もしも大切な彼女と、自分、
どちらか一人しか生き残ることができないとしたら?
これは、そんな悪夢を描いた憑依物語。
憑依されて変えられてしまった彼女と、
その彼氏のデスマッチ…!
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「文化祭なんて、どうでもいいぜ~!」
素行不良の生徒、昭也(あきや)が笑いながら言う。
「--だよな~何が焼きそばだ!」
同じく素行不良で、昭雄の友人である、竜馬(りょうま)が笑う。
もうすぐ文化祭。
クラスが、文化祭の準備をするなか、
昭也と竜馬は、その準備をさぼっていた。
「ねぇ、二人とも!少しは協力してよ~!」
ロングヘアーの綺麗な黒髪が特徴的で、
クラス一番の美少女とも言われる生徒、
夏川 亜津美(なつかわ あつみ)が言う。
「へいへい」
昭也がふてくされたような態度をとっていると、
「おいお前ら、亜津美の言うとおりだぞ?」
と、亜津美の彼氏、保崎 松雄(ほさき まつお)が言った。
「ケッ…」
昭也も竜馬も不満そうにしながらも、
文化祭の準備を手伝い始めた。
しかし、文化祭の準備をしながらも、
昭也も竜馬も、ものすごく不満そうな表情で、
亜津美と、その彼氏である松雄のことを
睨んでいた。
「--いつもいつも、良い子ぶりやがってよ」
昭也がつぶやく。
その目は、憎しみに満ちていた。
「---なぁ、昭也」
竜馬がイヤらしい笑みを浮かべて、
昭也に耳打ちをした。
「--それはおもしれぇ」
昭也は、邪悪な笑みを浮かべて、
亜津美の方を見つめるのだった。
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放課後
「松雄くん!」
亜津美が、廊下で彼氏の松雄に声をかけた。
「--ごめん!今日、一緒に帰れなくなっちゃった!」
亜津美が申し訳なさそうに
両手を合わせて、ごめんなさいをする。
松雄が残念そうな表情を浮かべながら
「生徒会活動?」と尋ねる。
「うん…文化祭直前だから
色々話し合いが多くって」
亜津美が言うと、
松雄は「そっか、じゃあ仕方ないよ」と、
そう言いながら微笑んだ。
「---あ、そうだ、明日だけど…」
亜津美が言うと、
「あぁ、朝の10時待ち合わせで」
と、松雄が答えた。
明日は土曜日。
二人はデートする約束をしていた。
今一度、デートの約束の確認をして
可愛らしく微笑む亜津美。
二人は手を振って、
別れるのだった。
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「はぁ~遅くなっちゃったな!」
亜津美がそう呟きながら、
校舎から出ようとしたその時だった。
「--よぉ」
校舎脇から、クラスメイトの昭也と竜馬が
姿を現した。
「…あ、あれ…二人とも、こんな遅くまで何してるの?」
亜津美は純粋な疑問を二人にぶつけた。
生徒会活動で、既に時刻は18時を過ぎている。
この二人が、こんな時間まで学校に残っているのは
珍しい。
何をしているのだろうか。
「--ふふ、お前を待っていたんだよ」
昭也が言う。
「私を?」
亜津美が吹不思議そうに言うと、
竜馬がほほ笑んだ。
「--はっきり言うとよ、お前と松雄の
ラブラブっぷり、むかつくんだよね」
竜馬が言うと、
昭也も頷いた。
亜津美は戸惑いながら
「-そ、そんなこと言われても…」と
言葉を口にする。
確かに、二人はカップルで、
クラスメイトのほとんどがそのことを
知っているが、露骨にクラスメイトの前で
イチャイチャしたりだとか、
そういうことはしていない。
あくまでも”普通”の範囲内であり、
とがめられるほどのものではないのだ。
「---特に、保崎の野郎はむかつくぜ!」
昭也が言う。
「あぁ、ボコボコにしてやりたいよな!」
竜馬が笑う。
そんな二人の言葉に、亜津美は反論した
「--二人が、いつも不真面目な態度とってるからでしょ?
松雄くんを逆恨みしないでよ!」
亜津美が怒った様子で言うと、
昭也は微笑んだ。
「---おうおう、彼氏のためにムキになっちゃって。
可愛いねぇ」
昭也の言葉に、亜津美はカチンとなって、
叫んだ。
「--松雄くんに手を出したら、わたし、許さないから!」
亜津美がそう言うと、
昭也と竜馬は目を見合わせて笑った。
「--ボコボコにするのはオレたちじゃねぇよ。
夏川さん、お前だ!」
昭也の言葉に亜津美が、わけがわからないと
言った表情を浮かべて言う。
「--わ、私が松雄くんをボコボコに?
そんなことするわけないじゃない!」
亜津美が叫ぶ。
すると、竜馬がポケットから何かを取り出した。
「---憑依薬。
今からこれで夏川さんを作り替えちゃうんだよ!
くくくくく!」
竜馬がイヤらしい笑みを浮かべる。
「--ひ、憑依・・・薬?」
唖然とした様子の亜津美。
「これで、お前の身体を乗っ取って、
お前の思考を作り替えるんだよ!
俺たちの思い通りにな!」
昭也の言葉に、
亜津美は、青ざめた表情を浮かべる
「そ…そんなこと…
や…やめて…!」
逃げようとする亜津美。
しかし、竜馬は憑依薬を既に飲み干しており、
霊体となって、亜津美に襲い掛かった。
「あ・・・!」
亜津美が手を震わせて、
目に涙を浮かべる。
そしてー
亜津美は、竜馬に憑依されてしまった。
「ふふ、憑依だいせいこ~う!」
嬉しそうに飛び跳ねる亜津美。
「--すげぇな、マジかよ」
昭也がそう言うと、
亜津美は笑いながら、昭也に近づいていく。
「--さ、今から”わたし”を作り替えましょ!」
可愛らしくウインクする亜津美。
昭也は思わず、顔を赤らめたー。
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翌日。
松雄のもとに、LINEが届いた。
今日は、亜津美とデートをする約束をしている。
”ごめん 待ち合わせの場所なんだけど、
ちょっと変えてもらってもいいかな”
亜津美からのLINEにはそう、書かれていた。
”いいよ”と松雄が返事をすると、
すぐに亜津美からも返事が来た。
”じゃあ、北地区にある今は使われていない
工場で待ち合わせね!
松雄くんに見せたいものがあるの”
亜津美からのLINEにはそう書かれていた。
松雄は廃工場??と疑問に想い、
亜津美に聞いてみたが
”だ~め!到着してからのお楽しみ”と
LINEには書かれていた。
「--亜津美もイタズラ好きだからな~」
松雄は苦笑いしながら、
指定された場所に向かうのだった。
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北地区の廃工場に到着した松雄。
しかし、亜津美の姿は見当たらない。
「--ありゃりゃ、先についちゃったかな」
松雄が一人呟くと、
物陰から人が姿を現した。
赤いミニスカート姿の
亜津美だった。
「--松雄くん、待ってたよ!」
亜津美がいつものように嬉しそうに微笑む。
10年前ぐらいだろうか。
この工場は廃棄された。
立地条件が悪いこともあり、
その後は、ずっと廃墟のままだ
「--こんなところで、何を見せてくれるんだ?」
松雄が言うと、
亜津美が「ついてきて!」と、松雄を
案内し始めた。
廃工場の中の広い部分にやってきた二人。
「--もしかして、亜津美、こういうところ好きだったりする?」
松雄が尋ねる。
世の中には、廃墟だとか、そういうところに、
ロマンを感じる人も居る。
亜津美もそうなのかもしれない。
もしそうなら、これからのデート場所を
決める際の参考にしたい。
「---ほら、これ見て!」
亜津美が嬉しそうに指をさすと、
そこには、大きな金網のようなものがあった。
「--なんだこれ?」
まるで金網デスマッチでも行われそうなぐらいの
広さの金網が、
廃工場の広間に、不気味にたたずんでいた。
「--ねぇねぇ、入ってみようよ!」
その金網には、扉の大きさぐらいの穴が開いていた。
入口だろうか。
「ーーーなんか不気味じゃね?」
松雄が言うと、
亜津美は「いいから早く~」と松雄をせかす。
「--こういうの、ゾクゾクしちゃうよね!」
亜津美が笑いながら言う。
「--仕方ないなぁ」
松雄は、ちょっとだけ、閉所恐怖所だ。
この金網のように、入口が一か所しかないような
空間も、ちょっと怖かったりするのは事実だ。
「---」
松雄は、金網の中に入ると、
周囲をキョロキョロ見渡した。
亜津美も後から金網の中に入ってくる。
「---なぁ、もうそろそろ出ようぜ」
松雄が言うと、
亜津美がニヤッと笑った。
「-そうね。そろそろ始めましょ?」
「--!?」
突然、廃工場に、色とりどりの
スポットライトが照らされた。
「--レディースアンドジェントルマン~!」
男の声が響き渡る
「---!?」
松雄が、驚いて周囲を見渡す。
「--今日は特別なビッグイベント!
ラブラブな彼氏と彼女の
金網デスマッチの開幕だ~!」
マイクを持ちながらやってきた男は、
クラスメイトの素行不良生徒・竜馬だった。
「---お前!竜馬!」
松雄が叫ぶ。
すると、金網の入り口が、別の男によって閉じられた。
「---くくく!保崎~!
お前は今から亜津美ちゃんとデスマッチを
するんだぜ!」
竜馬の友人の不良生徒・昭也が言う。
「---な、なんだって!」
松雄が叫ぶ。
「--今日こその日のために俺たちが用意した
スペシャルステージ!存分に楽しんでくれよ~!」
昭也が笑う。
竜馬は、
3週間かけて、この誰も来ない廃工場に、
金網とスポットライトを設置して、
スペシャルステージを作り上げていた。
全ては、この日のためにー
「--ふざけるな!デスマッチなんて俺たちはしない!」
松雄が叫ぶ。
「--ーーうふふ・・・♡」
目の前にいる亜津美が笑った。
「--亜津美?」
松雄が唖然として亜津美に声をかける。
「--ゾクゾクする…
これからわたしと松雄くんは、
殺しあいをするの…♡
うふふ…あぁ、興奮する…ゾクゾクする…!」
亜津美が、スカートをめくって、その下に
巻きつけていたポーチから、ナイフを取り出した。
「--あ、亜津美!?」
松雄が驚く。
「--殺したい…殺したい…殺したい…!」
亜津美がナイフを舐めながら、松雄の方に迫ってきた。
「--ーー真面目でイケメン!けどちょっぴりウザい
今をときめく男子生徒、保崎松雄くん
VS-
生徒会書記で真面目で可愛い女子高生ー
でも、今は、スペシャルカスタマイズで、彼氏を
殺してしまいたいほどゾクゾクしている
夏川 亜津美ちゃん~
この二人の世紀の対決~
今、いよいよスタート~!」
竜馬がマイクを持ちながらふざけた様子で言う。
「-ースペシャルカスタマイズだと!?」
松雄が叫ぶ。
「-ーーうふふふ…さぁ、た~っぷり楽しみましょ?
わたしか、松雄くんが、死ぬまで…うふふふふ♡」
亜津美は、顔を赤らめながら、ほほ笑んだ。
②へ続く
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コメント
彼氏と彼女のデスマッチ。
果たしてどうなってしまうのでしょうか?
次回は、デスマッチの模様と、
前日に亜津美の身に何があったのかを
描きます~
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