<憑依>デスマッチ①~金網~

もしも大切な彼女と、自分、
どちらか一人しか生き残ることができないとしたら?

これは、そんな悪夢を描いた憑依物語。

憑依されて変えられてしまった彼女と、
その彼氏のデスマッチ…!

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「文化祭なんて、どうでもいいぜ~!」
素行不良の生徒、昭也(あきや)が笑いながら言う。

「--だよな~何が焼きそばだ!」
同じく素行不良で、昭雄の友人である、竜馬(りょうま)が笑う。

もうすぐ文化祭。
クラスが、文化祭の準備をするなか、
昭也と竜馬は、その準備をさぼっていた。

「ねぇ、二人とも!少しは協力してよ~!」
ロングヘアーの綺麗な黒髪が特徴的で、
クラス一番の美少女とも言われる生徒、
夏川 亜津美(なつかわ あつみ)が言う。

「へいへい」
昭也がふてくされたような態度をとっていると、

「おいお前ら、亜津美の言うとおりだぞ?」
と、亜津美の彼氏、保崎 松雄(ほさき まつお)が言った。

「ケッ…」
昭也も竜馬も不満そうにしながらも、
文化祭の準備を手伝い始めた。

しかし、文化祭の準備をしながらも、
昭也も竜馬も、ものすごく不満そうな表情で、
亜津美と、その彼氏である松雄のことを
睨んでいた。

「--いつもいつも、良い子ぶりやがってよ」
昭也がつぶやく。

その目は、憎しみに満ちていた。

「---なぁ、昭也」
竜馬がイヤらしい笑みを浮かべて、
昭也に耳打ちをした。

「--それはおもしれぇ」
昭也は、邪悪な笑みを浮かべて、
亜津美の方を見つめるのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後

「松雄くん!」
亜津美が、廊下で彼氏の松雄に声をかけた。

「--ごめん!今日、一緒に帰れなくなっちゃった!」
亜津美が申し訳なさそうに
両手を合わせて、ごめんなさいをする。

松雄が残念そうな表情を浮かべながら
「生徒会活動?」と尋ねる。

「うん…文化祭直前だから
 色々話し合いが多くって」

亜津美が言うと、
松雄は「そっか、じゃあ仕方ないよ」と、
そう言いながら微笑んだ。

「---あ、そうだ、明日だけど…」
亜津美が言うと、
「あぁ、朝の10時待ち合わせで」
と、松雄が答えた。

明日は土曜日。
二人はデートする約束をしていた。

今一度、デートの約束の確認をして
可愛らしく微笑む亜津美。

二人は手を振って、
別れるのだった。

・・・・・・・・・・・・・

「はぁ~遅くなっちゃったな!」
亜津美がそう呟きながら、
校舎から出ようとしたその時だった。

「--よぉ」
校舎脇から、クラスメイトの昭也と竜馬が
姿を現した。

「…あ、あれ…二人とも、こんな遅くまで何してるの?」
亜津美は純粋な疑問を二人にぶつけた。
生徒会活動で、既に時刻は18時を過ぎている。

この二人が、こんな時間まで学校に残っているのは
珍しい。
何をしているのだろうか。

「--ふふ、お前を待っていたんだよ」
昭也が言う。

「私を?」
亜津美が吹不思議そうに言うと、
竜馬がほほ笑んだ。

「--はっきり言うとよ、お前と松雄の
 ラブラブっぷり、むかつくんだよね」
竜馬が言うと、
昭也も頷いた。

亜津美は戸惑いながら
「-そ、そんなこと言われても…」と
言葉を口にする。

確かに、二人はカップルで、
クラスメイトのほとんどがそのことを
知っているが、露骨にクラスメイトの前で
イチャイチャしたりだとか、
そういうことはしていない。

あくまでも”普通”の範囲内であり、
とがめられるほどのものではないのだ。

「---特に、保崎の野郎はむかつくぜ!」
昭也が言う。

「あぁ、ボコボコにしてやりたいよな!」
竜馬が笑う。

そんな二人の言葉に、亜津美は反論した

「--二人が、いつも不真面目な態度とってるからでしょ?
 松雄くんを逆恨みしないでよ!」
亜津美が怒った様子で言うと、
昭也は微笑んだ。

「---おうおう、彼氏のためにムキになっちゃって。
 可愛いねぇ」

昭也の言葉に、亜津美はカチンとなって、
叫んだ。

「--松雄くんに手を出したら、わたし、許さないから!」
亜津美がそう言うと、
昭也と竜馬は目を見合わせて笑った。

「--ボコボコにするのはオレたちじゃねぇよ。
 夏川さん、お前だ!」

昭也の言葉に亜津美が、わけがわからないと
言った表情を浮かべて言う。

「--わ、私が松雄くんをボコボコに?
 そんなことするわけないじゃない!」

亜津美が叫ぶ。

すると、竜馬がポケットから何かを取り出した。

「---憑依薬。
 今からこれで夏川さんを作り替えちゃうんだよ!
 くくくくく!」

竜馬がイヤらしい笑みを浮かべる。

「--ひ、憑依・・・薬?」
唖然とした様子の亜津美。

「これで、お前の身体を乗っ取って、
 お前の思考を作り替えるんだよ!
 俺たちの思い通りにな!」
昭也の言葉に、
亜津美は、青ざめた表情を浮かべる

「そ…そんなこと…
 や…やめて…!」

逃げようとする亜津美。
しかし、竜馬は憑依薬を既に飲み干しており、
霊体となって、亜津美に襲い掛かった。

「あ・・・!」
亜津美が手を震わせて、
目に涙を浮かべる。

そしてー

亜津美は、竜馬に憑依されてしまった。

「ふふ、憑依だいせいこ~う!」
嬉しそうに飛び跳ねる亜津美。

「--すげぇな、マジかよ」
昭也がそう言うと、
亜津美は笑いながら、昭也に近づいていく。

「--さ、今から”わたし”を作り替えましょ!」

可愛らしくウインクする亜津美。
昭也は思わず、顔を赤らめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

松雄のもとに、LINEが届いた。
今日は、亜津美とデートをする約束をしている。

”ごめん 待ち合わせの場所なんだけど、
 ちょっと変えてもらってもいいかな”

亜津美からのLINEにはそう、書かれていた。

”いいよ”と松雄が返事をすると、
すぐに亜津美からも返事が来た。

”じゃあ、北地区にある今は使われていない
 工場で待ち合わせね!
 松雄くんに見せたいものがあるの”

亜津美からのLINEにはそう書かれていた。

松雄は廃工場??と疑問に想い、
亜津美に聞いてみたが

”だ~め!到着してからのお楽しみ”と
LINEには書かれていた。

「--亜津美もイタズラ好きだからな~」
松雄は苦笑いしながら、
指定された場所に向かうのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

北地区の廃工場に到着した松雄。
しかし、亜津美の姿は見当たらない。

「--ありゃりゃ、先についちゃったかな」
松雄が一人呟くと、
物陰から人が姿を現した。

赤いミニスカート姿の
亜津美だった。

「--松雄くん、待ってたよ!」
亜津美がいつものように嬉しそうに微笑む。

10年前ぐらいだろうか。
この工場は廃棄された。
立地条件が悪いこともあり、
その後は、ずっと廃墟のままだ

「--こんなところで、何を見せてくれるんだ?」
松雄が言うと、
亜津美が「ついてきて!」と、松雄を
案内し始めた。

廃工場の中の広い部分にやってきた二人。

「--もしかして、亜津美、こういうところ好きだったりする?」
松雄が尋ねる。

世の中には、廃墟だとか、そういうところに、
ロマンを感じる人も居る。
亜津美もそうなのかもしれない。
もしそうなら、これからのデート場所を
決める際の参考にしたい。

「---ほら、これ見て!」
亜津美が嬉しそうに指をさすと、
そこには、大きな金網のようなものがあった。

「--なんだこれ?」

まるで金網デスマッチでも行われそうなぐらいの
広さの金網が、
廃工場の広間に、不気味にたたずんでいた。

「--ねぇねぇ、入ってみようよ!」
その金網には、扉の大きさぐらいの穴が開いていた。
入口だろうか。

「ーーーなんか不気味じゃね?」
松雄が言うと、
亜津美は「いいから早く~」と松雄をせかす。

「--こういうの、ゾクゾクしちゃうよね!」
亜津美が笑いながら言う。

「--仕方ないなぁ」
松雄は、ちょっとだけ、閉所恐怖所だ。
この金網のように、入口が一か所しかないような
空間も、ちょっと怖かったりするのは事実だ。

「---」
松雄は、金網の中に入ると、
周囲をキョロキョロ見渡した。

亜津美も後から金網の中に入ってくる。

「---なぁ、もうそろそろ出ようぜ」
松雄が言うと、
亜津美がニヤッと笑った。

「-そうね。そろそろ始めましょ?」

「--!?」

突然、廃工場に、色とりどりの
スポットライトが照らされた。

「--レディースアンドジェントルマン~!」
男の声が響き渡る

「---!?」
松雄が、驚いて周囲を見渡す。

「--今日は特別なビッグイベント!
 ラブラブな彼氏と彼女の
 金網デスマッチの開幕だ~!」

マイクを持ちながらやってきた男は、
クラスメイトの素行不良生徒・竜馬だった。

「---お前!竜馬!」
松雄が叫ぶ。

すると、金網の入り口が、別の男によって閉じられた。

「---くくく!保崎~!
 お前は今から亜津美ちゃんとデスマッチを
 するんだぜ!」

竜馬の友人の不良生徒・昭也が言う。

「---な、なんだって!」
松雄が叫ぶ。

「--今日こその日のために俺たちが用意した
 スペシャルステージ!存分に楽しんでくれよ~!」
昭也が笑う。

竜馬は、
3週間かけて、この誰も来ない廃工場に、
金網とスポットライトを設置して、
スペシャルステージを作り上げていた。
全ては、この日のためにー

「--ふざけるな!デスマッチなんて俺たちはしない!」
松雄が叫ぶ。

「--ーーうふふ・・・♡」
目の前にいる亜津美が笑った。

「--亜津美?」
松雄が唖然として亜津美に声をかける。

「--ゾクゾクする…
 これからわたしと松雄くんは、
 殺しあいをするの…♡

 うふふ…あぁ、興奮する…ゾクゾクする…!」

亜津美が、スカートをめくって、その下に
巻きつけていたポーチから、ナイフを取り出した。

「--あ、亜津美!?」
松雄が驚く。

「--殺したい…殺したい…殺したい…!」
亜津美がナイフを舐めながら、松雄の方に迫ってきた。

「--ーー真面目でイケメン!けどちょっぴりウザい
 今をときめく男子生徒、保崎松雄くん 
  
 VS-

 生徒会書記で真面目で可愛い女子高生ー
 でも、今は、スペシャルカスタマイズで、彼氏を
 殺してしまいたいほどゾクゾクしている
 夏川 亜津美ちゃん~

 この二人の世紀の対決~

 今、いよいよスタート~!」

竜馬がマイクを持ちながらふざけた様子で言う。

「-ースペシャルカスタマイズだと!?」
松雄が叫ぶ。

「-ーーうふふふ…さぁ、た~っぷり楽しみましょ?
 わたしか、松雄くんが、死ぬまで…うふふふふ♡」
亜津美は、顔を赤らめながら、ほほ笑んだ。

②へ続く

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コメント

彼氏と彼女のデスマッチ。
果たしてどうなってしまうのでしょうか?

次回は、デスマッチの模様と、
前日に亜津美の身に何があったのかを
描きます~

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