<憑依>リストカット①~こんなにあなたが好きなのに~

幸せな時間を過ごす大学生カップル。

しかし、
そんなカップルに”狂気”が迫りつつあったー

憑依された彼女はーー

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大学の食堂…。

近森 省吾(ちかもり しょうご)は、
大好きなカレーライスを食べながら
笑っていたー。

「---それにしても良く食べるよね~」

目の前に座っている彼女の
白井 冬香(しらい ふゆか)は、微笑んだ。

「カレーは俺のガソリンだからな!」

省吾と冬香は、大学の中でも
有数の仲良しカップルだった。

省吾は実家暮らしで、冬香は地方から
一人、上京してきた一人暮らし。
一人暮らしを始めたばかりで寂しい気持ちになっていた冬香を
励ましたのが省吾だった。

付き合い始めてから1年ー
2人は、順調な大学生活を送っていたー

しかしー

そんな二人の様子を遠くから
見つめる女子大生の姿があった。

食堂の隅っこでひとり、
サラダを食べる彼女ー
砂川 陽奈子(すながわ ひなこ)-

彼女は、二人の方を見つめながら呟いていたー

「---省吾くん…
 省吾くん…
 省吾くん…♡」

と。

そんな、陽奈子からの視線にー
省吾たちは気づいていなかったー

・・・・・・・・・・・・・・

陽奈子は帰宅したー

誰も居ない、一人暮らしの家。

でも、陽奈子は一緒だった。
省吾と一緒だったー。

省吾の写真が部屋中に貼られている。

「-省吾くん!ただいま!」
陽奈子が一人、微笑む。

「--ーーー」
笑顔だった陽奈子の表情が歪む。

陽奈子は、お世辞にも美人ではないー
むしろ、高校時代まではブスといじめを受けていたー。

そんな陽奈子は、自分は恋愛とは無縁だとずっと
思って生きてきた。

しかしー
恋をしてしまったー

2か月前ー

食堂で、カレーを食べようとしたときのことー

カラン…

スプーンを落としてしまった陽奈子。

そんな時にー
彼が、省吾がスプーンを拾ってくれた。

「落ちたよー」

と。

親からも弟からも、友人たちからも
悲惨な扱いを受けてきた陽奈子ー。

”はじめて優しくされた”
そんな風に思った。

省吾は、拾ったスプーンを手に持ちながら、
”あ、でも、これじゃ食べられないよな”と
微笑むと、自分のお盆の上にあるスプーンを
手に持って、それを陽奈子に差し出した。

「--ほら、このスプーン使っていいよ」
省吾が笑いながら、落ちたスプーンを
自分のスプーンと取り換えて、それを
陽奈子に手渡す。

「え…でも?」
陽奈子が言うと、
省吾は”大丈夫大丈夫、俺が取り換えにいけばいいだけだから”と
そのまま、陽奈子に綺麗なスプーンを渡し、
省吾はカウンターの方に戻っていき、新しいスプーンを
受け取りに行ったー

たったそれだけのことー

けれどー
陽奈子は恋をしてしまった。
省吾にー

「どうしてー」
陽奈子が目に涙を浮かべる。

「どうして、おかえりって言ってくれないの!」
陽奈子は、部屋中に貼られた省吾の写真に向かって叫ぶ。

「どうして…どうして…どうして…!」

陽奈子は泣きながら、
部屋の隅にある、くまのぬいぐるみに抱き着いた。

くまのぬいぐるみの顔の部分には、
印刷された省吾の写真が貼りつけられているー

「---省吾くん~…
 省吾くん~!」

熊のぬいぐるみを泣きながら抱きしめる陽奈子の
腕には、リストカットの痕が、刻まれていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

省吾は一人で学食に来ていた。
今日は、彼女の冬香は用事で
一緒に昼食を食べられないとのことだった。

省吾は今日も、大盛りのカレーライスを前に微笑んでいるー。

「いっただっきま~す!」
嬉しそうにカレーを食べ始める省吾。

「--?」
そんな省吾は、自分の座る机の前に、
女性が立っていることに気付く。

「--ん…?ど、どうかした?」
省吾が微笑みかけると、
その女性ー
陽奈子はやっとの思いで口を開いた

「あ…あの…あの、、、こ、、この前は
 ありがとうございました」

2か月前ー
スプーンを拾ってもらったお礼を
ようやく言う勇気が出たー

学部が違うし、食堂以外では
省吾と接点がまるでないー
しかも、いつも彼女の冬香と一緒だから
お礼を言うことがなかなかできずにいた。

しかしーー

「え…え~っと…」
省吾は困った表情をしているー

2か月前のちょっとした親切ー
それを覚えていなかったのだー。
省吾は、元々、男女問わず、細かな気配りをするタイプ。
1週間、2週間ぐらいなら覚えていたかもしれないー

しかしー
2か月も経った今、
省吾は陽奈子のことを覚えていなかった。

「ーーーーど、、、どういたしまして…」
省吾はそう返事をした。

しかし、陽奈子はそのまま、
立ち去ってしまうー

”覚えていない”

陽奈子は、そう感じたからだー。

「---う~ん」
陽奈子の後姿を見ながら省吾は考える。

「--悪い事したかなぁ…」
しかし、省吾が陽奈子のことを思い出すことはなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「--はぁ…はぁ、はぁ、はぁはぁはぁ♡」
省吾の姿を等身大で印刷して、
それを貼りつけた壁に向かって、
一人キスをしている陽奈子

「--どうして…どうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
陽奈子は泣きながらキスをして、
はぁはぁ息を荒げているー

「---省吾くん…
 省吾くん…!
 わたしのこと…おぼえてないの…?」

問いかける陽奈子。
もちろん、返事はないー

そしてー
陽奈子は、部屋の片隅の壁を見るー

そこにはー
省吾の彼女ー
冬香の写真が飾られていたー

その写真にはー
カッターで切り刻まれたような痕があるー

「--許せない」
陽奈子はそう呟くと、
机からあるものを取り出した。

”憑依薬”

「--はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」
憑依薬を見つめながら、陽奈子はあることを考えていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

食堂でいつものように仲良さそうに談笑している
省吾と冬香の様子を
陽奈子は遠くから見つめていた。

もちろん、二人は気づいていないー

「いっつもカレーだね~」
冬香が笑う

「--カレーは俺の命だからな」
省吾が笑うと、
冬香がにこにこしながら尋ねる

「カレーとわたし、どっちが大事?」

とー。

「-え」
省吾は、そう言われると、腕を組んで
真剣に考え始めてしまった

「う~~~~~~~ん…」

そんな省吾を見て、冬香は笑う

「ーーカレーと並べて嬉しいよ~」

と。

その言葉に、省吾は、
「冬香も好きだけど、カレーも好きだ!」と叫んだ。

その後も二人は仲良さそうに談笑を続け、
ひと段落つくと、二人は、別れてそれぞれの講義の場所へと
向かっていくー

「---!」
陽奈子は動いた。

省吾はわたしのものー
冬香のものでも、カレーのものでもないー

そう思いながら。

「あの…」

人気のない場所で、冬香に声をかけた陽奈子。

「はい…?」
見知らぬ人物に声をかけられたことで、冬香は
少し不思議そうに返事をした。

「---」

陽奈子は緊張しているのか、
顔を赤らめて目を逸らす。

同じ女の目から見ても、
冬香は優しそうで綺麗だったー。

大人しい性格の陽奈子は、
冬香を前にしただけで緊張してしまったのだった。

「あ、、、あの…」
不思議そうにしている冬香に対して、
陽奈子はようやく声を振り絞った。

「--省吾くんは、わたしの省吾くん…」

やっとの思いで出した言葉は
意味不明な言葉だった。

「---?え・・・?」
冬香が困惑した様子で返事をする。

「に、、二か月前に、省吾くん、
 わたしのスプーンを拾ってくれて…
 それから…その…

 あへぇ…♡」

省吾のことを思い出していたら興奮してしまった。
顔を真っ赤にして微笑む陽奈子。

「--ご、、ごめんなさい、
 これから用事があるので」
冬香は”危ないやつ”だと感じて、
早めにその場から立ち去ろうとした。

しかしー

「---ちょうだい!」
陽奈子が大声で叫んだ。

「--?」
冬香が振り返ると同時に、
陽奈子が冬香の方に近づいてきて、
キスをしたー

「--!?!?」
困惑する冬香。

そんな冬香を無理やり押さえつけて
陽奈子は言う。

「---か、、身体をちょうだい…!
 省吾くんは、、わたしのもの…!」

「む…むぐっ…や、、やめ…!」
冬香が陽奈子を引きはがそうとする。

しかし、陽奈子は冬香をさらに力強く
押さえつけた。

地面に倒れる2人。

運悪く、大学内のこの場所は四角になっており、
人が通ることはあまりない。

ぶちゅぶちゅとキスを続ける陽奈子。

陽奈子の唾液が、
冬香の顔を汚していく。

冬香は「やめて!」と叫びながら
足をじたばたとさせたー

だが、陽奈子は必死に冬香の唇に自分の
唇を押し付け、舌を絡めあわせた。

「---あ…あぁ…あ…!」
何かが入ってくるような気持ち悪い感触を味わいながら
冬香は”たすけて…省吾…”とそう思った。

が、
その願いが通じることはなかった。

ぞくっとする寒気を感じて、
冬香はそのまま動かなくなったー

沈黙。

そしてー
冬香が動いた。

「--じゃま」
冬香は、上に覆いかぶさっている陽奈子の身体を
どかすと微笑んだ。

窓に映る反射する自分を見るー

反射しているのは、冬香の姿ー

「--ふふふふ…
 やった…!
 わたしが省吾くんの彼女だ…!

 やった…!やった…!
 やったあああああああああああああ♡」

その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら
冬香は大声で悦びを露わにしたー

その夜ー。

冬香の住所を持ち物から割り出した陽奈子は、
冬香の家へと帰宅した。

いやー
今は自分が冬香だ。

「--んふふふふふふふっ」

机に飾ってあった省吾の写真を見つめて冬香は笑う。

その写真を手に取り、
省吾にキスをする冬香。

「んふふふふふふふふ♡
 ふふふふふ…
 省吾くん…
 愛してる…♡」

冬香は何度も何度も、省吾の写真にキスをしてー
そのまま一人でエッチなことを始めてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

食堂で、省吾と合流した冬香は
とてもご機嫌そうだった。

「--今日は、やけにご機嫌だな」
省吾はカレーライスを机に運びながら笑う。

「うん!今日はすっごく気分いいの!」

今日の冬香は、いつものおしとやかで大人っぽい感じではなく、
なんだか子供に戻ったような服装をしている。

ちょっとロリっぽいような、そんな雰囲気だ。

カレーを食べる省吾を見つめながら
冬香は微笑んだ。

「わたしとカレー、どっちが好き?」

とー。

省吾は
「またその質問か~!」
と言いながら昨日と同じように考えて、
こう答えた。

「決められないや!」

その言葉を聞いた冬香の表情から、笑みが消えたー

「--わたしって言って」
冷たい声だった。

「ーえ?」
省吾が、いつもと違う冬香の雰囲気に違和感を感じる。

「--わたしって言って」
同じ言葉を繰り返す冬香。

「あ、、、え、、う、、、あぁ…じゃ、じゃあ、冬香…」

省吾がそう言うと、
冬香は不機嫌そうに、突然カレーの置かれたおぼんを
掴んで、そのまま返却口に持って行ってしまった。

「あ、、おい!」
省吾が慌てて止めようとすると、
冬香は省吾をにらんだ。

「カレーよりわたしを見て。
 でないと、わたし、寂しくて死んじゃう!」

それだけ言うと、冬香はカレーをそのまま返却して
省吾の手を無理やり掴んで歩き出した…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依されてしまった彼女…
続きは明日デス~

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憑依<リストカット>

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ヤンデレに彼女が乗っ取られてしまった~!?
    こういう話好きですから続きが楽しみです
    しかし、彼氏君、カレー好きすぎじゃないですかね…w

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > ヤンデレに彼女が乗っ取られてしまった~!?
    > こういう話好きですから続きが楽しみです
    > しかし、彼氏君、カレー好きすぎじゃないですかね…w

    ありがとうございます~!
    彼はカレーに命をかけています!笑