<憑依>デスマッチ③~決着~(完)

憑依されて変えられてしまった彼女とのデスマッチ。

いよいよその決着の時が近づいてきた。
二人の運命は…?

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金網の中、彼女が、彼氏の上に乗り、
彼氏を殴り続けている。

”わたし、暴力が大好き”

竜馬に憑依された際に、
亜津美は、そうも刻み付けられていた。

嬉しそうに、松雄を殴り続ける亜津美。

「あははははははっ♡
 あははは、あはははは
 いひひひひひひひひはぁ♡」

亜津美が大声で笑い続ける。
その姿は、いつも目にしている
優しい亜津美の姿などではなく、
完全に狂っている女の姿だった。

「--ほら、反撃してきなさいよ!
 松雄くん?松雄くん!松雄く~ん♡
 あはは、あははははははは!」

興奮しきった様子で、
顔を真っ赤にして笑う亜津美。

髪も、服も、何もかもが乱れている。

今まで暴力を振るったこともない亜津美が、あろうことか、
大好きな彼氏を顔が変形するまで
殴り続けている。

「ふふふふ・・・くくくく…
 いぃ~~~はははははははははっ♡」

亜津美が殴るのをやめて、
自分の手についた血を、顔に塗りつけると
不気味にほほ笑んだ。

「--いいぞ~!最高だぁ!」
竜馬が叫ぶ。
そして、もっとだ!もっとやれ!と叫ぶと、
亜津美がその言葉に反応して、
今度は倒れたままの松雄を
思いきり蹴りはじめた。

「えへへへへへ♡
 あははははははは~♡」

亜津美の狂った笑い声が
廃工場に響き渡る。

先ほど自分で切りつけて
破れかけていたスカートが床に落ちる。

そんなことお構いなしに、
亜津美は、松雄を蹴り続けた。

下着はびしょ濡れになっており、
下着からあふれ出た液体が地面に落ちる。

それでも、亜津美は
大好きな松雄を蹴り続けた。

亜津美に罪悪感などない。
こうすれば、松雄も喜ぶと思っている。
いや、思わされている。

「---はぁああ~~♡」
亜津美は興奮を抑えきれずに、
自分を抱きしめた。

自分が大好きだと書き換えられていた
亜津美は、今の自分が愛おしくて
たまらなかった。

そして、松雄からナイフを
引っこ抜くと、
倒れて痙攣している松雄に向かって
ナイフを向けた。

「そうだぁ!肉を捌け!
 大好きな彼氏をその手で切り刻めぇ!」
竜馬が叫んだ。

亜津美が、悪魔のような笑みを浮かべて
ナイフで松雄を切り刻もうとした
その時だった。

「---!?」
亜津美の手を、昭也が抑えた。

竜馬の友人、昭也が、金網のとbらを
外側から開いて、
亜津美を抑えたのだった。

「----!?」
竜馬が唖然とする

「な、何をしている!?昭也!?」
竜馬が言うと、昭也が首を振った。

「もういいだろ…?
 流石にここまでする必要はねぇよ」

そう言うと、
昭也は亜津美の方を見た。

「俺さ…
 亜津美ちゃんのこと、
 密かに憧れだった。

 そんな亜津美ちゃんと付き合っている
 コイツに嫉妬してた」

倒れた松雄の方を見ながら言う。

「--だからこいつがボコボコにされるのは
 構わねぇ…
 けどな、、 
 俺はこんな亜津美ちゃんは見たくねぇ」

乱れきって荒い息をしている
亜津美を抑えながら、昭也は言った。

「---」
竜馬は唖然としたまま立ち尽くしている。

「ーーー救急車、呼んでやるよ」
倒れた松雄の方に向かって言う昭也。

自分たちは逮捕されるかもしれない。
けれどー。
昭也は思う。
亜津美にだけは、罪が及ばないようにしたい、と。
これは、亜津美の意思ではないのだから。

昭也がそう思いながら
スマホを手にした直後のことだった。

「--邪魔すんじゃねぇ!」
亜津美が大声で怒鳴り声をあげた。

昭也が突き飛ばされて、
スマホが、吹き飛ぶ。

「ーー裏切ったな昭也!」
金網を外から閉めて、
竜馬が言う。

「--お、おい!竜馬!」
昭也が叫び声をあげるも、
竜馬はそれを無視していった。

「--亜津美、もう容赦はイラネェ!
 すべてをぶっ壊せ!」
竜馬が叫ぶ。

そう命令された亜津美は、
命令通り、狂犬と化した。

「--全部全部ぶっ壊してやる!」
亜津美が荒い口調で叫ぶ。

竜馬の命令に絶対服従を
刻み付けられていた亜津美は、
竜馬の怒りをも受取って、暴走した。

「---テメェ、裏切りやがって!」
亜津美が可愛い声で、怒鳴り声をあげる。

昭也を殴りつけると、
昭也のことも猛烈な勢いで殴り始めた。

「--俺を、裏切って、ただで済むとおもうな!」
もはや、竜馬の意思とシンクロしてしまった
亜津美はそう叫ぶ。

「---や、やめろ・・・!」
昭也は弱弱しく叫ぶが、
抵抗することができず、
亜津美に、ただただ殴られ続けている。

「おら!おらぁ!」
昭也は苦しみの声をあげて、
松雄は倒れたまま。

金網の外にいる
竜馬はマイクを拾って叫んだ。

「~~デスマッチもクライマックス~!
 場外から乱入した愚かな男も含めての
 デスマッチだ~!」

竜馬の声は怒りに震えていた。
友だと思っていた昭也に裏切られたことに対する、怒りだ。

「---クライマックスにふさわしいモノを用意したぞ~!」
竜馬はそう叫ぶと、スイッチを押した。

廃工場にセットされちたスポットライトが赤く光、
金網に電流が走り始めた。

「電流デスマッチだ~!ひはははははは!」

電流の走る金網。

亜津美はそんなこと気にもせずに、
罵声を上げながら、昭也を蹴り飛ばしている。

彼氏の松雄が苦しそうに立ち上がる

「亜津美…もう、、やめてくれ!」
その言葉に亜津美が嬉しそうに反応する

「あぁ…松雄くん♡ デスマッチ♡ デスマッチ~♡」
嬉しそうに松尾の方に歩いていく亜津美。

髪は乱れ、服も乱れ、血走った目付きは
もはや狂人のようだった。

「や…めろぉ!」
昭也が亜津美を押さえた。

それを見て、松雄も亜津美を押さえた。

「ーーーー悪かった…」
昭也が言う。

「竜馬のやつが、ここまでするとは
 思わなかったんだ!」
昭也の言葉に、
松雄は何も言わなかった。

暴れる亜津美。

反動で、亜津美が金網のところに
吹き飛ばされて電流を浴びる。

「いぎああああああああああああっ!」
亜津美が大声で悲鳴をあげる。

しかしー
それでも亜津美は笑っていた。

”わたし、痛いの大好き”

そう、書き換えられていたからだ。

「ひひひ・・・ひひひひ…あはははははは!」

松雄と昭也は、亜津美を傷つけないために、
反撃することもできず、
殴り倒されていく。

そして、亜津美は、倒れた松雄に乗っかると、
嬉しそうに微笑んだ。

「--今度こそ、終りね!」
亜津美がナイフを構える。

興奮しているのか、とても嬉しそうだ。

「---はははははははははっ!」
場外から、竜馬が大笑いした

「亜津美!!!やっちまえ!」
竜馬が叫ぶ。

そして松雄の方を見て竜馬が大声で叫んだ。

「死ねぇ~~~~~~!」

その直後だった。

亜津美がーー
自らにナイフを突き刺した。

「----あ・・・えへへ・・・えへ」
亜津美はそのまま苦しそうに笑いながら
倒れた。

「-----!?」
竜馬がマイクを持ったまま唖然としている。

「--亜津美!」
金網の中では彼氏の松雄が
倒れた亜津美に駆け寄っている。

「---…!!」
竜馬はハッとした。

亜津美には、自分に絶対服従するように、
命令してあった。
そう、脳を書き換えている。

今、竜馬はー

”亜津美!やっちまえ!死ねぇ~~~”
と叫んでしまった。

そういうつもりではなかったが、
亜津美に”死ね”と命令してしまった。

「--お、おい!竜馬!早くここを開けろ!」
中から竜馬の友人・昭也が叫ぶ

「-----くそっ」
しかし、竜馬は金網を開けようとしない

「おい!開けろ!亜津美ちゃん、死んじまうだろ!」
昭也が大声で怒鳴るが竜馬はそのまま逃げ出してしまった。

「くそっ!」
昭也は電流を浴びながら
金網の入り口部分を何度も何度も蹴り飛ばす。

そしてー
金網の扉を破壊した。

「---ま、、まつお…」
昭也はその場に倒れる

「--きゅうきゅうしゃを…よべぇ…」
昭也の言葉に、松雄はうなずき、
救急車を手配した。

搬送される3人。

昭也は、電流を浴びながらも、なんとか助かった。
亜津美に刺されていた松雄も、大けがしたものの、助かった。

そしてーー

1週間後。

松雄は包帯を巻いた状態で、病院内を歩いていた。
逃げた竜馬は、あの三日後に、
山奥で自殺していた。
自分のしたことの重みに気付いたのだろうか。

「----」
松雄は、とある病室を訪れた。

”彼女”がようやく意識を取り戻したのだ。

「---亜津美」
松雄が声をかけると、
亜津美が嬉しそうにほほ笑んだ。

「---ごめんね…迷惑かけて…」
亜津美が弱弱しく言う。

大好きな彼氏である松雄に
迷惑をかけてしまった。

そのことに対する謝罪ー。

「いいんだ…亜津美が無事なら」

松雄が亜津美の手を握ると
亜津美は微笑んだ。

そしてー

「--また、やろうね、デスマッチ…」
と嬉しそうにほほ笑んだ。

一度書き換えられた脳はー
もう、元には戻らないー

おわり

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コメント

彼女との金網デスマッチ、完結デス!
憑依薬を持っていた竜馬が居なくなってしまったので、
もう、彼女は…

お読み下さり、ありがとうございました!

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憑依<デスマッチ>

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