃう~!
 省吾くん~省吾くん~♡」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「っかし、カレー好きだねぇ」

今日、一緒に昼食を食べているのは冬香ではない

冬香に連絡したが、冬香から応答が無かった。
講義か、何らかの用事か…。

忙しくてすぐに応答がないことはよくあることだから
省吾は、いつも通り、食堂に一人で来ていた。

が、偶然、友人の
高宗 勇夫(たかそう いさお)と鉢合わせになったため
一緒に昼食を食べていた。

「--カレーは、俺のガソリンだからな」
省吾が言うと、
勇夫は「に、してもラーメンとか、うどんとか、かつ丼とか、
色々あるのに毎日カレーは凄すぎだろ」
と、笑いながら言った。

「--そういえばさ」
省吾が口を開く。

「ん?」
ラーメンを食べていた勇夫が手を止める。

「--彼女の様子がおかしいときってさ、
 どうすりゃいいんだ?」

省吾と勇夫は、親友と言える間柄だー。
高校時代からの付き合いで、
恋愛経験があまりない省吾とは違い、
勇夫は、これまでに4人の彼女がいたー。

「--様子がおかしい?どんな風に?」
勇夫が箸を止めて真剣な表情で尋ねる。

省吾は昨日の出来事を話した。

「--そっかそっか~。
 色々な可能性があるな。

 ま、手っ取り早く本音を聞きだす方法があるぜ」

勇夫が笑いながら言う。

「そういうときはさ…」

♪~

LINEの通知音が鳴る。

”ねぇ、わたしを置いて昼食?”

冬香からだった。

「あ、ちょっとごめん」
勇夫の話を遮り、省吾がLINEに返信する

”忙しそうだったから、いつも通り…”

そう送ると、数秒で返事が来た。

”寂しくて死んじゃう”

「---…おいおい」
省吾がそう呟いて、
さらに返事を送る。

”なら食堂にいるから”

とー

しかしー

”わたしは省吾くんと2人きりがいいの!
 東棟の第2通路で待ってるから 早く来て!
 寂しくて死んじゃう!”

”い、今、カレー食べてるから ちょっと待ってくれ
 俺もガソリン補給しないと”

省吾がそう返事を返すと、
写真が送られてきたー。

カッターと腕の写真だったー

「おいおいマジかよ」

省吾が呟く。

”私のガソリンは省吾くんなの”

”ガソリンないと死んじゃう”

”死んじゃう”

”死んじゃう”

”死死”

「--ーーー」
省吾は唖然とした。

だが、昨日から様子のおかしい冬香なら
本当にやりかねないと考えて
立ち上がった。

「おい!どこへ?」
友人の勇夫が言う。

「き、急用ができた!」
まだ半分も食べてないカレーをそのままにして
省吾が走り出す。

「おぉい!カレーは!?お前のガソリンはどうする?」
勇夫が叫ぶと、
省吾は叫び返した

「お前にやるよ!
 俺からのプレゼントだ!」

冗談を言いながら走り去っていく省吾。

「おいおい!…」
一人残された勇夫は呟く。

「俺にラーメンとカレー、両方食えってか」

そして、カレーを見て呟いた。

「にんじんばっか、残してんじゃねーよ…!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---冬香!」
省吾が、冬香の要る場所に駆けつけると、
冬香は、カッターで壁を切りつけていたー

「あ!省吾~!」
冬香の目には涙が浮かんでいる。

「ど…どうしたんだよ!昨日から…!」

「--省吾くんがだいすきなの!
 わたしがどれだけ省吾のこと好きか、分かる?」

冬香が抱き着いてくる。

”省吾くん”という呼び方が混じっていることに
省吾は違和感を感じながらも呟いた。

「ーー俺だって好きだ。
 でも…こんなことされるとさ、俺も…」

♪~~

LINEの通知音がする。

勇夫か?
急に立ち去って悪い事をした、と思い、
すぐにLINEを確認する。

「--誰?」
冬香が言う。

「--え?あ、いや」
省吾は誤魔化した。

相手は妹の佐奈枝だった。

今の冬香に見せると何を言われるか…

「-----女?」

”佐奈枝”と書かれた画面を見て
冬香が低い声を出した。

「---え」
画面を覗かれた省吾が慌てて弁明しようとすると、
冬香が叫んだ。

「浮気してるの…?ねぇ…?嘘…」

「ち、違う!妹だよ!妹の佐奈枝…!」
省吾が慌てて叫ぶ

「--妹の佐奈枝ちゃんとエッチしてるの…?うそ…?
 どうして…わたしが居るのに?」
目から涙をこぼしながら後ずさって行く冬香。

「--し、、死んでやる!死んでやる!死んでやる死んでやる死んでやる!」

冬香はそう叫びながら
走り去ってしまった。

「--おい!待てよ!」

省吾はどうしてそうなるんだよ!と思いながら首を振った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

冬香に会った。

「---!!」

冬香に誤解をなんとか解いてもらって
話をしている最中、省吾は唖然とした。

冬香の手首に、痛々しい傷があったのだ

「---お前…」
省吾が言うと、
冬香は笑った。

「--省吾の愛がないと、わたし、死んじゃう!えへへ」
笑いながら言う冬香。

省吾は冬香の方を見て困り果てた表情を浮かべた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕方ー

冬香に”いっしょに帰ろう”と
言われて待ち合わせ場所に向かっている最中、
友人の勇夫から声をかけられた。

「昨日は、にんじんカレー、ありがとな」
勇夫が言う。

「--・・・あぁ」
省吾が元気なく返事をする。

そしてー
ふと、思い出した。

「そういや、彼女の異変を聞きだす方法があるって
 昨日言ってたよな?」

その言葉に、勇夫はうなずいた。

「あぁ。やるか?今からでもできるぜ」

省吾は、迷わず頷いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジュウウウウウ~

肉を焼く音が響き渡る。

焼肉中心の居酒屋に、
省吾と勇夫、そして冬香がいた。

「---ほ~ら!今日は俺の驕りだ~!」

勇夫が笑う。

勇夫の作戦とはー
”酔わせて本音を聞きだすこと”だった。

”女性を襲うやつの常とう手段だな”
と省吾が冗談で言うと、
”俺たちは理性を持つ肉食動物だぜ”
と、勇夫が冗談で返してきて、
その作戦を決行することになった。

冬香はあまり飲まないはずだったが、
今日はやけに良い飲みっぷりだった。

勇夫の狙い通り、
冬香はだいぶ酔っている。

「-ーーあはははは 省吾くん~省吾くん~!」
だいぶ眠そうな冬香。

それを見た勇夫が、省吾にサインを送った。

「--あのさ、冬香。
 最近、なんか変だけど、何かあったのか?」

省吾が聞くと、顔を赤らめた冬香が答えたー

「--ふゆか~?
 わたしは陽奈子よ~。
 あんな女と一緒にしないで~えへへ」

とー。

省吾も勇夫も、その言葉を聞いて
不思議そうな表情を浮かべたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

酔って本音を吐いてしまった冬香の中にいる陽奈子。
果たして2人はどうなるのでしょうか!

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憑依<リストカット>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    今までにないぐらい先の気になる展開デスね…
    次も楽しみにしてます‼

  2. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    憑依がバレたー!?
    果たしてハッピーエンドはあるのか……結末が楽しみですね

  3. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ありがとうございます~!
    最終回もぜひお楽しみください~☆

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 憑依がバレたー!?
    > 果たしてハッピーエンドはあるのか……結末が楽しみですね

    コメントありがとうございます~
    ハッピーエンドに…なるのでしょうか~?ふふふ