好き好き好き好き好き好き好き好き…
陽奈子に憑依された冬香の運命は…
豹変した彼女の真相を知った、省吾の行動は…?
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「陽奈子…?」
省吾が勇夫の方を見る。
勇夫は”もっと聞け”と、省吾に合図を送る。
「ど、どういうことだよ?
陽奈子って?」
省吾が聞くと、
冬香は、酔っ払い特有の反応で叫んだ。
「だ~か~ら、わたしは陽奈子だって
言ってるでしょ~!
えへへ、省吾くんだいすきー!」
まるで子供のようにはしゃぐ冬香。
「---お、お前、冬香だよな?
陽奈子って?」
省吾がなおも聞くと、
冬香が笑いだした
「あははははは!
この女の身体、奪ったの~!
えへへ~
省吾くんに振り向いてほしくて、
ひょういやくって薬使って
うばっちゃったの~!
えへ~!」
半分寝そうになりながら冬香が言う。
酔いつぶれた冬香が、省吾の膝に頭を
乗せて、ウトウトし始める。
省吾は困惑して勇夫の方を見る。
勇夫は肉を食べながら呟いた。
「--人格が分裂するとか、って、
アレじゃね?」
とー。
「--」
省吾は「なんか違う気がするなぁ」と思い、
冬香にさらに質問をする。
「体奪ったって、どういうことだよ?」
省吾が言うと
「え~~わたしの鞄の中見てみてよぉ~!」
と冬香が笑う。
膝枕されてて動けない省吾に代わり、
勇夫が、冬香のバッグを確認するとー
中から”憑依薬”と呼ばれる薬が出てきたー。
「--な、なんだこれ!?」
勇夫が声をあげる。
「--ひ、人に憑依する薬?」
怪しい日本語で書かれた説明書も一緒に出てきた。
輸入品か何かだろうか。
「--ま、、まじで…?」
省吾は、目の前にあるカレーライスを見つめながら
そう呟いた。
「…っか、お前、ここでもカレーかよ」
勇夫が、遅すぎるツッコミを入れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜ー
冬香を家まで送った省吾は、
自宅に帰宅した。
一人にすると、何をするか分からなかったから
本当は一人にしたくなかったが、
実家暮らしなので、帰らないわけにはいかないー
帰宅した省吾に、
勇夫から連絡が来た。
”ひなこ”
”わかったぜ!”
とー。
冬香が「私は陽奈子」と言っていたのを聞いて、
勇夫が調べてくれた。
”砂川 陽奈子”
省吾は、顔写真を見て、思い出したー
「あーーー」
数日前”ありがとうございました”と突然
お礼を言ってきた女性ー。
「--この子が、どうして冬香にー?」
きっかけは、省吾が2か月前に、陽奈子が落とした
スプーンを拾ったことなのだが、
省吾はそこまで思いだせなかった。
”とにかく、明日、話をしてみるといいぜ”
勇夫のLINEに、
”あぁ、助かったよ”と省吾は返事を送った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
朝から”寂しい”
”死んじゃう”みたいなLINEがたくさん届いた。
そんな冬香を、省吾が呼び出した。
大学の人気のない建物の裏側に
やってきた冬香は微笑む。
「しょうごく~ん♡」
物凄く嬉しそうだ。
「---」
そこに、待ち伏せしていた勇夫が姿を現す。
「昨日は、ご機嫌だったな」
省吾が言う。
「--え…な、、何…?」
冬香が戸惑った表情で省吾たちを見るー。
今日も、まるで子供かのような
格好の冬香ー。
ツインテールで、ロリコンが悦びそうな格好をしているー。
省吾は
”ボイスレコーダー”を取り出して再生した。
「あははははは!
この女の身体、奪ったの~!
えへへ~
省吾くんに振り向いてほしくて、
ひょういやくって薬使って
うばっちゃったの~!
えへ~!」
「---!!」
冬香が顔色を変える。
「---これは、どういうことだ?」
省吾と勇夫は、今日、大学にやってきて確認したー。
ちょうど、数日前から
砂川 陽奈子が大学に来ておらず、連絡も取れていないことをー。
「--え、、え~と…よく覚えてないや!」
冬香がちょっとイライラした様子で吐き捨てる。
「--覚えてないじゃ、済まされないぜ。砂川さん」
勇夫が、”憑依薬”の殻容器と説明書を取り出して
冬香に見せた。
「---あ・・・」
冬香が唖然としている。
「--俺の冬香を返せ!」
反応から、憑依が本当だと確信した省吾は叫んだ。
するとー
冬香は笑い出した。
「---だったらどうだっていうのよ!?
わたしはあなたが大好き!
あなたはわたしが大好き!
別にそんなことどうだっていいじゃない!」
冬香が笑いながら叫ぶ。
「ふ、ふざけるな!」
省吾が言うと、
冬香は叫んだ。
「見た目はおんなじなんだからいいじゃない?
あ、何ならこの女と同じように振る舞ってもいいし、
いくらでもエッチだってしてあげる!」
冬香の中にいる陽奈子は
”人に憑依できた”という事実から
気が大きくなっていた。
「---俺が好きなのは冬香だ!
きみじゃない!」
省吾が叫ぶ。
「---…は~?
わたし、こんなに省吾くんのこと大好きなのに!」
冬香がヒステリックに喚き始めた。
「--こんな女が好きなんて…!
許せない…許せない…!死んでやる!」
冬香がカッターを取り出して、
躊躇なく、腕を切りつけた。
血が噴き出す。
「--死んでやる!死んでやる!」
「やめろぉ!」
省吾は冬香に突進した。
カッターが宙を舞う。
「勇夫!」
省吾が叫んだ。
勇夫が、昨日、冬香の鞄から
取り出した”もう一つのもの”を使うー
”憑依状態から抜け出すための薬品”
それが、冬香の鞄の中に入っていた。
陽奈子自身も、自分の身体に
少しは未練があったのかもしれない。
陽奈子が手に入れた憑依薬は、
自分が飽きた時の為に憑依から抜け出すための薬も
セットになっている商品だったー
「---冬香から、出ていきやがれ!」
省吾が、勇夫から受け取ったそれを注射すると、
冬香は「あああああああ!」と悲鳴を上げて、
口から霊体のようなものを吐きだした。
「----はっ!?」
吐きだされた陽奈子は、
慌てた様子で逃げ出した。
冬香はピクピクと痙攣している。
「ふ…冬香!」
省吾が冬香に駆け寄ろうとしたが、
その直後、少しだけ考えて叫んだ。
「--勇夫!冬香を頼んだ!」
「え?お、おいっ!」
省吾は逃げた陽奈子の方を追うー
彼女と話をしなければ、また冬香が
憑依される可能性があるー。
省吾は必死に追いかけたー
そして、陽奈子はボロいアパートの一室ー
自分の部屋に駆け込んだ。
省吾は一瞬ためらいながらも中へと入ったー
すると、そこにはー
部屋中に貼られた省吾の写真。
省吾の写真が貼られたくまのぬいぐるみー
植木鉢に突き立てられた省吾の写真ー
色々なものがあった。
「こ…これは…」
省吾は驚く。
「---ごめんなさい…ごめんなさい…」
元々気弱な陽奈子は、冬香の身体から
追い出されて、すっかり弱気になっていた。
「--……」
省吾は陽奈子に近づいていって口を開いた。
陽奈子の腕には、リストカットの痕があるー
「--ごめんな…」
省吾は呟く。
「でも、俺はさ…
冬香が大好きなんだ」
省吾は、どう言葉をかけるか迷ったが
本当のことを言うのが一番だと感じて、
小細工はやめて、本当のことを告げた。
「俺が冬香のこと大好きなように、
君が俺のこと好きだって気持ちもわかる…」
省吾は座り込んで泣きじゃくる陽奈子に語りつづける。
「けど…もしも、冬香に好きな人が他にいたら、
俺だったら諦める…
悔しいし、悲しいけど、諦める。
だってさ…
自分の好きな人が、悲しむのなんて
見たくないだろ?
俺が冬香に付き纏えば、
冬香が悲しむー
だから、もし、冬香に他の人がいたなら、
俺だったら諦める」
その言葉に、陽奈子は無言でうなずいた。
「---俺、単純だからさ、
浮気とかできないし、
そもそも、浮気なんかする俺、みたくないだろ?」
省吾が笑いながら言うと、
陽奈子が頷いた。
「---友達として…」
陽奈子が呟いた。
彼女がダメなら、友達としてー
「--…」
省吾は少しだけ迷って振り返った。
「--俺とも、冬香とも、仲良くしてくれるなら」
それだけ言うと、
省吾は、陽奈子の部屋から
立ち去ろうとしたー
もう、これ以上、言うことはないー
下手に怒っても、逆上させるだけー
なら、シンプルに伝えるべきことだけ伝えて
もしもまた何かしてくるのであればー
その時はー
「あ!」
省吾は玄関先で立ち止まった。
「?」
陽奈子が不思議そうな顔をする
「好きなものもう一つあった!」
「え?」
省吾は振り返って笑った。
「--カレー」
と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日。
勇夫が冬香に事情を説明してくれており、
冬香も取り乱すことなく、落ち着いて話を
聞いてくれた。
健康的にも問題なく、
憑依されていた間のことを省吾に謝ってきた。
「--いいよ、見た目は冬香でも
中身は違ったんだから」
省吾がカレーを食べながら笑う
「--ふふふ、ありがと!」
冬香が、カレーを食べる省吾を見つめながら言う。
「--」
省吾はふと、陽奈子のことが気になった。
だが、あれから陽奈子は特に何もしてきていない。
翌日に自分と冬香に謝りに来て、
それっきりだった。
「ーーそれにしても、やっぱ、カレー大好きだよね?」
冬香が笑うと、
省吾は「カレーは俺のガソリンだからな」と微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
省吾の友人・勇夫が、
人気のない場所を歩いていた。
「----…」
”憑依薬”と書かれた容器を手に持っている。
あの日ー居酒屋で、
憑依されている冬香の鞄から
”憑依薬”の容器を2つ発見していた勇夫―
1つは使用済みー
もう一つはー中身が入ったままー
「----」
勇夫はそれを見つめて少しだけ微笑んだ。
「こんなあぶねぇもの、あっちゃいけないよな!」
勇夫は容器を地面に置いて、それを踏みつぶした。
「--俺は、良識のある肉食動物だからな」
そう呟くと、持ち出した憑依薬を処分して、
勇夫はいつものように大学に向かうのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガチャ。
帰宅した冬香は、
ほっと一息をつく。
一人暮らしー
それにもだいぶ慣れた。
こうやって家に帰ってきた瞬間は、
なんだかんだでほっとするー
冬香は手を洗ってうがいを済ませると、
居間の方に向かったー
そして、自分の机の引き出しを開くー
そこには1冊のノート。
冬香はそれを開いて、微笑んだ。
ノートの中にはー
大量のハートマークと”省吾だいすき”の文字ー
そして好き好き好き好き好き好き好き好きと刻まれていたー
さらにー
引き出しの底にはー
釘だらけになったカレーの空箱と、
赤いマジックで”死”と塗りつぶされた陽奈子の写真ー
綺麗に保存された、省吾の写真がしまわれていたー
「--省吾…ふふふふふふふふふ…
大好きな省吾…大好きな省吾…ふふふふふふふふふふふふ♡」
冬香は、狂った目つきで、それを見つめたー
彼女は”良識のある女性”だー。
だからー
表だっておかしな行動はしないー
だがー
ペロリー
省吾の写真を舐める冬香ー
「あなたという存在すべての味を知りたい…
ふふふ、ふふふふふふふふ♡」
省吾はまだ、気づいていなかったー。
冬香の本当の姿にー
陽奈子以上に歪んだ、
本当の狂気にー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
表に出さないなら別にそれはそれで…?
いつの日か、冬香ちゃんが暴走しないことを
祈るばかりですネ!
お読み下さりありがとうございました☆
コメント
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ハッピーエンドかと思いきや……ガクガクブルブル
陽奈子はどうなっちゃったんでしょうか、怖っ
表面上は取り繕えるだけある意味性質の悪いですね
驚愕のエンドで面白かったです!
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> ハッピーエンドかと思いきや……ガクガクブルブル
> 陽奈子はどうなっちゃったんでしょうか、怖っ
> 表面上は取り繕えるだけある意味性質の悪いですね
> 驚愕のエンドで面白かったです!
コメントありがとうございます~
陽奈子ちゃん??
”陽奈子は一度謝ってきて、それきりだった”
”陽奈子の写真に赤い文字で死”
”冬香は理性を持つ女性”
あとはご想像にお任せします~☆
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みたらわかる、冬香、ヤバイやつやん‼
続編で、冬香の狂気がどんな方向に行くのか、見てみたいですね…
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コメントありがとうございます~
冬香の狂気…!
続編も…いつか書くかもしれません!